東京の山手線各駅を賭けた大激闘
太平洋戦争で敗北したことで焼野原となった日本は、喧嘩(けんか)の強い人間だけが成り上がる無法地帯と化していた。そこで、統治のため東京に乗り込んできたアメリカ軍は、暴力を暴力で支配しようとする。そして、山手線各駅を牛耳る権力者たちに「用心棒」と呼ばれる代理闘士を雇わせ、用心棒同士の決闘トーナメント「第一回東京決闘環状戦」を開催し、権力抗争を鎮静化させようとしていた。この戦いはアメリカ軍が撤退してからも続き、用心棒の重要性を認識していた現在の政府によって管理が引き継がれ、令和の時代になっても均衡が保たれ続けてきた。しかし、2020年に山手線に新しく「高輪ゲートウェイ駅」が開業すると、この駅の利権を狙った権力者たちが次々に現れ、東京は一触即発の事態に陥る。この事態を重く受け止めた政府は、「第二回東京決闘環状戦」の開戦を宣言する。
生と死を司(つかさど)る武術「神田流」
東京決闘環状戦で神田の用心棒である安田鯉之助があやつる神田流は、祭囃子(まつりばやし)をもとにした武術。2本の枹(ばち)を武器や防具として自由自在にあやつり、気迫と共に爆発的な攻撃力を発揮する。神田流の技は、トラックを正面から破壊する「恒河沙連撃」や、飛び道具や体当たりによる衝撃を撥で反射するカウンター技「一点撃破」など、強力な技ばかり。特に奥義の一つである「那由他」は、敵の心臓に不規則な振動を与え続けて不整脈を引き起こすというもので、決まれば相手を確実に殺害できるほどの威力を誇る。鯉之助は巣鴨の用心棒の地藏棘山に那由他を決め、勝利を収めるが、相手の命を奪うことを望まない鯉之助は、那由他で放ったリズムを裏表逆に放つことで止まった心臓を動かす「裏那由他」を発動して、棘山を蘇生(そせい)させる。
地元愛と個性にあふれた用心棒たち
東京決闘環状戦に参加する用心棒は、幼い頃に恵まれない境遇で育った影響から、自分の怒りを昇華させて戦う力に変える者が多い。上野の用心棒、大熊猫志や、秋葉原の用心棒、秋元宅士、新大久保の用心棒、リアンは、自分が正しいとの信念を貫いて鯉之助と対峙し、互いに刺激し合い、のちに深い友情で結ばれる。一方で、自らの力を極限まで発揮するために殺しを極めようとする池袋の用心棒、梟埼彩や、筋の通った暴力を振うことに快感を覚える新宿の用心棒、内藤真一など、信念をこじらせたことで危険な思想に目覚めてしまった用心棒も少なくない。中でも、鶯谷代表の用心棒、四季俗斗は生きることを苦行と考えており、彼なりの善意によって宅士を殺害したことで、鯉之助の心に深い闇を落としてしまう。
登場人物・キャラクター
安田 鯉之助 (やすだ こいのすけ)
4代目「神田の用心棒」を務める青年。年齢は22歳。一人で神輿(みこし)を担いで行うスクワットで鍛えた強靭な肉体を持っている。太鼓が得意で、龍が巻き付いた意匠の鋼鉄製のバチ「神龍ノ鋼鱗(しんりゅうのこうりん)」で武装し、神田流の必殺技「恒河沙連撃」は暴走トラックを真正面から叩(たた)き壊すほどの威力がある。身寄りがなく、少年時代は喧嘩(けんか)に明け暮れていたが、15歳の頃に先代「神田の用心棒」の安田龍仁と出会い、性根を叩き直された。現在は神田商店街会長にして、2代目「神田の用心棒」の安田龍之心の世話になっており、彼を「じいちゃん」と呼び慕っている。既にゴロツキ時代の面影はなく、江戸っ子気質の快男児に成長しており、住民からの信頼も厚い。「東京決闘環状戦」を高輪ゲートウェイ駅の利権を争う催しと認識していたが、予選の前日に龍之心から「決闘に敗れた駅は5000億円に相当する利権を勝利した駅に譲渡する」と聞かされ、決意を新たに決闘に臨むことになる。
大熊 猫志 (おおくま ねこし)
「上野の用心棒」を務める長身の男性。年齢は27歳。パンダを偏愛するあまり、容姿をパンダに近づけようと努めており、「パンダマン」と呼ばれている。児童虐待の被害者で、22年前に上野アニマル公園の園長に保護された時点で身長160センチ、体重29キロだった。痩身ながら驚異の腕力を秘めていたことから、園長の判断で用心棒に抜擢(ばってき)され、現在に至る。いつもは公園で風船を配っているが、愛想が非常に悪く、評判は芳しくない。相手の弱点を的確について戦う技巧派だが、これは虐待で培われた状況把握力によって成立する技能で、本気を出すには、あえて攻撃を受けて相手を観察する必要がある。必殺技は抱擁して相手の骨を折る「抱折(シャンシャン)」で、命を絶つほどの威力を誇る。「東京決闘環状戦」の予選で安田鯉之助との戦いの中で愛を学び、精神的に大きく成長した。これをきっかけに鯉之助を「闘友(とうゆう)」と認め、修行のサポートをするようになる。
書誌情報
東京決闘環状戦 17巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉
第7巻
(2022-06-20発行、 978-4867203934)
第8巻
(2022-09-20発行、 978-4867204177)
第9巻
(2022-12-20発行、 978-4867204498)
第10巻
(2023-03-20発行、 978-4867204856)
第11巻
(2023-06-20発行、 978-4867205181)
第12巻
(2023-11-20発行、 978-4867205891)
第13巻
(2024-03-19発行、 978-4867206300)
第14巻
(2024-06-20発行、 978-4867206607)
第15巻
(2024-09-20発行、 978-4867206881)
第16巻
(2024-12-20発行、 978-4867207192)
第17巻
(2025-03-19発行、 978-4867207512)