概要・あらすじ
カイン・C・ハーグリーヴスは、さまざまな猟奇殺人現場に居合わせる毒の伯爵としてその名を知られていた。カインは、行く先々で出会う事件を毒をもって毒を制すとばかりに血なまぐさい方法で解決していく。それらの事件と秘密結社デライラとの因縁がまとわりつくなかで、カインはデライラに自身の父親であるアレクシス・ハーグリーヴスが関わっていることを知り、その真実を追っていく。
登場人物・キャラクター
カイン・C・ハーグリーヴス
アレクシス・ハーグリーヴスとその実の姉、オーガスタ―との間に生まれた禁忌の少年。現在ハーグリーヴス家の若き伯爵となっている。かつてアレクシスに虐待を受けており、それをきっかけとして、ハーグリーヴス家に伝わる毒で父親を毒殺した。リフェール・ラフィット(リフ)に全幅の信頼を置いており、出かける際はいつもリフと共にある。 異母兄妹のマリーウェザー・ハーグリーヴスのことを溺愛している。毒のコレクションをしている「毒の伯爵」としても有名。
マリーウェザー・ハーグリーヴス (まりーうぇざーはーぐりーゔす)
カイン・C・ハーグリーヴスの異母妹。カインに引き取られる前は母親と共に下町で暮らしており、下町言葉が直らない。カインに溺愛されているが、お転婆ですぐに事件に首を突っ込みたがる。カインにピアノを教えてもらうのが好きだが、ピアノ自体は苦手としている。
リフェール・ラフィット (りふぇーるらふぃっと)
カイン・C・ハーグリーヴスの執事を務める青年。執事になる前は医者になるため勉強していた。カインが絶対の信頼を置く、唯一の人物。他の人間には冷徹なところがあるが、カインには優しく柔和に対応し、彼の忠実な僕として働いている。
アレクシス・ハーグリーヴス (あれくしすはーぐりーゔす)
カイン・C・ハーグリーヴスとマリーウェザー・ハーグリーヴスの父親。姉であるオーガスターに異常な執着を持ち、オーガスターを強姦しカインを産ませた。オーガスターの顔にそっくりなカインに愛憎に似た感情を持っており、カインが幼少の頃、虐待していた。それを理由にカインに毒殺されものの、実際は殺されたふりをしていただけで、裏で秘密結社「デライラ」を操り、カインを絶望の底に叩き落すために暗躍している。
オーガスター
アレクシス・ハーグリーヴスの姉で、カイン・C・ハーグリーヴスの本当の母親。アレクシスとの間にカインをもうけたことで精神に異常をきたし、酷い言葉を投げかけて幼いカインに心の傷を負わせた。これをきっかけにカインは自分の出生の秘密を知り、アレクシスに殺意を持つに至った。
レノラ・ハーグリーヴス (れのらはーぐりーゔす)
アレクシス・ハーグリーヴスの妻で、カイン・C・ハーグリーヴスの養母にあたる。義姉のオーガスタ―と親交があり、仲が良かったが、カインがオーガスタ―の子供だと知った時、アレクシスに愛されていなかったことを知る。最後は自ら毒を飲んで死亡した。
ニール・ハーグリーヴス (にーるはーぐりーゔす)
カイン・C・ハーグリーヴスの後見人の男性。アレクシス・ハーグリーヴスの従兄で、オーガスターとは結ばれなかったものの、敬愛していた。カインが伯爵位を継いでからも見守ってきており、ハーグリーヴス一族の中で一番カインのことを心配している。
フェミング夫人
マリーウェザー・ハーグリーヴスの家庭教師をしていた婦人。マリーウェザーと同じ年頃の子供を事故で亡くした過去があり、そのためマリーウェザーに対して過保護になっている。マリーウェザー以外にも家庭教師として何人かの子供を受け持っており、レベッカ・メアリ・クルージもその一人。
レベッカ・メアリ・クルージ (れべっかめありくるーじ)
フレミング夫人が家庭教師を受け持っている、人形のように美しい少女の一人。大きな城にベルタと2人で暮らしており、大きな人形部屋がある。マリーウェザー・ハーグリーヴスに優しかったが、それは彼女を自分のコレクションである人形に加えたかったからであった。
ベルタ
元看護婦で、現在はレベッカ・メアリ・クルージの女中頭を務める女性。「ウィルトンの毒婦ベルタ」と呼ばれていたことがある。レベッカと共に、気にいった人を薬物を使って殺し、人形にするという犯罪行為を働いていた。
シヴォーン
カイン・C・ハーグリーヴスが伯爵位を継いだばかりの頃に、ハーグリーヴス家にいたメイド。フランスから来たメイドだが、あまり良い教育を受けておらず、自分の名前すら書けない。
スタイン
カイン・C・ハーグリーヴスが伯爵位を継いだばかりの頃にいた、下働きの男性。リフェール・ラフィット(リフ)が正式な執事として就任する前に、リフとカインを引き離し、自分が執事の地位に就こうとしていた。
ヴィオレット・マリア・テイラー (ゔぃおれっとまりあていらー)
美しい妹に婚約者を奪われ、妹の顔に劇薬をかけようとしたが、争いの末に劇薬を自分の顔に浴びてしまった哀れな少女。その事件後、顔が醜くなったことで精神を病んでしまい、屋敷から姿を見せないと言われていた。
レナード・クロムウェル (れなーどくろむうぇる)
クロムウェル家当主で、カイン・C・ハーグリーヴスとマリーウェザー・ハーグリーヴスを暖かく迎えた男性。「蝶屋敷」と呼ばれる屋敷に住んでいる。温厚で人当たりが良いが、一方で激情家の一面を持ち、一族の反対を押し切って瞳子・クロムウェルと結婚した。
瞳子・クロムウェル (とうこくろむうぇる)
日本人の旅一座の芸人だったが、レナード・クロムウェルと恋に落ち、結婚した女性で、レナードとの間にルキア・クロムウェルをもうけた。当時は「マダム・バタフライ」と呼ばれていた。レナードの元婚約者であったアビゲイル・クロムウェルによって嫌がらせを受け、自殺するに至った。その後はアビゲイルがレナードの後妻の座に収まっている。
アビゲイル・クロムウェル (あびげいるくろむうぇる)
レナード・クロムウェルの後妻で、エミール・クロムウェルの母親。ルキア・クロムウェルは義理の娘。粘着質で、気位が高く、かつてレナードが婚約者である自分を差し置いて日本人の瞳子・クロムウェルと結婚したことを未だに根に持っている。
ルキア・クロムウェル (るきあくろむうぇる)
レナード・クロムウェルと瞳子・クロムウェルの間に生まれた娘。母親に似た黒髪が特徴的で神秘的な雰囲気を持つ。目の前で母親、瞳子が自殺したところを見ており、それを機に幽霊憑きとなってしまう。
エミール・クロムウェル (えみーるくろむうぇる)
オカルト好きなアビゲイル・クロムウェルの連れ子の少年。前妻の娘であるルキア・クロムウェルに反発することなく、慕っている。自傷癖があり、手袋をはめてその傷を隠している。
マジョリー・ペライラ (まじょりーぺらいら)
「ペライラ葬儀屋」というお店を一人で切り盛りする少女。グリフォードのことを慕っており、死んだ父親の合同葬儀をするため、グリフォードに棺桶を頼んでいる。最後は、グリフォードの依頼によってカイン・C・ハーグリーヴスが彼女を叔母のもとへと連れて行った。
グリフォード
棺桶の見立てが上手な棺桶屋の大男。マジョリー・ペライラは彼のことを慕い、「棺桶屋さん」と呼んでいた。実は秘密結社「デライラ」の一員で、結社内での地位を上げるためにマジョリーに接触し、彼女が「父たち」と呼ぶ死体の処理をしていた。
ルロイ
マリーウェザー・ハーグリーヴスが下町にいた頃の友達の男の子で、地下道で暮らしている。「ユナ」という妹がいて、彼女もマリーウェザーと仲が良かった。母親はアルコール中毒で死んでおり、スリで食いつないでいる。カサンドラ・グラットストンによって、身寄りのない少女ということにされ、「ラティーシャ」の名でパーティに連れまわされていた。
オスカー・ゲイブリル (おすかーげいぶりる)
ゲイブリル男爵家の長男だが、親からも見放されたバカ息子として社交界では有名。マリーウェザー・ハーグリーヴスに心から想いを寄せている。カイン・C・ハーグリーヴスとマリーウェザーの前に度々姿を現し、時にマリーウェザーを守る。
ドミニク・クレハドール (どみにくくれはどーる)
カイン・C・ハーグリーヴスがクロムウェル家で出会った霊媒師の男性。フランスの没落貴族で、大の貴族嫌い。秘密結社「デライラ」への入会を勧められていたが、カインと出会って以降は彼に興味を持ち、カインの友人として共に「デライラ」に立ち向かう。
ジザベル・ディズレーリ (じざべるでぃずれーり)
秘密結社「デライラ」の外科専門の医師の男性。実はカイン・C・ハーグリーヴスの異母兄。表向きはアレクシス・ハーグリーヴスの養子となっている。「デライラ」の死刑執行人で、依頼のあった人物を魔術と悪魔的医術を駆使して殺害したり、殺害幇助を行う。冷酷な人物でありながら、アレクシスが強く執着しているカインを羨ましく思い、憎んでいる。
カサンドラ・グラットストン (かさんどらぐらっとすとん)
下層階級に仕事を与え、市民の味方として強い支持を得ている慈善事業家の男性。実は秘密結社「デライラ」の一員で、司祭長として「再生の儀」という儀式を執り行っていた。催眠術が得意で、カイン・C・ハーグリーヴスにも催眠術をかけようとしたが、失敗した。
カシアン
本来は35歳だが脳の異常で体の発育が止まっており、少年の姿のまま、見た目の年齢を止めてしまった男性。これを治すために秘密結社「デライラ」に在籍し、ジザベル・ディズレーリの配下として動いている。
集団・組織
デライラ
魔術や医師の心得を用いて、怪事件を起こす集団。「カードマスター」と呼ばれるアレクシス・ハーグリーヴスを頂点にして、完全なるヒエラルキーができあがっている。ジザベル・ディズレーリや、カサンドラ・グラットストン、カシアンも「デライラ」の一員。
その他キーワード
娯楽の庭園 (ぷれしゃすがーでん)
数年前に気球乗りの死亡事故で閉園になったはずの「クリモーン・ガーデン」という場所を、ある貴族が買い取って改装し、新たに「娯楽の庭園」として開園した。そのため、その宣伝として多くのピエロがロンドンの街を練り歩いていた。
関連
伯爵カインシリーズ (はくしゃくかいんしりーず)
毒薬使いとして有名な伯爵カイン・C・ハーグリーヴスが様々な事件に遭遇しながら、父アレクシス・ハーグリーヴスとの確執や、秘密結社デライラの目的に迫っていく物語。各話にタイトルが付いており「忘れられたジュ... 関連ページ:伯爵カインシリーズ