作品の概要
基本情報
とあるアラ子の代表作。
要旨と舞台設定
現代日本の美容業界を舞台に、容姿差別によって傷ついた女性たちが、外見という呪縛を乗り越えて人間としての価値を問い直していく過程を描いた、ルッキズム(外見至上主義)に正面から向き合う物語。
ストーリー展開
学生時代に「ブス」といじめを受けた過去を持つ山井知子は、成人後にかつて自分をいじめていた美人の同級生、白根梨花が美容家として成功している事実を知る。知子は梨花への復讐を決意するが、梨花自身もまた、自分が美人であることによる葛藤を抱えていた。二人は再会をきっかけに、かつての誤解による行き違いを乗り越え、女性同士の連帯を通じてお互いに希望を見出していく。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、反ルッキズムとシスターフッドをテーマにした社会派作品で、単なる復讐劇ではなく、外見で人を判断する社会の価値観に立ち向かう女性たちの成長を描いている。作中では、容姿差別の現実が、職場での理不尽な扱いや社会からの冷酷な視線といった具体的な場面を通じて描写され、現代社会に根付く問題を浮き彫りにしている。
作品固有の表現技法と特徴
本作は、容姿差別という重いテーマを扱いながらも、女性同士の連帯を通じて希望を見出していく内容となっている。それに伴い、「美しさとは何か」「人の価値はどこにあるのか」という根源的な問いを読者に投げかける構造が組み込まれている。
世界観の構築と設定
現代日本の美容業界を舞台とした世界観が構築されており、ルッキズムが個人の人生に与える影響が具体的に示されている。
連載状況
講談社「&Sofa」2021年11月22日から2025年10月6日まで連載。
受賞歴
2022年「このマンガがすごい!2023」オンナ編第7位。
2025年第54回「日本漫画家協会賞」まんが王国とっとり賞。
見た目から解放されたい真逆の二人
高校時代に同級生だった山井知子と白根梨花を主人公に、近年盛んに論じられているルッキズム(外見至上主義)をテーマにしている。顔に劣等感を抱きながら自らの過去を振り返って後悔の念に苛(さいな)まれる知子と、美人は得だよね、と一方的な決めつけながらも美人がゆえの苦労が絶えない梨花。そんな見た目のコンプレックスに振り回されてきた二人が、時にはぶつかり合いながらも相手を思いやり心を通じ合わせていく。
外見にコンプレックスを抱く人物とバネにする人物
本作には山井知子と白根梨花以外にも、外見にコンプレックスを抱く人物が多数登場する。たとえばカメラマンの小坂はイケメンながら身長が低いことから、異性だけでなく同性からもからかわれてきた過去を持つ。男性アイドルのリクトは完璧な容姿の持ち主ながら、自分の見た目にしか興味を持たれない女性に苛立(いらだ)ちを覚える。また梨花が経営する「office SHIRANE」で働く山本デパ子は、容姿いじりを武器にしていた元女芸人ながら、容姿を笑いにすることがタブーとなり、引退を決意した。ふくよかな体型をポジティブにとらえて活躍するプラスサイズモデルの奈緒美は、自らの体型を揶揄(やゆ)するSNSの書き込みに密かに傷つき涙する。本作にはさまざまな容姿の悩みを抱えた人物が登場し、多角的な視点からルッキズムの問題を考え、彼らが少しずつ人生に前向きになる姿が描かれている。
登場人物・キャラクター
山井 知子 (やまい ともこ)
自分の容姿に強烈なコンプレックスを抱く独身女性。年齢は33歳。存在感のある獅子鼻とエラが張った特徴的な顔立ちで、自分でも劣った容姿であることを自覚している。高校時代、白根梨花を含む女子グループから、陰湿ないじめを受けた過去を持つ。ある日、美容家となった梨花が雑誌で、「ルッキズムがはびこる世の中を変えたい」と自慢げに語っている記事を目撃。怒りのあまり梨花を襲撃したことをきっかけに、なぜか彼女が経営する事務所で働くことになる。これまで梨花がいじめの主犯格だとカンちがいしていたが、いっしょに働いていくうちに誤解だと判明。その後、立場は違えど反ルッキズムの思想を持つ者同士として、梨花と少しずつ心が通じ合っていく。ふだんは大人しくまじめな性格ながら、容姿に関することが話題になると、感情が高ぶる一面を持つ。
白根 梨花 (しらね りか)
美容研究家の独身女性。「office SHIRANE」を経営している。年齢は33歳。高校時代は山井知子とクラスメイトで、何を言われても自分を曲げない彼女に対して、ひそかにあこがれを抱いていた。白根梨花が所属するグループの一部が知子に嫌がらせをしていることを知り、陰ながら助けようと奮闘していた。しかし知子には、その姿が手下に自分のいじめを指示し、梨花自身は手を汚さず楽しむ卑怯者(ひきょうもの)として映っていたため、長らく彼女から嫌悪されていた。「ルッキズムがはびこる世の中を変えたい」と強く願っており、メディアでたびたび主張している。そのインタビュー記事を知子が目撃し、殺意を抱いた彼女から襲撃を受けるが、梨花は知子が自分に必要な人材だと感じて事務所で雇用することを決めた。のちにいじめを止められなかったことを謝罪し、立場は違えど反ルッキズムの思想を持つ者同士として、知子と少しずつ心が通じ合っていく。幼い頃から容姿が美しいため、見知らぬ男性に告白されたり、周囲から男好きと陰口を叩(たた)かれたりと、勝手なイメージを抱かれて苦労している。美容家でありながらも、自らの容姿を取り上げられることを嫌うため、周囲からは扱いづらい人物だと距離を置かれている節がある。
書誌情報
ブスなんて言わないで 6巻 講談社〈アフタヌーンKC〉
第1巻
(2022-05-23発行、978-4065279076)
第2巻
(2022-11-22発行、978-4065295113)
第3巻
(2023-07-21発行、978-4065319123)
第4巻
(2024-03-22発行、978-4065348338)
第5巻
(2024-11-21発行、978-4065371695)
第6巻
(2025-11-21発行、978-4065407721)







