民族の命運を賭けた「祭」
本作の舞台となる世界では、12の民族がそれぞれの覇権を巡って争いを繰り広げていた。そんな中、各民族の長である12人の帝が集まり、民族を従える権利をかけた代理戦争「祭」の開催が決定する。「祭」は「獣刀士」と呼ばれる特別な武士を選出したチーム戦で、各国から五人の獣刀士が参加し、勝利した国は、ほかの国の民族を従える権利を得ることができる。「祭」の開催が決まったことで、最も影響を受けたのは戦闘力に乏しい「卯」の民族だった。「卯」の民族を代表する指宿は、戦力となる獣刀士を他民族からスカウトせざるを得ない状況に追い込まれてしまう。
伝説の民族「獅子」との出会い
指宿は、「祭」に参加するための獣刀士を選出するべく、側近のミミと共に各地を巡っていた。その道中、指宿は最強の民族と称される「猫」の存在を知り、彼らを配下に加えようと考える。しかし、「猫」の民はすでに日出丸という武士によって滅ぼされたと聞かされる。そんな中、突然、日出丸から求婚された指宿は不審に思い、これを拒否するが、日出丸に刺客から救われたことで、彼が「猫」をも超える力を持つ伝説の民族「獅子」であることを知る。指宿は日出丸の力を見込み、「祭」への参加を条件に彼との婚姻を受け入れることを決意する。
獣刀士たちがあやつる特殊能力
本作に登場する多くのキャラクターは、「神氣」と呼ばれる特殊な能力を使うことができる。獣刀士の中には、刀に神氣を集中させる「身半の域」や、自らの体を媒介にしてさらに強力な神氣を発現させる「身全の域」といった戦法を使いこなす者もいる。神氣は自然現象に干渉する特性を持ち、民族によって扱える属性が異なる。たとえば、「辰」の民である神足は「水」の神氣をあやつり、巨大な渦巻く水柱を生み出す「舞千瀧」を使いこなす。一方、「狗」の民の路暴は「雷」の神氣を巨大な太刀筋に変える「冥府の番犬」を巧みにあやつる。特に「獅子」の民があやつる「闇」の神氣は非常に強力で、日出丸が使用する「爪爪ノ太刀」は、まずフェイクの一太刀を放ち、相手がそれに気を取られたスキに神氣をまとった二の太刀を叩き込むという戦法である。しかし、「獅子」の民は神氣の力を解放すると獣のような姿に変貌して理性を失い、最悪の場合は味方にまで危害を加えることがある。
登場人物・キャラクター
日出丸 (ひじまる)
あらゆる民族を凌駕する戦闘力を誇る「獅子」の生き残りである青年。最弱の民族「卯」に運命を託され、獣刀士に選ばれた。金色の目と黒い立髪を持ち、マイペースで豪快な性格をしている。強敵との戦いに喜びを見いだす一方で、他人と協調することが苦手で偏食家でもある。「群れ」という概念を重視しており、気に入った相手を自らの家族に迎え入れることもある。獅子の生き残りである老人と共に山奥で暮らしていたが、ある日、謎の刺客に追われていた指宿を救出する。そして、指宿を嫁にすることを条件に、「卯」の民族の獣刀士として「祭」に参加することになる。胸には大きな傷跡があり、それは実の兄・獅子王が使う「闇」の神氣「獅子爪ノ三ツ傷」によるものである。
指宿 (いぶすき)
「卯」の民族の帝として君臨する女性。他者に触れられると、ときめきが止まらない体質のため、周囲に警戒心を抱き、簡単には接触を許さない。明るく快活な性格ながらも、指宿自身の立場を誇示することはなく、穏やかで平和な「卯」の民を心から愛している。しかし一方で、「卯」の民が戦う力をほとんど持たないことを憂慮しており、「祭」でほかの民族に圧倒されないよう、他民族から獣刀士をスカウトする計画を立てている。当初は計画の実行に苦労していたが、獅子の民である日出丸の加入を皮切りに、神足や路暴といった強力な獣刀士を仲間に加えることに成功した。「寅」の民から執拗に命を狙われているが、その理由は本人も知らない。
書誌情報
獣心のカタナ 5巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2024-01-17発行、978-4065342466)
第2巻
(2024-04-17発行、978-4065351802)
第3巻
(2024-06-17発行、978-4065357804)
第4巻
(2024-08-16発行、978-4065365175)
第5巻
(2024-11-15発行、978-4065374276)







