ミッドナイト

ミッドナイト

営業許可証を持たないモグリのタクシードライバーと、さまざまな乗客たちとの関わりを描いた1話完結型のヒューマンドラマ。「週刊少年チャンピオン」昭和61年5月2日号から掲載された作品。

正式名称
ミッドナイト
ふりがな
みっどないと
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
巻数
既刊3巻
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概要・あらすじ

名前も住所も謎に包まれている、「ミッドナイト」と呼ばれる男が、夜間専門のモグリのタクシードライバーをしていた。かつての彼は暴走族を率いるワルだったが、暴走事故を起こして同乗していた女子高校生のマリを植物状態にしてしまい、彼女の治療費を稼ぐためにタクシードライバーになった。毒入りチョコをばらまいた少年、深夜に重要書類を届けるように命じられた若い社員、かつて押し入った家に大金を持ってお礼に来たという元泥棒の男。

ミッドナイトはさまざまな事情を持つ乗客たちと出会い、彼らの隠された一面を覗いていく。そして、今日もまた客を求めて夜の町をさまようのであった。

登場人物・キャラクター

ミッドナイト

ライセンスを持たないモグリのタクシードライバーを生業としている青年。本名は「三戸真也」。飲んだくれの父親・三戸仙吉に虐待されながら育ったためグレて不良となり、父親の死を機に故郷の村を捨てて上京。「ダースベーダー」という暴走族を率いる名うてのワルになるが、暴走事故を起こして同乗していた友人のマリを植物状態にしてしまったことから、彼女の入院費を稼ぐために深夜専門のタクシードライバーになった。 実は土浦というブラジルの富豪の子で、わけあって三戸夫婦に預けられたのだが、双子の妹である土浦マヒルと出会うまで、そのことを知らなかった。車を自身の身体の一部のように思っており、勝手に触れられたり乗り回されることを極端に嫌う。さらに、自分に合うように、さまざまな改造をマシンに施しており、車の底の部分に仕込んだ第5のタイヤを使って車体を持ち上げたり、横転させることもできる。 なぜか朝を嫌っており、仕事は夜にしかしない。

マリ

ミッドナイトの友人の女子高校生。かつて暴走族のリーダーだったミッドナイトが衝突事故を起こした際、彼の車に同乗していたため仮死状態の植物人間となってしまった。完全な脳死状態と診断され、回復の見込みはないと思われていたが、ミッドナイトの依頼を受けたブラック・ジャックが彼女の脳が完全に死んでいないことを証明。以来、昏睡状態のまま延命治療を続けている。

金太郎 (きんたろう)

ラーメン屋「ラーメン軒」を営んでいる中年男性で、ミッドナイトからは「オッサン」と呼ばれている。「ラーメン軒」はタクシー運転手に評判の店で、ドライバーたちのたまり場になっている。そのためタクシーに関する情報屋としてミッドナイトに重宝されており、彼から無茶な頼みごとをされることも多い。太平洋戦争時に兵士として南方のカタンドゥアネス島という小島に赴き、そこで島の娘との間に子をもうけたが、終戦により日本に帰国したという過去がある。 のちに、その時の子供が父親を捜すために来日し、ミッドナイトの客として店を訪ねてくるが、息子だということに気づいたのは彼が日本を去った後であった。

ブラック・ジャック (ぶらっくじゃっく)

モグリの無免許医師。法外な治療費を取る悪名高き男だが、卓越した医療技術の持ち主で、世界的名医として知られている。マリが脳死の宣告を受けた際、ミッドナイトに頼み込まれ、脳死の場合は移植用として遺体を提供することを条件にオペを受諾。事故の場面を再現することで、マリの脳がまだ生きていることを証明してみせた。この一件を機に、ミッドナイトとたびたび関わりを持つことになる。

鵲 カエデ (かささぎ かえで)

北海道にある運送店「カササギ運輸」の女性ドライバー。社長だった父親が商売敵である「北陽急便」の陰謀によって事故死したため、社長兼運転手として会社を切り盛りするようになった。ドライバーをしている時は男のような口調で話すが、虚勢を張っているだけで、普段はしとやかな女性である。当初はミッドナイトのことを「北陽急便」の手先と思い込んで嫌っていたが、「北陽急便」の息のかかった刑事に殺されそうになっていたところを助けられてからは、ミッドナイトに想いを寄せるようになる。

リーゼンバーグ

学会のために来日した世界的な大脳医学の権威。青年時代に日本に留学していたことがあり、その時に知り合った日本人女性と結婚の約束をしていたが、彼女の家族の反対にあって破談。その際、彼女に裏切られたと勘違いしており、大の日本人嫌いとなった。そのため、マリを診てしてほしいというミッドナイトの頼みを冷たく拒否するが、彼の尽力で過去の婚約者に関する誤解が晴れたことからマリの診察を快諾。 止まっていたマリの脳波をよみがえらせることに成功した。実は元ナチス協力者で、第二次世界大戦中にポーランドの強制収容所で囚人を使った生体実験を行ったという過去があり、その当時は「リンゲ」と名乗っていた。

ドビンスキー

リーゼンバーグを追う顔面傷だらけの異様な男性。第二次世界大戦中にナチスが運営するポーランドの強制収容所に囚人として拘留され、ナチスの協力者だったリーゼンバーグによって医学研究の実験台にされたという過去を持つ。その時の生体実験によって顔と身体をズタズタに切り裂かれたが執念で生き延び、リーゼンバーグをナチスの戦犯として死刑に処すべく執拗に追い続けている。

三戸 仙吉 (みと せんきち)

ミッドナイトの亡父。かつては工場で働く真面目な男性だったが、妻を失ってから酒びたりになり、日がな一日酔っぱらって村の娘を追いかけ回したり、弱い者に手当たり次第にケンカを吹っかけたりするようになった。さらに、家でも泥酔しては息子に暴力を振るっていたため、ミッドナイトがグレる原因となったが、不器用ながら息子のことは愛していた。 実はミッドナイトの本当の父親ではなく、土浦という日本人の大富豪から彼を預かって育てたのだが、ミッドナイトにその事実を伝えることなく亡くなった。

土浦 マヒル (つちうら まひる)

ブラジルに広大な農園を持つ大富豪・土浦家の一人娘で、ミッドナイトの双子の妹。本来は女の子である土浦マヒルの方が養子に出されるはずだったが、手違いでミッドナイトが三戸夫婦に預けられてしまったため、そのことを悔やんだ父親に疎んじられて育った。以来、男のように強くなろうと努力してきたが、結局父親はミッドナイトに全財産を譲ると遺言を遺した。 父親に認められなかった悔しさから、兄であるミッドナイトの命を狙う。

書誌情報

ミッドナイト 3巻 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

第1巻

(2010-04-09発行、 978-4063737493)

第2巻

(2010-04-09発行、 978-4063737509)

第3巻

(2010-05-12発行、 978-4063737516)

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