霊的に閉鎖された東京で、天使と悪魔が入り乱れる
本作において東京は、霊的に閉鎖された状態となっている。しかし、一般人にはその様子が見えておらず、叶久遠などごく一部の人間だけには、東京の空を覆う呪文のような黒い文字列が見えている。また、その一部の人間は過去に天界から降り注いだ有翼亜種(アイオーン)の遺伝子を継いだ者とされており、有翼亜種を食らう悪魔なども人間の姿で東京を闊歩している。
孤独で特別な少年と少女が天使に出会う
久遠は母子家庭で、ネグレクトを受けて成長した。一方で風護カリスは両親から引き離され、過干渉な養父のもとで成長する。養父を嫌うカリスと、親の手作り料理に飢えた久遠が、月に一度だけ昼食を交換することから物語は始まる。なんでもない日常を送っていた久遠とカリスが、互いに東京を覆う文字を認識し、背中にある小さな天使の翼が見えることが判明してから、事態は一変する。
久遠に憑いている「クリオネ」とは何者なのか
叶久遠には生まれた頃から、不思議なものが憑いている。二対の翼が生えた小さな生き物で、久遠はそれを「クリオネ」と呼んでいるが、自分の脳内にいる空想上の友人のようなものだと考えていた。しかしある時、久遠の上に落ちてきた弁当箱から守るように、大きな翼が広がったのを目にした久遠は、クリオネが空想上の生き物ではないことを知る。久遠に力を貸すこのクリオネの正体がなんなのかが、本作における大きな謎になっている。
登場人物・キャラクター
叶 久遠 (かない くおん)
風護カリスと同じ学園に通う中学2年生の男子。暗めの茶髪をショートヘアにしている。「アイオーン」と総称される天使の赤ん坊の生まれ変わりで、生まれた時から東京の空を覆う呪文のような黒い文字列や、他人の背中にある小さな天使の翼など、一般人には見えないものが見える。また「クリオネ」と呼んでいる、手の平サイズの天使のようなものが生まれつき憑(つ)いており、クリオネが叶久遠自身の背骨と一体化してからは、肩甲骨と背骨から3枚の翼を生やすことができるようになる。カリスに強い恋心を抱いており、毎月第3金曜日に屋上で彼女と落ち合い、カリスの持参する理事長特製の弁当と、久遠が購入したパンを交換する習慣を続けている。のちにカリスに告白するが、レズビアンであることを理由に断られるものの、久遠自身はあきらめていない。
風護 カリス (かざまもり かりす)
叶久遠と同じ学園に通う高校2年生の女子。長い銀髪に青い目を持つ。誰もが一目を置くほどの美人ながら、実はレズビアン。風護理事長の養女だが、理事長からの愛情が親から子へ注ぐ類のものではないことを察しており、不気味さを覚えている。理事長の手作り弁当を屋上から捨てようとしていた際に叶久遠と出会い、それ以来、毎月第3金曜日は屋上で弁当と購買のパンを交換して食べるという約束を交わしている。四大天使の一人、ミカエルからは、ラファエルの生まれ変わりではないかと考えられており、動向を探られている。
前作
天使禁猟区 (てんしきんりょうく)
作者・由貴香織里の代表作。救世主と言われる無道刹那が妹の無道紗羅に恋をしながらも天界や地獄を舞台に困難を切り開いていく。白泉社『花とゆめ』1994年15号から連載。2022年4月、続編『天使禁猟区-東... 関連ページ:天使禁猟区
書誌情報
天使禁猟区-東京クロノス- 3巻 白泉社〈花とゆめコミックススペシャル〉
第1巻
(2023-01-20発行、 978-4592212911)
第2巻
(2024-01-19発行、 978-4592212928)
第3巻
(2024-08-20発行、 978-4592212935)