概要・あらすじ
瀬能茉莉子の親友芦原里美の祖母が、大島近海の戸蔵島の別荘山神邸で自殺を遂げた。瀬能茉利子は親族会議のために別荘を訪れる芦原里美の家族と同行することになった。霊感が強い瀬能茉利子と芦原里美は、一見のどかな漁村を取り巻く奇怪な瘴気に気づく。領主芦原家の古くおぞましい因縁が明らかになるに連れて、瀬能茉利子たちに恐ろしい霊現象が起こるのだった。
登場人物・キャラクター
瀬能 茉利子 (せの まりこ)
強い霊能力を持つ。母瀬能良子のお腹にいる際に、地縛霊芦原早苗の攻撃に屈しそうになった母親を助けている。幼少期に列車事故を予言するなどあまりに強力な能力のため、記憶と共に力を封印されていた。山神邸での調伏の際、母瀬能良子によって封印が解かれ、戸蔵島に蓄積された負のエネルギーの塊である悪霊と対峙する。
瀬能 隆司 (せの たかし)
瀬能茉利子の父。画家を目指していたが、子供ができたために断念。瀬能良子の兄瀬能英良を頼って田舎に引っ越し、花屋に就職する。気晴らしにと誘われた信州旅行で廃屋に魅了され、再び絵を描き始める。廃屋の地縛霊芦原早苗に取りつかれて、絵を完成させると廃屋へと向かった。霊能者である瀬能良子によって助け出された。
瀬能 良子 (せの りょうこ)
瀬能茉利子の母。兄瀬能英良の紹介で瀬能隆司と知り合い、結婚する。瀬能隆司が再び絵を始めたが、芦原早苗の霊に取りつかれていたことを知ると、兄英良と共に廃屋から瀬能隆司を救出した。霊能力を継いだ瀬能茉利子のあまりに強力な霊能力を封じていた。
瀬能 英良 (せの えいりょう)
瀬能良子の兄。田舎で美術教師を生業としている。瀬能隆司を妹の瀬能良子に紹介したこともあって、なにかと妹夫婦の面倒をみている。
芦原 里美 (あしはら さとみ)
瀬能茉利子のクラスメイト。霊能力の持ち主で、自殺した祖母の葬儀も拒絶するほど戸蔵島に行くことを拒んだ。山神邸の処理などをどうするかの家族会議には出席せざるを得なくなり、不安を打ち消すため瀬能茉利子の同行を求めた。芦原隆に遭って、意識を外に解き放ちの中で芦原早苗が、毒薬を混入する瞬間を目撃する。
芦原 早苗 (あしはら さなえ)
信州の山奥の廃墟に居た地縛霊。瀬能隆司に取りつき、絵を描かせた。絵が完成した際に、そのまま瀬能隆司を連れ去った。その後瀬能良子の霊能力に倒される。その正体は芦原里美の先祖で、大正3年に起こった山神邸毒薬殺人事件の犯人。その後、実の兄である芦原信克と近親相姦の関係になり、これを知った芦原里美の父の祖父である芦原耀造によって、斧で惨殺された。
芦原 隆 (あしはら たかし)
芦原里美の従兄弟。海童に遭遇後、幻聴に悩まされる。最終的に霊に屈してしまい、芦原里美に襲い掛かる。
玉城 濤河 (たましろ とうが)
芦原里美の父親が招いた霊能者。山神邸で発生する霊現象の原因を探りに来た。火事で妻の玉城倫子と息子の玉城豊を亡くしている。芦原隆の襲撃に遭い、台風が接近する中で霊の調伏を決意する。
芦原 亜希 (あしはら あき)
芦原里美の親戚。派手な印象を与える女性。海水浴に行った先で、海童と遭遇する。海童と遭遇した後、山神邸を手放すことに反対するなど、性格が一変する。山神邸に存在する霊に取りつかれ、家を守るために、芦原里美に毒をもり、芦原甲次郎を誘惑する。
芦原 英輝 (あしはら えいき)
海童の言い伝えを信じず、海水浴に出かけた先で、日没後も残って花火をしようと言い張る。芦原里美に下心から接近するも、きっぱり拒絶される。海童に遭遇後、取りつかれて夢遊病のようになり、芦原真弓を撲殺した。
芦原里美の父 (あしはらさとみのちち)
霊能者玉城濤河を招聘し、山神邸ひいては芦原家にまつわる因縁の原因を解こうとする。
阿比沼天膳 (あびぬまてんぜん)
江戸末期の戸蔵島代官。原因は不明だが気がふれて、当時の島民の大多数を虐殺した。八丈島に残っていた歴史書に、一村落全員を海に追い落としたと記される。最後は自刃して果てた。その場所が代官所で、現在の山神邸の展望台に位置している。
還城楽 (かんじょうらく)
戸蔵島に伝わる祭りに海童と共に登場する天狗を指す。もともとは難破して戸蔵島に流れ着いた外国人が正体。土着信仰に基づく偶像を行者岩に作った。人の力が無くては発現しない負の力を覚醒する発端を作った。
場所
山神邸 (さんじんてい)
『悪霊』に登場する建造物。芦原家所有のいわくつきの別荘。戸倉島代官所のあった場所に、明治期に奇行で知られた子爵姉小路是高が現在の母屋部分と、行者岩に位置する展望台を建設した。残りの部分は、次の持ち主である芦原象二郎が際限なく増築した結果である。これは家に起こった凶事を止めるためには、家を完成させないことという祈祷師たちの言い分を信じての所業だった。 大正3年の夏に、芦原里美の祖父芦原耀造とその弟芦原信克、当時14歳だった祖父の妹芦原早苗だけが生き残り、館の住人全員が同日に毒殺されている。さらに昭和11年に生き残っていた三人が同日に亡くなっている。その後祖父がほかの2名を殺害し、館に火を放ち自殺。
その他キーワード
海童 (うみわろ)
『悪霊』の用語。戸蔵島に古くから伝わる鎮魂祭に登場する。祭りの当日は日没から翌朝まで一歩も外に出てはいけない決まりになっており、これを破った瀬能茉利子達が遭遇する。玉城濤河によればその正体は土佐衛門である。