夢幻紳士 幻想篇

夢幻紳士 幻想篇

ミステリアスな黒衣の紳士が夢と現実の世界を行き来し、さまざまな事件を解決していく姿を描いた幻想的なホラーミステリー。「ミステリマガジン」にて連載された高橋葉介の代表作「夢幻紳士」シリーズ3部作のうちの1作目。「ミステリマガジン」2004年3号(3月25日号)から2005年2号(2月25日号)に掲載された作品。

正式名称
夢幻紳士 幻想篇
ふりがな
むげんしんし げんそうへん
作者
ジャンル
その他サスペンス・ミステリー・ギャンブル
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概要・あらすじ

の頭の中には、いつの間にか電波塔の毒電波を受信する受信機が埋め込まれていた。毒電波によってさまざまな幻覚を見せられた僕は、日常生活で奇行を演じさせられた結果、「しかるべき場所」と呼ばれる病院へと入院させられてしまう。だがそこで僕の影から黒装束の男が姿を現し、僕の頭の中の受信機を取り除いてくれる。こうして僕は住んでいた屋敷に戻ることができたが、そこで、頭の中に受信機を埋め込んだ意外な人物の正体を知ることとなる。

登場人物・キャラクター

夢幻 魔実也 (むげん まみや)

痩せ型で背が高く、黒いつば広帽をかぶり黒いインバネスコートを身にまとった、黒衣の紳士。長い黒髪に切れ長の目で鼻が高く容姿端麗。僕の影の中から現れ、僕の頭の中に埋め込まれた電波塔が発信している毒電波を受信する受信機を取り除いた。以後も「僕の守護天使」を自称し、僕の身に危険が迫ると何処からともなく現れる。夢を自由自在に操り、頭の中に入り込むことができる他、影を本体から切り離し、分身のようにして操ることもできる。

(ぼく)

収容所に収監されていた少年。白いつば広帽をかぶり、黒いスーツと白いロングコートを身にまとっている。顔立ちは中性的で、肌が白く容姿端麗。父親は既に亡くなっており、彼の経営していた会社と工場、屋敷を相続した。屋敷には叔父と一緒に住んでいたが、眠っている間に叔父に頭の中に電波塔が発信している毒電波を受信する受信機を埋め込まれてしまう。 その影響で、自分の意思とは関係なく奇行を繰り返し、病院へ入院させられる。だが、夢幻魔実也に受信機を取り除いてもらったことで、病院から退院し屋敷へと戻ることができた。夢幻からは「大切なパトロン」と言われており、身の危険が迫った時には必ず夢幻が現れ、助けてくれる。

叔父 (おじ)

僕の叔父。目つきが鋭く口の両端と顎に鬚を生やした痩せ形の男性。僕の屋敷に住んでいるが、愛人とともに僕の持っている財産を狙っている。僕を禁治産者として病院に閉じ込めるために、電波塔の毒電波を受信する受信機を僕の頭の中に埋め込んだ。

院長 (いんちょう)

僕が入院していた病院で、担当医を務めた男性。大柄なふくよかな体型で、ワイシャツに蝶ネクタイを締め、スーツを着ている。丸眼鏡をかけ、前髪は後退していて大きな口と団子鼻が特徴。病院で電波を発する受信機を埋め込まれた僕を個室に閉じ込めた。夢幻魔実也によって電波を発する受信機を取り除かれた僕を見て、自分で自分を治療した非常に珍しい症例として学会に報告したいと叔父に語る。

僕が公園で出会った女性 (ぼくがこうえんでであったじょせい)

西神田アパートに夫とともに住んでいる女性。ボブヘアで黒い帽子をかぶり、ヒョウ柄のワンピースの上から黒いロングコートを羽織っている。僕が公園を歩いている時、近くの動物公園から虎が逃げ出したからと、早く公園を出るように僕を急かした。嫉妬深くて残酷な夫に今までずっと部屋に閉じ込められていたと語っているが、不審な点が多い。

重蔵 (しげぞう)

僕が幼い頃に屋敷で下働きをしていた男性。目が細く、ハンチング帽をかぶり、作業着を着用して背中には鎌の入った籠を背負っている。僕に懐かれていて、作業に行く際にはよく後ろをついてこられていた。僕のことを「嬢ちゃん」と呼び、僕に何処に行くのか訪ねられた際には、即身仏になった坊主の木乃伊(ミイラ)を堀りに行くと伝えていた。

叔父の愛人 (おじのあいじん)

叔父の愛人の女性。長い髪を頭上で盛り上げていて、柄の入ったドレスを着用し、黒いストールを羽織っている。化粧が濃く、黒くて太い眉毛と左目の下にある泣きボクロが特徴。ある日、僕の住んでいる屋敷を訪問して、僕に結婚相手を紹介すると言ってホテルに連れ出し、相手が待っている部屋の鍵を手渡した。金に目がなく、叔父とともに僕の財産を狙っている。

ホテルの部屋にいた女 (ほてるのへやにいたおんな)

ホテルの部屋にいた女性。ボブヘアを中分けにした黒髪にアクセサリーを付け、柄の入った黒いドレスを着て、両手に黒い手袋をはめている。叔父の愛人が僕を陥れるために渡したホテルの鍵で開けられる部屋の中にいた。元々恋人がいたが、恋人のもとに資産家の娘との見合い話が舞い込んできた途端、あっさりと振られてしまう。彼の裏切りを許せずに、ホテルに呼び出し部屋に招き入れて銃殺したものの、僕に殺人現場を目撃されてしまい、僕も殺害しようと襲いかかる。

座頭 (ざとう)

杖をつき、ステテコ姿で下駄を履いている小柄な盲目の男性。大きく禿げ上がった頭部と長い鼻が特徴。夜道を歩いていた僕が偶然に出会い、道中をともにした人物で、目が見えないぶん勘が鋭く、人間の本性を見抜く能力を持つ。僕のことを最初は流行りの洋装がモダンなお嬢さんだと思っていたが、途中からその印象が若い小生意気な青二才に変わってしまったと語り、自分の勘が鈍ったことを恥じる。

渚の女 (なぎさのおんな)

海水浴を楽しむ人々で賑わう渚にいた女性。黒髪のボブヘアで、黒いワンピース水着を着用している。実は幽霊で、身に着けている衣服をセーラー服やドレス、着物姿など自由自在に変えることができる。海の中に住んでおり、遊覧船から落ちた僕を水中に引きずり込もうとした。その後、救助されて海岸沿いの病院に運ばれた僕を追っていたが、病院に向かう道中で夢幻魔実也に呼び止められる。

井戸の女 (いどのおんな)

痴情のもつれで男性に井戸の中に落とされた女性。黒髪のボブヘアで、上半身にストライプ模様の入った半袖のワンピースを着用している。井戸の底が浅かったために一命を取り留めた。その後、井戸から這い上がり、近くで眠っていた僕を殺そうとしていた男性を背後から岩で殴打して殺害し、ともに井戸の中へ降りて行った。

少女 (しょうじょ)

家で1人、母親の帰りを待っている少女。黒髪のボブヘアで、頭部に花柄の大きなリボンを付け、上半身にボーダー柄の入った半袖のワンピースを着ている。母親と二人暮らしをしており、母親の仕事がある日は家で留守番をしている。赤ん坊の頃に船乗りだった父親を亡くし、写真も残っていなかったため父親の顔を知らずに育った。何とかして父親の顔を思い出したいと願っている。

顔のない男 (かおのないおとこ)

船乗りの男性。顔がなく、海軍の制服を着用している。実は少女が赤ん坊の頃に海で亡くなった彼女の父親の幽霊で、顔がないのは、彼の想い人が顔のない男の顔を思い出せないでいるためである。想い人の所へ会いに行きたいものの顔がないことに困っており、夢幻魔実也に顔を貸してもらえないかと相談を持ちかける。

制服の少女 (せいふくのしょうじょ)

セーラー服を着た少女。ショートカットの黒髪で、学校のある時はセーラー服を着用しているが、普段は襟付きのシャツの上にセーターを羽織り、スカートを穿いている。かつて金持ちの令嬢だった祖母がおり、いつも背筋を伸ばした美しい祖母のことを自慢に思っている。時々黒いインバネスコートを着た男性を家の内外を問わず見かけることがあるが、彼が他の人には見えていないことを不審がっている。 最近、祖母がその黒いインバネスコートの男性と話しているところを目撃。このところ体が弱った祖母を心配し、彼は死神なのではないかと疑う。

その他キーワード

即身仏 (そくしんぶつ)

昔、坊主が生きながら仏になろうとして五穀を断ち、自ら穴の中に埋まって干物のように木乃伊(ミイラ)化した遺体のこと。この即身仏を寺に祀って拝むと功徳が有ると言われ、重宝されている。しかし、なかには土に埋まったまま人々に忘れられてしまう即身仏もあり、重蔵はこの木乃伊になった即身仏を掘り出して金に換えようと、僕の住んでいる屋敷の裏山へ探しに行っていた。

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