一つ屋根の下の恋愛物語
羽美は、幼い頃から人気若手俳優である兄の美斗のことが大好きで、周囲から称賛される兄の姿を誇りに思い、喜びを感じていた。しかし、スターへの階段を駆け上がる美斗が、次第に遠い存在になっていく寂しさと共に、自分の平凡さに対する劣等感を募らせていく。そんなある日、スタジオでの撮影見学中に兄のラブシーンを目の当たりにした羽美は、強い衝撃を受けると同時に、自分の中に秘めていた本当の気持ちに気づいてしまう。
兄妹の秘めた思いと切ない恋心
天真爛漫な羽美は、兄の美斗のために一生懸命尽くしているものの、その努力は空回りしがち。胸の奥に秘めた兄への特別な思いは、決して知られてはならない秘密だった。一方、美斗もまた、ファン第1号と公言して応援してくれる妹を心から大切に思っていた。当初はあくまで妹として接していたが、芸能界のライバル、貴島伶良がとなりの部屋に引っ越してきて羽美に接近し始めると、自分の中に芽生えた独占欲や焦りに気づき、動揺を隠せなくなる。やがて、羽美が眠っているあいだにキスをしてしまうなど、彼の思いは次第に抑えきれないものとなり、一人の女性として羽美を見るようになる。互いに惹かれ合いながらも、一つ屋根の下で暮らす「兄妹」という、もどかしくも切ない二人の関係が、つねに明るく前向きに描かれている。
荻原兄妹の秘密が次第に明らかになっていく
羽美は、脚本の読み合わせからマネージャー代行まで、献身的に兄の美斗を支えていた。その応援を力に、美斗は俳優業に加え歌手活動も開始し、当初は名前を伏せてリリースした楽曲が大ヒットを記録する。そんな中、美斗は羽美の母親の親友、頼子と世界的アーティストのアレックス・ムーンの息子であり、荻原家の養子であることが明らかになり、羽美とは血のつながりがないことが判明する。これにより、兄妹という障害は取り除かれたものの、荻原家には長い家族の歴史があり、二人は自分たちの恋心でこの関係を壊してよいのかと悩み続ける。さらに、実の父親だと名乗り出たアレックスは、美斗にニューヨークで共に暮らし、本格的に歌の勉強をしないかと誘うのだった。
登場人物・キャラクター
荻原 羽美 (おぎわら うみ)
日本人の父親とハンガリー人の母親を持つ女子高校生。年齢は16歳。幼い頃から兄の美斗が大好きで、彼のベッドにもぐりこんでいっしょに寝るほどの重度のブラコン。色白で柔らかな猫っ毛が特徴で、美形すぎる兄の影に隠れがちだが、実は人目を引く整った顔立ちの美少女。明るく何事にも意欲的な一方で、どこか天然な一面もあり、失敗することも多い。本人は自覚していないが、文化祭の劇で急遽代役を務め、完璧にこなすほどの天才的な演技力を秘めている。兄を優先するあまり恋愛経験はなく、異性と交際したことはない。美斗のライバルである人気歌手の伶良からの好意にも、まったく気づいていない。
荻原 美斗 (おぎわら はると)
羽美の兄で、人気俳優の男性。年齢は19歳。長身で抜群のスタイルを誇り、整った顔立ちとミステリアスな灰色の瞳を持つ。何事も器用にこなす天才肌で、小学生の頃にはファンクラブが存在するほどの人気とカリスマ性の持ち主で、芸能事務所を経営する父方の叔母から熱望されて芸能界入りした。その後は俳優としてだけではなく、音楽の才能も開花させ、別名義で歌手としてもデビューを果たした。妹の羽美を溺愛しており、多忙な日々もあって恋愛経験はほとんどない。羽美からは「ハルちゃん」と呼ばれている。







