終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?

終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?

枯野瑛の小説『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』のコミカライズ作品。妖精倉庫の管理を任されたヴィレム・クメシュが黄金妖精たちと出会い、過酷な運命を背負った彼女たちのために奮闘する姿を描くファンタジー。「月刊コミックアライブ」2016年8月号から2018年7月号にかけて掲載された作品。

正式名称
終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?
ふりがな
しゅうまつなにしてますかいそがしいですかすくってもらっていいですか
原作者
枯野 瑛
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1巻

突如現れた規格外の敵「十七種の獣」によって、人類(人間族)が滅ぼされた世界。地上では多くの者が蹂躙(じゅうりん)され、生き残った種族は空を浮遊する島「浮遊大陸群」に移り住んでいた。元「準勇者」であり人間族の生き残りであるヴィレム・クメシュは、守りたかった者を守れず一人で生き残った絶望や後悔に苛まれながら自暴自棄な日々を送る中で、クトリ・ノタ・セニオリスという少女に出会う。ヴィレムはクトリの頼みで町を案内することになるが、町並みを見下ろしたクトリは「思い残すことはもうない」という言葉を残し、感謝と別れを告げてその場を去る。その後、ヴィレムは友人のグリック・グレイクラックから、護翼軍の倉庫と兵器の管理者「二位呪器技官」という役職を紹介される。引き受けたヴィレムは倉庫のある68番島に向かい、オルランドリ商会の施設で友人のナイグラート、そしてクトリに再会する。とても軍の倉庫には見えないその施設に疑問を抱いたヴィレムはナイグラートに話を聞くが、そこは彼女と多くの少女が生活する「妖精倉庫」と呼ばれている施設であった。この妖精倉庫で暮らすのはクトリをはじめとする黄金妖精の少女たちであり、ヴィレムの仕事は兵器として扱われている彼女たちの教官となり、管理することであった。黄金妖精たちは人間族に代わって遺跡兵装「聖剣」を振るい、浮遊大陸群を守るために17種の獣と戦って死ぬという宿命を背負っていた。クトリたちが背負う宿命の大きさと過酷な運命を知ったヴィレムは、共に生活し交流を深めていく中で、彼女たちのためにできることを探し始める。

第2巻

クトリ・ノタ・セニオリスは5日後に迫った十七種の獣戦いで、妖精兵として敵もろとも自爆する使命を背負っていることをヴィレム・クメシュに告げる。死を覚悟するクトリは最後のわがままとしてヴィレムに迫るが、彼は軽く受け流しながらも彼女の願いを少しだけ聞き入れ、魔力中毒解消のための処置を施す。処置を終えクトリが眠ったのを見届けたヴィレムは、ネフレン・ルク・インサニアと共に資料室で黄金妖精に関する記録を調べ始める。翌朝、ヴィレムは聖剣を用いた模擬戦闘をクトリに提案するが、元々遺跡兵装の使い方に詳しい彼に、クトリは手も足も出なかった。だが、過去の戦いでボロボロになったヴィレムの体は耐え切れず、クトリに聖剣の詳細を伝えた彼はそのまま倒れてしまう。ヴィレムから「聖剣はうまく使えば使用者が自爆する必要はない」と教えられたクトリは、今まで戦って死んでいった妖精兵たちは無駄死にだったのではと、複雑な気持ちに揺らぎ始める。目を覚ましたヴィレムの世話をするナイグラートは、心配するパニバルたちに、かつて準勇者として戦ったヴィレムの過去を語るのだった。後日、戦いへの覚悟に迷いが生じたクトリは、悩みながら島を飛び出して飛行する中で、ライムスキンが乗る飛空艇に遭遇。ライムスキンに迎えられたクトリは、ヴィレムに聞いた聖剣の真実と自らの思いを語り出す。一方、回復したヴィレムは庭に出てクトリの聖剣「セニオリス」のメンテナンスをしていた。妖精倉庫に戻って来たクトリは素直な気持ちをヴィレムにぶつけ、彼とある約束を交わすのだった。

第3巻

15番島の戦いに向かったクトリ・ノタ・セニオリスたちが旅立ってから、約半月が経っていた。クトリたちの安否を心配するヴィレム・クメシュは、ナイグラートの頼みでティアットの検査のために11番島のコリナディルーチェ市に向かう。はしゃぐティアットと共に美しい街並みを楽しんだあと、ヴィレムは医師と看護師に彼女を預ける。翌日、ティアットの迎えに向かおうとしたヴィレムは、慌ただしくなった兵士から、護翼軍が15番島での戦いに敗れたという情報を得る。クトリたちが死亡したと思い放心するヴィレムだったが、すぐ近くでクトリたちが歩いているのに気づいた彼は、思わず駆け寄ってクトリを抱き締める。改めてクトリたちと再会したヴィレムは、敗北したにもかかわらずクトリたちが生き残った理由と、深く潜む六番目の獣との戦いで起こった出来事をアイセア・マイゼ・ヴァルガリスたちに尋ねる。厳しい戦況の中、作戦では想定していなかった敵の出現により撤退となり、放棄された15番島が地上に落とされるのが決まったため、戦いには敗北したのだと言う。ヴィレムたちが談笑を続ける中、彼が街中で出会っていたフィラコルリビア・ドリオが入室して来た。ライムスキンの知り合いでもあるフィラコルリビアは、賊に狙われている父親を守って欲しいと依頼するが、ライムスキンは護翼軍という立場から彼女の依頼を断る。途方に暮れたフィラコルリビアはヴィレムたちに同行し街の案内を務めることになるが、ヴィレムは彼女が何者かに尾行されていることに気づいていた。

第4巻

戦友のスウォン・カンデルと500年ぶりに再会したヴィレム・クメシュは、スウォンの案内で2番島へ向かう。そこにいたのはかつてヴィレムと死闘を繰り広げた黒燭公で、彼とスウォンは十七種の獣浮遊大陸群について語り、敵に奪われたままの地上を共に取り戻そうとヴィレムを誘う。だが、スウォンたちが黄金妖精を発生させて兵器として利用している張本人だと知ったヴィレムは憤りを感じながら、その誘いを断ってその場を去る。一方、15番島での戦闘で消耗したクトリ・ノタ・セニオリスは、前世の侵食が始まって不安定な状態にあった。帰還後に気を失ってしまったクトリは昏睡状態になり、その報せを受けたヴィレムは急いで妖精倉庫に戻る。眠ったままのクトリは夢の世界で、謎の少女、エルクと出会う。記憶があいまいなクトリは自分の名前すら思い出せずにいたが、どこかに帰らなくてはいけないという思いだけは残っており、エルクはそんなクトリを寂しそうに見送る。人格崩壊から逃れ、意識を取り戻したクトリは改めて自分の思いをヴィレムに伝える。ヴィレムはそんなクトリに、ようやく「お帰り」の言葉を伝えることができた。侵食から奇跡的に回復したクトリは髪の毛の一部が赤く変色し、記憶の欠落など体の一部に異常が起こっていた。健康診断の結果、クトリは黄金妖精ではない別の何かに変質していたことがわかり、彼女は魔力聖剣の使用を避けることとなる。一方、クトリとの約束を果たすことができたヴィレムは、戦いを終えた彼女の今後を決めるためにナイグラートライムスキンと集まって話し合いを始める。

関連作品

小説

本作『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』は、枯野瑛の小説『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』を原作としている。角川スニーカー文庫から刊行されており、イラストはueが担当している。

登場人物・キャラクター

ヴィレム・クメシュ

500年以上前に滅ぼされた「人間族(エムネトワイト)」の生き残りの青年。世界を救えなかった準勇者。穏やかでまじめな性格ながら、過去の境遇から自己否定に走りがちで物事を諦観しているところがある。人間族が滅ぶ前は地上の帝国領ゴマグ市の孤児院で、年長者として孤児たちの面倒を見ながら平和に暮らしていた。戦いが激化する中で準勇者となり、家族を守るべく正規勇者の仲間と共に戦いに身を投じる。しかし、戦いの最中で禁呪を使用した呪いを受けて石化状態になり、500年以上眠り続けていた。地上で発見され、治療を受けて目覚めたものの人間族が滅んだことに絶望し、自暴自棄になりながら無茶な労働を続けていた。心配したグリック・グレイクラックに妖精倉庫の管理の仕事を紹介され、二位呪器技官という職位に就き、妖精倉庫に住む黄金妖精たちと出会う。過酷な使命を背負った黄金妖精たちと交流を重ねる中で、葛藤や苦悩を繰り返しながらも彼女たちのためにできることを模索するようになる。人間族にしか扱えない聖剣の本来の使い方や調整の仕方など希少な知識を持ち、クトリ・ノタ・セニオリスたちに聖剣について教えたり、彼女たちの聖剣を調整することもある。かつては高い戦闘力を持っていたが過去の戦いの影響で全身が衰え、わずかな戦闘行為にも耐えられない体になっている。かつての仲間が使っていた聖剣「セニオリス」を使用するクトリを気にかけ、彼女から寄せられる好意には気づいているものの、保護者という立場や過去の経験などが枷となり、素直に受け止められずにいる。孤児の面倒を見ていた経験から子供の扱いには慣れているため面倒見もよく、黄金妖精たちに対しては少々子煩悩なところもある。

クトリ・ノタ・セニオリス

黄金妖精の少女。最強の聖剣「セニオリス」の適合者で、年齢は15歳。空色の長髪と凪の海のような色の目を持つ少女の姿をしている。妖精倉庫に住む黄金妖精の中では年長者で、子供たちのお姉さん役を務める。面倒見がよくまじめなしっかり者だが、少々見栄っ張りで頑固なところがある。28番島でヴィレム・クメシュに助けられたことで知り合い、交流を繰り返すうちに彼に恋心を抱くようになる。初めてヴィレムに出会った時に町で買ってもらった帽子がお気に入り。すでに成体の妖精兵としてアイセア・マイゼ・ヴァルガリスたちと共に戦場で活躍していたが、深く潜む六番目の獣との戦いで自爆して敵を倒すという任務を受け、死を覚悟していた。そんな中、ヴィレムから聖剣の正しい使い方と生き残るための戦い方を学び、自爆せずに生還する道を選んだ。ヴィレムとの約束どおり生還を果たすものの、長期戦の中で魔力を大きく消耗したことで前世の侵食が始まり、人格崩壊の危機に陥る中、夢の世界でエルクに助けられて復活する。この際に黄金妖精ではない別の何かに変質し、髪の一部が赤くなったり記憶があいまいになったりなど、異常が起こり始める。さらなる侵食を避けるべく、魔力や聖剣の使用を控えるために戦いから身を引くことになった。子供扱いされるのが嫌いで意地を張ったり大人ぶった態度が多いが、年相応の女の子らしい未熟さと純情さを持っている。ヴィレムへの恋心に気づいたあとは不器用ながらも甘えたり思いを口にしたりするものの、過去の事情や立場の関係もあって、なかなか彼に受け止めてもらえない。

グリック・グレイクラック

緑鬼族(ボーグル)の男性。ヴィレム・クメシュの友人。職業は地上で遺跡や遺物を掘り当てるサルベージャー(探検家)で、経験も知識も豊富なベテラン。緑色の体と琥珀色の目を持ち、頭にゴーグルをしている。情に厚く友人思いで、明るく社交性も高い人情家。かつて地上で石化したまま眠っていたヴィレムを、地上の調査中に発見・救出した。ヴィレムが回復したあとも友人として気にかけ、自暴自棄な暮らしを送っていた彼を心配して、妖精倉庫の管理人の仕事を紹介する。

ナイグラート

喰人鬼(トロール)の女性。ヴィレム・クメシュの友人。オルランドリ総合商会に所属する商会人として、妖精倉庫の管理人を務め、黄金妖精たちの面倒を見ている。赤色の髪に若葉色の目を持つ妙齢の女性で、ふだんはフリル付きのエプロンを身につけるなど、人間族を変わらない風貌をしている。かつてグリック・グレイクラックたちと共に石化していたヴィレムを救出し、ヴィレムが回復したあとも友人として気にかけている。また、自暴自棄な暮らしをしているヴィレムを心配し、グリックを通して妖精倉庫に呼び寄せた。複雑な過去を持つヴィレムのよき理解者でもあり、地上ですべてを失って目覚めた彼が、生きる意味と幸せを見つけ出せるよう願っている。一方で喰人鬼という性質からヴィレムを「最高の食材」として見ているような言動も多く、彼からは恐がられることがある。世話をしている黄金妖精たちには全力で愛情を注ぎ、姉や母親のように優しく、時には厳しく接している。しかし妖精兵となった者は戦場に赴いたまま生きて帰れないこともあるため、そのたびに一人で山に向かっては、クマを狩って大暴れすることで悲しみを紛らわせている。ヴィレムが来る前から、料理や裁縫などの家事全般はもちろん、黄金妖精たちの健康診断や検査など幅広い仕事を一人でこなしてきた。少女趣味があり、おしゃれな服を仕立てては黄金妖精たちに着せて楽しんでいる。

アイセア・マイゼ・ヴァルガリス

黄金妖精の少女。聖剣「ヴァルガリス」の適合者。クトリ・ノタ・セニオリスたちと同じ妖精兵で、年齢は14歳。猫耳型にセットされた稲穂色の長髪を複数のおさげにまとめ、朽ち木色の目を持つ少女の姿をしている。明るく気さくな性格で茶化すような態度が多く、妖精倉庫のムードメーカー的な存在となっている。しかし明るい笑顔の裏には、物事を達観・諦観するようなドライな一面を秘めている。かなりの情報通で、出会って間もないヴィレム・クメシュに対しても口数が多く、よくしゃべる。まじめな性格のクトリやヴィレムのことをよくからかっているが、仲間に対する思いやりは強い。クトリなど親しい仲間にも話していなかったが、実はすでに侵食が進行し、本来の人格は前世の人格に完全に上書きされて消滅している。二面性が激しいのもこれらの事情からであり、数々の苦悩や罪悪感を抱えていた。それでも消滅したアイセア・マイゼ・ヴァルガリスの人格がこまめに記していた日記をもとに人物像を読み取ってそれらを演じることで、侵食が完了していることを周囲に隠すことで折り合いをつけていた。

ネフレン・ルク・インサニア

黄金妖精の少女。聖剣「インサニア」の適合者。クトリ・ノタ・セニオリスたちと同じ妖精兵で、年齢は13歳。褪せた灰色の髪をツインテールにまとめ、木炭色の目を持つ小柄な少女の姿をしている。非常に無表情・無口で感情をめったに出さないが、仲間思いで気遣いもできる優しい性格をしている。愛称は「レン」。自分のことはあまり話さないが他人の心情には敏感で、複雑な過去を抱えるヴィレム・クメシュのことを放っておけず、何かと気にかけている。すでに戦場で活躍している妖精兵の中では最年少で、まだあまり戦い慣れしておらず、筋力や持久力も低い。このため妖精兵の中では最弱クラスだが、飛行能力は非常に高く、機動力を活かしやすい広い場所での戦闘を得意としている。趣味は読書で、幅広い本を読みながら多くの知識を蓄えている。

パニバル

妖精倉庫に住む黄金妖精の少女。年齢は10歳。紫色の髪と目を持つ中性的な少女の姿をしている。気取った口ぶりが多いが冷静でマイペースな性格で、ほかの子供たちよりも大人びている。68番島に初めてやって来たヴィレム・クメシュに助けられ、ほかの子供たちが警戒する中、彼に興味を抱き最初から好意的に接している。イタズラ好きな一面もあり、ばれても飄々としている。

ティアット

妖精倉庫に住む黄金妖精の少女。年齢は10歳。若草色の髪と深緑色の目を持つ少女の姿をしている。クトリ・ノタ・セニオリスにあこがれを抱き、彼女のような妖精兵を目指してひたむきにがんばっている努力家。クトリの真似をして年下の子供たちの面倒を見たり、背を伸ばすために牛乳をたくさん飲んだりしている。ヴィレム・クメシュに興味を抱き、いち早く懐いて好意的に接している。映画や小説のような大人の恋愛にあこがれており、ヴィレムとクトリの関係にも興味津々。同世代のパニバルたちよりもいち早く成体に近づき、ヴィレムに連れられてコリナディルーチェ市で検査を受ける。

コロン・リン・プルガトリオ

妖精倉庫に住む黄金妖精の少女。年齢は10歳。桜色の長髪と目を持つ少女の姿をしており、前髪を額の上にまとめている。とてもやんちゃで天真爛漫な性格で、つねに元気が有り余っている。初対面のヴィレム・クメシュにもほとんど警戒心を抱くことなく、すぐに懐いて好意的に接している。パニバルと同様にイタズラ好きだが、ばれても開き直って堂々としていることが多い。

ラキシュ

妖精倉庫に住む黄金妖精の少女。年齢は9歳。橙色の髪と目を持つ少女の姿をしている。おとなしく引っ込み思案ながら優しい性格で、いつも和やかな雰囲気を漂わせている。パニバルたちと同様に、ヴィレム・クメシュに興味を抱いて最初から好意的に接している。同年代のパニバルやコロン・リン・プルガトリオたちと行動することが多いが、やんちゃな彼女たちのイタズラやトラブルの尻ぬぐいをすることが多い。

ライムスキン

爬虫種(レプトレイス)の男性。護翼軍第二師団に所属する軍人。階級は一位機甲武官で、ヴィレム・クメシュの直属の上司にあたる。妖精兵を兵器のように扱う護翼軍の一員でありながら、妖精兵たちのことを使い捨てとは考えていない。ヴィレムから聖剣の本来の使い方を教わったクトリ・ノタ・セニオリスの悩みや相談を真剣に聞き入れるなど、親身に接している。自爆せずに生き残る道を選んだクトリの願いを受け止め、彼女やヴィレムに協力するようになる。

アルマリア

500年前に地上の帝国領ゴマグ市で暮らしていた孤児の少女。同じ養育院で暮らすヴィレム・クメシュのことを父のように慕い、彼と共に年下の子供たちの面倒を見ていた。ヴィレムの好物でもあるバターケーキを作るのが得意で、準勇者として戦いに赴くことになった彼が帰ったらバターケーキを作るという約束を交わし、帰りを待ち続けていた。ヴィレムにとっても大切な家族であり、彼が守れなかった大切な人の一人となっている。

深く潜む六番目の獣 (てぃめれ)

十七種の獣の一種で、六番目の獣。体を分裂させることで、地上から浮遊大陸群を襲撃する性質を持つ。死亡するたびにその亡骸を盾にして内側に新しい分身を作り出すことも可能で、殺しても次々と分裂しながら強化してくるなど、かなりやっかいな敵。ふだんは地上の地下空洞に巣を作って暮らしている。名称の「ティメレ」という読みには、「恐怖」や「恐れる心」などの意味がある。

フィラコルリビア・ドリオ

狼徴人(リュカントロポス)の女性。11番島の都市「コリナディルーチェ」の現市長を務めるギルアンダルス・ドリオの娘。生真面目な性格で、礼儀正しい淑女だがやや世間知らずなところがある。生まれ育った街であるコリナディルーチェをとても大切に思っている。ティアットの検査で11番島に来ていたヴィレム・クメシュと偶然知り合い、ライムスキンを訪ねた際にヴィレムと再会する。父親のギルアンダルスが賊に狙われていることを危惧し、ライムスキンに協力を求める。

スウォン・カンデル

呪蹟師(ソーマタージスト)の男性。護翼軍をまとめる大賢者を務める。500年前に地上で戦ったヴィレム・クメシュの仲間であり、外見は83歳の老人だが実年齢は500歳を超えている。過去の戦いで重傷を負い、スウォン・カンデル自身に呪詛をかけることで不死となり、現在まで生き永らえた。十七種の獣に地上が侵略されたあとは、黒燭公と協力して浮遊大陸群を作り、ほかの種族を避難させた。黄金妖精を発生させ、十七種の獣から浮遊大陸群を守るために利用している張本人。ヴィレムとは異なり、生まれ故郷への強い未練や執着心を捨て切れず、いずれは十七種の獣から地上を取り戻すことを悲願としている。ヴィレムと再会後は共に地上を取り戻そうと誘うが、黄金妖精のことで憤りを感じた彼からは断られる。

黒燭公 (いーぼんきゃんどる)

星神を守護する三柱の地神の一柱。巨大な骸骨の男性の姿をしており見た目は恐いが、明るく気さくな性格をしている。500年前の戦いでは、ヴィレム・クメシュとその仲間たちと死闘を繰り広げた。ヴィレムたちに討伐されたあとは100年の眠りを経て復活するものの、戦いで受けた禁呪の影響で頭部のみしか再生できていない。十七種の獣に地上が侵略されたあとは、スウォン・カンデルに協力して浮遊大陸群を作り上げる。また、過去の戦いでも使っていた死霊魔術を応用し、スウォンと共に黄金妖精を発生させている。

ラーントルク・イツリ・ヒストリア

黄金妖精の少女。聖剣「ヒストリア」の適合者。年齢は14歳。同じ場所で同時期に発生したノフト・ケー・デスペラティオとは双子の姉妹のような関係で、いつもいっしょに行動している。蒼色の長髪と藍色の目を持つ少女の姿をしている。まじめで思慮深く、理知的な性格をしている。愛称は「ラーン」。ヴィレム・クメシュが妖精倉庫に来る前から、ノフトと共に地上で飛空艇の護衛任務にあたっていた。ヴィレムに対しては警戒心を抱くが、共に行動するうちに彼の技量や人柄を認め、信頼を寄せるようになっていく。考え事に熱中すると、周りが見えなくなることがある。読書が好きで、人間族の文字を少しだけ読める。

ノフト・ケー・デスペラティオ

黄金妖精の少女。聖剣「デスペラティオ」の適合者で、年齢は14歳。同じ場所で同時期に発生したラーントルク・イツリ・ヒストリアとは双子の姉妹のような関係で、いつもいっしょに行動している。朱色の短髪と目を持つ中性的な少女の姿をしており、ボーイッシュな装いを好む。明るく素直な性格で、思慮深いラーントルクとは対照的に、物事を深く考えずに行動する。ヴィレム・クメシュが妖精倉庫に来る前から、ラーントルクと共に地上で飛空艇の護衛任務にあたっていた。クトリ・ノタ・セニオリスとは反りが合わず不仲気味だが、ネフレン・ルク・インサニアをはじめとする年下の黄金妖精のことは、非常にかわいがっている。

エルク

クトリ・ノタ・セニオリスが夢の中で出会った謎の少女。足下まで伸びた緋色の長髪で、10歳くらいの幼い少女の姿をしている。前世の侵食が始まったクトリの夢にしばしば現れるなど、彼女の前世に深く関係している。侵食が進み昏睡状態になったクトリの前に現れ、人格崩壊の危機に陥っている彼女に警告し、引き止めようとする。しかし記憶があいまいになりながらも、大切な約束を果たしたいとクトリが願ったため、彼女の強い決意と意志を受け止めて背中を押すように送り出した。

集団・組織

護翼軍 (ごよくぐん)

浮遊大陸群に住む種族によって構成された公的組織。十七種の獣の脅威に対抗するための戦力を保有している。六つの師団と憲兵科に分かれているが、黄金妖精の存在を知っているのは第二師団のみとなっている。

オルランドリ総合商会 (おるらんどりそうごうしょうかい)

浮遊大陸群にある大商会。ナイグラートが所属している。護翼軍のスポンサーとして妖精倉庫の管理・維持などを担っている。また、サルベージャーたちが地上調査で発掘した遺跡兵装を買い取るなど、金銭面でも護翼軍を支えている。

場所

浮遊大陸群 (れぐるえれ)

上空に浮かぶ浮遊島の集合体。十七種の獣から逃れた種族たちが居住する。100を超える島で構成されており、中央の「1番島」をはじめ各島には番号が割り振られている。さまざまな種族が共生しているが、獣耳やツノなどといった外見的特徴を持たない種族は「徴(しるし)無し」などと呼ばれ、疎まれている。

妖精倉庫 (ようせいそうこ)

68番島にある施設。オルランドリ商会が持つ倉庫。「妖精倉庫」は通称であり、正式名称は「オルランドリ商会第四倉庫」。黄金妖精たちが生活し管理される施設でもあり、ヴィレム・クメシュの新たな職場となっている。

帝国領ゴマグ市 (ていこくりょうごまぐし)

かつて地上に存在した都市。ヴィレム・クメシュが暮らしていた生まれ故郷。現在は砂に覆われた廃墟となっており、地上調査隊によって発掘作業が行われている。地下には謎の迷宮が存在する。

その他キーワード

聖剣 (かりよん)

黄金妖精たちが十七種の獣との戦いで使用する大剣。人間族が地上に残した希少な超兵器であり、「遺跡兵装」とも称される。本来は人間族が作った兵器であるため、人間族とその代わりとなれる妖精兵にしか使用できない。水晶を核に多数の護符(タリスマン)を束ねる形で作られているが、戦闘と無関係な護符や単体では大した効果を持たない護符が多く使用されている。製法や調整方法も人間族しか知らないため数が限られており、正しくメンテナンスができるのも現在はヴィレム・クメシュのみとなっている。

黄金妖精 (れぷらかーん)

68番島の妖精倉庫で暮らす兵器。ふつうの人間と変わらない少女の姿をしているが、厳密には死霊の一種であり、元は幼いうちに死んだ魂が妖精に昇華した存在である。このため、幼いうちは生死に対して無頓着で、重傷を負っても平然としていることが多い。幼体が成長すると前世の記憶を夢に見ることがあり、その時期を目安に成体(妖精兵)として戦うために検査や調整を受け、やがて適合する聖剣と共に戦力として投入される。妖精兵は滅んだ人間族の代わりに聖剣を扱うことができ、護翼軍にとっては十七種の獣に対抗するための唯一の手段となっている。また、背中に妖精のような羽根を生やして空を飛ぶこともできる。ただし、強力な十七種の獣相手に歯が立たない時などは、意図的に魔力を暴走させて自爆することで敵を倒すという特攻のような作戦を命じられるため、若いうちに命を落とす妖精兵も多い。このような戦い方は「妖精郷の門を開く」などと形容されている。前世の記憶によって現在の人格や記憶が欠落する「侵食」という現象があり、魔力を多く酷使することで侵食が発生・進行しやすくなる。侵食が進むと現在の記憶があいまいになって自分のことがわからなくなり、最終的には前世の人格に上書きされる形で、現在の人格が消滅する。

十七種の獣 (じゅうななしゅのけもの)

かつて地上を侵略して人間族を滅ぼした強大な獣。名前の通り17種類存在している。人類滅亡から500年経った現在でも多くの種族にとっての脅威となり、時おり地上から浮遊大陸群を襲撃している。魔力を持たない通常の兵器による攻撃は通用せず、聖剣で戦える妖精兵が唯一の対抗手段となっている。

魔力 (ゔぇねのむ)

心臓に魔を呼び入れ、火のように燃え上がらせる(熾す)ことで発動できる特殊な力。黄金妖精のように生きることに執着しない者ほど、強大な魔力を熾(おこ)すことができる。しかし、過剰に魔力を使用すると体に負担がかかるだけでなく、「魔力中毒」という症状を引き起こすこともある。魔力を制御できなくなると力が暴走し、周囲を巻き込んで大爆発することがある。

クレジット

原作

枯野 瑛

キャラクター原案

ue

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