概要・あらすじ
中学生・犬神八(ハチ)と鉄川麻琴(テッキン)は東京に住む中学生。ある日、怪物に襲われたテッキンを救おうとしたハチはケルベロスの半神としての力を目覚めさせてしまう。その直後、大量の半神が東京に押し寄せ、ハチはアレスからテッキンを逃がそうとするも、敗れて重傷を負う。ハチが目を覚ました時には半年が過ぎており、東京23区は強大な半神が治める「東京23宮」に変貌していた。
ハチは対半神反抗勢力セレーネに加わり、仲間と共に宮長らと戦いながら、墨田区でアレスに囚われているテッキンを救いに行くと誓う。
登場人物・キャラクター
犬神 八 (いぬがみ はち)
東京都新宿区に住む、中学2年生の少年。異常に鋭い嗅覚だけが取り得の落ちこぼれだったが、幼なじみの鉄川麻琴(テッキン)がバジリスクに襲われる現場を目撃し、麻琴を守ろうとして半神の一種・ケルベロスとして覚醒する。新宿駅で半神たちの襲撃に遭遇し、アレスに敗れ麻琴を奪われるが、一命は取り留めて半年間眠り続けた。 半年後の、半神たちに支配された東京23宮に愕然とするも、対半神反抗勢力セレーネに加入し、麻琴の救出と半神による支配の打倒を決意する。平和だった頃は漠然と「ヒーロー」を夢見る少年だったが、半神の支配を目の当たりにして自分を「テッキンの小さなヒーロー」と具体的にイメージするようになった。 ケルベロスに変身した時は、小柄だが素早い動きと嗅覚が秀でており、鋭い爪を持つ腕を回転させながら突進することが武器。幼体から半成体、完成体へと成長するにつれて能力は高まり、完成体では宮長クラスの半神をも瞬時に消滅させる冥王の火を使うようになる。
鉄川 麻琴 (てつかわ まこと)
東京都新宿区に住む、中学2年生の少女で犬神八(ハチ)の幼なじみ。中学1年までは男子のような容姿で、ハチとよく遊んでおり、ハチを自分のヒーローとして友情と憧れを抱いていた。中学2年で急に成長して校内のアイドル的存在となるも、その人気に戸惑っている。コンプレックスから自分と距離を置き始めたハチにも不満を感じていた。 しかしある日バジリスクに襲われ、半神として覚醒したハチに助けられる。変身したハチに一時は恐れを抱くが、新宿駅で半神たちから自分を守ろうとするハチに、その気持ちを改める。しかしその場でアレスによって墨田宮へ拉致されてしまった。墨田宮ではハチとの再戦を望むアレスによって軟禁されており、墨田宮を出ることはできなかったが、夢魔によって夢の中でハチとの再会を果たした。
エレナ
「ミュータントラボラトリ」という研究機関に属する、眼鏡をかけた女性科学者。フルネームは「MARY.J.EREN」。増加する犯罪に関しての国際会議で、人間ではない亜人類(=半神)の存在を主張して異端呼ばわりされる。バジリスクとの戦いで覚醒した犬神八(ハチ)を保護し、さらにアレスとの戦いで重傷を負ったハチを治療。 半年間眠り続けたハチに、その間の東京23宮について説明した。対半神反抗勢力セレーネでは医師として中心的存在となっている。正体は「夢魔」という半神で、人の心に侵入する能力を持っているが、敵側に知られると危険なためセレーネ内でも木場礼二しか知らなかった。その夢魔としての能力によって、暴走したハチと鉄川麻琴の心を繋いで暴走を鎮める。
ハチの姉 (はちのあね)
犬神八の姉。犬神家の中で酒を飲み、下着姿で鉄川麻琴を迎えた豪快な女性。半神たちの飛来からハチとは離ればなれになるが、中野宮でレジスタンスのリーダーを務めていた。ハチの言によると、あまり家には帰って来ず、帰って来てもゴロゴロしているだけ。職業は不明だったが、実は陸上自衛隊の女性自衛官。銃火器の扱いにも長けており、半神の攻撃には銀の弾丸が有効と突き止めた。
木場 礼二 (きば れいじ)
新宿宮を拠点として活動する対半神反抗勢力セレーネの本部長を務める男性。ラーメン好きの気さくな人物だが、対半神の作戦では秘密主義で厳格な指揮者となる。半神用の防壁を作る聖銀柱を考案し、自衛隊との繋がりを持っているが、その正体は長年行動を共にしているエレナも知らないという。
悟木 六 (さとらぎ りく)
対半神反抗勢力セレーネに戦闘員として属する半神の青年。犬神八を「ポチ」と呼ぶ。古風かつ尊大な口調で、正体は不死鳥の半神。遠い昔から転生を繰り返してきた純正種の半神であり、宮長からも一目置かれる存在とされている。強力な炎の「灰の指」が武器で、セレーネでも最大の戦力。セレーネに加入し人間に味方する真意は不明だが「半神より人に興味がある」とだけ語っている。 半神だが人間の血は不味いからと嫌い、紅茶とプルーンを好む。
枕野 乙音 (まくらの おとね)
対半神反抗勢力セレーネに属する、諜報員の少女。袖の余ったジャージを着ており、普段は呑気そうだが動作は身軽で俊敏。正体は半神で一角獣の純正種だが、高尾山で鹿に化けて暮らしていた。高尾山で人間を見ているうちに人間に憧れ、人間の姿を得てからは元の姿に戻ることを嫌がっていた。一角獣の姿では人間2人を乗せて高速で走る走力を持ち、1日1回だけ10メートル以内ならば瞬間移動も可能。 人間の姿の時でも、並の半神ならば蹴りで切り刻むことができる。
伊賀森 信平 (いがもり しんぺい)
対半神反抗勢力セレーネに属する、諜報員の少年。中野宮に潜入しており、新宿宮の解放後に帰還した。女好きで女性には愛想がいいが男には冷たく、特に犬神八には当初邪険にしていた。中野宮でアポロンの襲撃を受けた時に現地での仲間を皆殺しにされ、一人だけ生き残ったことに苦しんでいた。その経験を手がかりに、アポロンの能力を攻略する洞察力を発揮した。
ゼウス
半神たちを率いて東京を襲撃させた、半神たちの長。半神たちが飛来する前はホームレスの老人として新宿の街をうろついていた。宮長たちに聖根を与えて地面を隆起させ、空から巨大な「ゼウスの手」を伸ばして犬神八と悟木六を捕えようとするなど、宮長たちと比べても遥かに上位の能力を持つ。
アレス
墨田宮の宮長を務める半神で、かつての国技館を宮殿としている。半神たちの飛来時には新宿におり、犬神八に重傷を負わせるが、彼に興味を覚え、再戦のため鉄川麻琴を人質として連れ去った。以後半年間、麻琴を軟禁するも危害は一切加えずに保護している。人間の姿の時は身長3メートルほどの美青年だが、正体は古代剣闘士に似た10メートル以上の巨体となる。 戦いと身体強化にしか興味がなく、人の血の摂取も必要量のみ。
バッカス
新宿宮の宮長を務める半神。人間の姿では「酒上」と名乗る男性で、上品に振舞っていたが、酒と生娘の生き血を好み、支配した新宿の人間たちには重労働と血による課税を強いていた。かつては豊穣を司り人間に尊敬された半神であり、全身から生やす果実や蔓を武器にする。犬神八と悟木六のコンビに敗れた。
アポロン
中野宮の宮長を務める半神。人間の姿では無邪気そうな美少年だが、正体は円錐に首が乗ったような飛行体が二つ繋がった形態となる。快楽主義者でオモチャやゲームを好み、中野の商業施設を迷宮化して人間を獲物とした、狩りの娯楽を半神たちに提供していた。殆どの物を切断する(水には反射される)「アポロンカッター」という技を持ち、迷宮での人間狩りに飽きた時には、迷宮全体をシャッフルするほどの力を振るった。 そのシャッフルでセレーネの突入を混乱させ戦況を一変させるが、ケルベロス完成体に成長した犬神八に敗れる。
アルテミス
文京宮の宮長を務める半神。ゼウスに反発する宮長としてセレーネにも知られていた。外見はネイティブアメリカンのような風貌の女性で、他の形態は見せておらず、それが本来の姿か人間に化けた状態かは不明。文京区に潜入した犬神八、枕野乙音、伊賀森信平を捕え、ハチには能力を試す試練を与えるが、ハチが試練を達成したためセレーネとの共闘に応じた。
バジリスク
新宿区でベテラン刑事として生活していた、覚醒種の半神。刑事の立場を隠れ蓑に、区内で吸血殺人をくり返していた。正体は手足を持つ蛇めいた姿の怪物だったが、水道管を通って人家に侵入していたことから、完全に蛇の形態にもなれると思われる。夜の学校で鉄川麻琴を襲って血を吸うが、それが犬神八をケルベロス覚醒させるきっかけとなり、敗れて消滅した。 かつては罪人を罰するときや暗殺に重宝された半神であり、石化の邪眼を持つ怪物と言われていた。
集団・組織
セレーネ
半神たちの東京飛来後に結成された、対半神反抗勢力。本部長は木場礼二。飛来時に新宿にいた人々で構成され、一時は2万人以上の勢力だったが、バッカスの攻撃で壊滅状態となり400人余りとなっていた。
場所
東京23宮 (とうきょうにじゅうさんく)
東京都にある23の特別区が、半神たちに占領され、宮長に統治されることで「宮(く)」と改称されたもの。半神たちの飛来と同時に起きた地面の隆起と、区を取り囲む特殊な煙によって他の地域とは隔絶されている。どの宮も概ね、宮長をトップに半神たちが人間たちを支配しているが、支配の方針は宮ごとに異なっている。
新宿宮 (しんじゅくく)
バッカスを宮長とする半神たちに支配された、かつての新宿区。繁華街は一見繁栄しているが、闊歩しているのは半神ばかりであり、人間たちは地下で重労働と、生命維持ギリギリの採血を納税として課せられている。対半神反抗勢力セレーネによってバッカスが倒され、東京23宮の中で最初に解放された。
中野宮 (なかのく)
アポロンを宮長とする半神たちに支配された、かつての中野区。アポロンが人の血よりもオモチャやゲームに関心を持っているため、商業施設「中野ブロードキャッスル」を迷宮化して半神たちに人間狩りをさせていた。そのため人間を奴隷化せず、労働は半神たちが行っている。
墨田宮 (すみだく)
アレスを宮長とする半神たちに支配された、かつての墨田区。宮長のアレスが戦闘以外には興味を持たず、同じような志向の半神が集まって腕を競い合うため、人間たちを支配することへの関心は薄い。採血による納税も新宿宮が週一回なのに対し、ここでは月一回(採血量は不明)。多くの半神が戦闘の腕を競うため、区内には古代ローマの闘技場を高層化したような建物が林立している。
その他キーワード
半神 (はーふ)
神と人との間に生まれたと言われる、いわゆる「モンスター」や「神」の姿と名を持つ者の総称。かつては人間と共存していた種族で、それぞれの特殊能力で人間に感謝されてきたが、中世期に人間と殺し合いの末決別した。決別の理由は不明だが、人間が文明を得て半神たちの力を必要としなくなったことも一因とされている。現代では人間、または動物に紛れて生きており、生まれつき半神としての自覚を持つ純血種と、人間として生きていたが突然半神として目覚める覚醒種に大別される。 ほとんどの半神は人間の生き血を好み、未覚醒の覚醒種も血を摂取することで覚醒が促進される。
宮長 (くちょう)
半神たちに支配された東京23宮で、ゼウスより聖根を与えられ、各宮の長に任命された強力な半神。全23名の構成は不明だが、登場した宮長はいずれもギリシャ神話の神の名を持っている。
聖根 (せいこん)
東京23宮の宮長たちにゼウスが与えた、球根のような物体。東京23区を隆起させた巨大な根や、周囲を覆う雲を作り出している。ゼウスに従う宮長はこれを守るべく体内に収めているため、人間側が宮を解放するには宮長を倒して聖根を破壊する、という過程をとることになる。
聖銀柱 (せいぎんちゅう)
半神たちに支配された東京23宮を解放する際に、地に打ち込んで対半神の防壁を張り巡らせる、銀製の柱。テントを張るためのペグを巨大にしたような形状をしている。考案者は対半神反抗勢力セレーネの本部長・木場礼二。ヘリコプターなどで投下するため上空を雲が覆っている状態では使用できず、セレーネが宮長を倒して聖根を破壊した後に使用可能となる。
覚醒種 (かくせいしゅ)
半神のうち、人間として生まれ人間として生きていたが、突然半神として目覚めた者。主人公の犬神八もこれに分類される。目覚めた後はほとんどが半神側に与するが、人間側に味方する半神もたまに見られるらしい。
純正種 (じゅんせいしゅ)
半神のうち、生まれつき半神としての自覚を持っていた者。半神たちが東京23宮を立ち上げる前は、人間に化けて静かに暮らすか、普通の動物になりすまして自然の中で生きていたといわれる。悟木六(ドラキリー)、枕野乙音(オトネ)らはここに分類される。
冥王の火 (めいおうのひ)
犬神八が、ケルベロス完成体に成長して得た、強力な炎の攻撃。アポロンとその聖根を瞬時に消し去った。神話によればケルベロスは冥王から冥府の門番を命じられており、その任務遂行のために授かったものとされる。