あらすじ
第1巻
とある海辺の町の8月1日。中学生達は夏休み中の登校日で友人と再会する中で、今夜開催される花火大会の話題で盛り上がっていた。そんな中、島田典道のクラスのマドンナである及川なずなは、なずなの母の再婚の都合で転校が決まり、憂鬱になっていた。なずなに密かに思いを寄せる典道は、幼なじみの安曇祐介とプールで競泳対決をする事となった。対決にはなずなも乱入し、さらに開始直前、祐介は「勝ったらなずなに告白する」と宣言。その言葉に焦った典道は、水中ターンで失敗し祐介に負けるものの、なずなが水中に落とした不思議な球体を拾う。一方で勝負に勝った祐介は、なずなからいっしょに花火大会に行こうと誘われる。しかし祐介は、田島純一達との約束を優先し、なずなとの約束は守らなかった。花火の時間が近づく中、転校を拒むなずなは一人で町から逃げ出そうとするものの、母親に見つかり連れ戻されてしまう。なずなの悲しむ姿を見た典道は「競泳対決で祐介に勝っていたら」と強く後悔し、なずなが落とした球体を投げる。その瞬間球体から強い光が放たれ、気がつくと典道は競泳対決をする直前の時間まで戻っていた。こうして典道は、時間が巻き戻っては繰り返される不思議な現象を体験する事となる。
第2巻
転校を拒んで家出した及川なずなは、島田典道に「駆け落ちしよう」と誘う。しかし、駅でなずなの母に見つかったなずなは、なすすべもなくそのまま連れ戻されてしまう。なずなが落とした球体を見た典道は過去の光景を思い出し、なずなを連れ戻そうとするが失敗。一人になった典道は拾った球体を見つめながら、「もしあの時、なずなと電車に乗っていれば」と強く後悔する。帰り道、灯台に向かっていた安曇祐介達に遭遇した典道は、そのまま彼らと灯台へ向かい、花火を見る。典道は平べったく見える花火を見て、球体の力で自分が望んだifの世界に飛び、同じ一日を繰り返している事に気づく。もう一度なずなを取り戻そうと決意した典道は、球体を投げて再びifの世界に飛ぶのだった。なずなを連れ戻して電車に乗った典道は、なずなの過去や彼女の抱える事情を知る。しかし電車が踏み切りを通った瞬間、踏み切りの前には灯台に向かう途中の祐介達が立っていた。さらになずなの母達にも見つかり、典道はなずなを連れて逃げようとビルの屋上に走るが、すぐに追い詰められてしまう。典道はなずなといっしょに過ごすために、彼女の手を取りながら再び球体を投げるのだった。
関連作品
本作は、2017年8月18日に公開された劇場版アニメ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を原作としている。これは、1993年に放送された同名のTVドラマを原作とした、島田典道が及川なずなと共に体験する、不思議な夏の一日を描いた青春ストーリー。島田典道を菅田将暉、及川なずなを広瀬すずが演じた。
登場人物・キャラクター
島田 典道 (しまだ のりみち)
中学1年生の男子。実家は釣具店を営んでいる。クラスメイトの及川なずなに密かに思いを寄せているが、周囲にはその気持ちをかたくなに隠している。幼なじみの安曇祐介と、プールで競泳対決をした際に球体を拾ったのをきっかけに、球体の力で時間が巻き戻っては繰り返される不思議な現象を体験する。次第に、球体を投げる事で時間が巻き戻って、ifの世界に飛ばされている事に気づく。町から逃げようとするなずなと離れる度に球体に願いを込める事で、願った通りのif世界に飛んでは、なずなを取り戻そうと奔走する。
及川 なずな (おいかわ なずな)
中学1年生の女子。島田典道のクラスメイト。クラスのマドンナ的な存在だが、なずなの母が何度も再婚するなど、家庭環境は非常に複雑。母親の3度目の再婚の都合で、夏休み中に転校する事が決まっている。明るいが大人っぽく、どこか陰のあるミステリアスな性格の持ち主。時おり思わせぶりな発言をしては、周囲を翻弄する。実の父親は1年前に海難事故で亡くなっている。よそへの転校を拒絶し、母親に反発して町を出ようと奔走し、典道に駆け落ちしようと誘う。
安曇 祐介 (あずみ ゆうすけ)
中学1年生の男子。島田典道のクラスメイト。典道とは幼なじみで、及川なずなに片思いしている。典道に競泳対決を仕掛け、同時に、なずなに告白する事を典道に宣言する。その後、勝負に勝った際になずなに花火大会に誘われるものの、田島純一達との約束を優先してなずなとの約束を破ってしまう。
田島 純一 (たじま じゅんいち)
中学1年生の男子。島田典道のクラスメイト。「打ち上げ花火は横から見ると丸いのか、平べったいのか」を確かめる実験を和弘や稔と企画し、灯台へ向かう。実は及川なずなに片思いしている。
和弘 (かずひろ)
中学1年生の男子。島田典道のクラスメイト。メガネをかけている。打ち上げ花火に関する実験のために、田島純一達と灯台へ向かう。担任の三浦晴子に片思いしている。
稔 (みのる)
中学1年生の男子。島田典道のクラスメイト。小柄でおかっぱ頭の素朴な少年。打ち上げ花火に関する実験のために、田島純一達と灯台へ向かう。女優の観月ありさの大ファン。
なずなの母 (なずなのはは)
及川なずなの母親。恋愛には奔放で、過去に駆け落ちした経験を持ち、その相手とのあいだになずなを産んだ。3度目の再婚をきっかけに、一人娘のなずなを転校させようとする。
再婚相手の男性 (さいこんあいてのだんせい)
なずなの母の3度目の再婚相手の男性。優しくおだやかに見えるが乱暴な一面があり、及川なずなからはあまりよく思われていない。
三浦 晴子 (みうら はるこ)
島田典道のクラスの担任を務める女性教師。巨乳である事から、男子生徒にはよくからかわれている。同僚の光石先生と交際しているが、生徒達には秘密にしている。
光石先生 (みついしせんせい)
島田典道の中学校の男性教師。同僚の三浦晴子と密かに交際している。
典道の母 (のりみちのはは)
島田典道の母親。明るく男勝りで、気が強い性格をしている。趣味はフリーマーケットで、花火大会の夜もガラクタを集めて出店していた。
典道の父 (のりみちのちち)
島田典道の父親。海辺の町にある、小さな釣具店の店主をしている。
祐介の父 (ゆうすけのちち)
安曇祐介の父親。町医者を務めている。海辺の町で小さな個人医院を開いている。遊んでばかりの息子の事を嘆いている。
花火師 (はなびし)
海辺の町で花火師をしている中年の男性。いつも酒を飲んで酔っぱらっている。祭りの夜まで仕事がある事を嘆きながらも、花火師としての仕事に誇りを持っている。巨大化して花火玉サイズになった球体を浜辺で見つけ、不思議な力を持った球体とは知らぬまま、花火として打ち上げる。
その他キーワード
球体 (きゅうたい)
及川なずなが海の近くで見つけた、不思議なガラス玉のような球体。なずながプールの中で落とした際に、島田典道が水中で拾う。その時はなずなに返されるものの、町を出ようとした彼女がなずなの母に連れ戻される際に、再び典道の手に渡った。典道の後悔と願いに反応して、時間を逆行させてifの世界に飛ばすなど、不思議な力を持っている。当初は小さな球体だったが、力を使う内に巨大化して花火玉サイズになり、酔っぱらった花火師によって空に打ち上げられ、花火となって砕け散った。
クレジット
- 原作
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岩井 俊二
- 企画
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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?製作委員会
- 原案
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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?製作委員会