あらすじ
1576年。一向宗本願寺門主の顕如は、織田信長との対立により、大坂本願寺に籠城を余儀なくされていた。戦を続けるため、5万人分の兵糧を手に入れたいと考えた顕如たちは、天下一の海賊として知られる村上海賊に助けを求めるのであった。
メディアミックス
小説
本作『村上海賊の娘』の原作は、2011年から2013年にかけて「週刊新潮」に連載された、和田竜の小説作品で、2014年に第11回本屋大賞と第35回吉川英治文学新人賞を受賞している。新潮社より単行本上・下巻、文庫版全4巻が刊行されている。
登場人物・キャラクター
村上 景 (むらかみ きょう)
天下一の海賊として知られる「村上海賊」の筆頭である村上武吉の娘。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、肩につかない長さの黒髪ショートカットをしている。目鼻立ちのくっきりした美しい容姿だが、当時の日本の価値観からは「醜女」と認識されることが多い。勝ち気で剣術に長け、「村上海賊」においても男性顔負けの活躍を見せるが、「悪人」と見なした相手には容赦しない残酷な一面もある。 そのため男性からは恐れられ、容姿のこともあって周囲には嫁のもらい手がないと心配されていた。景自身は結婚相手が海賊であることを条件としており、海賊でかつ美形の男性を常に探している。「泉州であれば、景の容姿は絶世の美女扱いされる」と源爺に言われたのをきっかけに泉州へ向かい、大坂本願寺の天王寺合戦を目の当たりにすることになる。 伝説的な女性武将である鶴姫に憧れており、彼女のような生き方をしたいと考えている。
眞鍋 七五三兵衛 (まなべ しめのひょうえ)
泉州海賊である眞鍋家の当主を務める若い男性。鉢巻きを巻いて前髪を上げ、もみあげを長く伸ばし無精ひげを生やしている。筋骨隆々で、村上景からは「筋肉だるま」と評されるほどの体格の持ち主。豪胆で、竹を割ったような性格。関西弁で話し、立場上周囲からは「旦那」と呼ばれている。景とは太田兵馬が問題を起こした際に知り合い、親しくなった。 南蛮人に近い容姿の景のことを美しいと感じ気に入っている。2人の子供がいるが、妻はすでに亡くしている。
留吉 (とめきち)
一向宗の門徒で、源爺たちとともに芸予諸島を通過する船に乗船していた幼い少年。前髪を眉上で短く切り、黒髪をツンツンに立てている。眉が太く短く「麿眉」のようになっている。まだ幼いが、船が盗賊に狙われ、命の危機に瀕しても盗賊に立ち向かう勇敢な性格。村上景たち村上海賊とは、殺されかけたところを救われる形で知り合った。
源爺 (げんじい)
一向宗の門徒の、年老いた百姓の男性。頭頂部は禿げ上がっているが、残った癖のある髪の毛を肩まで伸ばしている。大坂本願寺に兵糧を入れる途中で船が盗賊に襲われた際、村上海賊に助けられたことをきっかけに村上景と知り合い、大坂本願寺に向かうため景に「上乗り」を頼む。「醜女」と評されがちな景のことは「南蛮人のように美しい」と見ており、大坂本願寺にも近く南蛮人が多く住む泉州に行けば、景は絶世の美女扱いされると考えている。
児玉 就英 (こだま なりひで)
毛利家の直臣で、本家に直属する海賊衆「児玉海賊」の長を務める若い男性。ちょんまげ頭の、非常に美しい容姿をしている。自分たちのことは海賊ではなく「警固衆」と呼び、自分たちと海賊を差別化するため優美にふるまいたいと考えている。そのため野蛮な行いもする村上景のことは快く思っておらず、「醜女」と呼び見下している。しかし、毛利家のためにと景との縁談を持ちかけられることとなる。
村上 景親 (むらかみ かげちか)
天下一の海賊として知られる「村上海賊」の筆頭である村上武吉の次男で、村上景の弟。前髪を上げて額を全開にし、ブロッコリーのように膨らんだ癖っ毛をしている。気が強く堂々とした景とは対照的に、やや気が弱く争いを好まない性格。そのため、景に振り回されることが多い。
寺田 又右衛門 (てらだ またえもん)
泉州豪族である寺田家の当主を務める若い男性。ちょんまげ頭と三白眼、ほほに赤みがさして「〇」の形に浮いているように見えるのが特徴で、関西弁で話す。弓の名手で、泉州国中に名が知れ渡るほどの腕前を持つが、何を考えているのかわからない不気味な雰囲気がある。村上景たちとは、景が泉州を訪れ、太田兵馬が起こした問題について織田家に申し開きに来た際に知り合う。 女性よりも男性を好む嗜好で、最初は村上景親を気に入っていたが、次第に景の強さに惹かれるようになる。
寺田 安太夫 (てらだ やすだゆう)
寺田又右衛門の弟。前髪を上げて額を全開にしてちょんまげ頭にし、がっしりとした体つきをしている若い男性。兄の又右衛門とともに泉州半国触頭(ふれがしら)岸和田城主の松浦肥前守に仕えていたが、兄が松浦肥前守を暗殺したのを機に松浦家の養子となる。以後は泉州半国触頭となり「松浦安太夫」と名を改める。兄弟で力を合わせて、権力を手に入れたいと考えている。
沼間 義清 (ぬま よしはる)
泉州侍を束ねる触頭(ふれがしら)で、沼間家の嫡子の若い男性。目が細く極端につり目なのと、頬がこけているのが特徴。かつては気弱で肉体も貧弱だったため、幼い頃に亡くなった兄の沼間忠清と比べられることが多く苦しんでいた。しかし触頭としてふさわしい存在になるため一念発起し、現在の勇敢な軍略家となった。
原田 直政 (はらだ なおまさ)
織田家の重臣で、大坂本願寺攻めの総大将を務める中年の男性。目が大きくぎょろりとしており、口ひげを生やしている。村上景とは、太田兵馬が起こした問題について、景が織田家に申し開きにきた際に知り合った。鉄砲の有用性をいち早く見抜いており、織田家内でも屈指の鉄砲使いとして知られている。
下間 頼龍 (しもつま らいりゅう)
本願寺の坊官を務める中年の男性。坊主頭にがっしりとした体つきをしている。天王寺合戦において、一向宗の門徒たちの信仰心を利用して戦おうと考えており「進まば極楽浄土、退かば無間地獄」と門徒たちを故意に追い詰めて煽る。
鈴木 孫一 (すずき まごいち)
本願寺の鉄砲衆である雑賀党の首領を務める中年の男性。日本史上初の鉄砲傭兵集団である雑賀党を束ねる存在として、抜群の銃の腕前を持つ。一方で織田信長を非常に恐れており、天王寺合戦においては慎重に戦う。そのため、下間頼龍と意見が衝突してしまう。
下間 頼道 (しもつま らいどう)
本願寺の坊官を務める中年の男性。坊主頭にがっしりとした体つきをし、額から左目にかかる形で顔に入れ墨のようなものを入れている。大坂本願寺の天王寺合戦において、総大将との一騎討ちを望んでいる。しかしやや単純なところがあり、沼間義清には「蛮勇」と評される。
村上 元吉 (むらかみ もとよし)
天下一の海賊として知られる「村上海賊」の筆頭である村上武吉の嫡男で、村上景と村上景親の兄。前髪を上げて額を全開にし、ドレッドヘアのようなくせ毛を後ろで1つにまとめている。非常に優秀だが生真面目で融通の利かないところがあり、たとえば子供の些細な言葉の誤りまで指摘せずにはいられないほど細かい性格。何事に対しても「きっちりとした」正しい状態を求めている。
村上 武吉 (むらかみ たけよし)
天下一の海賊として知られる「村上海賊」の筆頭で、能島村上家の当主。村上元吉、村上景、村上景親の父親。前髪を上げて額を全開にして高い位置で1つに結び、顎ひげを生やしている。1555年、22歳の頃に厳島合戦において大活躍して毛利家を勝利に導いたことがあり、毛利家からは非常に頼りにされている。穏やかな性格だが、何を考えているかわからないところがあり「腹のわからぬ男」と評されている。 しかし、景には甘い。
村上 吉充 (むらかみ よしみつ)
天下一の海賊として知られる「村上海賊」3島のうち、因島村上家の当主を務める男性。前髪を上げて額を全開にし、肩につくほどの長さの髪全体を後ろへ流している。村上元吉、村上景、村上景親の属する能島村上家と、村上吉継が党首を務める来島村上家とは強い絆で結ばれている。しかし、独立した勢力を保つ能島村上家に対し、因島村上家は毛利家に追従しているため、意を違えることがしばしばある。 家を守るために毛利家に従い続ける自分に疑問を感じている。
琴姫 (ことひめ)
村上武吉の養女で、毛利元就の四男である穂井田元清に輿入れした少女。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、垂れ髪にしている。目が細く丸顔の、のっぺりとした顔立ちで、当時の感覚では「美人」と評されている。村上景とは「景殿」「琴」と呼び合う仲だが、内心では景を「醜女」と評し見下したところがある。
太田 兵馬 (おおた ひょうま)
織田家家臣の若い男性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩まで伸ばしたストレートヘアに帽子をかぶっている。大坂本願寺に向かう途中の村上景と出会い、問題を起こした末に対峙することになる。あまり頭は良くないため、周囲からは「阿呆」「ぼんくら」扱いされている。甘いものが好きで、人と会話する時にも何か口に入れている。
鶴姫 (つるひめ)
三島神社の姫で、村上景の憧れの女性。女性でありながら武勇に優れ、想いが通じ合った仲の越智安成とともに船戦に出ては、幾度となく敵を追い払った。安成が討ち死にした際は、敵軍を撃退した後、安成を追う形で入水した。景は勇ましい鶴姫に憧れており、「鶴姫のように好きな男性と軍船に乗り、ともに戦いたい」と常々考えている。
集団・組織
村上海賊 (むらかみかいぞく)
村上武吉を筆頭とする、伊予国の海賊衆。1555年、厳島合戦において存亡の危機にあった毛利家を救った天下一の海賊として知られる。現在は芸予諸島の難所を構成する島々に城を築いて私的な関所を設け、往来する船から「帆別銭」という通行料を徴収することで軍備を維持している。また、自らが定めた「定法」という掟に従い、独立した勢力を保っている。
クレジット
- 原作
書誌情報
村上海賊の娘 13巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2016-01-29発行、 978-4091875372)
第2巻
(2016-03-30発行、 978-4091875723)
第3巻
(2016-06-30発行、 978-4091876348)
第4巻
(2016-09-30発行、 978-4091877826)
第5巻
(2016-12-28発行、 978-4091892584)
第6巻
(2017-04-28発行、 978-4091894014)
第7巻
(2017-06-30発行、 978-4091895868)
第8巻
(2018-01-30発行、 978-4091897855)
第9巻
(2018-04-27発行、 978-4091898623)
第10巻
(2018-08-30発行、 978-4098600632)
第11巻
(2018-11-30発行、 978-4098601349)
第12巻
(2019-02-28発行、 978-4098602216)
第13巻
(2019-05-30発行、 978-4098602841)