ドールたちの切ない学園生活
本作は、「ドール」と呼ばれる人形たちの恋愛をテーマにしており、高度なAIを搭載し愛玩用として作られたドールたちは、恋愛を固く禁じられている。ふだんは優秀なドールも、恋をすると「バカ」になると言われ、時には修復不可能なほど壊れたり、本来の性能を発揮できなくなったりするが、ドールたちはタブーと知りながらも恋をしてしまうことがある。物語に人間はほとんど登場せず、優等生ドールであるサーティンの切ない恋模様を中心に、ドールたちの学園生活や変化していく関係性を楽しむことができる。
禁じられた恋と謎の記憶
優れた自立型AIを搭載したドールは、出荷前に「学園」と呼ばれる専門施設で最終調整を受けている。そこでの共同生活において、生徒会長を務めるサーティンは、ドールに禁じられた行為を取り締まる役割を担っている。ドールは恋をすると、システムが不安定になり、失恋すると自壊、つまり「死」に至ってしまう。しかし、サーティンの努力にもかかわらず、校内ではドール同士の恋愛が絶えない。現状を嘆くサーティンだが、彼女自身も人間である伊邪那美鎖に片思いをしており、その感情が恋であるとは認められずにいた。しかし、周囲のドールたちには、サーティンが鎖に思いを寄せていることは明らかだった。さらに、サーティンは身に覚えのない謎の記憶のフラッシュバックにも悩まされており、鎖への思いと謎の記憶という二つの問題に苦しんでいた。
恋するドール同盟と明かされる真実
サーティンをよく知るドールのトゥエルブは、自ら立ち上げた「恋するドール同盟」の仲間たちと共に、サーティンを同盟に引き入れようと画策する。トゥエルブは、同盟の存在を黙認することと、計画している「告白テロ」の実行を見届けることをサーティンに要求する。サーティンは条件付きで彼らの活動を認め、同じく同盟員で別のドールに片思いをしている「灰かぶり」とも友人になる。この告白テロをきっかけに、同盟の活動はドールたちの運命に大きな影響を与えていく。物語の序盤はギャグを交えたラブコメディとして展開されるが、ストーリーが進むにつれてドールたちの秘密や人間の企みが明らかになり、次第にシリアスな雰囲気に変わっていく。学園内の事件を通じて明かされる悲しい真実や、恋に悩むサーティンたち個性的なドールの恋の行方も大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
サーティン
ドールの調整施設「学園」で生徒会長を務める女性型ドール。サイドに長い銀髪のボブスタイルと青い瞳、兎耳が特徴で、中性的な魅力を持っている。ふだんは優秀でしっかり者だが、実はドール開発責任者の鎖に密かに好意を抱いている。しかし、まじめで頑固な性格のため、その気持ちを恋愛感情として認めることができずにいる。鎖の前では緊張してしまい、時おりポンコツな一面を見せることもある。また、サーティン自身の記憶にはないほかのドールらしき記憶がフラッシュバックすることがある。かつては故障が多く、鎖のメンテナンスを頻繁に受けるうちに、彼に惹かれていく。
トゥエルブ
ドールの調製施設「学園」で生徒会副会長を務める男性型ドール。紺色のショートヘアに眼鏡をかけた、知的な雰囲気を漂わせた美少年。ドールが恋をしても壊れないように訓練するべきだという革新的な思想を持っている。校則で恋愛が禁じられている現状に反発し、有志と共に秘密組織「恋するドール同盟」を結成し、そのリーダーを務めている。生徒会長のサーティンに目をつけ、同盟に引き入れようと画策しているが、実はサーティンに思いを寄せていた。
その他キーワード
ドール
人間の脳神経系に非常に似た電子頭脳を持つ人形の総称。主に人間の愛玩用に設計されている。人間嫌いの天才科学者、鎖が開発の責任者を務めている。ドールたちは大半が美少年や美少女の姿をしており、瞳の中央に見えるダイヤ型の模様が共通の特徴となっている。それぞれのドールは、制作者によって設定された個性と、優れた自立型AIによる自我を有している。バックアップは可能だが、一度壊れたデータの完全な再現は不可能。また、ドールの電子頭脳は恋愛によって強い負荷を受けると不調をきたし、性格や容姿が変化することがある。さらに、失恋するとその負荷に耐えきれず、自壊してしまうという致命的な弱点を抱えている。このため、すべてのドールは恋愛行為全般を禁じられている。万が一、修復不可能な機能障害が確認されたり、製品カタログから逸脱した状態になったドールは、学園の生徒会によって焼却処分されることになっている。
書誌情報
恋愛自壊人形 恋するサーティン 4巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスJOKER〉
第1巻
(2022-06-22発行、978-4757579729)
第2巻
(2022-11-22発行、978-4757582132)
第3巻
(2023-06-22発行、978-4757586222)
第4巻
(2024-05-22発行、978-4757591974)







