あらすじ
第1巻
愛城華恋はこの日、聖翔音楽学園の二次試験を受けるため、トレードマークの王冠の髪飾りを付けて家を出た。聖翔音楽学園に向けて歩き出した華恋だったが、向かいを歩いて来たランドセルを背負った女の子が、すれ違いざまに転びそうになった事に気づき、咄嗟に受けとめる事に成功する。ホッとしたのもつかの間、女の子が手に持っていたお弁当が地面に落ち、中身がこぼれてだめになってしまった。お人好しの華恋は、泣き出しそうな女の子に自分のお弁当を手渡して笑顔で見送ると、その場をあとにした。その後も、信号待ちの老婦人の手助けをした華恋は、自分も急がなければならなかった事を思い出し、改めて受験会場へと急ぐ。すると目の前に、道に迷った少女を発見。露崎まひると名乗ったその少女は、華恋と同様に聖翔音楽学園を受験するために向かう途中だったという。それならばと、華恋はまひるといっしょに目的地へと向かう事にする。二人が到着すると、そこには二次試験を受けに来たたくさんの学生達が集まっていた。いよいよ試験が開始されたが、華恋は歌唱試験では歌詞を忘れ、舞踊試験では振り付けを間違えるなど、その出来は決していいものではなかった。しかしまひるは、そんな華恋に不思議なほどの輝きときらめきを感じてしまう。(第1幕「1番、愛城華恋ですっ!」。ほか、4エピソード収録)
第2巻
最近の聖翔音楽学園は、ある噂話でもちきりだった。それは、「ななカフェ」でお菓子を食べると願いが叶うというもの。ななカフェとは、大場ななが休日に手作りお菓子を振る舞った事がきっかけでできたカフェスペースのようなもので、さまざまな人がななのもとを訪れており、会話の中で悩みを打ち明ける事もあった。愛城華恋からその噂を聞いた石動双葉は、フルフェイスのヘルメットをかぶり、顔を隠した状態でななカフェを訪れる。双葉は、甘えん坊な友人の花柳香子に、なにかを全力で頑張ってほしいと願っている事を語り、そんな双葉にななはバナナ蒸しパンを御馳走する。双葉はそれを通して、悩み解決への糸口をつかむのだった。その後も、華恋が大好きという自分の感情に困惑する露崎まひるに、完熟バナナケーキを御馳走してアドバイスを送ったりしながら、ななはみんながそれぞれに誰かを大切に思っている事を知る。中学時代の苦い経験から、今もどこかで孤独を感じていたななは、これにより孤立感を深めて自分を見失い、元気をなくしていく。そんなななの様子に気づいたのは、ルームメイトの星見純那だった。(第9幕「ようこそ、ばななカフェへ♪」。ほか、4エピソード収録)
関連作品
本作『少女☆歌劇 レヴュースタァライト オーバーチュア』は、2018年7月から9月にかけてTBS系列で放送されたTVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を原作とする。この作品は、「ミュージカル×アニメーションで紡ぐ、二層展開式少女歌劇」と銘打ってミュージカルと同時展開され、ミュージカルでの主要キャストが、アニメ版の声優を担当しており、愛城華恋役を小山百代が、神楽ひかり役を三森すずこが務めている。また、戯曲脚本・劇中歌作詞を中村彼方が担当するなど、アニメ版の制作にもミュージカルのスタッフがかかわっている。
登場人物・キャラクター
愛城 華恋 (あいじょう かれん)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号1番で、A組俳優育成科に在籍している。みんなを笑顔にできる舞台少女になりたいと、トップスタァを目指して学ぶ日々を送っている。幼なじみの神楽ひかりと幼い頃に交わした約束を胸に、あこがれの舞台「スタァライト」にいっしょに出演できる日を夢見ている。基本的にいつもポジティブ思考で明るい性格をしている。かなりのお人好しで、短絡的な考えの持ち主。朝が弱いため、寝坊や遅刻が多いほか、何に関してもきちんとする事が苦手。左横に付けている王冠の髪飾りが特徴で、口癖はダメを意味する「ノンノン」。言葉の言い間違いが多い。
神楽 ひかり (かぐら ひかり)
イギリスの王立演劇学院に留学中の女子高校生。天性の素質を持つ舞台少女。右横に付けているひし形の髪飾りが特徴。物静かで言葉数は少な目。しっかり者に見えて、実は非常に天然気味で不器用な性格。幼なじみの愛城華恋とは、将来いっしょに戯曲「スタァライト」の舞台に立とうと約束を交わし合った。のちに、聖翔音楽学園に転入して第99期生となった。出席番号29番で、A組俳優育成科に在籍する事になる。聖翔の寮では、華恋と露崎まひるがルームメイト。もともと二人で使っていた部屋に入ったため、華恋とまひるのベッドのあいだに布団を敷いて眠っている状態。白いくまのキャラクター「ミスターホワイト」が大好き。
天堂 真矢 (てんどう まや)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号18番で、A組俳優育成科に在籍している。本物のスタァになるべく、努力の日々を送っている。高名な舞台俳優の父親とプリマドンナを母親に持つ演劇界のサラブレッドで、高いカリスマ性を誇り、その身の上に驕る事なく、日々生まれ持った才能を磨く努力を怠らない。自分に厳しく、他人にも厳しい性格で、私的な感情はあまり表に出さないため、孤立しがちな状況にある。しかし寮で同室の西條クロディーヌが、なにかと付きまとって来る事が多く、クロディーヌをはじめとするA組の仲間ともいい関係を築き始める。好きな食べ物はバームクーヘン。
西條 クロディーヌ (さいじょう くろでぃーぬ)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号11番で、A組俳優育成科に在籍している。長いウェーブヘアが特徴。入学して出会った天堂真矢をライバル視しており、なにかと彼女に付きまとったり、目の敵にしているところがある。しかしそれは、真矢に対するリスペクトとあこがれの裏返しでもあり、実は一番のなかよし。日本人の父親とフランス人の母親を持つハーフで、幼い頃からテレビCMや舞台などで幅広く活躍し、天才子役と評されていた。特に舞台劇「アリー」では、オーディションで100人以上もの候補者の中から、実力で主役を勝ち取った。通常は日本語を使っているが、フランス語が混じる事が多くあり、プライドは高め。
露崎 まひる (つゆざき まひる)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号17番で、A組俳優育成科に在籍している。舞台で輝く舞台少女になりたいと、努力の日々を送っている。実家は北海道のじゃがいも農家で、好きな食べ物はお芋さん。下に五人の弟妹がおり、両親と大好きなおばあちゃんもいっしょの大家族で暮らしていた。もともとバトントワリングで才能を発揮し、数々の賞を受賞するなどして地元の星となっていたが、テレビで見た舞台劇に影響を受けて舞台の道に進んだ。引っ込み思案で、自分に自信が持てないタイプ。寮では愛城華恋と同室になり、自分にはない彼女の明るさや前向きさに惹かれて、友達以上のあこがれや独占欲を持つようになる。ストレートヘアで、両側に小さく結んで飛び出した髪がチャームポイント。細く飛び出した両側の髪は、感情の起伏次第で上下に動く。白い猫のキャラクター「スズダルキャット」と、ジャガイモをかたどったキャラクター「じゃがひる」が大好き。
星見 純那 (ほしみ じゅんな)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号25番で、A組俳優育成科に在籍しており、学級委員を務める優等生。実は両親の反対を押し切って舞台の道へと進んだ。学年一の才女だが、日々勉強と努力で己を磨いているかなりの努力家。知識に頼りがちで、自信のある事に関しては饒舌になる。片側にまとめたヘアスタイルと、眼鏡がトレードマーク。基本的に頼りにされたいタイプで、寮のルームメイトである大場ななとは、学級委員長に立候補した際にライバルとなり、競い合う事となった。最終的にはななが身を引く形で決着となり、それ以来よきパートナーとして学校でも私生活でもいい関係を築いている。
大場 なな (だいば なな)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号15番で、A組俳優育成科に在籍している。歌や踊りだけでなく、舞台演出にも優れた才能を発揮している。おおらかな性格で、大きな優しさでみんなを包み込む、第99期生のお母さん的な存在。しかし中学時代には、みんなの協力を得て演劇部を維持させたものの、他人を思いやって優先するあまり、つねに孤独感にさいなまれていた。料理が得意で、特にバナナを使ったスイーツには定評がある。休日にお菓子を作り、みんなに振る舞いながらそれぞれの悩みを聞いていたところ、いつのまにかその場が「ななカフェ」と呼ばれ、そこでお菓子を食べると願いが叶うと噂されるようになった。寮では星見純那とルームメイトであり、学級委員長選出の際には互いに立候補してよきライバルとして競い合った。それ以降、二人はさらによい関係を築き、互いを名前で呼び合うようになる。好きなものはカエルのキャラクターグッズとバナナ。
花柳 香子 (はなやぎ かおるこ)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号22番で、A組俳優育成科に在籍している。日本舞踊の家元の孫娘で、歌謡と舞踊の才能に秀でた京都出身のお嬢さま。幼なじみの石動双葉とは寮でのルームメイトであり、日常生活のほどんどは彼女に頼りっきりになっている。わがままな性格で、自分本位なところが目立つが、実は人見知りで引っ込み思案な一面を持つ。双葉が大好きで、彼女なしには生きていけないが、素直になれない事が仇となり、なにかとケンカする事が多い。京都弁を話す。
石動 双葉 (いするぎ ふたば)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。出席番号2番で、A組俳優育成科に在籍している。ショートヘアで、言葉遣いが少々荒っぽく、少年のような印象を持つ。小柄な体型ながら、身体能力は高くて殺陣が得意。同郷で、幼なじみの花柳香子とは寮でのルームメイトであり、彼女の世話を焼くのが日常となっている。根は優しい性格のため、文句を言いながらも、香子に振り回されてあげているところがある。のちに、香子との登校のためにバイクの運転免許を取得する。きな粉の駄菓子「きなこボーン」が大好物。
老婦人 (ろうふじん)
着物姿のおばあさん。聖翔音楽学園の受験日当日、大きな風呂敷包みを持って信号待ちをしたいた際、受験会場に向かう途中だった愛城華恋から声をかけられ、荷物を持ってもらった。第10幕では道で、戯曲「スタァライト」の一人芝居をしていた神楽ひかりに気づき、「あなたのように輝いているお嬢さんに親切にしてもらったから、恩返しがしたい」と、声をかけた。
おばあちゃん
露崎まひるの祖母。北海道でまひるの家族と共に暮らしている。幼い頃からまひるをかわいがり、応援して来た。まひるが彼女にとってのスタァである事が、まひるをも元気づける事になった。まだまひるが幼かった頃、テレビでいっしょに見た舞台劇にまひるが興味を持ったため、背中を押した事が、まひるの舞台への道の第一歩となった。
あさみ
素朴な印象を持つ中学3年生の女子生徒。おさげ髪が特徴。舞台にあこがれて、聖翔音楽学園への受験を考えており、オープンスクールの日に見学に訪れた。子役時代の西條クロディーヌが主役を務めた舞台劇「アリー」が大好きで、クロディーヌの大ファンでもある。
雨宮 (あめみや)
第99期生として聖翔音楽学園に入学した女子高校生。B組舞台創造科に在籍している。休日に大場ななが、自分の作るお菓子を振る舞っているという「ななカフェ」に訪れた。先日行われた実力発表会の際、ななの演技を見て文脈のとらえ方の鋭さを感じ、自分の作った台本を読んで評価してほしいと、ななに頼み込んだ。まだ名前も決まっていない台本だったが、ななの作ったマフィンを通じて問題点に気づき、新たに「バナナになった少女」というタイトルを付け、作り直しに意欲を見せた。
場所
聖翔音楽学園 (せいしょうおんがくがくえん)
日本有数の演劇学校の一つ。100年ほどの歴史がある。受験の際には一次試験のほかに二次試験があり、舞踊試験や歌唱試験が実施される。演劇界の人材育成のための学校で、舞台女優を目指すA組「俳優育成科」と、脚本や裏方などの舞台製作について学ぶB組「舞台創造科」に別れており、どちらも女子だけで構成されている。通常の学び舎である本校舎のほかに、専用の寮も完備している。ほかにも、聖翔音楽学園が所持する施設の一つとして、主に夏の合宿先として利用されている「海の森校舎」があり、レッスン室や音響スタジオ、楽屋や劇場まで完備されている。
クレジット
- 脚本
-
中村 彼方
- 原作
-
ブシロード , ネルケプランニング , キネマシトラス