あらすじ
営業部最大のピンチ
「株式会社モアイ」に勤める47歳の武田清政(本部長)は、朝起きたら突然赤ちゃんになっていた。見た目は生後8か月くらいの赤ちゃんながら、中身は47歳のまま。そんな現実離れした状況の中、本部長の部下である部長・坂井は、営業部最大のピンチに混乱するものの、慌てることなく部下たちに的確な指示を送る。実際に子供を持つ西浦には本部長補佐を命じ、天野紗哉にはリストアップされた物の調達を命じる。中身はおじさんのままの本部長は、なんでも自分でやってみようとするが、体が赤ちゃんのために歩くこともままならない。取引先への営業は、状況説明のために予定どおり行うこととし、ベビーカーを利用することになる。西浦と共に向かった一件目の取引先では、長い付き合いである柏木が、本部長の赤ちゃん姿に理解を示したために問題なかったが、その後に向かった取引先では「赤ちゃんは母親のもの」という偏った考えを押し付けられることになり、仕事にならなかった。すっかり疲れ果てて帰社した本部長は、午後はお昼寝タイムで英気を養う。ベビーベッドでぐっすり眠る本部長の横では、赤ちゃんのお世話ができるとテンションを上げていた天野が、買ってきた大量のベビーグッズで、早くも親バカぶりを発揮する。本部長は会社全体を巻き込みながら、赤ちゃんとしてお世話される日常に少しずつなじみ始める。
価値観の違い
ある日、営業一課にやって来た橘は、ピンク色のフリル付きロンパースを着用していた武田清政(本部長)を見るや、女の子みたいな恰好をしてどうしたのかと質問する。さらに、男の子なら青色を着せたらどうかと言いかけた橘に、高田と渡辺から警告を意味する笛が吹かれる。実は橘は、偏った考え方の持ち主で、特にジェンダーのあり方に関しては、古い考え方に固執しているところがあり、そのために実の息子との関係も危うい状態となっていた。これをきっかけに自分の考え方を現代版にアップデートしたいと考えた橘は、高田と渡辺に自分が変な発言をしたら教えてほしいと協力を要請する。そして要注意発言が確認されるごとに、二人から笛が吹かれることとなる。それに加え、「橘課長要注意発言スタンプカード」も用意され、事あるごとにはんこが押されるようになり、はんこが5個溜まるごとにトイレ掃除をするというペナルティが課されることになった。橘の偏った発言は、ゲイながら家庭を持つ西浦にも向けられ、悪気はなくとも尖った刃となって西浦を容赦なく攻撃。橘は短い時間に何度も警告を受けることになるが、それがどうしてなのか理解できない。さらに橘の発言はセクハラだけにとどまらず、天野紗哉の結婚観や趣味のゲームに関しても言及するなど、多方面にわたって続けられる。しかし橘は、困ったときに見てほしいと高田や渡辺から渡された紙を見て、自分の知らない世界を否定しないこと、自分の考えが正しいとは限らないことなどを再認識。そして自分の発言について謝罪する。それからも悪気なく橘の差別的発言は続いたが、そのたびに高田と渡辺から間違った考えを正され、それを素直に受け入れることを繰り返して、橘は少しずつではあるが変わろうとしていく。
三度目
ある日、武田清政(本部長)は、ミイコと共におばあちゃんに会いに行くことにした。ミイコの話では、最近おばあちゃんの様子がおかしいとのこと。ミイコを小学生だと思っていたり、曜日や自分の年齢を間違えたりすることが多くなり、その様子はボケが始まっているのではないかと心配されていた。赤ちゃんになってからは足が遠のいていたが、本部長とミイコは心配になっておばあちゃんの家を訪問する。すると赤ちゃんを見たおばあちゃんは、ひと目でその赤ちゃんが本部長であることを見抜き、当たり前のように本部長をだっこして部屋へと入っていく。ひとまず様子を見ることにした本部長は、二人きりになったとたん、真顔になったおばあちゃんから、本部長が赤ちゃんになったのはこれが三回目だという、衝撃の事実を明かされる。一度目は本部長の父親が亡くなった時、二度目は妻・ミサコと離婚することになった時だった。そして、最近実家によりつかなくなった本部長の様子からすべてを察したおばあちゃんは、ミイコにボケたふりをして見せ、本部長が来るように差し向けたのだ。赤ちゃんになった本部長の姿を見たおばあちゃんは、過去の経緯から、今回も赤ちゃんになった理由が何かあるはずだと考えていた。その後、自宅へと帰った本部長は、おばあちゃんの話を聞いたことで赤ちゃんになった経緯を思い出す。これまで自分が引き起こしたことに向き合おうとせず、ミイコを傷つけたことから逃げた結果の姿だったのだ。犯した罪から逃げ、みんなの優しさに甘えようとした自分のずるさに気づいた本部長は、会社に辞表を出し、世話になったみんなに向けた手紙を置いて姿を消してしまう。
メディアミックス
TVアニメ
本作『赤ちゃん本部長』は、同タイトルでTVアニメ化され、2021年3月29日よりNHK総合テレビで放送された。監督は安部真理恵、演出は高嶋友也が務めている。キャストは、武田清政を安田顕、西浦を斉藤壮馬、天野紗哉を森久保祥太郎が演じている。
登場人物・キャラクター
武田 清政 (たけだ きよまさ) 主人公
「株式会社モアイ」の営業部で本部長を務める男性。周囲からは「本部長」と呼ばれている。年齢は47歳。もともとは身長180センチ、体重80キロの巨体で、俳優のイ・ビョンホン似を自称するイケオジだったが、あ... 関連ページ:武田 清政
西浦 (にしうら)
「株式会社モアイ」に勤務する男性。年齢は28歳。武田清政(本部長)の部下にあたる。突然赤ちゃん姿になってしまった本部長の補佐を担っている。自分にも1歳半の娘・ハルミがいるため、赤ちゃんになった本部長に対し、つい本当の赤ちゃんのように接してしまいがち。本部長の発育状況に合わせて必要なものをピックアップして用意したり、毎日昼には会社で離乳食を手作りしたりしている。また、食べ物が赤ちゃんの月齢に合っているかどうかを確認し、その都度本部長が食べてもいいかどうかを判断しており、赤ちゃんになった本部長にとってなくてはならない存在。実は同性愛者であり、パートナーの岡田は一回り年上の男性。岡田とのあいだには、娘のハルミがおり、幸せに暮らしている。ゲイであることは会社にもカムアウト済みで、特に秘密にしているわけではない。あまり一般的ではない関係のもとで育てられているハルミを思い、この先望まないことが起きるのではないかと案じている。両親からも結婚を反対されているため、絶縁状態となっている。ハルミからは「パパ」と呼ばれている。見かけによらず、かなり筋肉質な体型をしている。BL小説が好き。
天野 紗哉 (あまの さや)
「株式会社モアイ」の営業一課で課長を務める男性。年齢は35歳。おなかがちょっと弱いため、突発的なトイレのトラブルに悩まされることがよくある。上司である武田清政(本部長)が赤ちゃんになってしまったことで... 関連ページ:天野 紗哉
ミイコ
武田清政(本部長)とミサコの娘で、本名は「武田美依子」。年齢は28歳で、本部長が19歳の時に生まれた。美人ながら、顔立ちは本部長にそっくり。両親は離婚したが、今は訳あって本部長と二人で暮らしている。本部長に対してはわがままを言いがちだが、赤ちゃんになった本部長を、平日は会社と自宅の送り迎えをし、休日も面倒を見ている。ミイコ自身は、もとの父親よりも赤ちゃんになった今の方が、かわいい分接しやすいと感じている。また、会社で本部長が部下の西浦に面倒を見てもらっていることに申し訳なく思っている。基本的に子供は大好きだが、自分の遺伝子は残したいとは思っていない。もともと本部長とはいっしょに住んでいなかったこともあり、父親のことをよく知らなかった。本部長が体格も力も強かったため、父親を怒らせたら自分じゃ到底かなわないという恐怖心がどこかにあった。そのため本部長に対し、素直に話せないところがあったが、本部長が赤ちゃんになってからは仕事のことや趣味のこと、将来のことなど、なんでも話すようになった。実は以前、元彼氏からストーカー被害に遭っていたことがあり、自宅がバレて行く所がなくなったため、本部長に頼った。その際、元彼氏と本部長が言い争いになり、本部長が元彼に暴力を振るう現場に居合わせた。その後本部長と共に引っ越し、現在の家で暮らすことになったが、引っ越し直後に本部長が赤ちゃんの姿になってしまう。このため、本部長はミイコを傷つけてしまったと思い込んでいるが、ミイコ自身はストーカーをやっつけてくれてラッキーだと感謝している。
ミサコ
武田清政(本部長)の元妻で、ミイコの母親。年齢は45歳。実家はヤクザで、父親は七代目の組長を務めている。本部長とは、大学時代両親の反対を押し切って結婚したが、妊娠中に強い孤独を感じるようになった。大学を卒業後は就職して、早く家族を楽させてあげたいと考える本部長とのあいだに感覚の相違があり、彼が言うことはいつも正しく、この人とは住む世界が違うと実感。その結果、本部長のもとを去ることを決めて離婚に至った。本部長を嫌いになったわけではないが、その後一度も会っていない。のちに罪を犯し、執行猶予処分を受けるものの、執行猶予中に嫌がる女の子を風俗に沈めようとする性悪ホストとケンカしたことで実刑を受けることとなった。現在は仮出所中の身。ミイコが赤ちゃんと共に自分のもとを訪れたが、赤ちゃんが本部長であることを知らなかったため、ミイコの子供だと思い込んでいる。のちに父親が脳梗塞で急死し、跡目争いが起こることを懸念し、ミサコ自身が八代目組長を襲名することを決意。その後、若頭の男性と再婚し、ヤクザを辞めて会社を興すことを決めた。近接格闘術「クラヴ・マガ」の黒帯を持っている有段者。
おばあちゃん
武田清政(本部長)の実母で、ミイコの祖母にあたる。最近痴呆気味で、自分の年齢を間違えたり、ミイコを小学生だと思ったりと言動が危うい。心配したミイコが本部長と共にやって来た際、赤ちゃん姿の本部長をひと目で息子と理解し、なんの疑問も持たずに接した。実は、この頃本部長が顔を見せに来ないため、何かあったと察し、本部長をおばあちゃん自身のもとに来させるためにボケたふりをしていただけだった。本部長が赤ちゃんの姿になってしまったのは、これで三回目であることを知っている。一回目は、自らの夫であり本部長の父親が亡くなった時で、二回目はミサコと本部長が離婚することになった時だった。どちらも一年くらいで元の姿に戻ったが、今回は今までにないほど長丁場になっていることを心配している。本部長には、同時に生まれた双子の兄がいたが、産後すぐに亡くなってしまったことを秘密にしている。
坂井 (さかい)
「株式会社モアイ」で部長を務める男性。年齢は40歳。上司の武田清政(本部長)が突然赤ちゃんになってしまってからは、会社で仕事上のきめ細かなフォローを続けている。聴覚障害を持つ妻とは大学時代の同級生で、現在も子供はなく二人暮らし。お昼ご飯はいつも節約のために妻が作った愛妻弁当を食べている。職場では、本部長のオムツやミルクの補充なども率先してこなす、縁の下の力持ち的な存在。実は以前、C型肝炎を患っていたが、現在は完治している。肝炎対策基本法が制定されたことで、医療費助成が受けられるようになり、訴えを起こしてくれた原告団に対しては、感謝してもしきれないと感じている。
高田 (たかだ)
「株式会社モアイ」の営業二課に所属する女性。眼鏡をかけている。甥の世話をしたことはあるが、赤ちゃんをかわいいと思ったことがなく、同僚や友人が産んだ赤ちゃんをかわいがっている姿を見て、自分だけが変なのかとひそかに心を痛めている。実は以前からあこがれていた武田清政(本部長)が、赤ちゃんになったという噂を聞き、営業一課に確認に行ったが、赤ちゃんになった本部長の姿を素直にかわいいと思えた。その時、仕事上のトラブルで西浦が本部長に同行できないアクシデントが発生。たまたま居合わせた高田が本部長を取引先の会社まで連れて行くという責を担うことになった。赤ちゃんを抱いていることで、電車内では知らないおばさんから声をかけられたりしたが、ベビーカーを持ち上げる時、フラフラになっていても手伝いの申し出や、声をかけられることはなかった。素敵だなと思う異性はいても、恋愛やセックスに興味がまったく持てず、同性の同僚たちとの恋話や愚痴も興味がなく苦痛を感じていた。ある時、上司の橘からジェンダーの在り方について、考え方をアップデートしたいとの申し出があり、橘から要注意発言が確認されるごとに、渡辺と共に注意喚起を行うことになった。その際に笛を吹いてスタンプカードにはんこを押し、このはんこが5個溜まるごとにトイレ掃除をしてもらうことを決めた。発言内容は性別に関することだけでなく、結婚観や母乳、ゲームに関することなど多岐にわたり、意識を変えることは簡単ではないが、その都度自分と渡辺で間違った考えを正し続けた。
渡辺 (わたなべ)
「株式会社モアイ」の営業二課に所属する男性。ある日、会社に行く電車に乗れずに出社することができなくなった。心が疲れていると判断され、休養を取ってこのほど復帰した。しかし仕事がうまくいかず、会社の屋上で落ち込んでいたところ、赤ちゃんと出会った。それが武田清政(本部長)であるとは知らず、優しく接し、仕事から逃げている自分について語った。その際、赤ちゃんに「泣きたい時は泣いた方がいいぞ」とはっきり言われたため、驚きのあまり気を失った。その後、赤ちゃんが本部長であることを知り、あらためて赤ちゃんとして接したことを謝罪した。だが本部長からは、失敗して迷惑をかけてもいいと言ってもらったり、繊細さは強みであると弱さを認めてもらったり、何かあったら誰かに助けを求めろという助言をもらったりした。これにより、仕事に対して真摯に向き合うことができるようになり、次第に平穏な日常を取り戻す。そんな中、上司の橘から、ジェンダーの在り方について、考え方をアップデートしたいとの申し出があり、橘から要注意発言が確認されるごとに、高田と共に注意喚起を行うことになった。その際に笛を吹いてスタンプカードにはんこを押し、このはんこが5個溜まるごとにトイレ掃除をしてもらうことを決めた。発言内容は性別に関することだけでなく、結婚観や母乳、ゲームに関することなど多岐にわたり、意識を変えることは簡単ではないが、その都度自分と高田で間違った考えを正し続けた。手先が器用なことから、趣味は羊毛フェルト。神戸出身で、阪神淡路大震災の時に両親を亡くした。
橘 (たちばな)
「株式会社モアイ」の営業二課で部長を務める男性。過去に三回の転勤で海外にも行った経験がある。慣れることも仕事のうちと考えているが、大阪転勤から戻ってきて以降、今の職場の雰囲気になかなかなじめずにいる。現在は孫の面倒を見ることも多く、公私共に忙しい日々を送っている。営業一課に同性愛者がいるという噂を聞き、武田清政(本部長)のもとを訪れた。同性でありながら子供を持つ西浦に対して、いくら多様化しているとはいえ、いいことと悪いことははっきりさせないといけないと発言。父親と母親がいる家庭が一番の幸せの形であると持論を述べ、わがままを許しては本人も子供も苦労して不幸になるだけだと、偏った持論を展開した。実は、息子からゲイであることをカミングアウトされている。息子に幸せになってほしい一心で見合いを勧めていたが、それがかえって息子に苦痛を与えていただけだということが判明。自分が今までしてきたことはなんだったのかと心を痛めている。その後は、ジェンダーの在り方について、考え方をアップデートしたいと申し出て、部下の高田や渡辺に自分が変な発言をしたら教えてほしいと協力を要請した。要注意発言が確認されるごとに、二人から笛を吹かれると同時にスタンプカードにはんこが押され、このはんこが5個溜まるごとにトイレ掃除をすることになっている。その後も性別に関することだけでなく、結婚観や母乳、ゲームに関することなど差別的発言は多いが、その都度高田と渡辺から間違った考えを正されている。橘自身もそれを素直に受け入れており、変わろうとしていることだけは周囲からも認められるようになる。また、息子との関係も現在修復に向けて努力している。
中川 麻由美 (なかがわ まゆみ)
今年の夏から中途採用で「株式会社モアイ」に入社し、営業二課に所属する女性。年齢は26歳。短髪のノーメイクでスカートもはかず、いわゆるOL的な格好ではなく、どちらかというとサラリーマンの風貌をしている。しかし話し上手のため、営業先では評判がいい。会社の広報部から、「社で働く『女子』特集」と題した企画の対象にされ、PR動画の作成や10分程度のインタビューを求められている。だが、事前にこの企画を知った武田清政(本部長)や橘から、この手の企画を嫌がりそうだと勝手に判断され、面倒な女というレッテルを貼られかけた。しかし、この企画タイトルに問題があると判断した渡辺から、広報に変更が依頼され、タイトルが「社で働く『うちのニューフェイス』」となった。中川麻由美自身は変更後にこの企画の依頼を知り、快く引き受けた。実は、「アサヨシ少佐」の名で、ユーチューブにゲーム実況動画を投稿している。のちに、同じくゲーム実況者「アマゾー」として活躍中の天野紗哉が会社内にいることを知って歓喜する。だが、もともとアマゾーに対しては「自由で風来坊的な感じの人」という印象を抱いていたため、彼がふつうの会社員であることを知り、大いに驚くことになった。また霊感が強く、本部長に生後すぐに亡くなった双子の兄の霊が憑いていることを察知。そして、双子の兄の霊が本部長を好き過ぎて、本部長が辛そうなので赤ちゃんにしてあげたという霊の言葉を代弁した。
清水 (しみず)
「株式会社モアイ」の営業二課で部長を務める男性。一見温和そうに見えるが、芯が強くて仕事には非常に厳しい。つねに会社のことを考えて真摯に仕事に取り組んでいるため、部下や上司からの信頼も厚い。もともとは、武田清政(本部長)の上司だったが、本部長が先に昇進したことで、本部長の部下となった。赤ちゃんになってしまった本部長とは、以前と変わらない信頼関係を築いており、現在も仕事終わりに一杯飲むなど、交流を続けている。実は定年を間近に控え、早期退職を考えている。子供のことも、家庭のこともすべて妻に任せ、仕事に邁進してきたが、最近になって会社に必要とされていないように感じるようになった。今まで会社に尽くしてきたのはなんだったのかという思いから、どっと疲れを感じ始め、退職を考えるようになった。
ハルミ
西浦と岡田の娘。年齢は3歳。父親が二人いる環境下で育ち、西浦を「パパ」、岡田を「おとうさん」と呼んで区別している。夢は仮面ライダーになることで、仮面ライダーになって西浦と岡田の悪口を言うみんなをやっつけたいと考えており、弱虫なパパと腰痛のおとうさんの代わりに自分が戦いたいという意向を見せている。時折顔を合わせる天野紗哉や武田清政のことが大好き。
岡田 (おかだ)
西浦のパートナーの男性。ハルミにとって二人いる父親のうちの一人で、ハルミからは「おとうさん」と呼ばれている。在宅で仕事をしているため、日常的に運動不足気味。先日ハルミとぶらんこで遊んでいたら、自分の方が夢中になり、ぶらんこから降りた時に足をくじいて捻挫してしまうなど、ドジな一面がある。今現在の家族の形に幸せを感じているが、今の社会はゲイが家族を持っても持たなくても非難されることがあり、ゲイとしての存在自体が迷惑なのではないかと悩むことも多い。西浦の会社の関係者からは、今の関係性についておおむね理解を得ている。そんな中、西浦が盲腸で手術を受けることになったのをきっかけに、西浦と絶縁状態にある彼の実家の家族のことも考えるようになり、今の家族の形のままいつまでいられるのかを考えるようになった。
岡崎 (おかざき)
「株式会社モアイ」の営業一課に所属する男性。年齢は28歳。実家は審美歯科を営んでおり、お金持ち。交際中の彼女と結婚を考えていたが、なかなかいい返事がもらえないまますれ違いが多くなり、ほかに好きな人ができたという理由でふられてしまう。失恋の痛手から立ち直ることができず、恋愛はしばらくしたくないと考えている。年齢的に一人でいることに不安を抱き、結婚して親を安心させたいと思っていた。そんな自分と比べて西浦は、子供もいて幸せそうで羨ましいと発言するが、天野紗哉からどんな生き方を選んだとしても寂しさは感じるものだとして、結婚や子供の有無で人の価値を判断することは間違った考え方であると叱責される。これが追い打ちをかけられる形となり、ますます元気をなくしてしまうが、その後武田清政(本部長)と、坂井から励まされて元気を取り戻した。のちに、結婚へのモチベーションも取り戻し、婚活サイトに登録。出会った女性と交際を始めたが、その女性が両親の手術代で借金を抱えているため、働きながら看病を続けており、返済したら結婚したいと語ったため、自分が借金を肩代わりして返済しようとした。すでに入院費用として30万円を渡していたが、本部長や会社の同僚からは、詐欺ではないかと疑われていた。すぐさま彼女に連絡を取るものの、すでに電話はつながらない状態で詐欺被害に遭ったことを実感する。
小島 (こじま)
「株式会社モアイ」の社長を務める男性。年齢は60歳。武田清政(本部長)が赤ちゃんになったことを聞きつけ、本部長を呼び出した。本部長との付き合いは長く、信頼している。本部長が赤ちゃんになったことを確認しても、クビにすることはなくこの会社には本部長が必要だと語り、むしろ何かとがんばりすぎる本部長の体をいたわった。実は歌がヘタ。
寺田 (てらだ)
「株式会社モアイ」で副社長を務める男性。年齢は58歳。赤ちゃんになった武田清政(本部長)が熱を出したと聞き、心配して様子を見に来た。赤ちゃん姿の本部長を抱きながら、自分の息子もこんな時があったなと昔のことを懐かしんだ。自分たちが若い頃は、男性が子育てをする習慣すらなく、働いて稼いでくることのみが望まれていた時代だったということもあり、子育てにはなんらかかわりを持たなかった。
中本 (なかもと)
「株式会社モアイ」で専務を務める男性。年齢は60歳。赤ちゃんになった武田清政(本部長)が熱を出したと聞き、心配して様子を見に来た。自分の子供もこんな頃があったと懐かしみながらも、男性が子育てをする習慣すらない時代に生きたことを吐露。昔は貧乏で、子供にろくなものも買ってやれず、必死になって働いていたことを明かした。今になって思えば、お金よりも抱きしめてあげることが大事だったのにと、子育てにかかわらなかったことを後悔する言葉を漏らす。
安達 (あだち)
「株式会社モアイ」で常務を務める男性。年齢は60歳。赤ちゃんになった武田清政(本部長)が熱を出したと聞き、心配して様子を見に来た。自分にも息子がいるが、家庭を顧みずに仕事に邁進した結果、夢だったキャッチボールもしたことがなく、今では17歳になった息子とどう接したらいいのかもわからないと愚痴をこぼした。
水口 (みずぐち)
「株式会社モアイ」で取締役を務める男性。年齢は58歳。娘に絶縁されたために孫はいるが、会わせてもらえない状態。赤ちゃんになった武田清政(本部長)が熱を出したと聞き、心配して様子を見に来たが、本部長を抱きながら、涙を流した。
佐々木 (ささき)
「株式会社モアイ」の営業二課に所属する女性。赤ちゃんになった武田清政(本部長)をだっこしたとたん、泣き出してしまう。実は大親友に赤ちゃんができたことをきっかけに、これまでどおりいっしょに遊ぶことができなくなり、寂しさのあまり赤ちゃんという存在が嫌いになってしまった。それがひどいことだと頭では理解できても、気持ちが思うようについていかず、自分の心の狭さに落ち込んでいる。
一之瀬 南 (いちのせ みなみ)
「株式会社モアイ」に入社し、営業一課に配属になったばかりの男性。実は在日コリアン三世で、自分のルーツである国について勉強したため、現在では韓国語がペラペラになった。両親が帰化していることから、一之瀬南自身の国籍は日本のため、兵役義務はない。岸谷芽衣から在日コリアンであることについて突っ込んだ取材を受けるが、入社したばかりという微妙な立ち位置であることも鑑みて、自分のことを社内報に載せるのはやめてほしいと懇願した。
岸谷 芽衣 (きしたに めい)
「株式会社モアイ」に勤めている女性。年齢は32歳。結婚しているが、子供をつくるかどうかは現在熟考中。社内広報を担当しており、紙とペンで社内を飛び回り、よりよい社会をつくることを信念に日々がんばっている。善意を盾にしてずけずけと取材し、なんでも理解を得ようとすることから、「善意の悪」と評されている。営業一課の武田清政(本部長)のもとを訪れ、「赤ちゃんの本部長を認めて理解しよう」をタイトルに取材を行おうとした。その際、周囲にいた西浦にはゲイで家族を持っていることについて、坂井には持病のC型肝炎について、一之瀬南には在日コリアンであることについてなど、躊躇なく本人に突っ込み、コメントを求めた。基本的に「みんなの理解をうながし、平等な世の中に生きられるようにがんばらないと」という強い気持ちを持っており、差別をなくすために奔走しているが、その押しつけがましさから、あまり歓迎されていない。しかしその後、岸谷芽衣自身の健康診断結果に要再検査項目があることを確認。自分が当事者になることになって初めて理不尽や不公平を実感することになり、他人からの理解なんていらないという率直な気持ちを抱くことになる。
利見 (としみ)
「株式会社モアイ」の営業一課に所属する男性。チームではリーダーを務めている。プライベートでは、現在妻と共に不妊治療の真っ最中。妻の体とお金のことを考えると、そろそろやめるべきかどうするべきかを考えなければならない時期に差し掛かっており、思い悩んでいる。だが、武田清政(本部長)を目にすると、彼が赤ちゃんの姿であるからこそ、どうしてもいろいろ考えてしまいがち。
佐野 (さの)
「株式会社モアイ」の営業一課に所属する女性。最近三人目の子供を出産、産休が明けて復職して1か月ほど経った。子育てと仕事の両立は大変だが、子育ても三人目になるため、もはやふつうの感覚で生活を送っている。忙しいために大変さは感じているものの、別段悩みはない。ママ友からは三人も育ててえらい、会社からは仕事と育児を両立していてえらい、孫を産んで親孝行してえらい、男の子を育ててえらい、少子化問題に貢献していてえらいなどと、何かにつけて周囲から褒められている。みんながそれぞれにさまざまな問題を抱えながらもがんばって生きている中、自分だけが多くの人たちから褒められることに疑問を抱いている。
柏木 (かしわぎ)
「株式会社モアイ」の取引先の会社に勤める男性。営業部の責任者で、長いこと現場にいたため、ある意味不測の事態には強い。武田清政(本部長)とは、ゴルフをいっしょに楽しむ仲のため、突然赤ちゃんになってしまったことに驚くものの、昔と変わらずに赤ちゃん姿の本部長ときちんと仕事の話をしている。
洋子 (ようこ)
銀座のクラブ「洋」で、ママを務める女性。常連客だった武田清政(本部長)が、あいさつに訪れた際に赤ちゃんになった姿を目撃。本部長が赤ちゃんになってから、以前よりも人に優しくなったと指摘し、物腰も柔らかくなったと本部長をほめた。長年にわたって続けてきた店が、ビルの老朽化による取り壊しが決まったため、自分の年齢を考えて閉店することを決める。
書誌情報
赤ちゃん本部長 3巻 講談社〈ワイドKC〉
第1巻
(2018-03-23発行、 978-4065111093)
第2巻
(2018-11-22発行、 978-4065137741)
第3巻
(2020-02-21発行、 978-4065185278)