概要・あらすじ
剣術の達人として天下に名の聞こえる父の厳しい修行の元、宮本武蔵は幼い頃よりその才能を開花させる。父亡き後、十三歳で武芸者との試合に勝利し、以降武者修行の旅へ出て数多の武芸者たち出会い、死闘を繰り広げる。旅の果てに宮本武蔵が辿り着いた境地とはいかなるものであったのか。
登場人物・キャラクター
宮本 武蔵 (みやもとむさし)
幼名弁之介。美作国吉野郡宮本村にて平田無二斎の子として生まれる。父の厳しい稽古を受け、幼い頃より剣の腕を磨く。太鼓のばちを見て我流で二刀流を編み出す。真剣による二刀流と木刀一本での剣術を操り、佐々木小次郎との試合では赤樫でできたかいを削り、四尺一寸八分(約130cm)もの木刀を作って勝負に挑んだ。 長い武者修行の旅で各地を巡り、数々の武芸者と出会い、勝負を挑む。実在の人物宮本武蔵がモデル。
平田 無二斎 (ひらた むにさい)
宮本武蔵の父。美作国吉野郡竹山城城主に仕える。御前試合で時の将軍から「日下無双兵術者」と誉めたたえられるほどの優れた武術者で、剣術と十手術の達人。宮本武蔵に幼い頃から剣術を教え、厳しく指導する。宮本武蔵が元服する前に病にて没する。実在の人物平田無二斎がモデル。
有馬 喜兵衛 (ありま きへえ)
宮本武蔵が十三才の時、試合において初めて討ち負かせた兵法者。平田無二斎に試合を申し込むため道場を訪れたが、既に亡くなっていたため、代わりに宮本武蔵と勝負する。宮本武蔵の挑発に乗り真剣で切りかかるが、逆に討ち果たされる。実在の人物有馬喜兵衛がモデル。
吉岡 清十郎 (よしおか せいじゅうろう)
御前試合にて平田無二斎に敗れた吉岡憲法の長男。吉岡憲法が編み出した剣術の流派「吉岡流」の使い手。慶長九年(西暦1604年)に蓮台野にて宮本武蔵と決闘し、一撃で肩を打ち砕かれる。実在の人物吉岡清十郎がモデル。
吉岡 伝七郎 (よしおか でんしちろう)
御前試合にて平田無二斎に敗れた吉岡憲法の次男。吉岡憲法が編み出した剣術の流派「吉岡流」の使い手。慶長九年(西暦1604年)に兄と同じく蓮台野にて宮本武蔵と決闘し、首を打たれる。この際、宮本武蔵は約束の時間に1時間遅れて現れた。実在の人物吉岡伝七郎がモデル。
吉岡 又七郎 (よしおか またしちろう)
吉岡清十郎の息子。慶長九年(西暦1604年)13歳の時、吉岡道場の百数十名の門弟を繰り出し、闇夜に乗じて弓矢、鉄砲の包囲網で宮本武蔵を討ち取ろうとする。だが、取り捲きの門弟が離れた隙をつかれ、一乗寺下り松にて打ち取られる。実在の人物吉岡又七郎がモデル。
阿巌 (あごん)
奈良油坂の宝蔵院の僧で、槍術の達人。胤舜七足の一人。武者修行で宝蔵院を訪ねた宮本武蔵と勝負し、敗れる。実在の人物阿巌がモデル。
胤舜 (いんしゅん)
宝蔵院の僧で、宝蔵院流・十文字鎌槍を編み出した胤栄の弟子で宝蔵院流の二代目を継ぐ。阿巌に勝利した宮本武蔵に宝蔵院流の奥義を教える。また、柳生石舟斎との面会を勧める。実在の人物胤舜がモデル。
柳生 石舟斎 (やぎゅう せきしゅうさい)
新陰流の開祖上泉信綱の師匠。奈良を訪れた宮本武蔵が訪問した際には80才を超えていた。平田無二斎が「当今天下の名人である」と認めたほどの剣豪。宮本武蔵に心の修行を説く。実在の人物柳生石舟斎がモデル。
宍戸 典膳 (ししど てんぜん)
一心流鎖鎌の使い手。慶長十二年(西暦1607年)に伊賀上野にて宮本武蔵と試合する。鎖により宮本武蔵から木刀を奪い取るも、二刀流に敗れる。実在の人物宍戸典膳がモデル。
夢想 権之助 (むそう ごんのすけ)
神道夢想流杖術の開祖。慶長十三年(西暦1608年)に宮本武蔵に勝負を挑むも敗れる。実在の人物夢想権之助がモデル。
佐々木 小次郎 (ささき こじろう)
流派「巌流」の開祖。小倉藩藩主細川忠興に仕え、剣術指南役を務めており、剣の天才と謳われた。物ほしざおの異名を持つ三尺一寸(約1m)もの太刀を自在に操る。空を飛ぶつばめをも斬り落とす剣術奥義つばめ返しを編み出す。慶長十七年(西暦1612年)十三日辰の刻、巌流島にて宮本武蔵と勝負する。 約束の時間に二時間以上遅れる等の心理戦を受ける。宮本武蔵のはちまきを切り落とすも、かいから削り出した木刀の一撃を頭に受け討ち取られる。実在の人物佐々木小次郎がモデル。
三宅 軍兵衛 (みやけ ぐんべえ)
姫路藩藩主本多美濃守忠政の家臣。上州妙義山で東軍坊が編み出したと言われる東軍流の使い手。また、格闘流派である荒木流小具足術も心得ている。宮本武蔵の二刀流が売名のための虚偽の剣術ではないかと疑い、勝負を挑む。道場の門徒共々返り討ちに合うが、剣の腕のみならず人柄にも心を打たれ、以降宮本武蔵の門人となり、剣の道に励む。 実在の人物三宅軍兵衛がモデル。
伊織 (いおり)
出羽国正法寺が原に住む少年。道に迷った宮本武蔵を家に泊める。病気で亡くなったばかりの父を母と同じ墓に埋葬するため、自分一人でも運べるよう遺体を刀で切って運ぼうとしていた。事情を知り不憫に思った宮本武蔵が手伝い、以降養子となって武者修行の旅に同行した。後に明石藩藩主小笠原忠真の家臣となり、家老に出世した。 実在の人物宮本伊織がモデル。
場所
巌流島 (がんりゅうじま)
『宮本武蔵』に登場する島。関門海峡に実在する小島で、正式には船島という名前の島。宮本武蔵と佐々木小次郎の試合が行われる。
その他キーワード
兵法三十五か条 (へいほうさんじゅうごかじょう)
『宮本武蔵』に登場する兵法書。宮本武蔵が武者修行の末に会得した兵法、二刀流の刀さばきと心得を記した実在の書物。当時宮本武蔵が仕えていた熊本藩藩主細川忠利に納めた。
五輪の書 (ごりんのしょ)
『宮本武蔵』に登場する兵法書。宮本武蔵が武者修行の末に会得した剣の極意を記した実在の書物。主君亡き後に山中の霊巌洞に籠もり記した。「地の巻」、「水の巻」、「火の巻」、「風の巻」、「空の巻」の五章から成り、兵法の心構えと説いた。
クレジット
- 監修
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田代侑
- 構成
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浅野晃