「都市伝説」を題材にした怪奇アクション
「ベッドの下の男」「口裂け女」「人面魚」など、誰もが一度は聞いたことがある「都市伝説」は、人を介して「寓話」に成長する。本作はそんな「都市伝説」と「寓話」を題材にした怪奇漫画である。なお、単行本巻末には、各話の題材となった都市伝説の解説が掲載されている。ストーリーは一話完結が基本だが、探偵・亜想大介に救われた平沼カナエが探偵事務所の助手になったり、亜想を監視する者がいたりするなど、ストーリー全体は緩やかに繫がっている。また、亜想は人間離れした力を持つ寓話探偵で、拳銃や体術で「寓話」に立ち向かうため、アクション要素も強い。
「寓話」と「寓話憑き」
「都市伝説」は生きている。人間が「都市伝説」を信じてしまうと、それらは現実となって目の前に現れる。そんな不思議な力を持つ物語を「寓話」と呼び、物語に取りつかれた者を「寓話憑き」という。寓話探偵を名乗る亜想自身も「寓話憑き」であり、「百回続けてしゃっくりをすると死ぬ」と「トイレの花子さん」の二つの寓話に憑かれている。「寓話」と「現実」の境界に立つ亜想は、超人的な力を持ち、時には現実をねじまげることも可能である。しかし、その力を使い続け、境界を超えてしまうと、自らが「寓話」になってしまう危険をはらむ。「コックリさん」のエピソードで、寓話化した亜想を現実に引き戻したのは、カナエだった。本作は、寓話退治を通じて、次第に惹かれ合っていく亜想とカナエの絆も描いている。
人間の感情を描いたドラマ
本作は、寓話探偵の活躍を描くホラーアクションだが、人間のエゴや愛情・悲哀などの感情を描いた人間ドラマでもある。例えば「口裂け女」のエピソードでは、口が大きいことにコンプレックスを持つ女子高生が、彼氏の誠意のない嘘により「寓話憑き」になってしまう。また「ピアスの穴と白い糸」では、「白い糸の寓話」に憑かれ、視神経をはじめ、あらゆる感覚器官が麻痺して生命の危機に陥る少女が登場する。彼女の精神に潜水(ダイブ)した亜想が見たものは、幼少時の彼女の記憶であり、大喧嘩をする両親の姿だった。
登場人物・キャラクター
亜想 大介 (あそう だいすけ)
亜想探偵事務所を経営する元刑事の男性。「寓話」を退治することができる寓話探偵で、「寓話」の近くにいるとしゃっくりが出る体質。「寓話」に関する事件にはコリゴリしていたが、平沼カナエの相談を受けたことがきっかけで、再び寓話探偵として活動を始める。自身も「百回続けてしゃっくりをすると死ぬ」と「トイレの花子さん」という二つの「寓話」に憑かれており、超人的な能力を持つ。助手として居着いたカナエと、寓話である花子さんと共に、事件を解決していく。なお、現実の女性では性機能が働かないため大量のエロ漫画を所蔵している。
平沼 カナエ (ひらぬま かなえ)
茶髪のショートカットが特徴の少女。「ベッドの下の男」の「寓話」に取りつかれ、ネットで知った亜想探偵事務所を訪れる。亜想に助けられた後は探偵事務所に居座り、助手となる。一緒に過ごすうち、次第に亜想に惹かれていく。「トイレの花子さん」の「寓話」である花子とは仲よしである。
花子 (はなこ)
「トイレの花子さん」の「寓話」。前髪がそろった長髪が特徴の小さな女の子。亜想大介に取りついており、亜想探偵事務所に常駐している。トイレがある所ならどこへでも移動が可能。ただし、トイレからは遠く離れることはできない。「寓話」を見てくれない虫や動物を嫌い、人間を好む。特に平沼カナエが大好き。機械好きで、さまざまな対寓話用プログラムを開発して亜想をサポートする。語尾に「~ワサ」をつけて話す。
書誌情報
花子と寓話のテラー 全4巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2004-10-29発行、978-4047136786)
第2巻
(2005-01-22発行、978-4047136984)
第3巻
(2005-06-25発行、978-4047137332)
第4巻
(2005-10-26発行、978-4047137561)







