『不思議の国のアリス』を踏襲した舞台設定
本作『架刑のアリス』の世界観は、主にルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』の設定がもとになっている。例えば、主人公の久遠寺星の養家である久遠寺家では、定期的に「いかれたお茶会(マッド・ティー・パーティー)」と呼ばれるパーティーが催されているが、星はそのお茶会で、小説の挿絵でも描かれているアリスが纏(まと)っていたようなエプロンドレスを着用している。ほかにも、架空の生物「バンダースナッチ」や、白ウサギをもとにしたと思われる集団「黒兎」など、さまざまなキャラクターや設定がモチーフに使われている。なお、久遠寺家の三女、久遠寺紅亜が『赤ずきん』の衣装を纏っているなど、不思議の国のアリス以外の小説や童話もモチーフとなっている。
兄妹同士の凄惨な殺し合い
世界有数の大財閥である久遠寺家に引き取られた久遠寺星は、引き取られる前から兄妹として支え合ってきた久遠寺是乃をはじめ、八人の兄妹と共に幸せに暮らしていた。しかし、是乃が19歳の誕生日を迎えた日に開かれたお茶会で、星たちの義母に当たる久遠寺織雅から、久遠寺家当主を決めるため九人の兄妹で殺し合いをし、最後まで生き残った者を当主に任命すると告げられる。星たち兄妹はこの要求に反発するが、織雅は兄妹の大切なパートナーを人質に取るなどの悪質な手段を用いて、星たちに殺し合いを強制する。この殺し合いで、兄妹の一人である久遠寺志度に是乃が致命傷を負わされるが、久遠寺の当主になったらパートナーを生き返らせる権利があるとのルールのもと星は是乃を蘇(よみがえ)らせる。だが、蘇った是乃はまるで別人のように豹変した姿を見せるようになる。
最愛の兄の意外な正体
物語が進むにつれて、久遠寺星が久遠寺是乃だと思っていた男の真の姿を知る。現在、是乃だと思われていた人物は、久遠寺家と敵対する鷲宮教団のエージェント「灰(ラウム)」で、本物の是乃を殺害し、DNAをコピーする能力を使って顔を変えていたのだ。人格が豹変して見えたのも、本物の是乃を演じていた灰が、本来の性格に戻ったというのが真相だった。だが、本物の是乃も実際には死んでおらず、やがて九重月兎の内に宿る別人格こそが、本物の是乃であったことが判明する。なお、本物の是乃の人格は月兎の意識の中で眠っており、現在は表層化していない状態にある。
登場人物・キャラクター
久遠寺 星 (くおんじ すてら)
久遠寺家の四女。慕っている久遠寺是乃と共に久遠寺家に引き取られた少女で、それ以来は何不自由のない生活を送っていた。しかし後継者を決めるため、久遠寺家のきょうだいを皆殺しにすることを義務付けられ、久遠寺家の次男・久遠寺志度が是乃を殺害する。是乃と共に、三女の久遠寺紅亜とも仲がよかったため、殺し合いを忌避している。一方で、使用人の一人である九重月兎のことを、人を食ったような態度で付きまとってくるために嫌っており、彼の命が危険にさらされている時も助けようとしなかった。
血塗れアリス (ちまみれありす)
久遠寺星の中に眠る、もう一つの人格。主人格である星と記憶や思考を共有できるうえ、意思疎通も可能。星が激しく感情を揺さぶられることで血塗れアリスの人格が表層化し、髪が金色に変わるほか、好戦的な性格になるとともに言動も粗暴となる。戦闘能力は久遠寺家の関係者の中でも上位クラスで、初めて変身した時は二丁拳銃を使いこなして久遠寺志度を撃破した。
書誌情報
架刑のアリス 11巻 講談社〈KCx〉
第1巻
(2014-06-06発行、 978-4063807028)
第2巻
(2014-11-07発行、 978-4063807257)
第3巻
(2015-05-07発行、 978-4063807653)
第4巻
(2015-10-07発行、 978-4063808070)
第5巻
(2016-03-07発行、 978-4063808384)
第6巻
(2016-08-05発行、 978-4063808674)
第7巻
(2017-01-06発行、 978-4063808988)
第8巻
(2017-07-07発行、 978-4063809299)
第9巻
(2017-11-07発行、 978-4065104699)
第10巻
(2018-06-07発行、 978-4065117361)
第11巻
(2018-10-05発行、 978-4065133231)