昭和の男

昭和の男

孫には甘いが妻子には厳しい畳屋の頑固親父が、近所で噂の「ロクデナシのへんちっちい」な美青年に振り回されながらも、彼に「男としての責任」を果たさせようと奮闘する。連作短編形式で描く、昭和一桁生まれの男の、人情味溢れる下町物語。「モーニング」2004年23号から52号、2005年2・3合併号、4・5合併号に掲載された作品。

正式名称
昭和の男
ふりがな
しょうわのおとこ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

孫の丸山凛太郎が可愛くてたまらない下町の頑固親父、箕浦茂雄は、ある日、娘の丸山悦子から、凛太郎をミッション系の幼稚園「アマリリス園」に通わせると告げられる。「ミッション系」というところが引っかかった茂雄は、その正体を見極めようと、凛太郎とともに「アマリリス園」の見学に出かけ、そこでバレエ教室を開いている二ノ宮和子と、その孫、二ノ宮勘士と知り合う。

美しい和子に興味を抱いた茂雄は、後日、和子の息子が「ロクデナシのへんちっちい」であるという噂を耳にする。ある日、その「ロクデナシのへんちっちい」こと二ノ宮貴久と偶然出会った茂雄は、彼の浮世離れした非常識ぶりを説教するのだが、まさに暖簾に腕押し状態。茂雄は成り行きから貴久を自宅へと連れ帰り、和子への同情も含めて、貴久を更生させようと、自分の畳屋で働かせることにする。

こうして、打っても響かない貴久相手に対し、何かと言わずにはいられない茂雄の、吼えまくる日々が始まるのだった。

登場人物・キャラクター

箕浦 茂雄 (みのうら しげお)

畳屋を営む初老の男性。箕浦富子の夫で、丸山悦子の父親。孫の丸山凛太郎にはめっぽう甘く、妻子には口うるさくて厳しい、典型的な頑固親父。店舗兼住宅の母屋に住んでいる。今の世の中への不平不満をぶちまけては何かと憤慨しているが、実際はお人好しな好々爺。「男は男らしく」をモットーとしている。実在の人物、古今亭志ん生がモデルとなっている。

箕浦 富子 (みのうら とみこ)

箕浦茂雄の妻で、丸山悦子の母親。いつもにこやかに家事に励む良妻賢母を地でいく女性。「謝るが勝ち」とばかりに茂雄に謝ってばかりいるが、それは彼の不機嫌に一日中付き合うより、そちらの方が利口だと考えているがゆえ。二ノ宮貴久が家に寝泊まりし出し、2人で話す時間を持つうちに、彼の何気ない優しい言葉にほだされてしまう。

丸山 凛太郎 (まるやま りんたろう)

箕浦茂雄の孫で、丸山悦子と丸山昭治の息子。幼稚園「アマリリス園」に通っている。人見知りの内弁慶で、さらに甘えん坊で泣き虫。女性が大好きで、お気に入りの女の子には、挨拶がてらキスをするような、ませたところがある。両親の育て方をゆるく感じる茂雄に不憫がられ、「俺が男としての生き方を教えてやる」と勝手に意気込まれているが、丸山凛太郎自身はおじいちゃん子で、茂雄との触れ合いを喜んでいる。

丸山 悦子 (まるやま えつこ)

箕浦茂雄の娘。夫、丸山昭治と息子、丸山凛太郎の3人で母屋の裏にあるアパートで暮らしている。家事が苦手な30代のぐーたら専業主婦。二ノ宮貴久に淡い恋心を抱き、それを楽しみつつあったが、ドライブの最中にホテルに誘われ、傷ついて大泣きしてしまう純情なところがある。

丸山 昭治 (まるやま しょうじ)

丸山悦子の夫で、丸山凛太郎の父親。家族は母屋である箕浦茂雄の畳店の裏のアパートで暮らしている。スーパー「カメハネ」勤務で、週に1日しか休みがなく、いつも悦子に文句を言われている。一見弱々しいが、実は悦子のことをよく理解しており、優しい気遣いができる人物。格闘技が大好き。

二ノ宮 貴久 (にのみや たかひさ)

二ノ宮和子の20代半ばの息子。二ノ宮勘士の父親でバツイチ。ロングヘアのセクシーなジゴロ体質の美青年で、常識がなく浮世離れしており、「ロクデナシのへんちっちい」として近所の評判になっている。バレエ教室の跡を継がせようにも、他の仕事をするにも、とにかくやる気がないため、和子も諦めていたが、箕浦重雄の家で畳屋の修行をすることになる。 バレエダンサーを目指していた時代に、欧米の人達が呼びやすいよう自称「ダン」と名乗り、それにちなんで勘士は「ダー」と呼んでいる。

二ノ宮 勘士 (にのみや かんし)

幼稚園「アマリリス園」に通う年長の園児。背が高くクールな雰囲気の大人びた男の子。二ノ宮貴久の息子だが、妹の舞とともに祖母の二ノ宮和子に育てられている。バレエをしている貴久をかっこいいと思っており、彼がバレエを辞めたことを悲しんでいる。箕浦茂雄に「男らしい」とほめられたことを喜び、茂雄に「バレエを見に来てほしい」とお願いする子供らしい一面もある。

二ノ宮 和子 (にのみや かずこ)

二ノ宮貴久の母親で、二ノ宮勘士と二ノ宮舞の祖母。筋張った美人で、いつも凛としており、バレエ教室を経営しながら自らが教えている。息子の貴久にはほとほと手を焼いており、自己嫌悪と孫への申し分けなさで身体も心も疲れ果てている。その反動で、貴久を叱る時には手が付けられなくなるほど暴れてしまう。

小川 美笛 (おがわ みてき)

幼稚園「アマリリス園」の教員を務める若い女性。さわやかな色気があり、黒髪のロングヘアが似合う美人。箕浦茂雄の「男は男らしく教育して頂きたい、男としての生き様は大事だから」という文句にも、「まるでおサムライさまのよう」と誉めたたえる天然な性格。

越谷 正子 (こしがや まさこ)

幼稚園「アマリリス園」の理事長を務める女性。小柄で大きな眼鏡をかけ、エレガントな服装をした老女で、随所に英語をちりばめた会話をする。「アマリリス園」主催の聖書を学ぶお茶会では、「淫らな思いで他人の夫を見る」というテーマに、意外にノリノリで参加するお茶目な人物。

温水 (ぬるみず)

温水アリスの母親。おしゃれで垢ぬけた服装をしており、「主婦の垢がついていない」と言われるのが自慢。昔は報道関係の仕事を目指していたと自称し、情報通でもある。箕浦茂雄家の住宅事情も把握している。何事も大げさに話すのが好きな、賑やかな人物で、とんちんかんな言動をすることも多い。

温水 アリス (ぬるみず ありす)

幼稚園「アマリリス園」に通う園児。丸山凛太郎の友達。髪の毛をツインテールにした元気で大柄な女の子で、特徴的な縦長の目をしている。温水の娘だがまったく似ておらず、顔は父親にそっくり。二ノ宮勘士のことが大好きで、たまに下品なギャグを言う。

たづ子 (たづこ)

居酒屋「田ヅ子」のママ。「昭和の男」である箕浦茂雄やタクの憩いの場となっている。年季の入った少々厚化粧の女性で、独り身で頑張ってきた苦労人。近所にネットワークを張り巡らしている情報通でもある。二ノ宮和子のことが気になっていた箕浦茂雄に、和子の息子、二ノ宮貴久が「ロクデナシのへんちっちい」だという情報を教える。

タク

箕浦茂雄の友人。家で出されるピザやカレーで酒を飲むのを嫌がり、居酒屋「田ヅ子」に入り浸っている。明治や大正の威厳のある親父にはなれないが、だからといって家族サービスを怠らないマイホームパパにもなれない自分たちを、「昭和の男」と位置付けて寂しがっている。

介護の女性 (かいごのじょせい)

箕浦茂雄の顔見知りの老人の車椅子を押している女性。童顔だが陰気な雰囲気で、魂が抜けたような容姿をしている。二ノ宮貴久と偶然出会った瞬間、恋に落ちてすぐに一緒に暮らし始め、介護の仕事を辞めた。箕浦富子が2人の住むアパートを訪ねた際には、挨拶もせずお茶も出さないなど、非常識ぶりを発揮した。

ちーちゃんのおばあちゃん

箕浦茂雄の近所に住む老女。丸山凛太郎の近所の遊び友達、ちーちゃんの祖母でよく2人を遊ばせている。鼻先が下を向いている長い鼻が特徴。少し離れた商店街で二ノ宮貴久と介護の女性がいちゃついて歩く姿を見かけたと、茂雄に報告する。

てるこ

近所に住む箕浦富子の女友達。ボブカットの前髪をV字にした派手で個性的な人物。顔の皮を引っ張るだけで、まだまだひと花もふた花も咲かせられると、富子に整形を勧める。「整形に必要なのはパッション」という持論を展開し、富子の興味を引き出す。

場所

アマリリス園 (あまりりすえん)

私立のキリスト教系の幼稚園。ミッション系の幼稚園に憧れていた丸山悦子が、箕浦茂雄に黙って息子の丸山凛太郎を通わせることにした。年長組と年少組が交わる縦割り保育を実施している。理事長は越谷正子、教員は小川美笛が務めている。茂雄はこの「アマリリス園」で、二ノ宮勘士とその祖母・二ノ宮和子と知り合うことになる。

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