悲鳴伝

悲鳴伝

西尾維新の小説『悲鳴伝』のコミカライズ作品。人類の3分の1が死滅した世界を舞台に、主人公の空々空と人類の根絶を望む地球との戦いを描いた戦記シリーズの一作にあたるが、本作においては地球の尖兵である怪人、地球陣との戦いよりも、空々の所属する地球撲滅軍での内輪揉めに重きが置かれている。「ヤングマガジンサード」2016年第1号から2018年第1号にかけて連載された作品。

正式名称
悲鳴伝
ふりがな
ひめいでん
原作者
西尾 維新
漫画
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
バトル
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
既刊4巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

超常現象、大いなる悲鳴により、人類の3分の1が絶命してから半年。何事にも感動しない少年の空々空はカウンセリングを担当した飢皿木から、ヒーローの素質が備わっている事を指摘される。同日、空々は謎の少女、剣藤犬个に出し抜けに唇を奪われ、薬物の効果で昏倒しているあいだに家族を惨殺されてしまう。しかし、空々はまるで意に介す事なく現実を受け入れ、剣藤と謎の紳士、牡蠣垣閂に導かれ、地球撲滅軍の本部へと向かう。そして、大いなる悲鳴が地球から人類への攻撃である事、彼らが悪しき地球を打倒するための組織である事、自身に地球の尖兵である怪人、地球陣の見極めに有用な能力が備わっている事を理解するのだった。こうして軍に引き込まれた空々のもとに飛び込んだ最初の任務は、地球陣、淀理川美土里の殺害。空々は透明化スーツ、グロテスクを活用し、初仕事を完遂する。

第2巻

地球撲滅軍の用意した快適な生活を享受する空々空のもとに、彼の世話係となった剣藤犬个は、かねてより愛玩していた少女の左在存を連れ込んだ。空々には在存が人間に見えたが、剣藤は在存を犬と認識し、空々にも飼育への協力を求める。困惑する空々を尻目に在存は犬として飼育されていたが、剣藤の不在の際、空々に自身の正体を明かす。在存は軍の秘密部署、不明室で行われた実験により、犬と認識される身体に改造された人間だという。そんな二人と1匹の奇妙な同居生活は、3週間ほど穏やかに経過するが、剣藤が海外任務に向かったある日、在存は脱走を決意する。しかし、軍の戦士、氷上法被の攻撃により、在存は落命する。在存の逃亡を幇助していた空々は幾重にも奇策を張り巡らせて法被を撃破する事に成功するが、軍務規定違反を責められ、身柄を拘束されてしまうのだった。

第3巻

空々空は騒動の責任を問われ、査問会議に掛けられる。空々を高く評価する上司の牡蠣垣閂すら匙を投げる絶望的状況だったが、空々は左在存に脅されていたという姿勢を崩さず、地球撲滅軍の秘中の秘である不明室の名を引き合いに罰を免れる。在存を失ってパニックに陥った剣藤犬个に対しては、自らを新しいペットとして抱いて眠るように提案し、心のケアを行った。こうして安定を取り戻した剣藤は空々を信頼し、自身の本当の任務が空々の監視である事を暴露する。距離の縮まった二人のもとに、空々の友人にして軍の実力者、花屋瀟が共同任務を持ち込む。それは園児のほとんどが地球陣と目される哲人幼稚園の送迎バスを襲撃するというもので、空々には地球陣の選別が任された。しかし、空々は任務の難易度、殺害を担う剣藤と花屋の心理的負担を考慮し、「全員が地球陣」と噓を吐く。こうして始まった虐殺を涼しい顔で眺める空々のもとに地球を名乗る子供が現れ、次の大いなる悲鳴が1年後に迫っている事を告げた。任務が終わると、噓を見破っていた花屋は英雄に悪影響を与えたという建前で、剣藤の処分を発令。人間同士の殺し合いが幕を開ける。

第4巻

空々空飢皿木の助言を受けて、地球撲滅軍の刺客、瀬伐井鉈美の魔の手から剣藤犬个を救出する。そして、軍を抜けて剣藤と二人で地球との戦いを続けていく事を決意する。当面の保身を図りたい二人は軍の類似団体、絶対平和リーグへと亡命を打診。手を取り合って組織の追撃を振り切り、あとは迎えのヘリコプターの到着を待つのみとなっていた。一方、空々に対する執着を暴走させた花屋瀟は空々と剣藤に肩入れしたという理由で、自身のカウンセリングを担当した恩人の飢皿木を殺害してしまう。そして、見えない剣と透明化スーツ、グロテスクを装備し、自ら剣藤の処分に動き出した。ヘリポートにて、不可視の戦士となった花屋と空々の最後の戦いが始まる。

登場人物・キャラクター

空々 空 (そらから くう)

私立中学校の名門野球部に所属する少年。年齢は13歳。黒髪で、エポレット付きの青いジャケットを常用している。一人称は「僕」。現実への適応性が高く、何事にも感動しない才能を持つ。ふだんは喜怒哀楽を演じて自らの異常性を隠していたが、飢皿木に人間性の欠如した人間が持ち得るヒーローの素質を見出され、地球撲滅軍のスカウト対象となった。スカウトの過程で両親と二人の弟を含む関係者の大半を殺され、天涯孤独となってしまうが、当人は淡々と事実を受け入れたばかりか、家族を手に掛けた剣藤犬个が世話係に付く事を許容した。あてがわれた高層マンションで剣藤との同棲を始めた。第九機動室に所属してからは、怪人、地球陣の正体を視認しても悪影響を受けない強みを活かし、割り振られた任務を滞りなく実行。名実共に英雄として認められる。しかし、左在存に由来する騒動を皮切りに、軍の人間と争う機会が多くなり、味方殺しの英雄と自嘲するようになった。なお、組織から透明化スーツ、グロテスクを支給されているが、利用したのは初任務のみ。戦闘では専ら策略で相手を出し抜き、勝利をもぎ取るスタイルを貫いている。

剣藤 犬个 (けんどう けんか)

地球撲滅軍第九機動室に所属する少女。コードネームは「寸刻み」。2年前、高校1年生の頃に地球の叫びが聞こえない体質だと判明し、これをきっかけに軍に招かれ、怪人、地球陣の退治に奔走するようになった。しかし結果が伴わず、現在は「出来損ない」「失敗した英雄」と揶揄されている。任務に臨む際には髪を朱色のリボンでポニーテールに括り、差し色に緑を配した白い剣道着を着用し、日本刀の破壊丸を竹刀袋に入れて携行する。ただし、平時には髪を解いている事が多く、パンツルックの着こなしをするため、印象が大きく変わる。一人称は「私」。殺しが苦手で、精神ブロック剤は必需品となっている。任務後は悪夢に魘(うな)される事も多く、左在存を抱きしめる事で精神の均衡を保っていた。空々空のスカウトに際しては、彼の家族の殺害を担当した。事前に空々を無力化する目的で行った薬の口移しが、ファーストキスになってしまった事を後々まで気にしている。その後は監視役として空々と同棲していたが、在存の死を経て関係が変化し、空々を抱いて眠るようになる。のちに軍から命を狙われ、右腕を欠損。空々と共に対地球組織、絶対平和リーグへの亡命を試みる。

花屋 瀟 (はなや しょう)

地球撲滅軍第九機動室の副室長を務める少女。コードネームは「蒟蒻」。白髪および銀髪で、ベリーショートの髪型をしている。ジャージやスニーカーなどのスポーティーな装いを好み、下着もスポーツタイプを着用している。ARMYと文字の入ったパーカーを愛用し、フードをかぶっている事が多い。また、見えない剣で武装している。一人称は「私」。潑剌として見えるが、実際は自己評価が低く攻撃的な性格。組織内では氷上法被に似たアンチヒーロー、法被に対抗できる唯一の戦力と評価され、正面から迫る車両を軽々と両断するなど、描写からも技量の高さが窺える。空々空とは幼なじみで、過去には少年野球団の先輩として遊撃手のポジションを争った事もあるが、競り負けた事は一度もない。引退してからも友人関係を維持していたが、空々へ対する執着を拗(こじ)らせ、彼を軍へと引き入れるべく、英雄候補者として推薦。花屋瀟自身も空々の友人の抹殺に関与した。のちに空々と剣藤犬个の関係に憤慨し、空々に悪影響を与えたという建前で、牡蠣垣閂に剣藤の処分を上申。自らも剣藤の始末へと動き出す。なお、空々や剣藤とは異なり、軍へ所属してからも通学を続けていた。

牡蠣垣 閂 (かきがき かんぬき)

地球撲滅軍第九機動室の室長を務める男性。コードネームは「茶飲み話」。一房だけ前髪を残したオールバックに眼鏡をかけて、スーツを着用している。一人称は「私」。言葉遣いは丁寧ながら、任務のためであれば民間人でも容赦なく射殺する非情さを持ち合わせている。また執務室はもとより、車内から他人の家まで、時と場所を選ばずさまざまな場面で、持参したティーカップから紅茶を摂取している。剣藤犬个と共に空々空のスカウトを実施。軍の存在意義と思想を説き、高級マンションをあてがうなど破格の待遇で空々を第九機動室に迎え入れた。空々が淀理川美土里の殺害任務を遂行した際には、組織の歴史上で最も鮮やかに怪人を殺したとして、改めてその手腕を評価した。空々の素質を認める一方で、剣藤に空々の監視と万が一の際の処分を命じるなど、警戒は怠っていない。なお、剣藤を伴っての任務が多く、海外に同伴させる事もあったが、胸中では子供を見下しているとして、剣藤からは内心で嫌われていた。のちに花屋瀟の上申した剣藤の処分を受け入れた事で、剣藤から痛罵と共に訣別を言い渡される。

氷上 法被 (ひがみ はっぴ)

地球撲滅軍第九機動室に所属する若い男性。コードネームは「火達磨」。髪は長く、発火能力の発現時には天を衝くように逆立つ。フード付きジャンパーと手袋、ブーツという出で立ちで、特注のバイクをノーヘルメットで乗り回している。一人称は「僕」。物事を「オモシレー」と「ツマンネー」に二分化し、前者を追い求める悪癖の持ち主。街中でチンピラを焼き殺すなど問題行動が多く、牡蠣垣閂に怪人を倒すより火達磨を倒した方が人類の利益になるとまで言わしめた。肉体改造により「炎血」と呼ばれる特殊な血液を宿し、発火現象を起こす事ができる。その火力は凄まじく、指先から火球を放つ「ファイヤー・ボール・アース」という技は人体は疎(おろ)か、柱すら貫通する。その気になれば天候に影響を与える規模の火柱を上げる事も可能だが、「炎血」を滾(たぎ)らせるには感情を昂ぶらせる必要があり、怒りを封じられると無力化されてしまう。空々空の監視を担当した際、無断外出した空々を襲撃するが、誤射により左在存を殺傷。その後、驕(おご)りから空々に大敗を喫し、再起不能に追い込まれてしまった。なお、空々の通う学校の焼却を担当した人物でもある。

瀬伐井 鉈美 (せきれい なたみ)

地球撲滅軍第九機動室に所属する若い女性。コードネームは「恋愛相談」。緩くウェーブしたセミロングヘアにしている。フリル付きのブラウスにミニスカート、ホットパンツなどの足が出るボトムスを合わせ、シックなデザインのコートを羽織り、ハイヒールを履いている。また、耳には十字星のようなデザインのピアスを付けている。一人称は「わたくし」で、お嬢様言葉を使用しているが、性格は悪辣。特に剣藤犬个とは折り合いが悪く、お互いに軽蔑し合っている。裏方が主任務で、「政治犯」と呼ばれる人物に拷問を行っている。しかし、日本刀の破壊丸で武装した剣藤の不意打ちを捌いて反撃に転じるなど、身体能力も高い。剣藤の処分命令が下された際には、切断王と呼ばれる手投げ斧で剣藤の右腕を切断。討ち取る寸前まで追い詰めたが、救援に駆け付けた空々空に敗北した。

飢皿木 (きさらぎ)

飢皿木診療所の所長を務める男性。顎と口角に薄く髭を生やし、白衣姿で眼鏡をかけている。一人称は「私」で、義理堅い性格をしている。左右左危とのあいだに娘の左在存をもうけているが、右左危とは何年も前に離婚しており、交流は断絶している。しかし、地球撲滅軍とのつながりは残っており、空々空のカウンセリングを行って、何事にも感動しない彼の性質が人類の救済に役立つものだと判断し、英雄候補者として推挙した。これをきっかけに空々は家族や友人を失ってしまうが、自己を偽って生きる苦しみから解放してやりたいという意味も含んでの行動であり、その後も空々の様子を気に掛けている。また、花屋瀟の危うさにいち早く気づき、彼女の味方であろうと努めていたが、在存が犬に改造されていた事実に直面すると、娘を人間として扱ってくれた空々、娘の面倒を見てくれた剣藤犬个への肩入れを強めるようになる。花屋が剣藤の処分命令を発した際には、剣藤の救出に踏み切れない空々の背中を押し、彼らが組織からの逃亡を決意した際には、資金提供などの支援を行った。しかし、これらの行動が花屋の怒りを助長させ、彼女の内に潜む狂気を加速させてしまう。

左 右左危 (ひだり うさぎ)

地球撲滅軍不明室の室長を務める女性。左在存の母親。左目尻に泣きぼくろがあり、首の後ろで無造作に長髪を束ね、白衣を着用している。非人道的な実験を主導するマッドサイエンティストで、全人類を守るという大義を掲げて、己の娘すら被験体として利用した。在存の父親である飢皿木とは婚姻関係にあったが、離婚して久しく、既に交流は途絶えている。喫煙者でもある。

左 在存 (ひだり ざいぞん)

剣藤犬个が飼育する少女。コードネームは「犬歯」。前髪を切り揃えたロングヘアで、手の爪は鋭く、手錠で後ろ手に拘束されている。着衣はボーダー柄のワンピースと下着だけで、室内外を問わず裸足。また、ハイテク首輪、共鳴環を身につけている。一人称は「俺」で、ぶっきらぼうな性格をしている。2年ほど前、母親の左右左危が主導する不明室にて苦痛を伴う改造を施され、周囲に犬と認識される身体になってしまった。周囲の認識上では、断耳と断尾を済ませたミニチュアピンシャーのような犬種で、ボーダー柄のドッグウェアと首輪を身につけた姿に見られている。現在は索敵能力を備えた犬として、剣藤にあてがわれている。剣藤からは「狼ちゃん」の愛称で親しまれ、心の支えとなっているが、あくまでも犬と認識されているため、与えられる食事はドッグフードとミルクのみ。空々空、剣藤と3週間ほど同居していたが、地球撲滅軍に管理されている状況をよしとせず、脱走を決意。在存の正体を見破り、人間として扱ってくれた空々の協力を取り付けるが、氷上法被に阻まれ、自由を手にする事は叶わなかった。なお、年齢は人間換算で9歳。

落雁 ギリー (らくがん ぎりー)

地球撲滅軍開発室に所属し、広報を担当する女性。コードネームは「再開発」。ミディアムヘアで、右の口許にほくろがある。スーツ姿で、眼鏡とチョーカーを身につけ、ハイヒールを履いている。組織の総本部を訪れた空々空を開発室に案内し、透明化スーツ、グロテスクの機能を説明した。ほかにも剣藤犬个への左在存の引き渡し、牡蠣垣閂への業務連絡などを担当している。左右左危とも面識を持っているが、彼女の管理する不明室の活動内容に関しては把握しておらず、在存が人間である事にも気づいていなかった。

脇見運転 (わきみうんてん)

地球撲滅軍第九機動室に所属し、専属運転手を務める男性。コードネームは「脇見運転」。スキンヘッドで、スーツを着用している。支給品は「刑車両」と呼ばれる専用車で、外観はハマーH2のストレッチリムジンに酷似している。自動車での移動が必要となる場合に運転を任される事が多く、空々空も頻繁に彼の運転する車に同乗している。剣藤犬个の処分命令が下されると、これに従って空々の運転する車を追走。しかし、剣藤の放った手斧、切断王を頭に受け、複数の車両を巻き込む大事故を発生させてしまう。

地球 (ちきゅう)

人類が繁栄し、拠り所とする惑星。人類を滅亡させる目的で怪現象、大いなる悲鳴を引き起こし、大量の人間を無差別に死滅させたと目されている。また、人類そっくりに擬態した地球陣と呼ばれる怪人を人間社会に潜り込ませている。一方で、人間以外の生物が巻き添えとなって死滅しないよう、人間への攻撃は加減して行っている。地球撲滅軍が哲人幼稚園で行った虐殺の最中、見張りを務める空々空の前に星柄のコートと球形のペンデュラムを身につけた子供の姿で出現。次の大いなる悲鳴が1年後に迫っている事を告げた。また、空々に対して「仲間に殺されないように」と忠告めいた言葉を残している。

淀理川 美土里 (よどりがわ みどり)

株式会社ハードラック工業に勤める女性。総合経理室の室長を務め、部下に桁峰という若手の男性社員がいる。「時は金なり」がモットーのきびきびとした人物だが、その正体は人間に擬態した怪人・地球陣と目されている。子供の誕生日の準備を済ませてから出社するが、業務終了を待つ事なく、オフィス内で空々空に頭を踏みつけられて昏倒。のちに死亡が確認された。

集団・組織

地球撲滅軍 (ちきゅうぼくめつぐん)

悪しき地球を打倒するべく活動する秘密機関。英語表記は「the earth eradication army」。ロゴにはTEEAの略号が採用されているが、読み方は不明。国内の対地球組織としては最大の規模を誇り、23区内に総本部を設置している。その敷地面積は専用のシャトルバス乗り場が用意されるほど広い。空々空の所属する第九機動室のほか、ハイテクアイテムの製作を担う開発室、秘密部署、不明室などが登場している。また、一般人に対して存在が伏せられた秘密機関でありながら、広報担当者も存在する。将来的に人類を救えるならば、ある程度の犠牲は仕方ないという危険な思想が罷り通っており、空々や剣藤犬个をスカウトした際には、彼らを守る者の存在しない完全なヒーローに仕立て上げるべく、関係者の抹殺を実施した。証拠隠滅能力は極めて高く、止むを得ず民間人を殺害したとしても、ヘリコプターで専門の部隊が駆けつけ、即座に遺体などの痕跡を処理する手筈となっている。また、道路封鎖や報道規制も得意としている。なお、構成員はコードネームで呼び合う事が多い。

第九機動室 (だいきゅうきどうしつ)

牡蠣垣閂が室長を務める地球撲滅軍の部署。主に地球の尖兵である怪人、地球陣の撃破、人類を救う可能性を秘めた英雄候補者のスカウトなどを担当している。特に人類の救済に不可欠とされる英雄の獲得には熱心で、飢皿木が太鼓判を押した空々空の引き入れに至っては、通学していた学校を丸ごと焼失させている。

不明室 (ふめいしつ)

左右左危が室長を務める地球撲滅軍の秘密部署。公式には存在しない扱いとなっており、第九機動室の室長である牡蠣垣閂すら、詳細を把握していなかった。表沙汰にできない非人道的な実験を実施しており、周囲から犬と認識される少女、左在存の誕生にもかかわっている。

絶対平和リーグ (ぜったいへいわりーぐ)

地球撲滅軍から命を狙われた剣藤犬个が亡命先として提案したグループ。通称は「絶和」。国内に幾つか存在する軍の類似組織の一つで、四国に拠点を置く。剣藤は過去に絶和の構成員と共闘した経験があり、この縁を頼って亡命を打診する事となった。剣藤は空々空の異才を交渉材料として、亡命用のヘリコプターの手配、亡命後の住処の手配を約束させた。

場所

哲人幼稚園 (てつじんようちえん)

園児と教職員を合わせて50人規模の幼稚園。地球陣と呼ばれる怪人が少なくとも10人は潜んでいると見込まれていたが、実際には想定の四倍近い数の地球陣が存在した。その正体は地球が用意した人類にとっての自爆スイッチのようなもので、地球の予想通りに虐殺が実行された事でスイッチが入り、人間を死に至らしめる怪現象、大いなる悲鳴へのカウントダウンが始まってしまう。

その他キーワード

大いなる悲鳴 (おおいなるひめい)

物語の開幕から半年ほど前に発生した怪現象。発生時刻は日本時間で午前7時32分頃。およそ23秒にわたって、地球全土に沈痛な悲鳴の如き怪音が鳴り響き、人類全体の3分の1が精神を破壊され、死亡した。空々空は怒っているような悲鳴だったと感想を述べている。生き残った人間、絶命した人間に規則性は見つかっていない。一般には原因不明の超常現象と受け止められているが、地球撲滅軍をはじめとするいくつかの組織は悪しき地球から人類に対する大規模な攻撃だと捉えている。哲人幼稚園で虐殺が行われている最中、地球を名乗る子供が空々の前に姿を現し、2回目の大いなる悲鳴の発生が1年後に迫っている事を告げている。なお、1回目の大いなる悲鳴の発生以前から「小さき悲鳴」と呼ばれる類似の現象が観測されていた。こちらは大いなる悲鳴と比較すると小さな範囲にしか効果を及ぼさないが、耳にした人間は確実に死に至る。ただし、剣藤犬个にはそもそも地球の悲鳴が聞こえないため、「小さき悲鳴」に巻き込まれながらも、例外的に生存を果たしている。

グロテスク

地球撲滅軍が開発した、空々空への支給品。バッテリーを消費して着用者を透明化するアイテムで、フルフェイスのヘルメットと全身スーツから成り立っている。ヘルメットはゴーグル部分がミラーグラスになっており、同等の効力を発揮できる。スーツ部分は最新の競泳水着のように身体にフィットする素材が用いられ、介助者がいなければ着脱は不可能。能力起動前の外見は変身ヒーローのようでもあるが、細部のデザインは爬虫類の皮膚のような醜悪さを湛えている。一見すると暗殺に適した能力を備えているように思えるが、実際に使用した空々は道具が扱えない点、音までは消せない点など、さまざまな欠点を内包していると指摘した。のちに剣藤犬个の抹殺を目論む花屋瀟に悪用される事となる。

ミラーグラス

地球撲滅軍が開発した、空々空への支給品。一見するとただのサングラスだが、これをかければ人間に擬態した地球陣と呼ばれる怪人の本来の姿を視認する事ができる。透明化スーツ、グロテスクのゴーグル部分にも同様の技術が使用されている。空々は普通の人間が怪人に見えるプログラムの組み込まれたゴーグルである可能性を考慮しているが、真相は不明。

破壊丸 (はかいまる)

地球撲滅軍が開発した、剣藤犬个への支給品。機械仕掛けの日本刀で、起動すると刀が主体となって人体を動かし、本人の技量とは関係なく剣豪の如き剣筋を発揮して、対象を切り裂く事ができる。また、抜刀すると柄頭の一部が発光し、太刀筋に合わせて光の軌跡を描くようになっている。剣藤が空々空の家族を殺害する際に使用したほか、哲人幼稚園での任務にも使用され、多くの怪人と罪なき園児がバラバラに切り刻まれた。瀬伐井鉈美とのバトルでは、隻腕となった剣藤に代わって空々空が使用。瀬伐井の身体を、手斧、切断王のシャフト諸共切り裂くなど、切れ味の鋭さが遺憾なく発揮された。

共鳴環 (きょうめいかん)

地球撲滅軍が開発した、左在存への支給品。トゲ付きの赤い首輪で、リード代わりのチェーンを取り付ける事もできる。作動すると周囲の人間の思考を伝導し、言葉を介さずテレパシーのような形でコミュニケーションを取る事が可能。本人の意思とは関係なく犬として認識されてしまう在存にとっては、生命線となるアイテムだった。在存の死後は空々空が効果を知らぬまま左腕に巻き付けていたが、最終決戦ののちに誤作動を起こし、空々と会話不能の状態に陥っていた剣藤犬个のあいだに心の交流をもたらした。

見えない剣 (みえないけん)

地球撲滅軍が開発した、花屋瀟への支給品。剣先から柄までの全部位が視認不可能の透明な片手剣で、その切れ味は鋭く、自動車すら容易に切断できる。ただし、使用者も刀身を確認できない事から取り扱いが困難で、周辺被害が発生しやすいため、仲間との共闘には不向きである。透明化スーツ、グロテスクとの相性は抜群で、花屋は実際に組み合わせて運用する事で、戦わずして剣藤犬个の胸を貫く事に成功している。なお、一部のシーンでは読者向けにシルエットで形状が示されており、サーベル型である事が確認できる。

切断王 (せつだんおう)

地球撲滅軍が開発した、瀬伐井鉈美への支給品。3本で1組の手斧で、斧部分の側面には「切断王」の銘とNo.1から3のシリアルナンバーが入っている。また、グリップ付きのシャフトは着脱式になっており、斧部分と分離した状態で携帯できる。振り回して使用する事も可能だが、その真価はトマホークのように投擲する際に発揮され、不意を突いた場合など、ターゲットが回避もしくは防御を行わなかった場合は、100パーセント命中する。瀬伐井の死後は剣藤犬个が回収し、脇見運転の撃破に役立てている。

精神ブロック剤 (せいしんぶろっくざい)

地球撲滅軍が開発した錠剤。服用する事で感情の昂りを抑制し、精神に対する負荷を軽減する事ができる。即効性に優れ、その効能は飲んだ直後から発揮される。何事にも感動しない空々空には無用の長物と思われていたが、氷上法被に口移しで飲ませる事で、彼の特殊能力の源となる「炎血」の無力化に成功している。

地球陣 (ちきゅうじん)

地球が人類を滅ぼすために用意した生命体。多くの特撮ヒーロー作品に見られる人類の脅威と同じ意味合いで「怪人」とも呼ばれる。人間に擬態して社会に溶け込み、人知れず人類を侵食していく事を目的としている。擬態は死亡しても解除されず、解剖を行ったとしても人間とは区別がつかない。また、生きているあいだに拷問を行っても絶対に口を割らず、そのまま死亡してしまう。地球撲滅軍は怪人の正体を視認する技術を確立しているが、常人が怪人の正体を見ると脳が拒否反応を示し、目が潰れてしまう。唯一、何事にも感動しない空々空だけが怪人の正体を視認して、悪影響を受けずにいられる。実体は人型でありながら、一般に認知されている生命体とはまったく異なるデザインで、空々は恐ろしさ、美しさ、神々しさを兼ね備えているとの感想を抱いた。剣藤犬个は空々と会うまでに9匹の地球陣と思しき者を殺しているが、それが本当に怪人であった保証はないと説明し、普通の人間が混ざっていた可能性を示唆している。

クレジット

原作

書誌情報

悲鳴伝 4巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第2巻

(2016-12-20発行、 978-4063828955)

第3巻

(2017-06-20発行、 978-4063829839)

第4巻

(2018-01-19発行、 978-4065107140)

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