あらすじ
水槽の街
周囲を壁に囲まれ、水槽のようになった土地の中央に立つ街にある浄水工場で働くユィは、時折水から腐敗臭を感じながら生きていた。そんなユィに思いを寄せるヨウは、彼女を自宅での食事に招く。しかしその際に同席した図書館司書の姉・ミキから、のちにユィがオカルト関連書籍ばかり借りていると知らされる。
虫の味がする
大学に通う竹内は、昆虫食を嗜好している園田とキスをした場合、虫の味がするのだろうかと考えていた。講義のノートを借りた謝礼にと園田の自宅での食事に誘われた竹内は、昆虫を食べる園田と、直後にキスをする想像を繰り返す。
ジゼルとエステル
ジゼルとエステルは世界一可愛い結合双生児として、好奇の目に晒されながらサーカスで歌を唄っていた。例え神でも2人の仲は引き裂けないと盲信していたジゼルだったが、興業先で出会った少年・トマとエステルが惹かれ合っていることに気付き、どうしようもない嫉妬に駆られていく。
ロズリーヌ・フラウの肖像
画家のエミールはスランプに陥っていた。依頼された絵の題材、拷問を受ける聖女アガタの姿が思い浮かばず、モデルすらイメージに合わないと喘ぐ。そんなエミールの姿に、苛烈な性格の妻・ロズリーヌは、自分に加虐してみてはどうかと提案する。
淑女はドレスに着替えない
アンリは思春期、そして反抗期の少年である。豊満な肉体を持ちながら知的で貞淑な雰囲気を持つフォリーを意識しながらも、その感情を恥じらい悪態をつく。そんな姿に、祖父であるオットーとオットーの友人・クロードが、からかいながら恋心の自覚へと誘導していく。
少女と言うより痴女だった
裏ビデオのビラ配りをしながら一人暮らしをしている悪魔・よしこは、レンタルビデオ店でバイトをしている少女・ユキと仲良くなりたい一心で、ビデオレンタルを繰り返していた。毎回話しかけられず、ジレンマを味わう日々だったが、よしこの父親の来訪で思いがけないきっかけを得る。
友達だなんて思ってないんだ
他人に感心のない男子中学生・芹沢は1人で映画鑑賞することが趣味だった。ある日アダルトビデオ目的にレンタルビデオ店にやって来た工藤に、「年齢制限はないが過激なシーンがある」と健全な映画を薦めたのをきっかけに、映画を通じて2人の距離が近付いていく。
芹沢くんと工藤くん
エピソード「友達だなんて思ってないんだ」の番外編で、芹沢と工藤のその後を描いた4コマ作品。性的なことに関心を持つ中学生らしく、無修正ビデオを見た結果トラウマを作ったり、人気者の工藤にとっての自身の立ち位置に不満を持つ芹沢の姿などが描かれている。
登場人物・キャラクター
ユィ
エピソード「水槽の街」に登場する。浄水をペットボトルに詰める工場で夜勤をしている女性。肩までの黒髪をポニーテールにしてまとめている。ヨウとは以前からの知り合いだが、想いを寄せられていることには気付いていない。両親と弟を地区の水没により亡くしており、ミキが司書を務める図書館でオカルト関連書籍をよく借りている。
竹内 (たけうち)
エピソード「虫の味がする」に登場する。金髪の男子大学生で、おとなしい性格。同じゼミに所属している園田が昆虫食を嗜好することを知り、園田の唇にキスした時の味などを想像している。園田の自宅で食事を振る舞われる際にも、昆虫が出てくるのではと考えていた。
ジゼル
エピソード「ジゼルとエステル」に登場する。エステルとは腰から下が繋がった結合双生児で、左側に位置している少女。サーカス小屋で働いており、歌を唄って観客を魅了している。エステルを愛しており、エステルと両想いのトマを憎んでいる。
ロズリーヌ
エピソード「ロズリーヌ・フラウの肖像」に登場する。エミールの妻。口元と右目の下にほくろがあり、間延びした口調で話す。高圧的な性格で、エミールに対して、躾と称した折檻を行う。エミールの才能を認めており、ルッソから依頼された「聖アガタの絵」を完成させるため、自らが加虐されモデルとなった。
アンリ
エピソード「淑女はドレスに着替えない」に登場する。思春期の少年で、金髪を肩まで伸ばしている。フォリーを意識しているが、素直になれず「ブス」と呼んでいる。祖父であるオットーや、オットーの友人であるクロードにも反抗的な言動を見せる。
よしこ
エピソード「少女と言うより痴女だった」に登場する。常にジャージを着用している悪魔の少女。裏ビデオのビラ配りをしながら、ワンルームで一人暮らしをしている。両側頭部から湾曲した角が生えているが、ジャージを脱がない限り一般人に角は見えていない。また、ジャージを脱ぐと肌が黒くなっていく。ユキと仲良くなりたいと考えてレンタルビデオ店に通っているが、会話の糸口が掴めずにいる。
芹沢 (せりざわ)
エピソード「友達だなんて思ってないんだ」「芹沢くんと工藤くん」に登場する。映画好きの男子中学生。他人に関心がなかったが、工藤と接するうちに、感情を素直に表現する工藤に対して独占欲を持つようになる。
ヨウ
エピソード「水槽の街」に登場する。ユィとは以前からの知り合いの男性。ユィに密かに想いを寄せている。ユィを自宅での食事に誘ったり、ユィが借りたことのある本を借りようとして、ユィの家庭環境やオカルトに傾倒していることを知る。
ミキ
エピソード「水槽の街」に登場する。ヨウの姉で、長い黒髪をポニーテールにまとめ、眼鏡をかけている女性。口元のほくろが特徴。ユィが通う図書館で司書をしている。他人の心の本質を捉えることができ、ヨウの恋心を知りつつ制止するような言葉をかけた。ヨウからは「姉さん」と呼ばれている。
ヨウの母 (ようのはは)
エピソード「水槽の街」に登場する。ヨウ、ミキの母親で、ふくよかな初老の女性。癖のある髪をシニヨンネットでまとめている。料理上手だが、いつも多めに作って余らせてしまう。また、味付けはいいが多少濃いため、ミキは食後に喉が渇くと話している。
園田 (そのだ)
エピソード「虫の味がする」に登場する。竹内と同じゼミに所属している女子大学生で、シャギーの入った黒髪が特徴。昆虫食を嗜好しており、イナゴの佃煮やオーストラリアの昆虫食であるウィチェッティ・グラブなどを好んで食べる。以前は塚本と付き合っていたが、昆虫食を理由に別れを告げられている。
塚本 (つかもと)
エピソード「虫の味がする」に登場する。園田の元カレで、チャラチャラした雰囲気の男子大学生。園田が昆虫食を嗜好しているのを友人たちに言いふらしている。また、園田の自宅冷蔵庫に入っていたイナゴの佃煮を見て、園田に別れを告げた。
エステル
エピソード「ジゼルとエステル」に登場する。ジゼルとは腰から下が繋がった結合双生児で、右側に位置している少女。サーカス小屋で働いており、歌を唄って観客を魅了している。興業先の村で出会ったトマと両想いになった。
トマ
エピソード「ジゼルとエステル」に登場する。ジゼルとエステルが働いているサーカスを見に来ていた少年。そばかすが目立つ。エステルと両想いになっており、ジゼルのことも好きだと発言している。
エミール
エピソード「ロズリーヌ・フラウの肖像」に登場する。ロズリーヌの夫で画家。スランプに陥ると酒場で酔い潰れることがある。非常に気弱な性格だが、絵を描くことには貪欲で、モデルとして認識すると、死体でも臆することなく触れることができる。
ルッソ
エピソード「ロズリーヌ・フラウの肖像」に登場する。エミールに「聖アガタの絵」を依頼した貴族の老人。完成直前の絵を見て出色の出来だと絶賛し、早々に披露会の手配を考えていたところ、エミールに依頼を取り消して欲しいと申し出られてしまう。
フォリー
エピソード「淑女はドレスに着替えない」に登場する。クロードの店でウェイトレスをしている女性。ワンレングスの金髪とそばかす、眼鏡が特徴。豊満な体つきだが肌の露出が少なく、知的な印象がある。アンリからは「ブス」と呼ばれているが、怒ることもなく温厚な態度で接している。
オットー
エピソード「淑女はドレスに着替えない」に登場する。アンリの祖父で、恰幅のいい男性。過去の女性遍歴などを、アンリやフォリーの目の前で語る豪胆な人物。「派手なドレスを好んで着る女はバカ」など、独自の女性観を持っている。クロードとはミッションスクールからの友人。
クロード
エピソード「淑女はドレスに着替えない」に登場する。フォリーが働く店の経営者の老人。オットーとはミッションスクールからの友人。アンリがフォリーを意識していることに気付いたうえで、オットーとともにからかっている。
ユキ
エピソード「少女と言うより痴女だった」に登場する。よしこが通っているレンタルビデオ店でバイトしている少女。肩までの金髪をポニーテールにしてまとめており、仕事中は淡々とした対応を見せるが、チャラチャラした友人が多い。
よしこの父親 (よしこのちちおや)
エピソード「少女と言うより痴女だった」に登場する。よしこの父親で、常にジャージを着用している肥満体型に近い中年悪魔。両側頭部から湾曲した角が生えているが、ジャージを脱がない限り一般人に角は見えていない。また、ジャージを脱ぐと肌が黒くなっていく。一人暮らしを始めたよしこを心配しているが、高校を卒業したよしこと一緒に風呂に入りたがるなど、偏愛している様子が見られる。 よしこからは「パパ」と呼ばれている。
工藤 (くどう)
エピソード「友達だなんて思ってないんだ」「芹沢くんと工藤くん」に登場する。性的なことに興味がある男子中学生。芹沢の隣のクラスに在籍している人気者。アダルトビデオを目的にレンタルビデオ店に行ったのをきっかけに、芹沢と話すようになる。芹沢に影響を受けて映画好きになっていく。
場所
ユィたちの街 (ゆぃたちのまち)
エピソード「水槽の街」に登場する。巨大な壁に囲まれ、水槽のようになった土地の中央に建っている街。かつて浄水施設として建設され、現在はその機能は失われているとされる。本来ユィが暮らしていた地区は街の周囲にあったが、水没してしまっており、ユィたちの街では、その地区から水を汲み上げ、飲料水として利用している。