概要・あらすじ
男子高校生の藤森睦月は、家族から愛されない孤独を抱えながら、それを押し殺していた。ある日、クラスメイトを妊娠させた騒ぎを機に自殺を図ろうとした睦月は、小学生の女の子である島崎菜摘に必死で引き留められる。睦月は菜摘の純真さに惹かれ、また父親の愛を感じられずに孤独に耐えていた菜摘も、睦月が持つ陰を感じて気にかけるようになっていく。
登場人物・キャラクター
藤森 睦月 (ふじもり むつき)
高校2年生の男子。表向きには人あたりがいいが、深い孤独を抱えている。大病院の院長を父に持つ家庭に生まれる。優秀で敏腕の医者でもある睦月の兄と子供の頃から比較され、睦月の母から冷遇されて育つ。そのうえ兄からは日常的に暴力を受け、体に多くの傷痕を残している。家族の愛を受けられない孤独を表に出すことなく、人が望んでいることを優先して生きてきた。 しかし、それが裏目に出て、自分に言い寄る女性と次々に性交渉をし、数々の妊娠・中絶騒動を起こす。その中の1件をきっかけに自殺を図ろうとしたところ、島崎菜摘と出会う。菜摘の純真さや、小学生ながらに持つ包容力に心惹かれるが、時に菜摘への独占欲から感情を爆発させることもある。島崎とのある出来事を発端として菜摘と一緒に家出をする。
島崎 菜摘 (しまざき なつみ)
純真な心と芯の強さを持つ小学4年生の女の子。藤森睦月が自殺を図ろうとしているところに遭遇し、必死に引き留めたうえ、真剣に睦月を叱りつける。誰からも必要とされないと泣く睦月が気にかかり、食事を一緒に食べようと自宅に連れて行った。5歳で菜摘の母を亡くし、父親の島崎と二人暮らしをしている。母親の死をきっかけに父親から距離を置かれているように感じ、孤独に耐えながらも健気に振る舞っている。 睦月が時折爆発させる感情に戸惑うことも多いが、その孤独の陰を読み取り、睦月と一緒にいることを選ぶ。時に大人顔負けの包容力を見せるものの、睦月の前では父親への愛情から涙することも。睦月と一緒に家出をして以降、さらに彼と絆を深める一方で、父親への思いとの間で揺れる。
島崎 (しまざき)
藤森睦月が通う高校の男性教諭。島崎菜摘の父親で29歳。19歳の頃に、7歳年上で高校の教師であった菜摘の母との間に菜摘をもうけるが、菜摘が5歳になる頃に妻と死別。その後、菜摘と距離を置いて過ごすようになった。実際は菜摘に深い愛情を持っているが、不器用ゆえにその想いを表現することができずにいる。睦月が菜摘と一緒にいるのを発見した際には激昂して睦月を殴るなど、感情をあらわにすることもある。
美咲 (みさき)
藤森睦月を昔から知る29歳の女性。教師を生業にしており、睦月の孤独と人への屈折した思いを感じ取っている。睦月と体の関係を持つこともあるが、基本的には姉のような立場から睦月のことを見守っている。睦月と島崎菜摘の良き理解者で、彼らが家出をした時には何も聞かずにしばらく家に置くなど、世話好きの一面も見せる。
睦月の兄 (むつきのあに)
藤森睦月の兄。父親と同じく医師として働いている。昔から優秀で、睦月の母に溺愛されている。子供の頃から睦月に日常的に暴力をふるっており、バットで殴ったりたばこを押し付けたり、さらには睦月が拾ってきた犬や猫を虐待するなど、執拗に睦月を攻撃してきた。睦月にことさらに執着を示し、睦月たちが家出をした時には友人の誠司を使って追跡した。
睦月の母 (むつきのはは)
藤森睦月、睦月の兄の母親。睦月の兄を溺愛する一方、睦月には愛情を注いでいない。何度も妊娠・中絶騒ぎを起こす睦月を汚いもののように見ており、睦月の兄の食事にほこりが入るからといって睦月を遠ざけるなど、明らかな嫌悪感を示す。
誠司 (せいじ)
元精神科医の男性。睦月の兄の中学の頃からの友人。普段から女装しており、慕っている睦月の兄のため、彼が執着する藤森睦月の顔に似せたメイクをしている。睦月が家出した時には、睦月の兄の命で追跡の手助けをするが、状況によっては睦月に味方をすることもある。
菜摘の母 (なつみのはは)
島崎菜摘の母親で、島崎の妻。菜摘が5歳の時に交通事故で亡くなっている。島崎が高校生の頃に教師をしており、素行が悪かった島崎を何かと気にかけていた。やがて2人は愛し合うようになり、島崎が高校3年生の頃に菜摘を妊娠、翌年に出産した。
大橋 (おおはし)
藤森睦月と同じ高校に通う女子高生。睦月とは高校1年の頃からのクラスメイトで仲がいい。 島崎のことを慕っており、何かと彼のそばを付いて回っている。明るくサバサバした性格である。勘の良さも持ち併せていて、睦月の過去にある陰を感じ取っている様子。時に、島崎にとって睦月や菜摘との問題を解決するヒントとなるような言葉を発することもある。