あらすじ
魔界に住む吸血鬼のジークフリート・K・ローゼンハインと弟のテオドール・K・ローゼンハインは、ある日街から帰宅した際に、荷車に乗り込んでいた人間の少女を発見する。突然の厄介事に困惑するジークフリートをよそに、ペットを欲しがっていたテオドールはその人間の少女に「ルナ」と名づけ、ジークフリート邸で保護することになる。当初はルナとかかわることを避けようとしていたジークフリートだったが、魔物の言葉を話すことができず、自分に子犬のようにくっついて離れないルナを世話するうちに、ジークフリートは徐々にルナと情を交わしていく。さらにルナと接するうちに、彼女が記憶を消去され、知能を低下させるキトフィリアと呼ばれる劇薬を打たれていることを知ったジークフリートは、今を楽しく過ごさせるため、ルナに精一杯尽くすようになる。そんな折、魔界で人間を飼う魔物を取り締まる監察官のバンビが、ジークフリート邸まで家宅捜索にやって来た。家宅捜索の過程でルナを保護していることが発覚しそうになるものの、ルナの血を吸う振りをするというジークフリートの機転で難を逃れることに成功する。しかし、ひそかにジークフリートのことを疑っていたバンビは、屋敷の外に出たルナと、それを追ってきたジークフリートを拘束し、ジークフリートを尋問する。自らの命を差し出し、ルナの命を救おうとしたジークフリートの覚悟に感じ入ったバンビは、ジークフリートを監視下に置き、しばらくの間いっしょに暮らして彼らの様子を見ることにする。一年後、バンビの教育で魔界の言葉を覚え、すっかり淑女として成長したルナは、ジークフリートに自分の素直な気持ちを伝えることを決心するが、街に出かけた際に謎の紳士によってどこかへと連れ去られてしまう。ルナを連れ去ったのが魔界の宰相であり、叔父であるヴェンデルであることを知ったジークフリートは、テオドールと共に危険を顧みずに彼の城へと乗り込み、ヴェンデルと対峙。万難を排してルナを連れ戻そうとする。
登場人物・キャラクター
ジークフリート・K・ローゼンハイン (じーくふりーとけーろーぜんはいん)
魔界に住んでいる吸血鬼で、見目麗しい美青年。無表情で口数は少なく、どんな事態にも冷静に対処できるクールな性格をしている。名家の出身だが、幼い頃に両親を失っており、弟のテオドール・K・ローゼンハインを育てながら、必死で家名を守ってきた。テオドールからは「ジーク」と呼ばれている。保守的で変わったことや変化を好まないため、屋敷に迷い込んだ人間の少女であるルナを保護することになった際も、自らは彼女に近づこうとはしなかった。しかし、ルナの純真無垢な性格に触れているうちに情が移り、ルナのことを大事な家族の一員として迎え入れるようになる。ルナのことを一人の女性として愛し始めるが、彼女を吸血鬼にするつもりはないため、血を吸うことはなく自制している。監察官のバンビによってルナの正体が人間であると見抜かれた時には、自分の命を差し出してルナの命を救おうとするなど、心の内に秘めた情熱の炎は誰よりも熱い。
テオドール・K・ローゼンハイン (ておどーるけーろーぜんはいん)
魔界に住んでいる吸血鬼で、非常に美しい顔立ちをした少年。明るく元気で、好奇心が旺盛な性格をしている。愛称は「テオ」。両親を早くに失い、兄であるジークフリート・K・ローゼンハインに大切に守られて育ったため、ジークフリートのことを誰よりも敬愛している。ペットをほしがっていた際に、偶然人間の少女であるルナが屋敷に迷い込んできたため、テオドール・K・ローゼンハインの強い意向で彼女を保護することになった。ジークフリート同様、ルナのことを家族として大事にしていたが、いつしかルナのことを一人の女性として愛してしまい、彼女の血を吸いたいという吸血鬼としての本能と衝動に苦しめられることになる。
ルナ
人間の女性で、美しい金髪をした可憐な少女。疑うことを知らない純真無垢な性格をしている。ジークフリート・K・ローゼンハインの屋敷に来た荷車の中にまぎれ込んでいた際に保護された。言動が見た目よりもかなり幼く、魔界の言葉もほとんどしゃべることができない。そのため、保護したジークフリートやテオドール・K・ローゼンハインが教育を施し、大事な家族として迎え入れられる。保護された当初からジークフリートに懐き、男性としてジークフリートを愛するようになる。記憶を消去され、知能を低下させる劇薬キトフィリアを打たれており、背中にその証拠となる紋章が浮き出ている。
バンビ
監察官のゾンビで、性別は男性だが内面は女性。明るく陽気な性格で、頭の回転が速い切れ者。魔界で人間を飼育している魔物を取り締まっており、疑いのある魔物が住んでいる屋敷には家宅捜索に入っている。ジークフリート・K・ローゼンハインに疑いを抱き、彼の屋敷に家宅捜索に入った。一度は屋敷をあとにするものの、執念深く捜査を続け、ルナを保護していることを突き止めた。その後、上位の魔物である吸血鬼のジークフリートが自分のようなゾンビに頭を下げてでもルナをかばおうとする姿に感じ入り、彼らといっしょに暮らしてジークフリートの本気度を見極めようとする。
ヴェンデル
吸血鬼の紳士。魔界の宰相を務めている傑物で、ジークフリート・K・ローゼンハインの叔父。吸血鬼および魔物としてのプライドが高く、魔界のルールを破る者にはいっさい容赦しない。ジークフリートが人間であるルナを匿っていることを知り、彼女をさらって吸血鬼にしようとしていた。過去に人間の女性を愛していたが、その女性を失っており、このことが大きなトラウマとなっている。