概要・あらすじ
宇宙世紀0083年、2機の新型モビルスーツ(MS)を積んだアルビオンが、オーストラリアのトリントン基地に到着する。そこへ3年前の一年戦争で敗走し、反抗の機会を待っていたジオン公国の残党が攻撃を仕掛け、混乱の中で新型MSの1機が奪われてしまう。トリントン基地のテストパイロットコウ・ウラキは、取り戻すために残った1機で出撃する。
登場人物・キャラクター
コウ・ウラキ (こううらき)
オーストラリアにある地球連邦のトリントン基地でテストパイロットを務める軍人。階級は少尉。初めて見たモビルスーツの仕様を答えられたり、設定を調整できるなどMSの知識は豊富。ただし操縦技術や戦場での戦い方はベテランパイロットと比較するとまだ未熟。アナベル・ガトーによるガンダム試作2号機の強奪を契機に、ガンダム試作1号機のパイロットになって経験したさまざまな戦闘を通じて技術は格段に上昇し、ついにはエースパイロットのガトーと互角の戦いができるまでに成長する。 星の屑作戦を防ぐためアナハイム・エレクトロニクスのルセットからガンダム試作3号機を受け取るが、地球連邦軍の意向に背いた形だったため、戦後に強奪罪で懲役1年となる。 しかし、ガンダム試作3号機が関わるGP計画が抹消されたためにコウの罪状も消滅。自由の身となったコウは星の屑作戦でコロニーが落下した北米大陸に向かい、そこでチャック・キースやニナ・パープルトンと再会する。
チャック・キース (ちゃっくきーす)
コウ・ウラキと同じくトリントン基地でテストパイロットを務める。階級は少尉。モビルスーツの操作技術や戦い方は成長前のコウとほぼ同等。それでもトリントン基地の襲撃から始まる一連の紛争を無事に戦い抜いた。
ラバン・カークス (らばんかーくす)
地球連邦の軍人で、階級は中尉。コウ・ウラキ、チャック・キースと組んでディック・アレンと3対1の模擬戦を行うも負けてしまう。
サウス・バニング (さうすばにんぐ)
コウ・ウラキやチャック・キースなどが所属する隊の隊長を務めるベテランパイロット。階級は大尉。戦場で仲間の死に動揺するコウを支えたり、地上用のモビルスーツで宇宙に出撃しようとするコウを叱るなど、若手パイロットの精神的な支柱となる。
ディック・アレン (でぃっくあれん)
地球連邦の軍人で、階級は中尉。トリントン基地ではナンバー2の腕を持つパイロット。トリントン基地が襲撃された時に、ガンダム試作2号機を奪って逃げるアナベル・ガトーを追おうとしたところに砲撃を受けて死亡する。
エイバー・シナプス (えいばーしなぷす)
アルビオンの艦長を務める経験豊富な軍人。トリントン基地襲撃時にはコウ・ウラキに新型のガンダム試作1号機への搭乗許可を出したり、星の屑作戦が月へのコロニー落としではないことを司令部に報告するなど状況に応じた対応が取れる。星の屑作戦への対応で強引に出撃する時に取った行動が叛乱行為とされ、戦後に軍事法廷にかけられ処刑される。
イワン・パサロフ (いわんぱさろふ)
アルビオンの副長で、操舵も務める。エイバー・シナプスが拘束された際にジョン・コーウェンに報告し指示を仰いだ。
モーラ・バシット (もーらばしっと)
アルビオン搭載機を整備する整備班の班長。階級は中尉。モビルスーツの動きを見るだけで、パイロットの操縦技術を判断できる。民間人のニナ・パープルトンと仲が良い。
ジョン・コーウェン (じょんこーうぇん)
地球連邦の中将で、ガンダム試作1号機などを開発する計画の責任者。一連の事件の終息に尽力するが、戦後に責任を取らされる。
アルファ・A・ベイト
トリントン基地を襲撃されて、人員不足となったアルビオンに来た補充パイロット。階級は中尉。口の悪いベルナルト・モンシアをたしなめることが多い。
ベルナルト・モンシア (べるなるともんしあ)
アルファ・A・ベイトと同じく、人手が不足しているアルビオンに補充パイロットとして来る。ガンダム試作1号機に乗っているのに戦果が悪いコウ・ウラキに辛らつな言葉を浴びせる。
ティアンム
一年戦争の時に、ジオン公国の要所「ソロモン」を攻撃する「チェンバロ作戦」を指揮した提督。勝敗を決定づけた集光兵器「ソーラーシステム」の発射命令を出した。
グリーン・ワイアット (ぐりーんわいあっと)
地球連邦の軍人で、階級は大将。アナベル・ガトーが乗ったガンダム試作2号機の核攻撃によって、地球連邦軍の観艦式のために集まっていた多くの軍人と共に死亡する。
バスク・オム (ばすくおむ)
地球連邦の軍人で、階級は大佐。星の屑作戦の時に集光兵器「ソーラーシステム」の展開を指揮し、戦後には正義を成すには強力な力が必要として、新たな組織「ティターンズ」を立ち上げる。
アナベル・ガトー (あなべるがとー)
一年戦争からエースパイロットとして活躍するジオン公国の残党。一年戦争終結後は長く雌伏していたが、トリントン基地に新型のモビルスーツが運び込まれるタイミングで活動を再開する。ニック・オービルの手引きで基地内に入り、ガンダム試作2号機を奪取した後は、ノイエン・ビッターの協力により宇宙に上がる。そして地球連邦の観艦式をガンダム試作2号機に搭載された核で全滅させることに成功する。 しかしその直後にコウ・ウラキのガンダム試作1号機に襲撃され、相打ちという形でガンダム試作2号機を破棄することになる。その後は新たに受領したノイエ・ジールで星の屑作戦の真の目的であるコロニー落としに参加し、落下場所の最終調整と作戦成功を見届ける。 しかし最終調整の最中で再びコウと出会い、ガンダム試作3号機との戦闘に突入。激しい戦闘をくり広げるが、地球連邦の無差別攻撃を受けた味方からの援助要請を受けて決着をつけることはできなかった。味方と合流した後は、退路を確保するために奮迅し、地球連邦の艦隊から集中砲火を浴びて死亡する。
エギーユ・デラーズ (えぎーゆでらーず)
一年戦争の時から知将で知られている人物。ジオン公国の残党をまとめ上げ、星の屑作戦を立案する。星の屑作戦の最終段階においてシーマ・ガラハウの裏切りによって死亡する。
ノイエン・ビッター (のいえんびったー)
アフリカのキンバライト鉱山基地を指揮するジオン公国の残党。奪ってきたガンダム試作2号機とアナベル・ガトーを宇宙に上げるために、基地の全戦力を使って時間を稼いだ。
シーマ・ガラハウ (しーまがらはう)
一年戦争時にだまされてコロニーに毒ガスを使い、味方であるジオン公国でも忌み嫌われている。そのため一年戦争で敗走した時も、受け入れ先のアクシズにも拒否された過去を持つ。星の屑作戦ではエギーユ・デラーズに招かれて参加していたが、裏では地球連邦に情報を流していた。コロニーを落とす最終局面で本性を表すが目論見通りにいかずにデラーズを殺害。 そしてシーマ・ガラハウの一派とジオン公国の残党の内乱が発生したところをバスク・オムの艦隊によって集中砲火を浴びてしまう。
カリウス
一年戦争からのアナベル・ガトーの部下。ほかにもガトーの部下は多くいたが、カリウス以外は全員死亡している。カリウスも観艦式を襲撃した時に遭遇したコウ・ウラキに戦いを挑み、返り討ちにあう。
ケリィ
一年戦争でアナベル・ガトーと共に戦った人物で、ジオン公国の要塞「ソロモン」での戦いで負傷し左腕を失う。その傷で退役し、今は月でジャンク屋を営んでいる。
ニナ・パープルトン (になぱーぷるとん)
アナハイム・エレクトロニクスのシステムエンジニア。ガンダム試作1号機とガンダム試作2号機の開発を担当し、地上での調整のために宇宙から降りてきてアルビオンに搭乗してトリントン基地まで来る。そして奪われたガンダム試作2号機を追いかけるアルビオンに帯同して宇宙に戻る。宇宙に上がり宙間戦闘用に換装したガンダム試作1号機とガンダム試作2号機が相打ちで2機とも再起不能になった後もアルビオンに協力し、星の屑作戦で落ちるコロニーの動きにいち早く気づく。 そしてコロニーの進路を変える作戦に参加し、コロニーの制御室でかつての恋人アナベル・ガトーと再会する。そこでガトーの気持ちを伝えられ心が揺らぎ、コウ・ウラキの銃撃で負傷したガトーを庇う。 ガトーと共に姿を消したが爆発するコロニーの破片で負傷。コロニー脱出後にガトーからコウに引き渡され、アルビオンに収容された。
ルセット
アナハイム・エレクトロニクスのシステムエンジニア。ガンダム試作3号機を担当。コロニー落としを防ぐため、コウ・ウラキにガンダム試作3号機を託す。ニナ・パープルトンとは学生時代からの知り合いで、ニナとアナベル・ガトーの仲も知っている。
ニック・オービル (にっくおーびる)
ニナ・パープルトンと一緒に地球に下りてきたアナハイム・エレクトロニクスの技術者。ジオン公国の残党とつながっており、アナベル・ガトーのトリントン基地侵入の手引きをする。ガトーがガンダム試作2号機を盗み出した後、アルビオン内での調査で裏切りがばれると思い逃亡する。ジオン公国の残党側でのコードネームは「ブラウエンジェル」。
オサリバン
アナハイム・エレクトロニクスの常務。シーマ・ガラハウと裏取引を行い、開発した新型のモビルスーツを渡す。
その他キーワード
ガンダム試作1号機 (がんだむしさくいちごうき)
GP計画によって開発された新型のモビルスーツ。形式番号はRX-78-GP01。一年戦争で活躍したRX-78よりパワーが30%増している。ガンダム試作2号機を盗まれた現場にいたコウ・ウラキが緊急に乗り込み、その後もパイロットを務める。宇宙に上がってからは、背中や胸部などにスラスターを追加しさらに調整を加えた「ガンダム試作1号機フルバーニアン」となる。 ガンダム試作2号機と交戦して相打ちとなり、使用不能となった。
ガンダム試作2号機 (がんだむしさくにごうき)
GP計画によって開発された新型のモビルスーツ。形式番号はRX-78-GP02。戦略核弾頭を搭載しており、トリントン基地で搭載した核弾頭ごとアナベル・ガトーに奪われる。宇宙まで逃げた後は戦略核と戦術核に強化され、地球連邦の観艦式に大被害をもたらす。ガンダム試作1号機との戦闘により使用不能となった。
ガンダム試作3号機 (がんだむしさくさんごうき)
GP計画によって開発された新型の機体。モビルスーツ(MS)の数倍はあるモジュールの中央にMSが入ってコントロールし、地球連邦最大の火力を持つ。モジュールには大量のミサイルが内蔵され、さらに巨大なビーム状の剣を突き刺したりビームを撃つことも可能。コウ・ウラキが搭乗し、コロニー落下阻止のために進む味方の道を切り開いた。
アルビオン
地球連邦の強襲揚陸艦。艦長はエイバー・シナプス。ガンダム試作1号機とガンダム試作2号機をトリントン基地まで運ぶものの、そこでガンダム試作2号機は盗まれる。そのまま奪い返す任務に就き、宇宙に上がってからもつねに最前線で戦う。
ノイエ・ジール (のいえじーる)
アナベル・ガトーが受領した大型の機体。ビームを無効化する「Iフィールド」を備え、全身からビームを撃てる。さらに両腕部は有線操作で飛ばすことや全周囲から攻撃することもでき、サブアームも持つ。コロニー落下の最終調整を終えた後、ガンダム試作3号機と死闘をくり広げ、戦闘後は味方の退路を確保するために艦隊に突撃して爆散した。
宇宙世紀 (うちゅうせいき)
西暦に変わる新しい年号。人類が宇宙に移民し始めるタイミングで、宇宙世紀に以降する。なお、U.C.0001の時の地球の人口は90億を超えている。
コロニー
宇宙で暮らす人々の生活拠点となる円柱型の構造物。全長数十キロにもおよび、自転することで内部に重力を発生させる。また外部にはミラーが設置されており、これによって回転のバランスが保たれている。
モビルスーツ
人の形をした巨大ロボット。中には人型でないものもある。重作業や人命救助、戦闘などさまざまな用途で使われている。
一年戦争 (いちねんせんそう)
宇宙世紀0079年1月3日にジオン公国が地球連邦に戦線布告し、宇宙世紀0080年1月1日に終戦協定が結ばれるまで続いた戦争。別名「ジオン独立戦争」。開戦当初はジオン公国が圧倒的優位だったが、徐々に地球連邦に押し返され、最終的には地球連邦側の勝利に終わる。
GP計画 (じーぴーけいかく)
ジョン・コーウェンが推進する新型モビルスーツの開発計画。この計画によりガンダム試作1号機、ガンダム試作2号機、ガンダム試作3号機などが生まれる。しかしガンダム試作2号機の強奪や観艦式の事件の責任を取らされてコーウェンが失脚。GP計画も中止され、すべては闇に葬られた。
星の屑作戦 (ほしのくずさくせん)
エギーユ・デラーズが考えた反抗作戦。核弾頭を持つガンダム試作2号機を奪い、観艦式を強襲することをおとりとして、地球へコロニーを落とすことに成功。地球連邦に大ダメージを与えたが、宇宙移民者への弾圧を強化する口実ともなった。
クレジット
- 原作
-
矢立肇・富野由悠季