あらすじ
第1巻
3年半の結婚生活に終止符を打った水田のりたまは、心機一転、新生活を開始しようとしていた。そんな彼女が引っ越した新しいマンションに、一匹の猫が散歩にやって来る。猫は部屋に入れるようにのりたまに目で訴えかけ、ソファに腰を落ち着ける。首輪をしていることから飼い猫であると察したのりたまが細かく確認してみると、その首輪には「マミ」という名前が書かれていた。以後、マミさんは頻繁にのりたまの部屋に通ってくるようになり、のりたまの新生活は、まるでマミさんの帰宅を待つ愛人のようなものとなるのだった。(第1話。ほか、13エピソード収録)
登場人物・キャラクター
水田 のりたま
イラストレーターを生業とする女性で、年齢は33歳。「水田のりたま」はペンネームで、本名は「水田ノリ子」。30歳の時に駆け込み結婚したが、最近、その結婚生活に3年半で終止符を打った。自己肯定感が低く、価値がある人間だと認めてほしくて相手の男性に尽くすだけ尽くした結果、見返りがないことに疲れ果てて離婚に至ったという経緯がある。これは結婚生活のみならず、それまでの恋愛においても同様であった。その後に新しいマンションに引っ越し、心機一転バツイチの一人暮らしを開始。そこで猫のマミさんと知り合い、彼女との触れ合いを経て、愛情を押しつけるばかりではなく、人に甘えて相手からも愛してもらうことの重要さを知るようになる。
マミさん
水田のりたまが、新たに引っ越したマンションの部屋に通ってくる猫。「マミ」という名前と電話番号が書かれた首輪をしているため、野良猫ではなくどこかの飼い猫である。ただし、書かれていた電話番号は癖のある字で解読が難しく、なんとか読み取ったのりたまがその番号に電話をしても、電話口の相手には猫に心当たりがなかったため、詳細は長らく不明のままだった。甘え上手で人懐っこく、のりたまの部屋に足しげく通ううちに、彼女に非常にかわいがられるようになる。近隣の野良猫をはじめ、老若男女問わずあらゆる人間を魅了するその行動から、のりたまに人と付き合うための気の持ち方を悟らせるきっかけを作った存在。実は、のりたまのマンションの裏にある家に住むミナミさんの飼い猫。もともと野良猫だったために家を抜け出すことが多く、近所の広い範囲を縄張りとしている。老猫で年齢はすでに20歳を超えており、歯もほとんどない。
ミサエ
フリーライターを生業としている女性で、年齢は33歳。水田のりたまとは親しい友人で、彼女に対してはわりとずけずけとした物言いをする。のりたまの元夫も含めた過去の彼氏をすべて知っており、のりたまの、相手に尽くしすぎて愛情を押し付けるばかりの異性との付き合い方を心配していた。現在、美容師の彼氏と同棲している。
権藤下
水田のりたまの仕事関係の知り合いの男性。年齢は40代で既婚者。離婚直後ののりたまを飲みに誘い、自分と不倫しないかと持ち掛けた。この一件により、離婚したてのアラサーバツイチ女はスキがあってチョロそうに見られているのだと、のりたまが気を引き締めることとなった。
大家
水田のりたまが住むマンションの大家を務める女性。同じマンションの最上階に住んでおり、マンションの管理も大家自らが行っている。マンションはペット禁止だが、大家自身が大の猫好きで猫を飼っているため、マミさんがマンションに入り浸っていることについてもそれほど気にしていない。もらいものをおすそ分けしたりと、のりたまに対しても親切。
野間
水田のりたまの仕事関係の知り合いの男性。バツイチの独身で、のりたまとは波長が合うため、よくいっしょに食事をしたり出かけたりしている。何かと親切で頼りがいがあり、のりたまとは互いに憎からず思い合う仲。のちに再婚を前提にのりたまに告白するが、その際、以降の勘定は割り勘にすることを要求し、前妻への不満を並べ立てたためにのりたまの怒りを買う。この一件については彼女にあやまり倒し、互いに思っていることはちゃんと話をして解決することを前提に、あらためてのりたまとの交際が決定。ほどなくしてマミさんの飼い主が見つかったことを機に、引っ越したのりたまと同棲するようになる。
ブチオ
水田のりたまが住むマンションの近くを縄張りとする野良猫。のりたまがマミさんのために室外に出した置き餌を目当てに、のりたまの部屋にやって来るようになった。強面で図太く、のりたまが餌を出さないと何時間でも部屋の窓を叩き続ける。縄張りがぶつかるマミさんとは当然のように折り合いが悪く、顔を合わせるとケンカに発展する。
ミナミさん
マミさんの飼い主の中年男性。水田のりたまが住むマンションの裏にある一軒家で暮らしている。のりたまが、ブチオとのケンカでケガをしたマミさんを動物病院に連れて行った際、マミさんの飼い主がミナミさんであることが発覚。もともと野良猫だったマミさんが外に出ないようにいろいろ対策していたが、マミさんが網戸を破ったり窓を開けたりして勝手に家を出て行ってしまうことに頭を悩ませており、同時に出て行ったきりなかなか帰ってこないマミさんを心配していた。マミさんがケガをしたことを機に、今度こそマミさんが外に出ないように対策を整える。その後、一度はマミさんの逃走を許したが、それ以降はのりたまがマミさんに会うことはなくなった。
不動産屋
不動産屋で働く女性。マミさんに会えなくなったのを機に、野間と同棲することを決めた水田のりたまが、部屋を探すために訪れた時に出会った。地域猫を保護する活動をしており、猫を飼うことにも理解がある。のりたまに、ペット可で二人暮らし用の物件を探すように依頼を受けるが、部屋を見つける前に子猫を拾ってしまい、のりたまに飼ってもらえないかと打診。無事に了承してもらい、のりたまがペット可の部屋に引っ越すまで、その子猫を預かった。
ハル子
不動産屋が拾った仔猫。ペット可の物件を探していた水田のりたまに飼われることとなり、彼女の物件が決まるまでは、不動産屋が代わりに預かっていた。のちに物件が決まったのりたまに引き取られ、のりたまと野間と共に、二人と一匹の生活を開始する。