幻燈師シリーズ

幻燈師シリーズ

思い描いたイメージを具現化して相手に見せ、「魅せる」ことができる「幻燈」と呼ばれる能力がある世界。その幻燈のプロである幻燈師という職業を目指す少年少女たちが通うアカデミーを舞台に、オムニバス形式で描く青春ラブコメディ。「月刊少年ブラッド」2006年5月号と10月号、「FlexComix ブラッド」2007年8月号から9月号にかけて掲載された作品。コミックス刊行にあたり描き下ろされた後日談エピソードも収録されている。

正式名称
幻燈師シリーズ
ふりがな
げんとうししりーず
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
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あらすじ

キミに魅せる空

幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う1年生の仲原律己は、元々幻燈師の父親・仲原に無理やり入学させられたためやる気がなく、適当な幻燈を繰り返し、進級試験に合格できずにいた。退学になっても構わないというスタンスの律己だったが、同じく進級試験に合格できずにいる初見柚流と放課後に補習するうちに、彼女の幻燈に対するポジティブな姿勢に惹かれていく。ある日、放課後の空の夕暮れを2人で見た際に、律己がそのグラデーションを指摘したことをきっかけで、それを幻燈した柚流が進級試験に合格し、不合格者は律己だけになってしまう。本来なら合格を祝福すべきだと律己もわかっていたが、2人で補習していた時間が楽しかった反動で、つい柚流に自分のアイデアを取るなと、きつく言ってしまう。その後罪悪感に苛まれる律己だったが、自分が本当に伝えたい気持ちはそんな言葉ではなかったと思い直し、柚流に自分の気持ちを幻燈で魅せることを決意する。

ラストプラトニックブルー

幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う1年生の秋津乙は、幻燈機に残ったイメージをクリアーな空間を幻燈することでリセットする、幻燈機の整備が趣味で有名だった。そのため秋津は特例で授業時間中も彼のために用意された研究室で幻燈機の整備をすることを許可されていた。ある日、そんな彼の研究室に幻燈科の先生に追われる2年生の川波奏風が飛び込んで来る。彼女は秋津の研究室をサボタージュのための隠れ家にして居座り、秋津をパシリとして使おうとするが、秋津のおっとりした性格や、散らかった研究室に毒気を抜かれ、秋津を手伝う助手のようになる。ある日、秋津は奏風が「あと1回しか幻燈ができない」ということを知る。奏風はアカデミーに入学時、校内トップクラスに幻燈が上手かったが、ある頃からだんだんその力が弱まってしまっていた。そして自分があと1回しか幻燈できないと悟って以来、彼女は授業をサボるようになったのだった。秋津は「彼女にあった幻燈機があれば弱まった力でもずっと幻燈できるかもしれない」と考え、その幻燈機に目星をつける。しかしそこへ3年生の不良の先輩がやって来て、その幻燈機をよこせと迫ってきた。普段はおとなしい秋津だったが、その3年生の先輩に奏風が馬鹿にされたことをきっかけに怒りを露わにし追い返す。その時自分の計画を奏風に打ち明けると、奏風は自分のために努力してくれた秋津に感動し、自身の力を振り絞り最後の幻燈を秋津のためだけに魅せるのだった。

ちびっこクロスゲーム

幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う3年生の今井了椰は、アカデミーの高い学費や幻燈機の整備、維持費のためにバイト漬けの毎日で、お金のことを考え続けたあまり守銭奴になっていた。ある日、後輩の1年生すずめと廊下でぶつかった際、了椰が遠視のために小柄なすずめの姿が見えず、悪気はないもののうっかり、小さくて見えなかったと言ってしまう。すずめは入学時から幻燈が上手かったが、身長の小ささと幻燈の壮大さを比べられることが多く、低い身長にコンプレックスを抱いており、思いきり幻燈ができなくなっていた。了椰の発言も自分を馬鹿にしたものだと捉え、了椰に幻燈でちょっかいを出すようになる。そんなすずめのもとへ了椰を疎ましく思っている3年生の不良の先輩が訪れ、すずめの気持ちを利用し、了椰の卒業制作発表を邪魔しようと企てる。結果的に了椰の卒業制作発表は了椰対すずめの幻燈対決のような形に発展し、了椰は手強いすずめに苦戦するも、自分の得意分野である宝石などの貴金属を幻燈することでアドバンテージを取る。その上ですずめを挑発し、思い切った幻燈をしてみろと煽る。すずめは挑発に乗り、卒業制作発表の会場を札束で埋め尽くす幻燈を魅せ、幻燈対決に勝利する。その後、了椰がそのつもりはなかったものの悪口を言ってしまったことを謝り、またすずめも幻燈対決の時の了椰の挑発は、思いきり幻燈ができなくなっていた自分のトラウマを克服させるためだったのだと気づき、了椰に懐くようになる。

ボクの創る世界

幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う3年生の今井了椰を兄に持つ、普通科の1年生・今井祥吾幻燈のことが嫌いだった。小さい頃、祥吾は兄の了椰と幼なじみの千穂との3人で一緒に遊んでいたが、兄が幻燈の才能に目覚めて以来、3人で遊ぶことがなくなっていた。しかも千穂も幻燈の才能があり、祥吾だけが才能に恵まれなかったので、幻燈は自分の大切な人を自分の世界から奪うものだと思っているのだった。千穂は幻燈科に進学せず、祥吾と同じ普通科に通っていたが、ある日幻燈科の先生・仲原に誘われて幻燈をすることになり、しかもその幻燈を祥吾に見られてしまう。祥吾は裏切られたと思い込むが、千穂は祥吾が好きだからどこにもいかないと宣言する。そして晴れて恋人同士となった2人だったが、祥吾の目から見ても千穂は幻燈科に行きたがっているように見えて、自分が足かせになっていると感じた祥吾は幻燈科への編入を千穂に勧める。しかし「祥吾が嫌いな幻燈科にいきたくない。祥吾の気持ちがわからない」と言われてしまう。祥吾はそこで自分が千穂を好きだということを一度も伝えたことがなかったことに気づく。幻燈が使えない自分が、自分の想いを相手に伝えるためには行動をしなければダメだと気付いた祥吾は、千穂を抱き寄せキスをし、自分の気持ちを伝える。その後、千穂の幻燈科への編入手続きが終わり、幻燈科の兄・了椰とも和解し、幻燈科へ行く千穂を祥吾は見送りながら、誰かのために何かをしたいと思う、その気持ちこそが誰もが創り出せる幻燈なのだと感じるのだった。

サマーバケーション

エピソード「キミに魅せる空」「ラストプラトニックブルー」「ちびっこクロスゲーム」「ボクの創る世界」の登場人物たちの後日談。夏休みを利用して1泊2日の海水浴旅行に出かけた皆は、それぞれ思い思いに過ごすのだった。

登場人物・キャラクター

仲原 律己 (なかはら りつき)

エピソード「キミに魅せる空」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う1年生の男子。もともと父親である仲原が有名な幻燈師であり、律己にも幻燈師としての才能があったため、父親の意向で無理矢理幻燈科に入学させられた。律己はいつも多忙な父親を幼い頃から見てきたため、幻燈師にはなりたくないと考えていた。 そのためいい加減な幻燈を繰り返し、2年生への進級試験を合格できずにいる。もともとやる気がないこともあり、退学になってもいいと適当に考えていたが、同じく進級試験に合格できずにいる初見柚流と居残り練習しているうちに彼女に惹かれ、次第に幻燈に真摯に向き合うようになっていく。素直に自分の感情を出せない性格のため、先に進級試験に合格した柚流とすれ違いを起こしてしまうが、自分の想いを幻燈することで和解した。

秋津 乙 (あきつ きのと)

エピソード「ラストプラトニックブルー」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う1年生の男子。幻燈師を目指している生徒にしては珍しく、何かを表現したいというよりも、何もないクリアな空間を幻燈することが好きで、幻燈機に残った前のイメージを消してクリアな空間にする、幻燈機の整備が趣味。 また、相手の持つ雰囲気から幻燈機にその人のイメージカラーを馴染ませることを得意としている。授業をサボタージュするための場所を探していた川波奏風を匿ううちに、彼女と親しくなる。普段は無表情なうえ、行動は天然でおっちょこちょいだが、好意を抱いていた奏風が不良の先輩に馬鹿にされるのを見た時は、強い怒りをあらわにして追い返した。

今井 了椰 (いまい りょうや)

エピソード「ちびっこクロスゲーム」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う3年生の男子。普通科に通う今井祥吾の兄で、同じく普通科に通う千穂とも幼なじみで仲がいい。高額な学費や幻燈機の購入および維持費のため、常にアルバイトに明け暮れている。それなりに優秀な成績を収めているが、お金のことで頭がいっぱいなせいで、意図せず幻燈に高価な壺などがイメージとして現れることがある。 これは幻燈機の整備が満足にできていないことも理由の1つで、時には後輩の秋津乙に整備を依頼することもある。遠視のため、廊下で後輩のすずめとぶつかってしまった際、すずめのことがよく見えず、不用意な言葉ですずめの顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまい、以後付きまとわれるようになる。 のちに卒業制作発表で乱入して来たすずめとどちらが強いイメージを幻燈できるか勝負するが、札束の海を作ったすずめに完敗を認める。その後、自分に懐いたすずめをペットのようにあやすようになる。

今井 祥吾 (いまい しょうご)

エピソード「ボクの創る世界」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の普通科に通う1年生の男子。幻燈科に通う3年生の今井了椰の弟。幼い頃は兄の了椰と幼なじみの千穂の3人でよく遊んでいたが、兄が幻燈科に進学し、多忙な身となってからは、昔のように3人で遊べなくなってしまった。 そのため、幻燈そのものを逆恨みしている。幻燈の才能はあるが自分と同じ普通科に通っている千穂に惚れている。ある日幻燈科の先生に誘われて楽しそうに幻燈している千穂を見たことにより、千穂との関係がよくなったり悪くなったりしながら、幻燈に対する考え方を見直していくことになる。

初見 柚流 (はつみ ゆずる)

エピソード「キミに魅せる空」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う1年生の女子。仲原律己と放課後、居残りで練習することになるが、同じく試験に合格できない律己に親近感を覚え、すぐに子犬のように懐いた。小さい頃は人見知りで、怖くて外で遊べなかったが、幻燈師のおばあちゃんに幻燈で外の景色を色々見せてもらったことにより、外への恐怖を克服した過去がある。 自分にも幻燈師としての才能があると知ってからは、おばあちゃんに幻燈を見せることを目的に、アカデミーの幻燈科に入学した。一見まともな幻燈ができるが、幻燈に初見柚流自身のコミカルな妄想が入ってしまうという癖があり、幻想的な風景も台無しになってしまう。 天然で鈍感なところがあり、律己からの好意にはまったく気づいていない。

仲原 (なかはら)

エピソード「キミに魅せる空」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科の先生で、仲原律己の父親。有名な幻燈師であり、律己が幼い頃はスケジュールがハードで、いつ倒れてもおかしくないほどげっそりしていたが、仲原本人は仕事を楽しんでいた。幻燈師として客に先入観を持たせないよう、中性的な服装を心がけているが、基本的にロングスカートなど、どちらかというと女性的な服装をしていることが多い。 そんな理由から、律己に「親父」と呼ばれた時は、性別を特定する発言をするなと怒っていた。幻燈師の教育には熱心で、才能があると見込めば息子だろうが普通科の生徒だろうが幻燈科に連れてこようとする。また、よくできていればどんな幻燈でも評価する公平さを持っており、今井了椰が卒業制作発表で札束を雨のように降らせる幻燈をしたいと言った時にも承認しようとしていた。 ただし、その時は「学校のイメージに関わる」ということで、最終的には却下となった。

川波 奏風 (かわなみ そよか)

エピソード「ラストプラトニックブルー」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校アカデミーの幻燈科に通う2年生の女子。入学時点で在学生の中でトップクラスに幻燈が上手かったが、幻燈をするたびに力が衰え、2年生になってしばらくする頃にはあと一度幻燈をしたら能力を完全に失ってしまうほどになっていた。そのせいで授業をサボタージュするようになり、不良ぶった行動をしていた。 しかし根は優しく几帳面なため、川波奏風自身の隠れ場所にした秋津乙の研究室を整理したり、秋津の幻燈機整備を助手のように手伝うようになる。

すずめ

エピソード「ちびっこクロスゲーム」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の幻燈科に通う1年生の女子。幼い容姿なのを気にしており、身長が低いのに大きな幻燈ができるんだね、などと周囲にからかわれたのがトラウマになっていて、思い切った幻燈ができないでいる。のちに今井了椰の挑発を受けて思い切った幻燈ができトラウマを克服。 それが了椰の思惑であったことを知り、了椰に小動物のように懐くようになった。

千穂 (ちほ)

エピソード「ボクの創る世界」「サマーバケーション」に登場する。幻燈師を目指す学校「アカデミー」の普通科に通う1年生の女子。同じく普通科に通う今井祥吾と幻燈科に通う今井了椰は幼なじみ。幻燈の才能があり、幻燈科への憧れもあるが、普通科の祥吾が好きなため普通科に通っており、のちに恋仲になった。しかしその後、幻燈への興味を祥吾に見抜かれ、最終的には幻燈科へ編入することになった。

場所

アカデミー

幻燈師を目指すための幻燈科を有する学校だが、普通科も併設されている。幻燈科では、進級や卒業には試験や発表会で幻燈を行うことが必須で、これができなければ退学になることもある。幻燈科は普通科と比べて学費が高く、生徒の中にはアルバイトをこなしながら通う者もいる。

その他キーワード

幻燈 (げんとう)

幻燈機と呼ばれる特殊な機械を通じて、自分のイメージした景色、物、人物などを相手に「魅せる」技術。物質的なものから空間的なものまで、イメージできるものならなんでも幻燈することができるが、壮大な幻燈には才能や技術が必須。幻燈をすることは誰にでもできることではなく、一部の才能のある者しか扱うことができない。もともと優れた幻燈の才能を持っていても、だんだんとその能力が失われてしまうこともある。

幻燈師 (げんとうし)

幻燈を披露することでお金を儲ける、幻燈のプロ。大道芸、手品師と並んで大衆に娯楽を提供する職業の1つ。幻燈自体が一部の才能のある者にしか扱えないこともあり、若者が憧れる代表的な職業となっている。人気になればなるほど多忙な職業だが、その分収入も多く、それもこの職業が人気な理由の1つである。

幻燈機 (げんとうき)

幻燈をするために必要な機械で、片手、もしくは両手に抱えられるほどのサイズであることが多い。そのデザインはさまざまで、灯篭や提灯、宝石の埋め込まれた壺、キャッシュレジスターなど多岐にわたる。本人との相性もあり、相性の悪い幻燈機を使っていると、前回の幻燈のイメージが残ってしまい、次の幻燈に影響を及ぼしてしまうこともある。 その際は幻燈機の整備として、何もない空間を幻燈することで、前のイメージを消すことができる。高価なうえに、整備費や維持費もかかるため、幻燈師を目指す学校の中には、金策に苦労する者もいる。

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