概要・あらすじ
妻の死をきっかけに、新天地へと引っ越しした初老の小説家・広岡達三は、成り行きから新居にいたお手伝いの女性を雇う事になった。ちょっと偏屈なところがある達三を、持ち前のとぼけた性格で軽くいなしていくお手伝いさん。遅筆の達三に原稿を書かせるため、頻繁に自宅に出入りする編集者の安田も巻き込んで、枯れた小説家の淡々とした日常生活が描かれていく。
登場人物・キャラクター
広岡 達三
知名度はそこそこあるが、著作はあまり売れていない小説家。眼鏡をかけ、いつも気難しそうな顔をした初老の男性。妻の死をきっかけにそれまでの自宅を引き払った際、新居で身の回りの面倒を見てもらうためにお手伝いさんを雇った。クールで厳格そうな態度や見た目ほど偏屈ではなく、全日本文学賞の選考委員に新たな候補者として名前が上がった時は、電話を凝視しながら吉報を待ったり、自身の作品が日本文学アカデミー賞にノミネートされ時には、「どうでもよいのだ」と言いつつ、着信があった瞬間に電話に向かって猛ダッシュするなど、実際はかなりお茶目な性格をしている。 デジタルなもの全般を苦手としており、新しく購入したテレビのリモコンを「リアルでない」という理由によってダイヤル式の古風なものに変更させるなど、度を超えたアナログ人間でもある。 小説家としてはかなりの遅筆で、自宅に原稿の催促に来た編集者の安田を、長時間待たせる事もしばしばある。また、出版契約書の契約文を思わず添削してしまうなど、文章に関しては少々うるさいタイプ。お手伝いさんの事を、なんだかんだでかなり頼りにしている。
お手伝いさん
やや丸っこい体型をした中年女性。本名は不祥。引っ越した広岡達三の新居にいた事から、月10万3000円の給金で雇われる事になった。基本的に物事を深く考えない、大らかでとぼけた性格をしており、雇い主の達三にもまるで物おじせずに接する。面倒見はいいが、飼い犬に食べさせたものと同じ料理を達三にも出すなど、かなり適当な一面がある。 創作料理を得意としており、「チーズ奈良漬のイナゴあえ」というゲテモノを達三に食べさせ、彼を嘔吐させていた。
安田
大手出版社に勤務している眉毛の太い男性。広岡達三の担当をしているが、遅筆な達三にはいつも悩まされている。少々忘れっぽい一面があり、達三から引き取った原稿を電車の網棚に置き忘れ、紛失してしまう事もあった。敏腕編集者として生真面目に仕事に取り組むタイプだが、純文学の「広岡賞」を作るという計画を立てていた時には、達三に自殺を勧めるなど、その努力があさっての方向に向かう事もある。