「ケガレ」が実在するファンタジー世界が舞台
本作は中世ヨーロッパモチーフのファンタジー世界を舞台としているが、体に痣(あざ)が現れるなどさまざまな悪影響を与える「ケガレ」と呼ばれる呪いのような現象が存在する世界観となっている。ケガレの存在はおとぎ話とされているが、実は人間や物体に宿って害することもあり、ケガレが宿った物体は「ケガレモノ」と呼ばれている。また、ケガレを利用して人に害をなす者がいるなど、昔から悪い噂が絶えない。ケガレにかかわった者は人々から忌み嫌われ、世間から疎外されている。そんなケガレの残滓(ざんし)を抱えたジルカシウスと、彼に嫁ぐことになったキャスライトの不思議な新婚生活と恋愛模様が、ラブコメディやファンタジーを交えて展開される。
気難しいケガレ持ち公爵×虐げられる薄幸令嬢
ヒロインのキャスライトは、過酷な環境で育ったにもかかわらず気高い性格で、誰に対しても礼儀正しく接する前向きな少女。キャスライトは、長女でありながら家族から虐げられる過酷な生活を送っていたが、ある日、妹のチェリアリアが「ケガレ公爵」と忌み嫌われているジルカシウスへの嫁入りを拒否していることを知る。結納金のためにジルカシウスとの婚姻を実現させたい両親は、チェリアリアの身代わりとしてキャスライトを嫁がせようとする。ジルカシウスはケガレの影響で、顔に醜い傷が残っていることからケガレに敏感な体質となり、ケガレに強い恨みを抱いている青年。ケガレの影響から偏屈で社交嫌いなジルカシウスは、当初はキャスライトに疑いを持ち追い出そうとする。しかしジルカシウスは、キャスライトの献身的な奉仕に荒(すさ)んだ心と孤独を癒され、本来の優しさと明るさを取り戻していく。
身代わり婚から始まるシンデレラストーリー
妹の代わりに嫁いできたキャスライトを、ジルカシウスやその使用人たちは追い出そうとする。しかし伯爵家の令嬢でありながら、キャスライトの人柄のよさや健気(けなげ)さに触れ、ジルカシウスは絆(ほだ)されていく。そんな中、キャスライトにケガレを祓(はら)う力があることが判明し、彼女はジルカシウスやメイドのアンから興味を持たれるようになる。執事のカーネルからアンの過去を聞かされたキャスライトは、彼と共にアンの首に残るケガレ跡を消すことに成功するが、ジルカシウスは頑(かたく)なにケガレ跡の浄化を拒絶する。ジルカシウスとケガレにはただならぬ因縁があることを悟ったキャスライトは、ケガレを浄化してもいずれ彼を傷つけることになるのではないかと思い悩み、二人の思いはすれ違いを起こしてしまう。グリサリオ家が抱える苦い過去と、ケガレに関する秘密はストーリーの進行と共に明かされ、やがてキャスライトの実家がケガレに蝕まれるシリアスな展開も見どころとなっている。また、貴族でありながら心に傷を抱えた二人が互いに傷を癒していく姿や、幸福と無縁だと思い込んでいたキャスライトが幸せをつかんでいくシンデレラストーリーも楽しめる。
登場人物・キャラクター
キャスライト
オブリュース伯爵家の長女。愛称は「キャス」。濃い茶髪のロングヘアを一つのおさげにまとめている。昔から器量が悪く、その地味な容姿が家族と似ていないという理由で、長女でありながら両親や妹のチェリアリアから虐げられている。家ではメイドのような扱いを受け、残飯と汚い水だけで雑用を強いられている。そんな生活と家族に嫌気がさし、チェリアリアの代わりに「ケガレ公爵」と疎まれている、ジルカシウスのもとに嫁がせようとする両親の計画に便乗し、グリサリオ家で生きていくことを決断する。グリサリオ家では持ち前の明るい性格と、健気な振る舞いでジルカシウスたちを驚愕させると共に、彼らの心を癒していく。グリサリオ家に蔓延(まんえん)するケガレの一種「クロホコリ」を祓(はら)ったことで、ケガレとその残滓であるケガレ跡を浄化する希少な力を持つことが判明し、メイドのアンと執事のカーネルのケガレ跡を消すことに成功する。
ジルカシウス・デュ・グリサリオ
グリサリオ公爵家の当主を務める青年。愛称は「ジル」。左目周辺にケガレの残滓である痣が残っている。左目に醜い傷があることや、気難しい性格から人々に忌み嫌われている。高貴な家柄で眉目秀麗ながら、人との接触を避けてひっそりと暮らしてきた。背中にケガレ跡を持つ執事のカーネルや、首にケガレ跡を持つメイドのアンを信頼しているが、他人とは極力距離を置いて冷淡に接することにしている。とある目的でキャスライトの妹、チェリアリアを娶(めと)ろうとするが、代わりに嫁いできたキャスライトを当初は疑い、追い出そうとしていた。しかし、キャスライトが天真爛漫(らんまん)でピュアな心の持ち主であることや、彼女が身代わりで嫁いできた事情を知り、徐々に心を開いていく。キャスライトがケガレを浄化する不思議な力を持つことを知ってからも、ケガレ跡を消すことを拒んでいるが、これには母親を亡くした辛い過去が関係している。
その他キーワード
ケガレ
人に害をなす呪いのような謎の現象。ふつうの人間には視認できない。一般的にはおとぎ話とされていたが、あらゆる物体や生物に宿り、人にさまざまな悪影響を与える。ケガレが宿っている物体は「ケガレモノ」と呼ばれる。一般的に売られているアクセサリーなどの中にも、ケガレモノが潜んでいることもある。また、ケガレモノなどを通して悪影響を受けた人間は、体の一部に「ケガレ跡」という痣が残る。ケガレ跡を持つ者は、たとえ貴族であっても人々から忌避されている。ケガレ跡を持つ者はケガレの気配を敏感に感じ取ることができるが、この際にはケガレ跡に痛みが生じる。この性質から、ケガレを利用して他者を貶(おとし)めようと画策する者も存在する。
書誌情報
虐げられ令嬢とケガレ公爵~そのケガレ、払ってみせます!~ 1巻 フレックスコミックス〈フレックスコミックス エトワール〉
第1巻
(2022-08-08発行、 978-4866752389)
虐げられ令嬢とケガレ公爵~そのケガレ、払ってみせます!~ 7巻 BookLive〈フレックスコミックス エトワール〉
第2巻
(2023-02-15発行、 978-4866752648)
第3巻
(2023-05-15発行、 978-4866752914)
第4巻
(2023-08-08発行、 978-4866753065)
第5巻
(2023-12-15発行、 978-4866753300)
第6巻
(2024-03-15発行、 978-4866753508)
第7巻
(2024-08-08発行、 978-4866753720)