あらすじ
第1巻
借金のせいで結婚が破談になった柏木志麻は、実入りのいい仕事を探していく中で、「小説家の身の回りの世話」という求人に出会う。その小説家とは、高校時代のクラスメイトの秋月光太郎であった。光太郎は最近注目を浴びつつある人気官能小説家であり、志麻は官能小説という思いもよらないジャンルに一瞬躊躇しつつも、彼のもとで働く覚悟を決める。そんな中、心労が祟ってか、志麻の母親までもが倒れて入院する事になってしまう。検査の結果、手術が必要である事が判明し、さらに多額の金が必要になった志麻は、光太郎に金を貸してほしいと打診。金だけが目当ての人間関係ばかりを経験し、辟易していた光太郎は、志麻に対して明らかな軽蔑の眼差しを向けながらも借金の申し入れを受け入れる。その代わりにと光太郎が要求したのは、志麻との体の関係だった。光太郎は志麻を繰り返し抱く事で、返済とする異例の返済方法を提示して来たのだ。そんな光太郎の命令に志麻は逆らう事もできず、心も体も翻弄されていく。
第2巻
純文学界のホープと呼ばれる作家の星合ミサヲと、人気官能小説家の秋月光太郎の対談中、柏木志麻は光太郎に対する自分の思いを自覚する。光太郎に抱かれていても、それは契約によるものであり、それを自覚するほど志麻の心は苦しくなる一方だった。志麻は光太郎への思いを隠したまま、仕事上の関係を続ける事に限界を感じ、新しい仕事を見つけて彼のもとを去ろうとする。しかし、そんな志麻の様子に気づいた光太郎は、志麻に自分の思いを告白。互いの気持ちを確かめ合った二人は、金も仕事も関係なく、心の底から結ばれるのだった。だが、志麻との甘い関係にどっぷり浸ってしまった事で、光太郎は仕事への集中がおろそかになり始める。そんな光太郎の変化に気づいた担当編集者の佐久は、仕事の不調の原因が、志麻との関係にあると指摘。責任を感じた志麻は、光太郎から離れる事を再び考え出す。その矢先、志麻は街中で星合に遭遇する。何も知らないはずの星合から次々に図星をつかれた事で、志麻は星合に現状の悩みを相談し始める。すると星合は、志麻に光太郎から離れて自分のもとに来るように勧めるのだった。
第3巻
秋月光太郎の仕事のためにと、彼のもとを去った志麻は、光太郎のライバルである作家の星合ミサヲのアシスタントを務める事となった。だが光太郎と志麻は、会えない時間が長くなるほどお互いを思う気持ちを募らせ、焦がれていく。そんな中、光太郎の作品が映画化するというビッグプロジェクトが始動。それにより、光太郎は志麻のためにも、自分一人で仕事ができるようにならなければと奮起する。一方の志麻も、そんな光太郎の思いに応え、星合との関係に終止符を打って光太郎のもとに戻る。しかしそんな二人の前に、映画化の担当者として志麻の元彼、大高廉が姿を現す。廉は以前、志麻と結婚の約束をし、それを破談にした張本人だったのだ。志麻は突然の再会に動揺しながらも、心配する光太郎に対し、廉への未練はないときっぱり言い切る。しかし一方の廉は、志麻と別れた事に未練を残していた。
登場人物・キャラクター
柏木 志麻 (かしわぎ しま)
入院中の父親にかかる医療費の返済のため、実入りのいい仕事を探している女性。小説家の秋月光太郎の身の回りの世話をする事になる。雇用主である光太郎は高校時代のクラスメイトでもあり、これをきっかけにしばらくぶりの再会となった。その後、働き始めてすぐに母親も倒れ、入院と手術を要する事となり、改めて多額のお金が必要となった。 そのための合計1000万円の対価として光太郎に肉体関係を迫られ、1回10万円で肉体関係の契約を結ぶ事になる。契約として光太郎との肉体関係を持続させていくが、自分がいつの間にか光太郎に対して好意を持っている事に気づき、逆にこの関係が仕事上のものである事が辛く感じるようになっていく。大学時代、大高廉と付き合っていたが、父親が倒れて借金を背負う事になったため、結婚の約束が破談になった。
秋月 光太郎 (あきづき こうたろう)
官能小説家の男性。ペンネームは「秋月真琴」。高校時代から小説を書き続け、売れない時代を経て、現在は仕事が絶えない、かなりの人気作家となった。身長181センチで体重75キロとスタイルもよく、身なりをきちんと整えればかなりのイケメン。高校時代のクラスメイトだった柏木志麻が、自分のアシスタントの仕事に応募して来た事で偶然の再会を果たす。 実は高校時代から志麻に対して密かに思いを寄せ続けているため、恋人を作った事がない。小説家として成功してからというもの、自分とかかわりを持とうとする人間はすべて金目当ての者ばかりだったため、人間不信気味で人付き合いも苦手。高校時代から才能がないと罵倒し続けて来た母さんでさえも、今では金を無心にやって来るため、金に絡んだ人間関係には特に過敏になっており、辟易している。 自分のもとで働き始めた志麻が、金を貸してほしいと言い出した事で、志麻への信頼感を大きく損ねる事となった。金を貸す代償として、体の関係を要求。彼女の欲する1000万円を貸し、肉体関係1回10万円換算で返済とする契約を結ぶ。
星合 ミサヲ (ほしあい みさを)
秋月光太郎と同時期にデビューした小説家の男性。かなりのイケメンで純文学界のホープと呼ばれ、周囲からの期待を一身に受けている。身長180センチ、体重71キロ。特定の彼女はいないが、女性にはつねに不自由しない生活を送っている。基本的に人から注目を浴びる事が好きで、そのための努力は惜しまない。一方で、光太郎が最近脚光を浴び始めている事が気に入らない。 担当編集者の佐久の提案を受け、光太郎のもとから柏木志麻を離れさせる事に協力した。そのうえで、志麻を手元に置いて自分のものにしようとするが、それは志麻自身を気に入ったからではなく、志麻を奪う事で光太郎を侮辱する事が目的である。
大高 廉 (おおたか れん)
映画会社「東都映画」の映像本部に勤める男性。柏木志麻の元彼氏。志麻とは大学時代から付き合っており、結婚の約束も交わしていた。しかし志麻の父親が倒れ、志麻自身が借金を背負う事になったため、その借金ごと志麻の人生を背負う覚悟ができず、結婚は破談になった。別れて数年が経ち、秋月光太郎の作品の映画化に伴い、その担当者になった事で志麻と再会を果たす。 当時の志麻に対する自分自身の行いを後悔しており、今でも志麻に対して未練がある。
佐久 (さく)
秋月光太郎と星合ミサヲを担当する男性編集者。光太郎の作品を高く評価している。しかし柏木志麻との関係が、光太郎の仕事への意欲を低下させ、作家自身をダメにしていると判断したため、星合を使って光太郎と志麻を離れさせた。
母さん (かあさん)
秋月光太郎の母親。光太郎が高校生の頃、小説で生計を立てたいと言い始めた事に対して、猛反対した。売れない時代を過ごしていたあいだは、ずっと才能がないと作品を罵倒し続けた。光太郎の兄である陽一郎は出来がよく、安定した職業に就いている事から、何かにつけて兄と比較し続けている。光太郎が売れっ子の小説家になった現在は、光太郎のマンションを訪れては、自分のほしいものを買うための金を無心にやって来るが、未だに兄と比較して罵倒する事を止めようとしない。 光太郎のもとでアシスタントを務める柏木志麻に対しては、金目当てで息子に近づき、入れ知恵をする悪い女と見なしている。