ふつつか者の兄ですが

ふつつか者の兄ですが

『喰う寝るふたり 住むふたり』などで知られる日暮キノコの連載作品。現代日本を舞台に、引きこもりの兄、田処保が社会復帰を目指し始める中、女子高校生の妹、志乃とのあいだに生まれる心の葛藤を、緻密な心理描写で描いた人生再生のヒューマンドラマ。講談社「月刊モーニングtwo」2015年5月号から2017年8月号まで連載。

正式名称
ふつつか者の兄ですが
ふりがな
ふつつかもののあにですが
作者
ジャンル
兄弟・姉妹・双子
 
恋愛
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊6巻
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引きこもりの兄と多感な妹の成長物語

高校生の志乃は、学校やアルバイトで充実した日々を送る一方で、帰宅すると引きこもりの兄の世話をしながら家事に追われる生活を送っていた。気まずさと息苦しさが漂う家庭では、つねに窮屈さを感じ、鬱屈した感情を抱えていた。さらに、兄の存在を周囲に知られないように「自分は一人っ子だ」とウソをつき、友達を家に呼ぶこともできなかった。そんなある日、志乃は兄が突然部屋から出てきて、社会復帰を目指すことを宣言する場面に遭遇する。本作は、引きこもりの兄が社会復帰を目指すところから物語が始まり、引きこもりの兄と多感な思春期の妹が織りなす心の葛藤と、二人がゆっくりと成長していく姿を描いている。

社会復帰への厳しい道のり

保は、中学時代のトラブルをきっかけに引きこもりになってしまった。自分のせいで両親が別居し、妹の志乃に家事の負担を強いていることに申し訳なさを感じ、20歳を迎えたことを機に社会復帰を目指し始める。しかし、その決意がすべての問題を解決するわけではなく、むしろ生活が一変したことで、妹の志乃の機嫌はますます悪化してしまう。また、保自身もアルバイトを通じて社会との接点を持とうとするが、要領の悪さが災いし、彼の社会復帰は早々に行き詰ってしまう。引きこもりだった保がさまざまな困難に直面しながらも、少しずつ成長し、前に進もうとする姿を描いたヒューマンドラマとなっている。

兄の再起と妹の青春が交差する新たな関係

保の社会復帰に向けた行動に戸惑いを感じつつも、志乃の青春もまた新たな局面を迎えていた。片思いの相手との距離が急速に縮まり、学校行事に全力で取り組む志乃は、高校生ならではの貴重な時間を楽しんでいた。その姿は次第に保にも影響を与え、志乃自身も兄の変化に複雑な思いを抱きながら、二人のぎこちない関係は少しずつ改善の兆しを見せ始める。一方、保は自分が引きこもりで何もできない現状を自覚しており、妹を人生の先輩として助言を求めながら社会復帰を目指していく。引きこもりの兄がさまざまな困難に直面しながら社会復帰を果たす過程は、同時に一度壊れてしまった兄妹の関係が新たな「家族」としての絆を築き、修復されていく再生の物語でもある。

登場人物・キャラクター

田処 志乃 (たどころ しの)

とある高校に通う2年生の女子。明るい茶髪をセミロングに伸ばし、朗らかで活発な性格をしている。年相応に青春を謳歌(おうか)しているが、実は兄の保が不良になり、さらに引きこもりになったため、地元では居心地の悪い状況に置かれている。父親が脱サラして服屋を始めたことをきっかけに、家族で話し合い、環境を変えることが兄のためになるのではないかと考え、半ば強引に兄の面倒を見るために父親と共に現在の地に引っ越してきた。地元から逃げ出したい一心で家事を引き受けているものの、実質的にヤングケアラーとしての生活に不満を募らせる日々を送っている。中学時代のトラウマから兄を存在しないものとして扱い、周囲には一人っ子だとウソをついている。一刻も早く一人暮らしを始めるためにアルバイトに励んでおり、周囲からは家事もアルバイトもこなすしっかり者として見られている。1年生の時にクラスメイトだった夏井渉に片思いしており、彼との関係に一喜一憂している。社会復帰を目指し始めた兄に対しては、複雑な感情を抱いている。

田処 保 (たどころ たもつ)

志乃の兄で、引きこもりの青年。年齢は20歳。中学生の頃、部活動での挫折をきっかけに不登校となり、不良仲間とつるんで荒れた生活を送るようになる。その後は心を閉ざし、世間から目を背けるように引きこもりの生活を続けていた。保自身の行動が原因で両親が別居し、妹にも負担をかけている現状に責任を感じ、20歳を迎えるのを機に社会復帰を決意する。しかし中卒のため、なかなか働き口が見つからず、ようやく近所のラーメン屋に就職するものの、些細なミスが重なり自信を失い、精神的に不安定な状態が露呈する。一度はラーメン屋での大きな失敗を機に再び引きこもりに戻りそうになるが、妹の言葉に支えられ、再度社会復帰を目指し始める。基本的には妹思いで優しい性格であり、志乃が体調を崩すと心配し、幼い頃に彼女がウサギ型に切ったリンゴが好きだったことを覚えているなど、細やかな気遣いを見せる。志乃からは「どうしてこんなにピュアなの?」と思われているが、不良時代や引きこもりの時期が異常だっただけで、本来は繊細で純真な性格の持ち主。その気質ゆえに社会では特に傷つきやすい一面もあるが、それを乗り越えようと日々奮闘している。

書誌情報

ふつつか者の兄ですが 6巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2015-09-23発行、978-4063885057)

第2巻

(2016-02-23発行、978-4063885675)

第3巻

(2016-07-22発行、978-4063886276)

第4巻

(2016-11-22発行、978-4063886689)

第5巻

(2017-04-21発行、978-4063887242)

第6巻

(2017-07-21発行、978-4065100516)

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