あらすじ
第1巻
高校2年生の大野ふみは、父親が多額の借金を背負った事により、父親と離れ、小説家の木曳野暁のもとで住み込み家政婦として働く事になった。到着早々、暁の不愛想で冷たい態度に驚くふみだったが、暁の仕事に対する真剣な姿勢や、優しい一面に触れるうち、少しずつ打ち解けていく。そんなある日、ふみのクラスに転校生として相生一心がやって来る。なんでも一心は、かつてマラソン大会でふみに負けた事をいまだに根に持っており、とにかくふみが憎いのだという。困惑するふみに、一心はふみが大切にしているノートを無理やり奪い、返してほしければ自分の子分になれと言い出す。ふみは仕方なく従い、一心と共に行動するようになるが、その様子を見た暁は、ふみと一心が交際しているのだと勘違いしてしまう。すぐさま誤解は解けたものの、この時ふみは暁に、男性に対して警戒心がなさ過ぎると叱られてしまう。これ以降、ふみは暁を男性として意識し始め、また自分が暁に惹かれているのを自覚していく事となる。
第2巻
大野ふみが木曳野暁のもとで働くようになり、ついに初任給を受け取ったふみは、父親の大野秀男に連絡するが、秀男はなんとケガで仕事を休んでおり、借金返済が滞っているのだという。アルバイトを増やそうと考えたふみは、年齢を偽って「Girls Bar 梅」で働き始めるが、そこはなんと相生一心の母親、相生梢の働く店であり、一心も出入りしていたのであった。これによりふみと一心はお互いの境遇を知り、今までふみの事を誤解していた一心は、ふみに謝罪する。しかしそこに、偶然客として暁と金石悟郎が店に現れ、事情を察して激怒した暁により、ふみは店をやめる事になるのだった。暁はふみがお金に困っているならばと、10万円をふみに渡すが、最終的に秀男には労災がおり、金銭の問題は解決する。しかし、暁はお金の返却に応じなかったため、ふみはそのお金で、暁に少し豪華な夕食を作る。
第3巻
木曳野暁の新刊発売に合わせて、書店でサイン会が開かれる事になった。金石悟郎の計らいで、大野ふみも当日アシスタントとして手伝いに行くが、書店員の桂吉乃は暁に思いを寄せているらしく、ふみを敵視してくる。サイン会後の飲み会でも、ふみは桂に暁との接触を邪魔されたうえ、飲み会中に起きた出来事で、自分が暁に女性として認識されていない事を痛感し、深く傷つく。しかし、暁は自分の行動を反省しており、後日ふみに謝罪し、ふみの事は家族のように大切に思っていると告げるのだった。これにより、ふみは芽生え始めた暁への思いを押し殺し、あくまでも家政婦として接する事を決める。しかし、いざ暁が桂と食事しに行くと聞くと悲しくなり、家で一人泣いていると、それを暁に目撃されてしまう。自宅に一人でいたら淋しくなってしまったと、正直な思いを打ち明けたふみを暁は抱きしめるのだった。
第4巻
大野ふみは、木曳野暁が突然自分を抱きしめた意図がわからず、混乱していた。そんなある日、暁は金石悟郎と共に京都府へ取材旅行へ行く事になる。そのあいだ、家にふみを残す事を案じた暁は、ふみも同行させる事にし、三人で京都を楽しむ。しかしその途中、悟郎が出版社に呼び出され、東京に戻る事になってしまう。急遽二人だけの旅行となってふみは内心喜ぶが、はしゃぎすぎたあまり眠ってしまい、寝言で、先生の暁が好きと言ってしまう。驚いた暁は翌日その件について尋ねるが、正直に告白してふられる事を恐れたふみは、それは暁ではなく、別の「先生」の事であると噓をついてしまう。そこに、問題を解決した悟郎が東京から戻って来る。そして悟郎は、ふみと暁のあいだに流れる気まずい雰囲気を察し、突如ふみの頬にキスをする。悟郎は、暁がふみを内心女性として意識しているにもかかわらず一向に認めようとしないため、自分がふみに恋をしているふりをして、暁を焦らせようと考えたのである。
第5巻
京都旅行からしばらく経った頃、大野ふみは、木曳野暁と金石悟郎の三人で訪れた夏祭りで、先日悟郎が自分にキスをした理由を知り、悟郎が自分の恋を応援してくれている事を感謝する。そして花火が始まるが、悟郎が気を利かせた事で、ふみと暁は二人きりとなる。そこでふみは衝動的に暁に告白するが、暁を困らせてしまったと感じたふみは、偶然居合わせた飛梅洋の提案で、しばらく暁のもとを離れ、飛梅家で過ごす事にするのだった。そして数日が過ぎ、ふみは洋と過ごしながら自分の気持ちを整理していたが、そこに突如暁が迎えにやって来る。驚きつつもいっしょに木曳野家へ戻る事にしたふみだったが、その帰り道、暁はふみに、自分と付き合おうと告白するのであった。
第6巻
大野ふみは木曳野暁の秘めた思いを知り、とうとう二人は恋人同士となった。しかし、喜ぶふみに対し、暁はこれまでとまったく変わらず、ふみは早速不安になる。そんな暁を案じた金石悟郎は、暁に恋人らしいふるまいを指導し、ふみと暁は初デートをする事になる。そこでふみは暁の好みに合わせて「江戸東京博物館」をデート先に選ぶが、そこはかつて暁が当時の恋人と喧嘩した場所でもあった。そのため暁は、当時と同じようにふみが気分を害さないかと心配になるが、そんな不安をよそに、積極的に関心を示し、楽しんでいるふみの姿を見て安堵する。そして迎えた文化祭シーズン。ふみは暁を呼ぼうかと考えていたが、そんな中、ケガで入院した生徒の代わりに、突如ミスコンに参加する事になってしまう。
第7巻
文化祭のミスコンに参加する事になった大野ふみは、ミスターコンの参加者である鞍月永人と恋愛の話がきっかけで意気投合し、まるで同性の友人のように親しくなる。しかし、それを知らない木曳野暁は、ふみが恋人である自分よりも、永人と親しげにしている事に腹を立て、ふみと暁は気まずくなってしまう。そして暁に誤解されたまま文化祭当日となり、ふみは暁がやって来ない事に落胆する。しかし、そこに偶然やって来た金石悟郎の口から、暁は暁なりにふみを思っており、先日もふみのために果物を買って待っていた事を知らされる。暁の思いを知ったふみは、ミスコンとミスターコンの終了後、暁に謝罪する。
第8巻
無事に仲直りした大野ふみと木曳野暁は、いっしょに楽しい文化祭を過ごし、絆を深める。一方その頃、文化祭で相生一心に告白された飛梅洋は、一心になんと返事をすればいいかわからず悩んでいた。洋の力になりたいふみと鞍月永人は、返事をする前に一度デートしてみるのはどうかと提案し、当日、洋の頼みでふみと永人はこっそりデート現場を尾行する事になる。途中トラブルはあったもののデートは成功し、ふみは周囲も含めた今の幸せをかみしめるのだった。それからしばらくしたある日、金石悟郎がケガと病気で自宅療養中と知ったふみは、悟郎の家へお見舞いに行く事になる。そこでふみは、本来ふみを住み込み家政婦として雇う予定であったのは悟郎だったと知り、数々の偶然が重なって暁と暮らしている事を実感するのだった。
第9巻
療養中の金石悟郎に代わって、しばらく畝田小夜子が木曳野暁の担当編集者を務める事になった。どこか似た雰囲気を持つ大野ふみと小夜子はすぐに打ち解けるが、同時にふみは、暁と小夜子が仕事相手としてだけでなく、男女としてもお似合いであると感じて不安になってしまう。さらに暁の作品のドラマ化に伴い、暁と小夜子が二人で京都へ取材旅行に行く事を知り、ふみは焦り始める。そんなふみを案じた悟郎はふみを食事に誘うが、ふみは食事を楽しみつつ、これまでとどこか雰囲気が違う悟郎の様子を不思議に思う。一方その頃、京都にいる暁は、小夜子から恋人はいないのかと尋ねられていた。ふみとの関係は秘密にしておこうと考えた暁は、いないと答えるが、それによって小夜子は、自分が恋人になれるのではと思うようになる。さらに二人が東京に戻って来た後、小夜子づてにそれを知ったふみもまた、自分の存在を隠された事を、頭では納得しつつも傷つくのだった。そして、度重なる暁とのすれ違いにより、ふみはとうとう木曳野家を飛び出す。しかし、そこに現れたのは、なんと悟郎であった。
第10巻
木曳野暁のもとを飛び出した大野ふみは、金石悟郎の家に一晩泊めてもらう事になった。暁は仕事のあとすぐさまふみを探しに行くが見つからず、さらに家の前で待ち受けていた悟郎から、ふみを奪うと宣言されてしまう。翌日、ふみは街で偶然出会った桂吉乃に発破をかけられた事もあり、暁のもとへ戻る決意をしていた。しかし、暁は今夜は謝恩会に参加予定で、そのまま会場のホテルに泊まるのだという。悟郎の提案で謝恩会に参加する事になったふみはとうとう暁と再会し、悟郎が用意したホテルの一室でしっかりと話し合い、いっしょに木曳野家に戻る事になる。後日、木曳野家に訪れた畝田小夜子は、業務が一段落したので担当は悟郎に戻る事、暁に告白したがふられてしまった事をふみに打ち明ける。ふみもまた、色々あったが一人の人間として小夜子に好意を抱いていた事を告げ、二人は別れるのだった。
コラボレーション
Softly
2016年9月、本作『椿町ロンリープラネット』コミックス第5巻発売を記念して制作された動画において、Softlyの「あなたのことを思って指先でなぞる文字は」が起用された。やまもり三香が以前からSoftlyに注目していた事から実現したコラボレーションで、Softlyもまた、以前からやまもり三香のファンであった事を公言している。
センセイ君主
幸田もも子の作品『センセイ君主』に登場する弘光由貴は、本作『椿町ロンリープラネット』に登場する木曳野暁のファンという設定である。本作の作中では、暁宛に由貴からファンレターとプレゼントが送られてくるエピソードがあり、また『センセイ君主』においても、由貴、佐丸あゆは、小林秋香の三人が暁の本を読んだり、話題にしているシーンが登場する。
登場人物・キャラクター
大野 ふみ (おおの ふみ)
高校2年生の女子。クラスは3組に所属している。168センチの長身で、前髪を目の上で切り、胸に届くほどまで伸ばした茶色のストレートロングヘアを、左から右へ向かって流す形で1本の三つ編みにしてまとめている。「ふみ」というやや古風な名前である事から、木曳野暁には、直接会うまで年配の女性と勘違いされていた。暁からは「娘」「小娘」と呼ばれている。 まじめで穏やかな性格で、誰に対しても敬語で接する。また、幼い頃から苦労しているため精神的にタフで落ち着いている。一方でやや抜けたところがあり、警戒心の薄い点や、思いつきで行動する点を、暁には指摘されている。幼い頃に母親を亡くしており、父親の大野秀男と二人暮らしをしていた。しかしある日、秀男が600万円の借金を背負った事により、椿町にある暁の家で、住み込みの家政婦として働く事になる。 家事全般が得意で、借金を背負う前から家計が苦しかった事もあり、節約を好む。そのためスーパーの安売りには目がない。密かに異性から人気があるが、暁に出会うまでは家事に追われ、恋愛には関心がなかった。しかし、暁といっしょに暮らすうち、暁に思いを寄せるようになっていく。 悩んだり、考え事をしていたりすると、無意識に料理を作りすぎる事がある。スポーツは特に得意ではないが、景品が絡むと実力以上の力を発揮する事があり、10年前は相生一心を退けて「ちびっこマラソン大会」で優勝した事もある。また、実は少女漫画が好きで、写実的な絵を描こうとしても、どうしても少女漫画のような絵になってしまう。
木曳野 暁 (きびきの あかつき)
小説家の男性。大野ふみの雇い主で、ふみの思い人でもある。年齢は28歳。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、肩までつくほどの、黒のぼさぼさのセミロングヘアにしている。三白眼で目つきが悪く、不愛想な性格も手伝って、近寄りがたい雰囲気を漂わせている。職業柄、周囲には「先生」と呼ばれる事が多い。また、ふみを主に「娘」と呼ぶなど、古めかしい口調で話す。 一見ぶっきらぼうで冷たく見えるが、実際は単純で心優しい。また、仕事に対しては強い情熱を持っており、ふみがやって来るまでは、生活を犠牲にして執筆活動に励んでいたため、家の中は荒れ放題だった。主に時代小説を執筆しており、代表作は「饅頭屋」シリーズ。ある日、編集長の頼みで住み込み家政婦を雇う事になるが、家政婦の名前が「ふみ」というやや古風なものであった事から、年配のベテラン家政婦だと勘違いしていた。 出会った当初はふみが高校生である事に落胆し、無関心だったが、ふみの家庭の事情を知って考えを改め、雇い主としてだけでなく、保護者としてもサポートするようになる。雇用にあたり、自室をふみに明け渡したが、疲れているとそれを忘れてしまい、時おり誤ってふみの部屋に入ってしまう事がある。 時代小説家として得た知識から、自力で着付けができ、下駄の鼻緒を直す事もできる。好きな食べ物はきつねうどん。誰かに謝罪する時は、なぜか手土産に果物を持っていく癖がある。
金石 悟郎 (かねいし ごろう)
木曳野暁の友人で、暁の担当編集者でもある若い男性。前髪を右寄りの位置で斜めに分けたショートカットヘアで、左目尻にほくろがある。明るく親しみやすい性格で、場の空気を読むのに長けている。そのため、不器用な暁のフォローをする事が多い。大野ふみとは暁を通じて知り合ったが、本来はふみを住み込み家政婦として雇うのは、暁ではなく金石悟郎であった。 しかし当時多忙であったため断り、ふみは暁のもとへ行く事になった。暁とふみに恋人同士になってほしいと考えており、わざと暁を挑発するような行動を取って、二人の距離を近づけようとする。しかし、その過程で自身もふみの魅力に気づき、一途に暁を思うふみの姿にあこがれを抱くようになる。原稿を落としがちな「やまもり谷」という作家に、いつも振り回されている。
相生 一心 (あいおい いっしん)
大野ふみの友人で、ふみと同じ2年3組に転校して来た男子。両親が離婚するまでは「今村」姓だった。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたショートカットで、髪の毛の上部と下部で色が違っている。負けず嫌いで、やや子供っぽいところがあるが、素直で世話焼きな性格。ふみとは10年前「ちびっこマラソン大会」に出場した事で知り合う。しかし、優勝できれば当時から不仲であった両親が仲直りできるはずと願掛けしていたのと、大会3連覇をかけた大切な大会であったにもかかわらず、ふみに負けてしまう。 以来ふみの事を一方的に恨んでおり、転校して再会したのを機にふみに嫌がらせをするようになる。しかし、ふみが相生一心の母親、相生梢が働く店にアルバイトとして訪れたのを機に、ふみの複雑な境遇を知り、謝罪。 以後は友人として付き合っていくようになる。転校当初は、苗字が「今村」から「相生」に変わってしまっていたのと、子供の頃とは雰囲気が大きく変わっていたため、ふみは一心と面識がある事に気が付かなった。やがて飛梅洋に思いを寄せるようになり、文化祭で告白をする。その後、まだ交際には至っていないが、二人で出かける関係になっている。 身長は168センチのふみと変わらず、男性にしてはやや小柄な事を気にしている。
飛梅 洋 (とびうめ よう)
大野ふみの友人で、同じ高校の同じクラスに通う女子。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、胸まで伸ばしたロングヘアを、耳の高さで二つに結び、耳にはピアスを付けている。猫目である事から、木曳野暁には「猫娘」と呼ばれている。やや乱暴な振る舞いと、男性のような口調で話す。明るく世話焼きな性格で、何かと苦労の多いふみの事をつねに案じている。 コンビニでアルバイトしており、おすすめ商品を周囲に教えるのが好き。やがて相生一心に告白され、まだ交際には至っていないものの、二人で遊びに行く関係になる。幽霊や高いところなど、怖いものは大の苦手。身長は158センチ。
桂 吉乃 (かつら よしの)
書店「宮本書店」の店長を務める若い女性。目が隠れないように切ったラウンド前髪に、胸の下まで伸ばしたロングヘアを、首の付け根の高さで一つに結んでいる。木曳野暁の熱心なファンで、暁に思いを寄せている。そのため大野ふみをライバル視しており、ある日「宮本書店」で開かれた暁のサイン会のスタッフとしてふみと知り合って以来、ふみには冷たく当たる。 しかし、内心ではふみの存在に焦っており、サイン会後、暁を食事に誘って告白するが、あっさり暁に振られてしまった。その後、偶然街でふみと暁を見かけ、二人が交際を始めた事を知る。その後、ふみが「宮本書店」まで会いに来たのがきっかけで、ふみと少し打ち解ける。暁と金石悟郎とは、仕事仲間としてサイン会以前から面識があった。 料理と整理整頓は苦手で、まったく自炊していない事と、いつも部屋が散らかっている事を、母親や叔母に心配されている。実はゲームが大好きなオタク気質で、歴史の知識も、お気に入りのゲーム「幕末君色恋模様」から得た。さらに、作中で桂吉乃が最も好きなキャラクターに暁が似ていた事から、暁に思いを寄せるようになった。
鞍月 永人 (くらつき えいと)
大野ふみの友人で、同じ高校の3年4組に所属する男子。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、ふんわりとしたウルフカットの髪型をしている。中性的でかわいらしい顔立ちをしており、物腰も柔らかく穏やかな事から、一部の女子からは「王子」と呼ばれている。子供の頃は小柄である事を理由に、男子からよくいじめられていた。そのため女子とばかりなかよくしていたが、鞍月永人は相手を友人と思っているのに対し、相手は異性として意識して思いを寄せる事が多く、友人として付き合いたいのにうまく行かないという事が続いていた。 そんなある日、文化祭のミスコンとミスターコンの参加者としてふみと出会って親しくなり、事情を察したふみと、同性の友人のようになかよくなっていく。 女性に対して距離が近すぎるところがあり、深い意味もなく抱きついたりしては相手を誤解させている。高校の教師である大徳みどり子に思いを寄せているが、異性として意識してもらえない事に悩んでいた。文化祭のミスコン、ミスターコンのあとのダンスタイムで、ついにみどり子を誘うが、告白には至らなかった。
大徳 みどり子 (だいとく みどりこ)
大野ふみ達の高校に務める若い女性教師。鞍月永人の思い人。前髪を右寄りの位置で斜めに切ったショートカットヘアにしている。三白眼で目つきが悪く、男性のような口調で話し、服装もジャージ姿が多い事から男性と勘違いされやすい。実際は、性別を間違われやすい事に悩んでいる。
畝田 小夜子 (うねだ さよこ)
木曳野暁の臨時編集者としてやって来た若い女性。前髪を眉上で短く切り揃え、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。口元にほくろがあり、雰囲気や言動が少し大野ふみに似ている。ややおっちょこちょいだが、穏やかで一生懸命な性格。暁の作品の大ファンで、暁に密かに思いを寄せている。ある日、ケガと病気を併発した金石悟郎が復帰するまで、悟郎の代わりに暁のもとを訪れ、木曳野家に出入りするようになる。 しかし、同時期に暁の作品のドラマ化が決定した事により、ドラマ関連の仕事が落ち着くまで、担当期間延長を志願し、ふみを焦らせる。ふみとは雰囲気が似ている事から出会ってすぐに打ち解けるが、やがてライバル関係になり、気まずくなってしまう。 しかし仕事が一段落し、暁にもはっきりとふられたのを機にふみに謝罪して、去っていった。
大野 秀男 (おおの ひでお)
大野ふみの父親。刈り上げヘアに、顎ひげを生やしている。妻は、ふみが幼い頃に乳がんで亡くなっており、ふみと二人暮らしをしていた。しかし、知人の連帯保証人になってしまった事で、ある日突然、600万円の借金を背負ってしまい、ふみと離れてマグロ漁船に乗る事になる。明るく心優しい性格で、友人が多いが、やや頼りない。
相生 梢 (あいおい こずえ)
相生一心の母親。「Girls Bar 梅」で働く34歳の女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたロングヘアにしている。一心からは「ババア」あるいは「おかん」と呼ばれている。明るく若々しい見た目で、高校生の子供がいるようには見えない。大野ふみとは、ふみがアルバイトとして店にやって来たのがきっかけで出会い、不慣れなふみをサポートした事で親しくなった。