あらすじ
単行本第1巻
6度に渡って流星が降り注ぎ、人類が滅びた後の地球。地上では、美しい結晶体の身体を持った不死の生命体宝石と、彼らを付け狙い月より飛来する月人との戦いが繰り広げられていた。宝石たちの中でも最年少のフォスフォフィライト(フォス)は、研究、創作、戦闘、何をやらせても満足にできない落ちこぼれ。それを見かねた、宝石たちのリーダー・金剛先生はフォスを博物誌担当に任命する。
不本意ながらも博物誌担当として仕事をこなそうとするフォスだったが、そのドジっぷりで周りに迷惑をかけてばかり。そんなある日、フォスは強力な毒を持つためにほかの宝石たちと一人離れて暮らすシンシャと出会い、彼の深い孤独を知るのだった。
シンシャを孤独の夜から解放するべく、打つ手を探して奔走するようになったフォス。しかし、タイミング悪くそんな彼のもとに月人が襲撃。月人は腕利きのダイヤモンドとボルツの手によって倒されたが、月人が残した巨大カタツムリに飲み込まれたフォスは、自身もウミウシのような姿に変化してしまう。
結局、シンシャの助言により無事に元の姿に戻ったフォスだが、彼の体に奇妙な変化が起こっていたのだった。
単行本第2巻
月人に捕らわれていた軟体生物は、自分のことを海に住まうアドミラピリス族の王・ウェントリコススと名乗り、どういう訳かフォスだけと言葉を交わせるようになっていた。
ウェントリコススは海には宝石たちと似た生き物がいると語り、フォスを海へと誘う。ウェントリコススが地上で弱ってきたこともあり、フォスは仲間に告げず一人海へと向かうのであった。
海へと戻り、本来の美しい姿を取り戻したウェントリコススは、フォスにかつて地上に「にんげん」という生き物がいたことを語り、別れていくはずであった。だが、ウェントリコススの真の目的はフォスを月人に差し出す代わりに、弟のアクレアツスを取り戻すことにあった。
フォスは月人に攫われかけるも、意識を取り戻したアクレアツスの活躍で逃げ延び、目的を達したウェントリコススの手によって地上へと返された。しかし、フォスは両足を完全に失ってしまう。
失った両足の代わりに、自身と共に流れ着いた貝殻を接合したフォスはその影響で異常な瞬足となり、念願の戦闘担当へ就くのであった。
単行本第3巻
光を糧とする宝石たちが眠りにつく冬、フォスだけは何故か眠れずにいた。そこで、フォスは冬にだけ活動できる宝石・アンタークチサイトと行動を共にすることになる。皆眠りを妨げる流氷を砕く仕事に就いたフォスは、見るものの不安を映し出すという流氷に惑わされて、両腕まで喪失。さらには月人の襲撃を受け、アンタークは連れ去られてしまう。
フォスは両腕に金と白金の合金をを接合、しかし体の大部分を欠損したことで記憶を失ってしまっていた。
単行本第4巻
冬が明けて春になり、宝石たちが冬眠から冷めたころ。両腕に金と白金を取り入れたフォスは、以前のひ弱な姿からは考えられないほど強くなっていた。連れ去られたアンタークを探し月人を倒し続けていたフォスは、ボルツと組むことになった。
そして、ボルツとの初仕事の時、新種の月人が出現。強大な力を持つ月人に翻弄される宝石たちであったが、眠りから目を覚ました金剛先生によっと事なきを得た。しかし、フォスだけは金剛先生が月人のことを「しろ」と呼び、何かを知っている素振りを見せたことに気がついていた。フォスは先生を疑い始め、真実を知るために月人と直接対話することを決意する。
単行本第5巻
独自に月人と金剛先生の関係を調べようとするフォス。しかし、月人に接触するために、知らず知らずのうちに仲間の宝石たちを危険にさらしていることに気がついたフォスは、一人思い悩んでいく。
やがて、フォスはシンシャに仕事の手伝いを依頼することを思い当たる。それは、先生と月人の関係を暴くというものであった。
シンシャに仕事の手伝いを依頼 それは先生と月人の関係を暴くというものであった。一方で、フォスに救われたゴースト・クォーツもフォスに協力を申し出て、彼とコンビを組むことになる。
単行本第6巻
ゴーストとともに出現した月人に接触を試みたフォス。しかし、突然体の自由が効かなくなり、月人に射抜かれてしまう。ゴーストはフォスを守り、多層構造の体の表面を奪われてしまう。目覚めたフォスは短期間に二人もの仲間を失ったショックで暴走。二度と周囲に迷惑をかけまいと、一度月人の秘密を暴くという願いを自分の中に沈みこめるのであった。
そして冬が近づいたころ、フォスはゴーストの内側であるカンゴームと見回りを続けていた。次第に狡猾になる月人との戦いのなか、フォスはついに頭部を欠損。カンゴームはフォスを蘇らせるため、かつての相棒であったラピス・ラズリの頭をフォスに接合することを提案する。
単行本第7巻
フォスを再生させるにはラピスの頭部を接合するしかない。しかしその場合、フォスの本来の体のほとんどは失われてしまう。たとえ蘇ったとしてもそれはフォスといえるのか。議論の結果、フォスにラピスの頭部を接合することが決定、施術が行われた。だが、フォスは目覚めることはなかった。
フォスが長い眠りについてから102年後の春、ついにフォスは目を覚ます。懸念されていた意識の混濁も見られず、フォスは変わらずフォスのままであった。その晩、フォスは夢の中でラピスと出会う。フォスと同じく月人の存在に疑念を抱いていた彼は、フォスに対し「先生と月人の本当の関係」、「シンシャの協力を得られる材料をつかむこと」「アンタークとゴーストを取り戻すこと」、その三つを解決する術があると告げるのだった。夢から覚めたフォスはかつてのラピスの聡明さを受け継ぎ、月人を探ることを再会。
その後、アドミラピリス族の五代目の王・ウァリエガツスと出会ったフォスは彼らの一族が月を目指していることを聞き、自らも月に行くことを決意。カンゴームの力を借り、わざと月人に捕まることに成功したのだった。
単行本第8巻
月にたどり着いたフォスが目にしたものは、今まで意思疎通不可能と思われていた月人が普通に会話をする姿、そして攫われた仲間の宝石たちが粉になるまで砕かれ、月の地表に撒かれていたという事実であった。
月人たちのリーダーである王子・エクメアと出会ったフォスは、彼から月人たちの正体と、本当の目的を聞く。それは、月人たちが別の宇宙へ行き損ねた人間の魂の集合体であること、金剛先生が人間に作られた機械であり、月人たちを解放する唯一の手段であること。そして、壊れてしまい本来の目的を忘れてしまった金剛に刺激を与え働かせるため、宝石たちを攫っていたこと。月人たちの狙いが先生にあることを知ったフォスは、仲間の宝石たちを守るため彼らにの協力することを決意。先生を裏切り、仲間を説得して月に連れてくるという作戦を立てるのだった。
監視つきで地上に戻ったフォスは、仲間に感づかれないように本心を隠しながらも、月からの迎えが来るまでにひとりひとりの弱みをつき、月への興味を抱くように説得していく。仲間の半数を月へ連れて行くことに成功したフォスだったが、金剛先生を哀れんだシンシャだけは説得することができなかったのだった。
登場人物・キャラクター
フォスフォフィライト
本作の主人公。燐葉石の身体を持つ宝石。硬度は三半。一人称は「僕」。本作で登場する28人の宝石達の中でも最年少で、約300歳。医務、戦略計画、服飾織物、工芸、武器製造、そのすべてにおいて適正がなく、また、金剛先生の喝だけで砕け落ちてしまうその身体の脆さから、戦闘要員としても活躍することができず、なんの役目も持たない落ちこぼれとして過ごしてきた。ようやく博物誌作成の役割を任せられ、いやいやながらも職務を果たそうとするが、やることなすこと全部が裏目に出てしまい、なかなか評価されずにいた。博物誌制作の途中で毒をもった宝石シンシャと知り合い、孤独に悩む彼をどうにかしてあげたいと思うようになる。戦闘能力を一切持たないにも関わらず、月人好みの薄荷色の身体をしているため、狙われやすい。アドミラピリス族のウェントリコススと出会い、共に海へと行った際に月人の襲撃を受け、両足を喪失。代わりに貝殻とクォーツの変種であるアゲートを接合し、その影響で瞬足となる。その後、流氷砕きのしごと中に不安を増幅するという流氷に影響され両腕を喪失。代わりに金と白金の合金を接合、流体の合金を自在に操れるようになり、宝石たちのなかでも高い戦闘能力を持つようになった。その後さらに頭部を欠損し、ラピス・ラズリの頭部を接合、102年もの間眠り続けることになる。目覚めてからはラピスの高い情報収集力を受け継いだ。最初は髪型もラピスのロングヘアのままであったが、月人の襲撃を受けて以前のようなショートカットとなった。体の大部分を欠損し記憶にも欠落が生じているが、自己の連続性を保てているのは共生が得意な体質のため。
シンシャ
辰砂の身体を持つ宝石。硬度は宝石中最低の二。一人称は「俺」。身体から湧き出る銀色の毒液を用いた強力な戦闘で月人を圧倒することができる。しかし、毒液は自らの意図にかかわらず流れでてくるため、他の宝石達と触れ合うことはおろか、近づくこともままならない。さらには、彼女の毒液に触れた宝石は、その部分を削ぎ落とさなければならない。また、本来宝石は光を栄養とするため夜は苦手だが、無尽蔵に出る銀色の毒液で夜のかすかな光を集め一晩中歩き警戒ができる。 こういった理由から、本来月人が出ないはずの夜に一人で見回りをするという意味のない役目を担っており、孤独な日々を過ごしている。心の中では戦いを望んでおらず、いっその事月人に攫われた方が存在価値を見出せるのではないかとまで思っている。彼女に積極的に関わろうとしてくるフォスに対して複雑な感情を抱いている。
金剛先生 (こんごうせんせい)
宝石達を取りまとめる僧伽姿の宝石。硬度は不明。先生の名の通り宝石達の保護者的な役割を務め、各々の適性を鑑みた上で仕事を割り振っている。学校の本堂で瞑想と称してして昼寝をすることがあるが、宝石達にはあくまで瞑想として通している。また、一度眠りにつくとなかなか目を覚まさない。戦闘に赴くことはあまりないが、戦闘能力は随一で最強かつ最恐。 常に冷静だが、意外と顔に出やすいので眉間にしわを寄せてごまかしている様子。月人との戦闘の際は自らの破片を投げて攻撃しているが、宝石たちには秘密にしている。かつて地球上に存在していた「にんげん」について何か知っている様子であるが、そのことを宝石達には伝えていない。 正体は人間が作った機械であり、外装は純粋な人工六方晶ダイヤモンド製。もともとは滅びゆく人間が寂しくないようにという理由で作られたものだが、実質は人間の肉体はもとより魂までも瞬時に分解する強力な破壊装置である。だが、ある時から壊れてしまい仕事を放棄し宝石たちを守護するようになっていた。宝石たちに隠し事をしていたのも、人間の許可なく自身の機密に関わることは話せない設計になっていたため。また、地上に機械がないのは文明を推し進めたくないというトラウマゆえであった。
ルチル
金紅石の体を持つ宝石。硬度は六。一人称は「私」。妖艶な容姿で、丁寧語を話す。隠れ美脚。医療を任されており、月人との闘い等で負傷した宝石達の治療をしている。また、宝石達のお白粉の管理も行っており、海に入る宝石達のお白粉が剥がれないよう耐塩樹脂を塗ったりしている。神経質そうに見えて実は雑。かつてはパパラチアとコンビを組んでおり、医療の技術が上達したのも体に欠陥がある彼を何度も修復していたため。
ダイヤモンド
お嬢様言葉を使うボブカットの宝石。硬度は十。一人称は「僕」。虹色に輝く髪と長いまつ毛が特徴で女性的な性格。ボルツとコンビを組み、高い硬度と戦闘能力を持つが、靭性は2級と低くいため割れやすい方向に攻撃を受けると砕けてしまう。戦闘要員として活躍したいと思いながらも、結局はボルツに守られてしまう自分の不甲斐なさに思い悩んでいる。恋愛話とかわいいものが好き。
ボルツ
ダイヤモンド属でカーボナードの体を持った宝石。硬度は十。一人称は「僕」。足元まで伸びた長い黒髪が特徴。ダイヤとコンビを組む。ダイヤ組の中でも最も強く、他のダイヤモンドの靭性が2級であるのに対し、ボルツは微細な結晶が集合した多結晶体で衝撃に強く、靭性は特級である。ダイヤ曰く「本物のダイヤモンド」。冷静沈着で聡明。他の追随を許さない戦闘能力で、金剛先生の次に強いが、戦闘狂気性が激しい。気に入らなければたとえ仲間でも暴力を厭わない。他の宝石の戦闘スタイルを矯正する趣味がある。クラゲ好き。
イエローダイヤモンド
ダイヤモンド属の宝石。硬度は十。一人称は「俺」。28人の宝石達の中でも最年長で、3597歳。ジルコンとコンビを組んでいたが、ジルコンはボルツとのほうが相性がいいと感じ、彼をボルツと組ませた。以降はダイヤとコンビを組む。黄色いショートヘアが特徴。最年長らしく面倒見がよいため、他の宝石達から「おにいさま」と呼ばれている。俊足。 かつて組んでいたグリーンダイヤモンド、ルビー、サファイア、ピンクトパーズといった宝石たちを月にやってしまったことを悔み、戦う意義を見失いつつある。
アメシスト
紫水晶の身体を持つ宝石。硬度は七。二人で一人の双晶と呼ばれる珍しい宝石で、のんびりした性格のエイティー・フォーとおっとりした性格のサーティー・スリーからなる。二人とも一人称は「僕」。 剣の腕が立つため、見回りの役割を任されている。周囲からは見分けがついていないが、本人たちは至って気にしていない。また、たまに入れ替わっていることがあるらしい。
モルガナイト
緑柱石の一種、モルガナイトの身体を持つ宝石。硬度は七半。ピンク色の髪が特徴でやんちゃな性格をしている。ゴーシェとコンビを組んで見張りの仕事に就いている。その後、ラピスの頭を接合したフォスが眠っている間に月人に攫われ、入れ替わるように同種が生まれた。新しいモルガはシャイで控えめな性格。
ゴーシェナイト
緑柱石の一種、モルガナイトの身体を持つ宝石。硬度は七半。一人称は僕。常に困り眉で優しい性格をしている。モルガとコンビを組んで見張りの仕事に就いている。その後、ラピスの頭を接合したフォスが眠っている間に月人に攫われ、入れ替わるように同種が生まれた。新しいゴーシェはシャイで明るく溌剌とした性格で、フォスを慕っている。
ジュード
翡翠の身体を持った宝石。硬度は七だが、壊れにくさでは二番目。一人称は「私」。議長として話し合いをまとめる役割をしている。真面目すぎるのが玉にきず。
ユークレース
ユークレースの身体を持った宝石。硬度は七半。計算が得意で、話し合いでは書記の役割を任せられている。尋ねられれば宝石たち皆の年齢を日数まで教えてくれる。
ネプチュナイト
海王石の身体を持つ宝石。硬度は五半。少々辛口で鋭い目をしている。表情をあまり変えない。ベニトとコンビを組んでいる。
レッドベリル
緑柱石の一種、レッドベリルの身体を持つ宝石。硬度は七半。ファッション担当で、宝石達の服やその生地を作っている。オシャレを欠かさず毎日髪型を変えている。冬眠時のパジャマを作ることに情熱を注いでいる。
アンタークチサイト
南極石の身体を持つ宝石。硬度は三。一人称は「私」。特異体質で普段は液状だが、他の宝石達が冬眠している間だけ結晶化し活動する。冬の間は例年金剛先生と二人きりのためか、他の宝石よりも金剛先生に強い信頼をおいている。寒くなればなるほど高い戦闘能力を持つ。責任感が強く、軍人気質。 何故か冬眠できなかったフォスとともに冬の番をすることになるが、月人の襲撃にあい連れ去られてしまう。
ウェントリコスス
月人と共に現れた巨大な貝状の生物で、宝石達やその武器を溶かす能力で宝石達を苦戦させた。フォスを取り込んで自分の貝殻と融合させてしまい、そのためか、分離した後もフォスとだけは会話が可能となった。その正体は海洋生物アドミラピリス族の王で、月人に家畜として囚われていた。 故郷が近づくと、宝石達によく似た人型へと変身し、ドレスを身にまとった美しい姿となる。
アクレアツス
ウェントリコススの弟。ウェントリコススと共に月人たちに囚われていたが、ウェントリコススの尽力によって、月人の手から開放される。ウェントリコススには「食うと戦うしか脳がない」と評されており、月人達の一瞬の隙を突いて拘束を解き、彼らを一網打尽にするほどの戦闘能力の持ち主。 両脚を失ったフォスに、新しい脚の材料として自身の殻から取り出した二本の刺を与える。
にんげん
遠い昔、地球上に住んでいたと言われる生物。5度目の流星まではしぶとく生き残っていたが、6度目の流星の時に海へと逃げ込み、その際、「魂」が月人へ、「肉」がアドミラピリス族へ、「骨」が宝石達へと変化したという言い伝えが、アドミラピリス族に残っている。ウェントリコススは、月人の争い好きな性格は、にんげんに由来するものではないかと推測している。
ジルコン
ジルコンの身体を持つ宝石。硬度は七半。一人称は「僕」28人の宝石達の中でフォスの次に若いにもかかわらず、真面目で優秀である。だが、それゆえに危ういところがある。はじめはイエローとコンビを組んでいたが、彼の提案によってボルツと組むことになる。
ベニトアイト
ベニト石の身体を持つ宝石。硬度は六半。何かと事件に巻き込まれやすい。シンシャの隣部屋に住んでいる。ネプチュナイトとコンビを組んでいる。
オブシディアン
黒曜石の身体を持つ宝石。硬度は五。武器づくりを任されている。その仕事柄とは裏腹にノリが軽い。
ヘリオドール
緑柱石の一種、ヘリオドールの身体を持つ宝石。作中では月人に捕らえられた後であり、矢先の刃の材料として使われていた。取り戻せたのはごく一部のため、まだ人型としては登場していない。
集団・組織
月人 (つきじん)
『宝石の国』に登場する種族。月で暮らし、宝石達を狙っては地球へ訪れる謎の生命体。仏像のような容姿をしており、集団で行動する。表情はなく、意思の疎通は不可能とされている。弓矢を中心とした武器で宝石達を襲い、その一部、または全身を月へと持ち帰る。日の出のようなシルエットの予兆黒点と共にどこからともなく現れる。ウェントリコススの話によると、彼らはにんげんから分散して変化した「魂」であり、アドミラピリス族を「肉」、宝石達を「骨」として欲しているという伝説が残されている。 その正体は、人間を構成していた「魂」。魂は肉体から放出されたのち分解され純粋な魂の元素となり、宇宙のある一点にたどり着き、そこから別の宇宙と呼ばれる領域へ吸い込まれる。だが、余計なものを一切取り除かれた純粋な魂の元素ではないとそこには到達できない。魂の分解には別個体の人間の祈りが必要であり、誰の祈りも得られぬまま月に座礁して変容した人間の魂の集合体が月人である。別の宇宙は永遠の無で満たされ何者にもならない安寧の世界とされ、そこを目指すことが目的である。そのためには魂の分解装置である金剛先生の力が必要であり、宝石たちを襲っていたのも壊れてしまった金剛に刺激を与え、本来の仕事を遂行させるためにあった。仏像のような姿も、本来ならば金剛が服従するべきものの姿である。また、会話が出来なかったのも地球の濃い大気が苦手だったから。月内部からせり上がる特殊な金属と鉱油でできた都市に暮らし、合成宝石の精製など高い技術を持つ。
アドミラピリス族
『宝石の国』の登場する種族。海洋に住む軟体動物で、巨大な貝殻を身に纏っている。フォス以外の宝石達と話すことはできないが、非常に高い知能を持つ。故郷に近づくと宝石達によく似た人型へと姿を変える。月人に囚われ家畜となっているものも多く、ウェントリコススもその一人だった。五代目の王であるウァリエガツスは、フォスに対して「一族は月に向かおうと考えている」と語った。
宝石 (ほうせき)
『宝石の国』に登場する種族。月がまだひとつだったころ、人間のうち逃げ遅れ海に沈んだ者が海底に住む微小な生物に食われて無機物に生まれ変わり、長い時をかけ規則的に配列し結晶となり、再び浜辺に打ち上げられて生まれた。身体が美しい宝石で出来ており、死という概念がなく、身体が壊れてもパーツさえ揃えば元通りに復活することができる。しかし、脳が存在せず、記憶が身体全体に蓄積されるため、身体の一部を失うということは、記憶の一部を失うということに等しい。また、それぞれモチーフとなった宝石が存在しており、硬度もそれに準じている。中には宝石を作った微小生物が内包物として閉じ込められており、それらが光を食べ身体を動かしている。そのため、光が弱まる冬になると冬眠する必要がある。 金剛先生によって、それぞれの適正に合った仕事が割り振られており、彼らを付け狙う月人に対抗するべく緊迫した日々を送っている。
その他キーワード
予兆黒点 (よちょうこくてん)
『宝石の国』に登場する用語。月人が表れる際に見える黒い日の出のようなデザインのシルエット。どこからともなく現れるため、戦力が整わない状況でこれに遭遇すると大変危険な状況に陥る。夜には一度も現れたことがないとされている。 実は月人は不可視の偽装膜を使って地上に向かい、黒点はこの偽装膜を破ったときに突然現れたかのように見せる演出である。
書誌情報
宝石の国 12巻 講談社〈アフタヌーンKC〉
第1巻
(2013-07-23発行、 978-4063879063)
第2巻
(2014-01-23発行、 978-4063879506)
第3巻
(2014-08-22発行、 978-4063879926)
第4巻
(2015-05-22発行、 978-4063880441)
第5巻
(2015-11-20発行、 978-4063881011)
第6巻
(2016-09-23発行、 978-4063881851)
第7巻
(2017-05-23発行、 978-4063882599)
第8巻
(2017-11-22発行、 978-4065103630)
第9巻
(2018-10-23発行、 978-4065131015)
第10巻
(2019-08-23発行、 978-4065167380)
第11巻
(2020-07-20発行、 978-4065202241)
第12巻
(2022-11-22発行、 978-4065297322)
宝石の国 限定版 6巻 講談社〈プレミアムKCライツ〉
第6巻
(2016-09-23発行、 978-4063623291)
宝石の国 特装版 7巻 講談社〈プレミアムKC〉
第7巻
(2017-05-23発行、 978-4063623659)