あらすじ
第1巻
日本橋懸は子供の頃から一途に想い続ける女性・奈緒に振り向いてほしいという動機で、警察官を目指す事にした。東大法科を首席で卒業し、Ⅰ種公務員試験をダントツトップで合格した秀才の懸は、キャリアとして警部補の肩書を持ち、新人警察官として南町交番に配属される。静かで平和な街のはずが、意外と細かい事件が多く、懸は市民のために忙しく走り回っていた。
そんな懸が巻き込まれてしまった最初の大きな事件は、連続猫殺しから始まった殺人事件だった。懸は、犯行を目撃したと犯人から勘違いされて囚われたひばりを助けるために、単身現場に乗り込むが、自分自身も捕らえられてしまう。大ケガを負わされ、あわや殺されそうになる懸だったが、椙森と御法川十子に助けられてなんとか命拾いする。その後も何かと危ない目に遭いながらも、懸は数々の事件へと挑んでいく。
第2巻
ある日、日本橋懸は仕事の帰り道に、一人の女性が数人の男性にからまれている場面に出くわす。彼女を助けたせいで懸はケガをし、女性の家で手当を受ける事になるが、懸は警察官だと知られた途端、血相を変えた女性と彼女の弟・水樹に追い出されてしまう。そんな中、南町交番のとなりの管轄内で、警察官が五人も連続で殺される事件が発生。同時に、水樹ら姉弟の様子が気になっていた懸は、以前南町交番に勤務していた一ノ宮元警部から、彼らの父親がひき逃げ事件の犯人として誤認逮捕されて自殺した事、身体が弱かった母親が警察からひどい扱いを受けて心労から病気で亡くなった事を知らされる。そんな中、警察官殺しの犯人が捕まるも、彼が殺したと自供した人数と、殺された警察官の人数が合致しない。これに対し、ある仮説を立てた懸は、水樹とその姉の家を訪ねる。そして水樹が、かつて父親と母親を死に追いやった警察官を殺した事を突き止める。さらに水樹の姉も、自分を襲おうとした警察官をはずみで殺してしまっており、水樹が殺人に手を染めたのも、そもそも姉の犯行を隠ぺいしようとしてのものだった事を知るのだった。
登場人物・キャラクター
日本橋 懸 (にほんばし かける)
南町交番に配属されたばかりの新人男性警察官で、年齢は23歳。童顔で背が低い事がコンプレックスだが、実は秀才で、Ⅰ種公務員試験に合格したキャリア。そのため、階級は新人ながら警部補である。望んでいないのに死体を見つけてしまったりと、何かと事件に巻き込まれやすい体質。
御法川 十子 (みのりかわ とおこ)
南町交番に勤務する女性警察官で、日本橋懸の先輩にあたる。階級は巡査部長。さばさばした性格で、癖のある部下たちを鮮やかに統括している。美人でスタイルがいいが、気さくで話しやすい性格。一方で、仕事に関しては厳しいところもある。
椙森 (すぎもり)
南町交番に勤務する高卒の男性警察官。年齢は21歳。日本橋懸にとっては年下の先輩にあたる。眼鏡をかけたまじめそうな風貌だが、実際は気さくで親しみやすく、むしろ性格は逆に軽すぎるくらい。血を見るのが苦手で、猫の死体を片付ける作業の途中に吐いてしまった事がある。
佐久間 八重 (さくま やえ)
南町交番に勤務する女性警察官で、階級は巡査。少々ミーハーな性格をしており、話をひっかきまわすのが得意。巨乳でスタイルもいいのだが、「ババア」と言われるとブチ切れてしまい、見境がなくなる。
アミカ
一ノ宮元警部に飼われているシェパードで、性別はメス。あだ名は飼い主の名前に元の階級をつけて「一ノ宮警部」と呼ばれている。もともと麻薬探知犬として活躍していたので、覚せい剤の匂いをかぎ分けるのが得意。死体を発見するのも得意で、懸と散歩している時に見つける確率が高い。日本橋懸の事を気に入っており、懸にべたべた接触しようとするひばりを目の敵にしている。
ひばり
南町交番によく入り浸っている高校生で、可愛い女子のような見た目をしているが、実際は男。日本橋懸の事を気に入り、やたらと懐いている。賑やかすぎて迷惑な事も多いが、たまに役に立つ働きをする事もある。
奈緒 (なお)
日本橋懸が住むアパートの隣の部屋の住人で、懸より年上の女性。懸がまだ少年時代に、なにかと世話を焼いてくれた優しい近所のお姉さんで、懸にとっては初恋の相手。本石秀一と付き合っており、結婚を間近に控えている。
日本橋教授 (にほんばしきょうじゅ)
日本橋懸の父親で、太平洋大学の教授を務めている。遺伝子工学の権威で、ノーベル賞候補にもなるようなすごい学者なのだが、普段の生活ではぼんやりしていて、なにか一つの事に熱中するとほかの事を忘れるようなところがある。その一方で異常なまでに記憶力がよく、一度見たものはすぐに記憶してしまう。
一ノ宮元警部 (いちのみやもとけいぶ)
去年退職した男性警察官で、アミカの飼い主。長年ずっと南町交番に勤務しており、退職してからは交番の裏に住んでいる。そのため、街で起こった犯罪については詳しい。
左沢 双葉 (あてらざわ ふたば)
東京都監察医務院で、非常勤の監察医をしている男性。長髪で、少々変わり者だが気さくで面白い人物。日本橋懸の事を気に入っており、貴重な情報を教えてくれる。
本石 秀一 (ほんごく しゅういち)
事件の捜査現場でよく日本橋懸と顔を合わせる男性刑事。懸に対して憎まれ口をききながらも興味を抱き、キャリアとして将来の出世が見込まれている懸に期待している。実は奈緒と付き合っており、結婚を間近に控えている。
水樹 (みずき)
南町交番の管轄区域に住む青年。姉が自分を乱暴しようとした警察官をはずみで殺してしまった事を知り、その犯罪を隠ぺいするために、かつて父親を誤認逮捕した警察官二人を次々と殺し、ほかの警官殺しの犯行に見せかけようとした。
水樹の姉 (みずきのあね)
若くて美しい女性で、水樹の姉。警察官からのストーカー被害に遭っており、むりやり乱暴されそうになった際、相手を殴って殺してしまった。自身の罪と、それを隠ぺいするために恨みがあった警察官を次々と手にかける水樹の行為に耐えられず、遺書を残して自ら命を絶ってしまう。
島田 恵 (しまだ めぐみ)
マンションから転落死した女子高校生で、遺体からは覚せい剤の薬物反応が出た。同じ学校の朝倉愛と親しくしていたが、実は愛の事を子分のように扱っており、命令ばかりしていた。クラブのDJをしていた男性と付き合っていたが、別れ話のもつれから殺された。
朝倉 愛 (あさくら あい)
ひばりや島田恵と同じ学校に通う女子高校生。恵とは同じクラスで親交があったが、実は恵から命令され、金を巻き上げられたり、万引きをさせられていた。口論の末に恵をマンションの屋上から突き落としてしまった事で、自分が恵を殺したと勘違いして苦しんでいた。
場所
南町交番 (みなみまちこうばん)
日本橋懸が勤務する交番。御法川十子巡査部長を筆頭に、椙森、佐久間八重らが勤務している。元警察犬で、今は引退したシェパードのアミカは、交番の裏に住んでいる一ノ宮元警部に飼われているが、しょっちゅう交番にやって来ている。ほかにも、警察マニアのひばりがよく顔を出している。