概要・あらすじ
関東昭和高校野球部は「高校野球は戦争である」がモットーで、監督やコーチの部員たちへの鉄拳制裁は当たり前。部内にも絶対的序列が存在し、先輩たちによる後輩への暴力が日常化しているアナクロな野球部である。とはいえ、部員たちは高校野球に人生を賭けている者ばかり。レギュラーの座を奪い、試合に出て勝つため、あらゆるシゴキやヤキに耐えて汗と涙を流す日々を送っていた。
そして迎えた秋の東京本大会、関東昭和高校野球部は2回戦で優勝候補の亭京高校を相手に大金星。準決勝で敗れたものの、あの手この手を使ってライバル校との宣伝合戦に勝利し、ついに翌年春のセンバツ高校野球大会出場を勝ち取る。ところが、大会直前にエースの一葉知秋らの喫煙がマスコミにスクープされてしまう。
登場人物・キャラクター
尾宮 貫一 (おみや かんいち)
関東昭和高校野球部の監督を務める51歳。関東昭和高校の卒業生で大学、ノンプロを経て母校の野球部のコーチに就任。平成5年に監督となった。気合と根性が第一の精神論者で、ミスをした選手には試合中でも容赦なくビンタを飛ばしまくる暴君だが、腕っぷしの強い生徒にはあえて手を出さないなど性格はかなりセコイ。ただ、監督としての責任感は強く、部員の喫煙が発覚した事件では芯の通ったところを見せた。 私生活では一男四女の父親だが、家庭を省みずに野球部に私財を投じ続けたため家計が破綻。妻のうめが子供たちを連れて失踪したことから、甲子園の勝利インタビューで妻子に帰ってきてくれと呼びかけるのを密かな目標にしている。
三河屋 三平 (みかわや さんぺい)
関東昭和高校野球部のコーチを務める32歳。関東昭和高校野球部OBで東洋文化大学から社会人チームの大和魂運輸を経て、平成13年にコーチに就任した。現在は教員資格を取るために大学通信課程で学びながら、寮監補佐として野球部の合宿所で生活している。尾宮貫一の指示のもと選手たちに罵声と鉄拳を飛ばしまくるが、尾宮の無茶ぶりには異を唱えることもある。
桶谷 五朗 (おけたに ごろう)
関東昭和高校野球部の部員でポジションは三塁。通称「桶」。初登場時は1年生で、夏の大会が終わって一人前の部員になるまでは、部内の伝統やしきたりなどを紹介する語り手役を担っていた。1年生時の秋の大会でベンチメンバーとなり、春のセンバツ大会では代打ながら試合出場を果たす。選手としての能力は平均レベルだが、尾宮貫一の鉄拳制裁にもめげないメンタルの持ち主で、特に執念深さを買われている。
山棟蛇 千里 (やまかがし せんり)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗と同学年。ポジションは外野手と投手。小学生の時に人を殺したと噂されるほどのワルで、ひとたび暴れ出すと部員たちが総がかりでも抑えられないほど凶暴なため、監督の尾宮貫一も手を出せずにいる。ただ、野球の能力は超高校級で入学後すぐに外野のレギュラーとなり、秋の大会以降は投手も兼任。 2年生の春からはエースとしてチームを引っ張った。野球に対しては真摯だがキレやすく、頭に血が上って相手投手にバットを投げつけたり、打者の頭部を狙って投球することもあった。だが、やがてエースとしての責任感を身につけていく。
一葉 知秋 (いちよう ともあき)
関東昭和高校野球部の部員でポジションは投手。桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩でエースを任されているが、自信過剰ですぐに調子に乗るため、よく尾宮貫一の鉄拳制裁を食らっている。春のセンバツ出場を勝ち取り絶好調で大会を迎えるが、チームメイトと煙草を吸っていたことが写真週刊誌のスクープによって発覚。世間を揺るがす大問題となったため、激怒した尾宮に甲子園はおろか卒業まで一切試合には使わないと宣告される。
三野 文太 (みの もんた)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。ポジションはキャッチャー。死神のような鋭い目をしていて、気に入らない者を柳の下に連れていって締めると噂されていることから「柳の下の三野」と恐れられている。一見強面だが、実は見た目とは裏腹に後輩の面倒見がよく、男気もあって試合では山棟蛇に喝を入れることも厭わない強いリーダーシップを持つ。 2年生の秋に試合でミスをして一時レギュラーを外されるが、正捕手に復帰してからは中心選手としてチームを牽引した。
鶴嘴 温助 (つるはし ぬくすけ)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らと同学年。外野手兼投手。2メートル近い大男で他の追随を許さないパワーと長打力を誇る。投手としても本格派で能力は図抜けているが、恐ろしく頭が悪く、サインや連係プレイをなかなか覚えることができなかったため、入学当初は準レギュラーに甘んじていた。感情をほとんど表に出さない大人しい男だが、キレると手がつけられなくなるほど凶暴化するため、山棟蛇と共に監督や先輩の体罰の対象外となっている。
鋳掛屋 丁治 (いかけや ちょうじ)
関東昭和高校野球部の部員でポジションはキャッチャー。同学年の桶谷五朗と仲が良く、あだ名は「居酒屋」。シニア時代は「西東京に鋳掛屋あり」と言われたほどの逸材で名門高校野球部への進学が決まっていたが、居酒屋での飲酒がばれて入学内定を取り消された。理由が理由だけに他の有力校にも行くことができなくなり、しかたなく関東昭和高校に入学した。 才能は申し分ないが、少し気が小さいのが欠点。
神楽坂 一心 (かぐらざか いっしん)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。野球の実力は十分だが、学力が足りないため関東昭和高校に入学した。勝負に賭ける情熱は人一倍でメンタルも強く、ここ一番の場面でたびたびチームを救う活躍を見せた。本来のポジションは右翼だが福井俊宏、福井俊政兄弟が入部してきたため3年夏の大会では一塁手を任される。
石部 金吉
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。ポジションは外野。レギュラーとして出場した試合はないものの2年生時の夏の大会から常時メンバー入りしており、春のセンバツ大会でもベンチ入りを果たしていた。だが一葉知秋らと喫煙していたところをマスコミに撮られ、卒業まで練習試合を含む全試合出場禁止となってしまう。
山口 百吉 (やまぐち ももきち)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。ポジションは二塁。同学年で合宿所では同部屋の桜田淳吾、森昌一と共に後輩の桶谷と鋳掛屋丁治をいびりまくっている。試合でミスをして三野文太らと共にベンチ降格となるが、亭京戦で活躍してレギュラーに復帰。春のセンバツでもレギュラー候補だったが、喫煙しているところをスクープされてチームに大きな迷惑をかけたため、一葉知秋らと同じく以降の試合で使われることはまったくなかった。
桜田 淳吾 (さくらだ じゅんご)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。同学年で合宿所では同部屋の山口百吉、森昌一と共に後輩の桶谷と鋳掛屋丁治をいびりまくっている。春のセンバツではベンチ入りすることができず、メンバー入りした桶谷と鋳掛屋に悔しさをぶつけるが、甲子園で活躍できるよう部屋での2人の仕事を免除してやるなど先輩らしいところも見せた。
森 昌一 (もり まさかず)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。同学年で合宿所では同部屋の山口百吉、桜田淳吾と共に後輩の桶谷と鋳掛屋丁治をいびりまくっている。2年秋の大会ではベンチ入りすることができず、以降も試合で使われる場面はほとんどなかった。悔しさからセンバツ大会のメンバーに選ばれた桶谷と鋳掛屋に八つ当たりするが、最後は自分たちの分まで頑張れと激励する。
福井 俊宏、福井 俊政 (ふくい としひろ、ふくい としまさ)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年後輩。双子の兄弟で俊宏が兄。兄弟共に小柄だが足が速く、おまけに強肩強打と攻守走の三拍子揃った万能選手で、本来ならもっと有名な高校に行ける実力を持つが、貧乏なうえ兄弟そろって頭も悪いため、学費その他一切が免除となるうえに学力もまったく必要ない関東昭和高校を入学先に選んだ。 飛び抜けた実力を持つため、先輩たちから目の敵にされていて入学早々ヤキを入れられまくる。
鸛 出来太 (こうのとり できた)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。ポジションはショート。3年夏の東京大会決勝で致命的なミスを犯したためベンチ裏で顔の形が変わるほど殴られ、そのまま交代となる。それでもめげずにランナーコーチを務めるが、暴力行為を審判に密告するつもりではないかと尾宮貫一を不安がらせた。
鴨ノ橋 太郎 (かものはし たろう)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らと同学年。ポジションは一塁。1年生の秋からベンチ入りしており、春のセンバツ大会にもレギュラーとして出場した。しかし、福井俊宏、福井俊政の入学によりクリーンナップを打つ神楽坂一心が一塁にコンバートされ、そのあおりを食って補欠に降格。悔しさから福井兄弟に鉄拳の雨を降らせた。
後生 大事 (ごしょう だいじ)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年先輩。ポジションは外野。鶴嘴温助にレギュラーの座を奪われ控えに甘んじていたが、夏の西東京大会準決勝では代打で同点に追いつく貴重なタイムリーを放った。決勝でも9回裏1点差負けの場面でヒットを打ち、同点のランナーとして出塁するが、本塁突入の途中で転倒するという致命的なミスを犯す。
一縷 千均 (いちる せんきん)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らと同学年。ポジションは遊撃で2年生時の秋の四国遠征から山棟蛇に変わって主将に就任する。エースで4番の山棟蛇の負担を減らすためという名目だったが、実は単純で明るい性格を買われてのことだった。
朝津風 ドルジ (あさつかぜ どるじ)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年後輩。強肩強打の三塁手で、小学生の時に四国の強豪である盟徳義塾にスカウトされた逸材。だが、手に負えない問題児で数々のトラブルを起こしたため盟徳義塾を追放され、関東昭和高校に引き取られた。性格は生意気そのものだが実力は確かで、同じポジションの桶谷と激しいレギュラー争いを展開する。
コムスン・ノーバ (こむすんのーば)
関東昭和高校野球部の部員で桶谷五朗、山棟蛇千里らの1年後輩。ハーフだが英語はまったく話すことはできない。ポジションは投手で球威はさほどないが、チームで唯一の左投手であることから重宝されている。将来、アメリカかアフリカにいるという父親を探しにいきたいと思っている。
蛇道 平琵 (じゃのみち へび)
尾宮貫一の関東昭和高校野球部時代の先輩で52歳。野球部のOB会である関昭球友会の会長で、関東昭和高校がセンバツ大会の候補になった時には、母校の甲子園出場のためあらゆる汚い手段を使いまくった。普段はガソリンスタンドとコンビニエンスストアを経営している。
渡邊 爪雄 (わたなべ つめお)
関東昭和高校の理事長。口が上手く何千万円という高額の報酬をエサに尾宮貫一の尻を叩くが、いざセンバツ出場を決めると口約束だと言ってすべて反故にした。ただ、野球部のスパルタは試合に勝つために必要なことと認めていて、まったく問題視していない。
集団・組織
関東昭和高校野球部 (かんとうしょうわこうこうやきゅうぶ)
西東京地区に属する私立男子高校の野球部。過去に春のセンバツ大会に1回出場しているが、野球部員の多くは野球の一流校に入りそこねた者で、実力は他の強豪校に比べるとワンランク落ちる。野球部員は全員グラウンド敷地内にある合宿所で生活しており、学校との往復以外で許可なく敷地外に出るのは禁止。携帯電話やパソコンなどの通信機器の所持も一切禁止で、親兄弟でも許可なく会ってはいけないなど、囚人同然の生活を送っている。 さらに、部内には「1年ウジ虫! 2年ハエ! 3年神様」という絶対的ヒエラルキーが存在しており、後輩は先輩に対して絶対服従が求められる。ただ、野球部の生徒は3年間の学費、部活動費などが一切免除され、野球で結果さえ残せば大学進学の道も開けるなどメリットも多い。