概要・あらすじ
猫の世界を叙情詩的に描いた作品。ここに描かれる猫たちは擬人化されることなく、猫そのものとしてふるまう。そこに作者の言葉が重なることで、日常の情景が浮かび上がり、詩情を醸し出す。やまだ紫の処女単行本の表題作。
登場人物・キャラクター
性悪猫 (しょうわるねこ)
『性悪猫』に登場する猫。ハチワレの雌。恋に慣れた年頃なので、恋を手柄と勘定する。恋に手練れな様子で、子猫に「いまに千匹の雄のハートつってみせる」と豪語する。年寄り猫になったら孫猫たちにモテ自慢をする予定。
灰だらけ姫 (はいだらけひめ)
『性悪猫』に登場する猫。ボロボロの黄色の野良猫だったが、子供に拾われ、飼い猫として落ち着く。飼い猫としてノウノウと暮らす先住猫のくつろいだ様子に嫉妬の念を抱く。誰かが来ると固まり、風が吹くと飛んで逃げる。何も持たないことを恐れなかったが、「持ってしまったことで無くすことが怖くなった」と独白する。「もういちどあの世間に放り出されたらどうしよう。 --どうしようか」とつぶやく。
白い母猫 (しろいははねこ)
『性悪猫』に登場する猫。他の猫に子猫のことを「めんこいですろ?」と聞かれ、「そういうの考えたこと無かった」と答え、「子を産むとき、「母親のわたし」を産み、子を育てる「母親のわたし」も育てる」と語った。これが「なまなかなこと」でないことから、「子がいとしいか見極めているひまがない」とも答えた。