異類婚の子孫が生き続ける神緒町
本作の舞台である神緒町には、独自の民間説話が数多く伝承されており、一昔前まで人と動物の精霊が夫婦になる「異類婚」が行われていた。そして、その異類婚の子孫たちは、現在でも生き残っている。また、子孫たちだけではなく、精霊、化け物、幽霊といった不思議な存在が町中に潜んでいて、主人公の朝灯たちは彼らとのバトルに巻き込まれていく。なお、朝灯の新しい家族である邑と巴は、蛇の精霊の子孫で、邑は母の巴の目玉をしゃぶって成長した。このエピソードは、『蛇女房』という有名な異類婚姻譚(たん)が基になっており、作者も同作がモチーフであることを、新連載時の「週刊少年チャンピオン」誌上で言及している。
蛇の精霊の眼玉を譲り受ける主人公
女子中学生の朝灯は、父の再婚により神緒町に引っ越し、新しい家族である弟の邑と母の巴と出会った。朝灯は、たびたび発作を起こしていたが、巴はそれが「虹蛔」という寄生虫のせいであることを見抜く。虹蛔の幼虫が、朝灯の背中から現れ、朝灯を取り込んで蛹(さなぎ)になろうとしたとき、邑は巴の右眼を口に含む。二人は蛇の精霊の子孫であり、蛇の精霊の眼玉を取り入れることにより、邑は精霊の力を解放できるのだった。邑は、虹蛔を倒すことに成功するが、朝灯は右眼をやられて瀕死(ひんし)の状態になってしまう。そこで巴は、治癒能力がある自分の右眼を朝灯と交換した。こうして朝灯は一命を取りとめるが、蛇の精霊の眼玉を狙う化け物たちの標的になってしまう。
異形の化け物や、精霊の子孫たちとの戦い
虹蛔に襲われた朝灯の体は完全ではなく、譲り受けた蛇の眼玉がなくなれば、半日ほどで危険な状態になる。しかし、神緒町の化け物たちは、生命力を増大させる蛇の精霊の眼玉を手に入れようと朝灯を狙う。邑は朝灯を守るために、彼女の右眼を一時的に舌で取り出し、精霊の力を得る。邑の攻撃方法は、蛇化した腕を伸ばしたもので、左目の奥にある「覚鱗」と呼ばれるものを外せば、さらに大きな力を得られる。対する敵は、桜の木に封印されていた四つ目の怪物や、呪いの火炎のために巨大なサソリのようになった元人間など、恐ろしい異形たちである。また、物語中盤からは、龍の精霊の子孫である邑の実父や義理の兄妹が登場し、伊原家と対立することになる。
登場人物・キャラクター
伊原 朝灯 (いはら あさひ)
ショートカットが特徴の中学2年生の少女。明るく元気な性格。父の再婚に伴い、神緒町に越してきて、邑、巴と家族になる。実母を亡くした際、悲しみに暮れていたところをつけこまれ、知らないうちに「虹蛔」という化け物に卵を産み付けられた。体内に虹蛔の幼虫が潜んでいたため、背中に模様ができ、しばしば発作を起こしていた。邑の活躍により、虹蛔を退治できたが瀕死の重傷を負い、巴の右眼(蛇の精霊の眼玉)を受け継ぐことで命を繫(つな)いだ。
伊原 邑 (いはら ゆう)
中学2年生の男子。母の再婚により、朝灯の義弟となる。旧姓は「境」。蛇の精霊の子孫であり、幼少時に母の右眼をしゃぶって成長した。人見知りな性格で、学校では浮いた存在。蛇の精霊の眼玉を口に含むことで、精霊の力を解放することができる。幼い頃、龍の精霊の子孫である実父に、訓練と言う名の虐待を受けており、実父を憎んでいる。
伊原 巴 (いはら ともえ)
蛇の精霊の子孫。邑の母親であり、再婚したことで朝灯の母になる。邑の実父と別れる際、代償として左目を失っており、髪の毛で顔の左側を隠している。また、瀕死の重傷を負った朝灯を救うために、残った右眼を朝灯と交換した。