夢幻紳士 回帰篇

夢幻紳士 回帰篇

黒衣の紳士が夢と現実の世界を行き来し、さまざまな事件を解決していく姿を描いた、幻想的なホラーミステリー。過去作の『夢幻紳士 怪奇編』に収録されている19作品の中から12作品を作者自身がセルフリメイクした作品で、もとになっていた作品と物語の展開や結末が異なる場合もある。「ミステリマガジン」2004年3号(3月25日号)から2005年2号(2月25日号)に掲載された作品。

正式名称
夢幻紳士 回帰篇
ふりがな
むげんしんし かいきへん
作者
ジャンル
その他サスペンス・ミステリー・ギャンブル
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概要・あらすじ

歌声の美しい女性が舞踏会のパーティーで歌っていたが、奇妙なことに人々にはその歌声が聞こえていないだけではなく、彼女の姿すらも見えていない。しかし、夢幻魔実也だけは彼女の姿もその美しい歌声も見聞きすることができる。そのことに気づいた夢幻は、面倒なことになりそうな予感がして、知らぬフリをして外へ出た。しかし、彼女は夢幻を追ってきて、一生懸命あなたのために歌を歌ったのだから、ご褒美が欲しいと言ってくるのだった。

登場人物・キャラクター

夢幻 魔実也 (むげん まみや)

容姿端麗な黒衣の紳士。痩せ型で背が高く、黒いつば広帽をかぶり、黒いインバネスコートを身にまとっている。長い黒髪と切れ長の目が特徴。夢を自由自在に操る不思議な力を持っている。他人に任意の夢を見せることが可能で、かつ別の記憶を植え付けることもでき、その力で解決した犯罪事件は数多い。愛煙家で、よく煙草をくわえている。

バーテンダーの男 (ばーてんだーのおとこ)

バーでバーテンダーを務めているいる男性。七三に分けた黒髪を左に流し、白いワイシャツに蝶ネクタイを締め、黒いベストを着用している。どんな客にも丁寧な言葉遣いで接客している。閉店まで飲んでいた婦人の夜更けの一人歩きを心配し、カウンターで1人飲んでいた常連客の夢幻魔実也に婦人を家まで送ってもらうように頼んだ。顔のない女も彼が経営しているバーの常連客の1人。

顔のない女 (かおのないおんな)

バーテンダーの男が経営しているバーの常連客の女性。長い黒髪で黒衣に身を包んでおり、黒いつば広帽子を目深にかぶっているため顔の表情はわからない。夢幻魔実也の友人で、最近店に顔を出さない夢幻のことを心配し、いつも夢幻が座っていた席に座りながらバーテンダーの男と夢幻の話をしている。

歌う女 (うたうおんな)

舞踏会のパーティー会場で歌っていた女性。黒髪で髪を全体的に盛ってボリュームを出している。黒い手袋に、ファーの付いた黒いロングドレスを身に着けている。美しい歌声ながら、その声は一般の人には聞こえず、姿さえも見えない。しかし、夢幻魔実也には彼女の姿が見えている。苦手なものは煙草の煙で、夢幻から煙草の煙を吹きかけられた際には、蝙蝠に姿を変えて慌てふためきながら逃げていった。 それを根に持ち、夢幻に復讐しようと画策している。

吉岡 (よしおか)

夢幻魔実也の知人の男性。黒髪でもみあげが長く、丸眼鏡をかけ、ワイシャツにネクタイを締めて、白い3ピースのスーツを身に着けている。妹が1人いて、2人で日本家屋の一軒家に住んでいる。夢幻と喫茶店で会話をしているところを歌う女に見つかり、夢幻の居場所を教えるように頼まれ、彼と会わせる約束をしてしまう。

首屋敷の男 (くびやしきのおとこ)

線路脇の家賃の安い借家に住んでいる男性。目が細く、着物の上から黒い羽織を着用している。よく近くの線路で飛び込み自殺があり、バラバラになった遺体の首が家の庭先に落ちてくることから、鉄道会社の社員からは陰で首屋敷と呼ばれている。彼が住んでいる借家のある一帯は、江戸時代の頃は処刑場だったという噂がある。

沼の女 (ぬまのおんな)

沼の中に住んでいる女性。長い黒髪で衣服は身に着けておらず、目を見開いている。沼の水を汲みにきた夢幻魔実也に気づいて沼の底から姿を現した。彼女の住んでいる沼の水は、一度飲んでしまうと、その後は禁断症状を起こし、水分をいくら摂取しても渇きが止まらず、沼の水をまた飲みたくなってしまうという。

鬱病の男 (うつびょうのおとこ)

夢幻魔実也に沼の水を汲んできて欲しいと依頼した男性。短髪で髪を中分けにし、白いタートルネックのシャツを着ている。夢幻が沼の水を汲むことができた時には、依頼をした理由を夢幻に話す約束をしていた。半年前に持病の鬱病がひどく悪化した挙句に死ぬ決意をしたが、沼の中に沈んでいく途中、やっぱりまだ死にたくないともがき苦しみながらも沼から這い上がった。 その時から死のうと思う気持ちは失せ、持病の鬱病も落ち着いている。

大きなリボンの少女 (おおきなりぼんのしょうじょ)

長髪を大きなリボンで後頭部にまとめている、白いワンピースを着た少女。姉を吸血鬼の男に殺害されてしまい、その仇討ちを引き受けた夢幻魔実也とともに吸血鬼の男の住んでいる屋敷に向かう。

吸血鬼の男 (きゅうけつきのおとこ)

吸血鬼の男性。黒髪で鼻が高く、ワイシャツに黒いスカーフを巻き、白いスーツを着ている。屋敷に1人で住んでいたが、長期の旅行を理由に、屋敷の使用人を皆辞めさせてしまった。以前は妻がいたが、病で亡くしている。何人もの妻がいて、記録されているだけで少なくとも5回は結婚歴があり、皆原因不明の衰弱死を遂げている。大きなリボンの少女の姉もその亡くなった妻の1人。

堅気の男 (かたぎのおとこ)

中分けでつば広帽をかぶり、ワイシャツにネクタイを締め、白いスーツを着ている。堅気で真面目な男性だが、妾がおり、仕事帰りに頻繁に彼女の家へと通っている。妾の家から自宅へ帰る際には、後ろめたい思いもあってか、玄関ではなく庭に回って自宅に入る。ある日、いつものように庭から自宅に入ろうとすると、縁側にいた妻の口から蛇が出てくるところを目撃してしまう。

堅気の男の妻 (かたぎのおとこのつま)

堅気の男の妻。長い黒髪を後頭部で束ねてまとめており、和服の上から割烹着を着ている。夫が、仕事帰りに頻繁に妾の家へ通っていることは知らない。ある日、縁側で死人のような真っ青な顔で立っていると、口から蛇が出てきた。しかし、その後はそんな出来事があったことなど覚えておらず、普通に食事を作り、夫とともに床に就いた。

金魚鉢を落として割ってしまった少女 (きんぎょばちをおとしてわってしまったしょうじょ)

おかっぱ頭でベレー帽をかぶり、白いブラウスの上からワンピースを着ている少女。金魚鉢を落として割ってしまい、地面でバタバタと跳ねて苦しんでいる金魚をどうしようかと困っていたところ、着物の女が近づいてきて、足で踏みつけて早く殺してしまえと言われる。

着物の女 (きもののおんな)

着物を着た女性。顔には口しかなく、着物の上から黒い羽織を着て、和傘をさしている。金魚鉢を落として割ってしまった少女に近づき、地面でバタバタと跳ねて苦しんでいる金魚を足で踏みつけて早く殺してしまえと促した。彼女の正体は夢魔で、少女を誘拐しようと企んでいる。

山歩きが好きな男 (やまあるきがすきなおとこ)

山歩きが好きな男性。黒髪でハンチング帽をかぶり、黒いタートルネックのシャツを着ている。山歩きが好きで、先月もK-山に行ったことを夢幻魔実也に話していた。K-山は緩やかな山道なのだが、どうしたわけか道に迷ってしまい、その時に現れた木精に下山道を案内してもらう。

木精 (すだま)

K-山の山林の中に住んでいた女性の木の精。半透明の身体で、長髪で耳が長く、羽衣のような衣服をまとっている。山歩きが好きな男がK-山で道に迷った際に現れ、山を降りる道を案内した。それがきっかけで山歩きが好きな男を気に入り、彼が下山した後を付いていってしまう。木精は長く山を離れていると、精気が枯れてしまう。

浜で倒れていた女 (はまでたおれていたおんな)

浜の近くの家に住んでいる女性。長い黒髪でワンピースを着て、ヒールを履いている。浜で急に気を失って倒れてしまった後に、夢幻魔実也に抱かれて自宅まで連れて行ってもらった。よく鬼に追いかけられる夢を見ていて、最近は昼にも立ちくらみがして鬼に追いかけられる夢を見るようになった。

さやか

12歳の少女。黒髪のおかっぱ頭で、蝶々柄の半袖のワンピース、半袖のセーラーシャツ、白いブラウスなどを着ている。大きなお屋敷に父親と婆やと一緒に住んでいる。母親は小さい頃に亡くなっている。父親の影響で虫好きで、父親が虫の標本をお土産に持って帰ってくると大喜びする。虫の中では特に蜘蛛が好き。

さやかの父親 (さやかのちちおや)

さやかの父親。黒髪を七三に分け、丸眼鏡をかけ、鼻の下に髭を生やし、ワイシャツの上からベストを着用している。大きなお屋敷に、娘のさやかと婆やと一緒に住んでいる。妻はさやかが幼い頃に亡くなっている。昆虫学者で、世界中を旅しては珍しい虫を探しており、特に蜘蛛に興味がある。

さやかの新しい母親 (さやかのあたらしいははおや)

さやかの父親が旅先から連れてきたさやかの新しい母親。黒髪のショートカットで、ドレスの上から白いロングジャケットを羽織っている。人間の姿をしているが、実は蜘蛛の身体をもつ怪物で、父親が彼女をさやかに紹介した際に、さやかにはその正体を見抜かれてしまう。

婦人 (ふじん)

バーテンダーの男が経営しているバーで飲んでいた女性。長い黒髪を後頭部で三つ編みにして1つにまとめ、白いブラウスの上から黒いジャケットを着て、黒いパンツを穿いている。閉店までバーで1人で酒を飲み、店を出る際に、バーテンダーの男がカウンターで1人飲んでいた夢幻魔実也に彼女を送っていくことを頼み、夢幻と帰り道をともにする。

吉岡の妹 (よしおかのいもうと)

長い黒髪を後頭部で三つ編みにしており、白い寝巻きの上から黒いジャケットを羽織っている。兄の吉岡と2人で日本家屋の一軒家に住んでいる。ある日、橋の下の川に落ちてしまい、何とか一命を取り留めたものの、床に臥せる日々が続いている。体も衰弱する一方で、入院することが決まった。

妾の娘 (めかけのむすめ)

長い黒髪を後頭部で束ねており、白いブラウスにリボンを結び、ロングスカートを穿いている。妾の母親とは、長い間2人きりで暮らしてきたが、母親が亡くなってからは、数年前に亡くなった実の父親の奥様から家に来るようにと誘いを受けて一緒に暮らすようになった。しかし、奥様は彼女を妾腹の子呼ばわりし、酷い仕打ちを繰り返し続けていた。 彼女はそんな仕打ちに耐えかね、睡眠薬を服用して眠っている奥様の顔に湿らせた手ぬぐいをかけて殺そうとした。

船上の男 (せんじょうのおとこ)

大学教授を務めていた男性。鼻の下に髭を生やし、眼鏡をかけており、白いスーツの上からロングコートを羽織っている。以前は東京の大学で教授を務めいたが、妻がいつからか同僚の若い助教授と親しくなり、妻が不貞を働いているのではないかと疑うようになったが、問い詰める勇気はない。その後、2人の間に女の子が生まれるが、娘は自分の子じゃないのではと疑うようになり、そのことで妻をなじるようになる。

酒浸りの男 (さけびたりのおとこ)

船の自室で酒浸りになっていた男性。黒髪の短髪で、ワイシャツのネクタイは緩み、シャツの胸元がはだけている。Kという財閥の使用人の息子で、そこの財閥の息子とは幼なじみで親しいことから学校まで通わせてもらっている。学生時代に、Kが惚れていたカフェの女給にいたずら心で手を出し、Kに女と寝たことがバレてしまう。そのことがきっかけでKは沼に飛び込んで自殺してしまう。

奥様 (おくさま)

妾の娘の実の父親の妻。つり上がった眉毛と目が特徴的で、白い着物の上から白い羽織を着ている。大きな屋敷に夫とともに住んでいたが、数年前に夫は他界し、多くの使用人とともに暮らしている。以前夫の妾をしていた女性が亡くなり、身寄りのない妾の娘に一緒に住まないかと誘い、ともに暮らすようになった。その際に、屋敷で働くすべての使用人を解雇し、使用人の代わりに妾の娘に過酷な労働を強いている。

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