愛と絶望を知った化け物の復讐劇
ある日、謎の生命体である化け物がトキの自宅の押し入れの中で自我を持ち、彼の口を奪うことで言葉を話せるようになる。化け物は外の世界をもっと知りたいと考え、トキに二つある目や鼻のうち片方を譲ってほしいと交渉し、トキは言われるままに片方を差し出す。化け物は外の世界について教えるだけでなく、自分を大切にしてくれるトキに対して、愛情や友情に似た不思議な感情を抱き始める。しかしある日、トキは重傷を負った状態で化け物の前に現れ、感謝の言葉を伝えたあと、息絶えてしまう。化け物は咄嗟にトキの身体を奪い、彼になり代わる。トキの姿を手に入れた化け物は、彼を殺した者への復讐を心に誓う。
特殊な係と異常なルールの真実
トキが所属するクラスには、「特殊な係が存在する」「右手にミサンガをつけなければならない」といった独自のルールが存在している。また、ルールを守らなかった者を糾弾したり、ルールに変更があった場合は、「特級会」という会議を開かなければならない。化け物はトキが「なんでも係」という実質的ないじめられ役であり、クラスの団結力を強化するという名目でその役に指名されていたことを知る。トキは、特級会の進行役を務める狭間照が、自分に「なんでも係」を押し付けたのではないかと詰め寄る。しかし、狭間は特級会の進行には完璧な台本があり、何者かによってあやつられているだけだと主張する。物語が進むにつれ、トキを殺した犯人だけでなく、異様なルールに縛られた不気味なクラスの真実も徐々に明らかになっていく。
テンシ様の正体とトキの運命
トキは行動を重ねる中で、「テンシ様」と呼ばれる存在を知ることになる。トキたちが住む地域では、テンシ様は信仰の対象である一方、理不尽な命令に従わなければ罰が与えられる恐怖の象徴でもあった。このことを知る者は限られているが、実はテンシ様は魚の化け物のような姿をしており、いくつかの細胞が集まって形成されている。しかし、現在のテンシ様は一部の細胞を失っており、このままでは衰弱していくことが明らかになる。また、テンシ様は定期的に「お世話役」と呼ばれる子供を必要とし、それは実質的に生贄となっていた。幼い頃のトキと狭間は、お世話役の候補に選ばれた過去がある。そして、トキの人格を持った化け物は、自分が「テンシ様」を構成する細胞の一つである可能性に気づく。
登場人物・キャラクター
岡戸 トキ (おかと とき)
とある中学校に通う3年生の男子。クラスでいじめを受け、家庭でも親に無視されて孤独を感じていた。そんなある日、自宅の押し入れに突如現れた化け物に対し、トキはためらうことなく自分の口や鼻、目を与え、奇妙な友情を育んでいく。しかし後日、何者かに暴行されて瀕死の重傷を負ったトキの体は、化け物によって完全に乗っ取られてしまう。以来、化け物は「トキ」という人格として生きることになったが、肉体は奪われたものの、以前のトキの人格は化け物の中に残っている。本で得た知識を持っているが、化け物は人間社会の常識には非常に疎い。目的のためには暴力を厭(いと)わない冷酷さと、異常事態にも動じない精神的な強さを併せ持つ。体を奪われてからは、以前のおとなしく優しい性格は一変し、強気な発言や暴力的な一面を見せるようになり、周囲に不信感を抱かせることも少なくない。
半部 賢太郎 (はぶ けんたろう)
トキと同じ中学校に通う3年生の男子。トキのクラスメイトで、日常的にトキに対して暴力を振るう傲慢ないじめっ子。幼い頃はピアノが好きな純真な少年で、自分よりも才能のあるトキにあこがれていた。しかし、ケガが原因でピアノを奪われ、トキが「飽きたから弾くのをやめた」と発言したことに、激しい怒りを覚える。その後、「特級会」でクラスを楽しませるレクリエーション係に選ばれたことをきっかけに、トキへの嫌がらせを始める。しかし、トキに反撃されたことで、彼の人格が変わっていることに気づき、以降は積極的にトキとかかわるようになり、頼もしい味方となっていく。
書誌情報
怨讐のレプリカ 5巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2022-03-18発行、978-4065271209)
第2巻
(2022-06-20発行、978-4065281390)
第3巻
(2022-09-20発行、978-4065291245)
第4巻
(2022-12-20発行、978-4065300770)
第5巻
(2023-02-20発行、978-4065307120)







