概要・あらすじ
天王祭りを見物するために津島へと船で向かう途中、「吉法師」と呼ばれていた織田信長は海賊髑髏党の襲撃を受ける。人質の身となった吉法師だったが、彼はそこで出会ったシスコ、犬丸と共に髑髏党を撃退。この時、シスコが放った「エスピンガルダ」と呼ばれる鉄砲に心惹かれていく。数年後、信頼していた父の死に直面しながらも、いつか織田家当主として立つために信長は力を蓄えていく。
やがて銀太の手により鉄砲の量産に成功して戦う力を得た信長は、豪商生駒家の娘である生駒類より、持つものは必ずや天下の王となると言い伝えられる秘石「天の光」の噂を聞くのだった。
登場人物・キャラクター
織田 信長 (おだ のぶなが)
尾張那古野城城主。幼い頃は「吉法師」と呼ばれていた。周りの大人からは手の付けられない悪餓鬼、うつけ者と呼ばれてはいるものの、それは本来の才覚を隠すため、父である織田信秀や師の沢彦宗恩からうつけを演じるように説かれているからであった。生まれてすぐ幾多の戦場を近くで見てきたため、多くの経験を得て育っている。また人の秘めたる才能・本質を見透かす能力「他心通」を持ち、家臣達とは主従関係以上の繋がりで結ばれている。 部下思いであり、面倒見のいい兄貴分的存在である。実在の人物、織田信長がモデル。
犬丸 (いぬまる)
海賊髑髏党に奴隷として囚われていた少年。丸々と小柄な体格に、名前通りの犬のような仕草を取ることから、織田信長には「犬」と呼ばれている。風で天候を読み、山の形で自身の位置を読むことができる能力を持っており、天候の変化にいち早く気づく。事あるごとにおどおどした言動を見せるため、信長にはよく尻を蹴飛ばされている。
シスコ
犬丸と同じく海賊に奴隷として囚われていた金髪碧眼の南蛮人。本名は「フランシスコ」。織田信長に海外の知識を教えることを条件に部下として迎え入れられる。信長と鉄砲を引き合わせ、豊富な知識と経験で信長の戦に劇的な変革を起こしていく。
猿若 (さるわか)
少年時代から織田信長に従う1人。セリフの端々に「おっ」「きゃ」「うけけけ」などの奇妙な声を発しており、常に落ち着きがない言動からか信長には「猿」と呼ばれている。犬丸とはまさに文字通り「犬猿の仲」で、何かにつけて口論を繰り広げていたが、正式に信長の家臣となって以降は、お互いを「兄弟」と呼び合うほどの仲となる。
銀太 (ぎんた)
織田信長と野党の戦に火事場泥棒目的で現れるが、シスコの放った鉄砲に興味を持つ。大きく飛び出た目玉と「ぎょぎょ」の口癖が特徴で、信長からは「メダカ」と呼ばれている。信長の部下となったあとは、堺で鉄砲の製造法を学び、一流の鉄砲鍛冶となって織田軍の戦力向上に貢献する。
胡蝶 (こちょう)
斎藤家当主である斎藤道三の娘で、織田信長の正室。病弱で常に床に伏せているので、あまり外に出ることはない。信長とは政略結婚で結ばれた間柄ではあるのものの、彼の優しさに触れ心の底から愛している。実在の人物、濃姫がモデル。
織田 信秀 (おだ のぶひで)
「尾張の虎」の異名を持つ尾張下四郡の守護代であり、織田信長の父。息子を溺愛しつつも、彼の秘めたる才能にいち早く気づき敵勢にバレないようにうつけを演じさせている。信長が17歳の時に病を患い、死去する。実在の人物、織田信秀がモデル。
沢彦 宗恩 (たくげん そうおん)
織田信長の教育係であり、臨済宗の僧侶。裏拳で壁に穴をあけ、今川家の送った偵察を一撃でのしてしまうほどの強力な剛腕の持ち主。信長の名付け親であり、彼が付けた「信長」という名には、いずれ日本を掌握するという意味が込められている。実在の人物、沢彦宗恩がモデル。
平手 政秀 (ひらて まさひで)
織田家譜代の老臣で、織田信長のお守り役。織田信秀と同じく信長の秘めたる才能を知っている1人で、織田家を内政面で支えている。信秀の死後は、自身が戦場で見つけてきた元今川家の兵である孫八を影武者として立て、内政の維持を保つ。実在の人物、平手政秀がモデル。
生駒 類 (いこま るい)
尾張小折の商人である生駒家の娘。織田信長とは遠い縁者であり、信長曰くどことなく母親に似ているとのこと。後に信長の世継ぎである信忠の生母となる。可憐な外見とは裏腹に気が強く男勝りな性格。実在の人物、生駒吉乃がモデル。
今川 義元 (いまがわ よしもと)
織田家と敵対関係にある駿河の大名。女性が見惚れるほどの妖艶さがありつつも、どこか不気味な雰囲気を醸し出しており顔には常に死化粧を施している。かつて今川の領地であった尾張を奪還するため、織田家を裏から操り内部崩壊を画策している。実在の人物、今川義元がモデル。
太原 雪斎 (たいげん せっさい)
今川家の軍師であり、今川義元の教育係。義元とは以心伝心の間柄であり、義元のために家臣や弟子を使い織田家の内政や動向を見張っている。実在の人物、太原雪斎がモデル。
ジョゼ
「海の伝説」の異名を持つ南蛮船の船長。体をクネらせ、独特の言葉遣いやコミカルな仕草、妙な格好をしているが、剣の達人で素早く相手を切り刻む。「手にする者は必ずや天下を統べる王となる」と言われる秘石「光の天」を今川義元へ運ぶ任務を受けている。彼は東洋人を蔑視しているところがあり、船には大量の東洋人奴隷が囚われている。
前田 慶次 (まえだ けいじ)
織田信長が九鬼泰隆のアジトで出会った少年。本来、女子供は処刑を免除されるところを海賊相手に啖呵を切り、信長たちと同じく吊るし首の台に立たされた。信長の仲間と共に解放された後、病弱な父のために薬を探そうと堺に向かおうとしていたことを信長が知り、南蛮の薬を渡され生駒家の船で家に帰された。 実在の人物、前田慶次がモデル。
犬千代 (いぬちよ)
「槍の又佐」と呼ばれる前田利家の若き姿。尾張荒子城主の四男坊という地位にありながらも、ジョゼの南蛮船に奴隷として飼われていた。織田信長の能力により毘沙門天の如き力を持つことを見抜かれ、彼が戦う姿に見惚れ信長の家臣になることを決意する。実在の人物、前田利家がモデル。
クレジット
- 原作
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北原 聖望
書誌情報
いくさの子 ―織田三郎信長伝― 全20巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉
第1巻
(2020-04-01発行、 978-4867200209)
第19巻
(2022-07-20発行、 978-4867203989)
第20巻
(2022-11-18発行、 978-4867204399)