元お笑いコンビがラジオの世界に足を踏み入れる
颯太と水無月からなるお笑いコンビ「コールタール」は、鳴かず飛ばずの状態が続き、6年半の活動を経て解散する。それから半年後、水無月はラジオ局のディレクターの雪室ハジメからスカウトを受け、放送作家として活動を始める。一方、颯太は一人で活動を続けていたが、コンビ解散後も仕事に恵まれず、複数のアルバイトを掛け持ちしていた。そんな中、水無月を介して雪室と知り合った颯太は、彼女からラジオ番組の出演を打診される。颯太はこの申し出に即答できずにいたが、実際にラジオ局を見学して興味を抱く。こうしてかつてのお笑いコンビは、DJと放送作家として活動を開始することとなる。
売れない芸人の痛快なラジオ番組
水無月と雪室は、颯太のDJとしての力量を試すべく「ぶっつけ本番」と偽り、颯太のアドリブ力を試すテストを行う。その結果、颯太の社交性の高さとトーク力が抜きん出ていることを確信する。そして二人は本格的に颯太を売り込むため、ベテランパーソナリティーの石渡とアナウンサーの吉川久臣が担当するラジオ番組「夕やけゴーゴー」に出演させることに成功する。番組内の颯太は、ド天然ゆえに周囲をひやひやさせつつも、持ち前の明るく前向きな姿勢から思わぬ笑いを生み出す。やがてその才能を認められた颯太は、現役アイドルの星野チーコと共に、生放送番組「23時のシンデレラ」のレギュラーとして抜擢される。
ラジオ局を舞台にした群像劇
本作は群像劇の要素を備えており、主人公の颯太や水無月以外の登場人物にスポットを当てたエピソードも多い。ディレクターの雪室は、現役時代の「コールタール」のファンで、水無月を放送作家に誘ったうえで、彼と共に颯太をラジオ業界に引き込む。ラジオ番組にゲストで出演していたアイドルのチーコは、毒舌ながら元気な振る舞いが反響を呼び、やがて共演相手となる颯太と息の合った掛け合いを披露し、多くのファンを獲得する。のちにチーコは体調不良のため放送を颯太に託し、片思いの音声エンジニア、松戸には別れを惜しんで涙を見せるが、ファンに対しては気丈に振る舞っている。彼らの視点を通して、まるでリスナーになったような気分でラジオの世界を覗くことができる。
登場人物・キャラクター
朝日屋 颯太 (あさひや そうた)
ラジオ番組のDJを務めている青年。かつて水無月とお笑いコンビ「コールタール」を組んでいたが、突然水無月から解散を告げられる。コンビ解散後も一人で活動していたが、まったく鳴かず飛ばずで、生活費や活動費を捻出するためにさまざまなアルバイトをしている。水無月とラジオ局のディレクター、雪室の誘いを受け、ラジオの世界に足を踏み入れることとなる。素直な性格で誰に対してもフレンドリーに接するため、男女問わずに人を惹きつける愛されキャラ。また、人を笑わせることはあまり得意ではないが、周囲を盛り上げる才能に恵まれており、その才能がラジオDJという形で開花した。颯太自身は幸運と不運を同時に引き寄せる傾向があり、予期せぬチャンスやアクシデントによく遭遇する。また、一度恵まれたチャンスを最大限に活かすための努力を怠らず、仕事仲間からはその姿勢に頼もしさと危うさ両方の感情を向けられている。
水無月 智哉 (みなつき ともや)
放送作家の青年。かつて颯太とお笑いコンビ「コールタール」を組んでいたが、一方的に解散を宣言した。コンビではすべてのネタを書いていた。周囲からはマイペースな性格でドライに見られがちだが、実はお笑いに対して強い情熱を持ち続けている。颯太の突拍子のない振る舞いにあきれながらも、彼の明るく前向きな姿勢を高く評価している。コンビの解散を決意したのも颯太の成長をうながすためで、彼といっしょに活動できなくなることは非常に辛い選択だった。解散後は、ラジオ番組のディレクター、雪室の誘いを受けて放送作家としての道を歩み始め、のちに颯太をラジオのDJとして迎え入れる。
書誌情報
リクエストをよろしく 全5巻 祥伝社〈FEEL コミックス〉
第1巻
(2015-10-13発行、 978-4396766580)
第5巻
(2020-01-08発行、 978-4396767792)