あらすじ
第1巻
聖暦元年、世界の中心に突如現れた新大陸「マグメル」には、常識を超えた未知なる巨大生物や貴重な埋蔵資源が眠っていた。多くの人々が未知の大陸での刺激を求め、世界は再び「探検家時代」と呼ばれる冒険の時代に突入する。そして迎えた聖暦35年、マグメルにはさまざまな危険と人々の欲望が渦巻き、それに挑んだ探検家達の遭難事件が数多く発生するようになっていた。そんな中、マグメルに乗り込んだ探検家達を救出する「拾人者」を生業とする少年のヨウは、助手のゼロと共に日々「拾人館」で活動していた。そしてヨウはある日、大企業「極星社」に勤めるエミリア・チェスターから、新たな救出依頼を受ける。その内容は、マグメル第7区にある生物応用研究所に現れた怪物「ケルベアー」にさらわれた、エミリアの父親の救助であった。生物応用研究所のやり方が好きでないヨウは初めは乗り気ではなかったが、拾因の名を聞いた途端に依頼を引き受け、第7区に向かう。そしてヨウは、見事にエミリアの父親の救出に成功。だがこれにより、極星社の背後に潜む強大な一族の陰謀や、マグメルに潜む謎に巻き込まれていく事となる。
第2巻
クスク諸島にある極星社の周辺に、謎の空間「ダーナの繭」が出現した。この事態に対応するため、極星社は莫大な成功報酬を掲げながら、社員を救うための独自の探検隊「ダーナの繭探検隊」を編成および派遣する。ダーナの繭の空間内には、以前ヨウに依頼をしたエミリア・チェスターも兵器開発部ごと取り残され、身動きできない状態になっていた。マグメル以上に謎に包まれた空間に取り残されているエミリアを救出するため、ヨウもダーナの繭内部に向かう事となる。しかしそこには人間よりも強大な力を持ち、敵対的な謎の知的生命体「エリン」が待ち受けていた。ダーナの繭に辿り着いたヨウは、すぐに遭遇したエリンの1体を倒すが、そのエリンはすでに増援を呼んでいた。ヨウは次々出現するエリンに苦戦していたダーナの繭探検隊と遭遇し、彼らの中に構造力の才能が目覚めかけている事を知る。そしてゼロの調査により、メンバーの一徒が幻想構造の才能を持っている事が判明。新たな力に目覚めた一徒の生み出した幻想構造の仮面によって、エリンに対抗するのだった。一方、ダーナの繭に取り残されたままエリンに襲われていたエミリアは、「聖国真類」を名乗る謎の青年と遭遇していた。
第3巻
ダーナの繭に出現した、複数のエリンへの反撃を開始したヨウ達。しかしヨウ達の前には、戦闘種族「双生タイタン」の男が新たに立ちはだかる。エリンの中でも強大な武力を持つ双生タイタンに対抗すべく、ヨウは一徒達からのサポートを断ち、武力への誇りが強い双生タイタンに一騎打ちの勝負を申し込むのだった。一方、聖国真類の青年、クー・ヤガ・クランに拉致されたエミリア・チェスターは、彼からダーナの繭が出現した本当の理由を聞く。ダーナの繭の出現には、ヨウの師である拾因の存在が見え隠れしていた。そしてクーの目的は、過去に因縁のあるヨウを見つけ出す事だった。一方、不意打ちで双生タイタンに勝利したヨウの前に、マスクをかぶったクーがエミリアを捕らえて立ちはだかる。エミリアに命の危機が迫っていると悟ったヨウは応戦するものの、クーは他人の現実構造をコピーする強力な幻想構造によって、容赦ない攻撃を次々と仕掛ける。その頃、探査機をクーに破壊されてしまったゼロは、強敵と戦うヨウを心配してダーナの繭に急行する。しかしゼロが到着した時、ヨウとクーはなぜか仲よさげに話していた。
第4巻
エリンとの死闘の末、ヨウ達は危険なダーナの繭から無事帰還した。そこにはヨウが久々に再会した幼なじみのクー・ヤガ・クランの姿もあった。ヨウはいつもの自堕落した生活に戻っていたが、クーと再会した事で彼らの日常はさらににぎやかなものとなっていた。そんなある日、ヨウは以前から探し求めていた「ミスリルリキッド」に関する情報を田伝親父から得る。ヨウはマグメル内に存在するという希少なミスリルリキッドを入手するため、クーとゼロを連れてマグメル第8区の要塞都市「ラジウム」に向かう。ラジウムに来たヨウ達は、強盗に襲われていたトト・ビックトーを救出。そして、探検家オーフィス・ビックトーの一人娘であり、ミスリルリキッドの持ち主でもあるトトと交渉を始める。しかし、父親との思い出の品であるミスリルリキッドを売買はできないと、トトは交渉を拒む。見かねたクーは希少な植物の種を差し出して契約は成立し、ヨウはミスリルリキッドの入手に成功。だが、謎の青年が引き連れた超巨大怪物が来襲し、ラジウムは混乱状態に陥る。同時に、マグメルのほかの要塞都市にも巨大な危機が迫っていた。一方、ダーナの繭から帰還した一徒達は、神明阿一族の指揮下に入り、目覚めた構造力の訓練に励んでいた。
登場人物・キャラクター
ヨウ
マグメルで行方不明になった探検者を救出する職業「拾人者」を生業とする少年。黒髪と金褐色の瞳を持つ。本名は「因又」。マグメルに関する救助依頼を受けながら、ゼロと共に拾人館で暮らしている。師匠の拾因から引き継いだ構造力の内、現実構造の力を持つ。また、構造力以外にも高い身体能力を持ち、これらを活かして拾人者の中でも高い救助成功率を誇る。ドライでとぼけたような性格で、仕事以外では自堕落した生活を送っている。トラブルや生死感に対しても冷静なため一見楽天的に見えるが、悪に対してはとことん厳しい。また、家族という存在への思い入れが強く、冒険者を助ける事で、彼らの帰りを待っている家族の力になりたいと思っている。危険の多いマグメルでの仕事にも、高いプロ意識で真剣に挑んでおり、目的のためであれば多少卑怯な手段も厭わない。過去の生い立ちと、現実構造に多数の物資や武器が必要な事から金には少々がめつく、特売セールなどにも敏感。よく通っている用具店の店主である田伝親父には、毎回酷い値切りを迫っている。幼い頃にマグメルで出会った師の拾因の事は、師弟関係だけでなく家族や兄弟のように慕っている。ミステリアスな言動が多いが、クー・ヤガ・クランの前では少年らしさを見せる事がある。
ゼロ
ヨウの助手をしている少女。赤褐色の髪と翠色の瞳を持つ。ヨウと同様に構造力を持ち、現実に存在しない特殊な探査機「三歩後ろの子供達」を幻想構造によって作り出せる。仕事では拾人館に残りつつ探査機を通して、離れた場所からヨウをサポートする事が多い。このため、あまり現地のマグメルに同行はしないが、生物や土地に関する豊富な知識と観察力を持っている。また、プライベートではずぼらなヨウの世話を焼き、公私共に彼をサポートしている。ヨウの事は「ご主人」と呼び慕っているが、彼に近づく女性を中心に、彼以外の者には冷たい態度を取る事が多い。特にエミリア・チェスターなど胸の大きい女性には、敵対心を抱く事が多い。華奢な体型だが大食いで、よくお菓子を食べている。
エミリア・チェスター
極星社の兵器開発部に勤務するメカニックの女性。ヨウへの依頼人。拾人館を訪ね、マグメルの研究所で行方不明となった父親の救助を依頼した。ふつうの人間だが、気丈で芯が強い性格をしている。父親の救助依頼をきっかけにヨウを気に入り、彼に信頼と好意を寄せるようになる。ダーナの繭出現の際には兵器開発部ごと内部に取り残され、かつてヨウに助けられた父親の依頼を受けたヨウによって救出される。その際に遭遇したクー・ヤガ・クランとも知り合った。ダーナの繭から帰還後は、メカニックの仕事などを通してたびたびヨウに遭遇している。元はマグメルの秘密などはまったく知らない一般人であったが、ヨウや彼の周囲の者達を通して、マグメルに隠された真実や神明阿一族の暗躍を少しずつ知っていく。
拾因 (しゅういん)
ヨウの師匠の男性。マグメルを中心に放浪している、非常に謎の多い人物。ヨウと似た容姿だが髪色は銀髪で、帽子を深くかぶっている。弟子のヨウからは、昔から家族や兄弟のように慕われている。ダーナの繭の出現を始め、マグメルに関するさまざまな秘密や陰謀にかかわっているが、その目的や過去は不明。元は拾人者として活動していたが、ヨウと出会う前に辞めている。幾度となくマグメルの聖心への侵入を試みていたため、聖国真類の戦士達とも遭遇しているが、軽く逃げ延びている。自分の構造力をヨウに引き継がせたため、ヨウと似たような構造力を持っているが、ヨウが持たない幻想構造も使用できる。ヨウとは「世界を救う」という約束を交わしたあとに別れを告げ、長い間消息不明になっていた。ヨウ達がダーナの繭から帰還してしばらく経った頃に、神明阿一族によってマグメルで死体が発見される。
田伝親父 (でんでんおやじ)
探検家向けの用具店を営む、小太りの中年男性。常連客のヨウからは、幾度となく商品の大幅な値切りをさせられている。マグメル探検チームに加わったものの遭難し、偶然訪れていたヨウに救助され、その礼としてミスリルリキッド情報を彼に提供した。
クリクス
ヨウの依頼人である少年。病弱な自分のためにエポナの涙の採取に向かい、行方不明となった兄のクヌリスの救助を依頼した。両親はマグメルで行方不明となり、遭難死している。クリクス自身も病を患っているが、それでも探検家になってマグメルを探検するという夢を持っている。ヨウと共にマグメルを訪れた際にクヌリスを発見するが、彼が密かにエポナの涙の独占を目論んでいた事を知り、殺害されてしまう。
クヌリス
クリクスの兄。探検家で、病弱な弟のためにエポナの涙を採取すべく、マグメルに出向いて行方不明となった。実は弟のためではなく、身体強化もできるエポナの涙を独占する事を目論んでいた。発見した実を独占するために、両親や探検家の仲間を殺害していた。ヨウと共に救助しに来たクリクスと再会するが、真実を知ったクリクスを殺害した。
一徒 (いっと)
冷静な性格をした探検家の青年。つねに薄笑いを浮かべている。クスク諸島に出現したダーナの繭に閉じ込められた極星社の社員を救出すべく、独自に構成された「ダーナの繭探検隊」として派遣される。マグメルをはじめ未知の世界への興味や好奇心が強く、戦いよりも探検を好む。ダーナの繭でエリンに苦戦中にヨウに遭遇し、彼とゼロの助言を受けながら幻想構造の能力に目覚めた。この能力により巨大な笑いの仮面と怒りの仮面が対になった「攻防体(フェイスフェイス)」を作り出し、ヨウをサポートしながらダーナの繭から生還する。帰還後は神明阿一族の指揮下に入り、ルシスのもとで構造力の訓練を重ねながらマグメルに隠された真実を探ろうとする。
ボルゲーネフ
筋肉質な体格をした探検家の男性。一徒を中心とする「ダーナの繭探検隊」の一員。自信過剰でよく大口を叩くが、どこかずれている。ダーナの繭の影響で、現実構造の力に目覚めた。ダーナの繭から生還し、一徒達と共に神明阿一族の指揮下で構造力の特訓を始める。
キミアイオン
長髪で細身な探検家の女性。一徒を中心とする「ダーナの繭探検隊」の一員。クールな性格をしている。ダーナの繭の影響で、現実構造の力に目覚めた。ダーナの繭から生還し、一徒達と共に神明阿一族の指揮下で構造力の特訓を始める。
蛍火 (けいか)
ボブカットの髪型をした探検家の女性。一徒を中心とする「ダーナの繭探検隊」の一員。危険にも果敢に立ち向かう度胸の持ち主。ダーナの繭の影響で、現実構造の力に目覚めた。ダーナの繭から生還し、一徒達と共に神明阿一族の指揮下で構造力の特訓を始める。
クー・ヤガ・クラン
聖国真類の中でも天才的な才能に恵まれたエリンの青年。一人称は「我」で、古典的な口調で話す。人間を「下賤の者」と呼んで見下している。ダーナの繭内で閉じ込められていたエミリア・チェスターと遭遇し、彼女を拉致する。強力な構造力を持つ聖国真類の中でも特別な才能を持ち、他人の現実構造をもとにした幻想構造を得意とする。過去の出来事から、ヨウとは強い因縁がある。実はヨウの幼なじみで、再会のたびに必ず殴り合う奇妙な腐れ縁でもある。ヨウと再会後は共にダーナの繭から帰還し、拾人館に身を寄せながらヨウと行動を共にするようになる。人間とあまり変わらない見た目だが、構造力により自由に姿を変える事も可能。人界での生活にあっさりなじみ、ゲームなどの文化に興味を持っている事から、ゼロからは「エセエリン」呼ばわりされている。ヨウと行動するようになってからは、神明阿一族の動向を探る目的で行動するようになる。幼少期に聖国真類の領域に侵入した拾因と何度か遭遇しており、ダーナの繭とも関係がある彼の事を警戒している。また、敵対心を抱いている拾因の弟子である事から、ヨウに対しては友人でありながらも複雑な感情を抱いている。
トト・ビックトー
若い探検家の女性。著名な探検家であるオーフィス・ビックトーの娘。病死した父親からは莫大な資産と共に、マグメルに財宝を隠す事で新たな探検を作り出して世界を面白くするという、彼の夢を受け継いでいる。構造力などを持たないふつうの人間だが、オーフィスの遺した人脈を活かした情報力に優れている。オーフィスが遺したミスリルリキッドを所有しており、マグメルで強盗に襲われていたところをヨウ達に救出される。ヨウにミスリルリキッド売買の交渉を持ちかけられるが、父親との思い出の品である事から、かたくなに応じなかった。最終的にクー・ヤガ・クランから希少植物の種を差し出され、交渉に応じた。
オーフィス・ビックトー
トト・ビックトーの父親。かつてマグメルを探検していた有名な探検家。もともとは億万長者でありながら、自らの力で積極的に冒険に出る変わり者。数年前に病死したが、一人娘のトトには莫大な資産や探検で得た貴重な秘宝、幅広い人脈を遺した。また、探検をしながらマグメルに数々の財宝を隠しつつ情報を流す事で、探検家達に新たな探検の可能性とロマンを遺している。隠された財宝のありかは謎が多く、多くの冒険家達がわずかな情報をもとにマグメルで探し続けている。
ルシス
紳士然とした男性。眼鏡をかけてスーツを身につけている。神明阿一族の一人。神名阿アミルの側近として、連絡や探検家の勧誘などを担っている。ダーナの繭から生還した一徒達をスカウトし、神明阿一族最大の要塞「マナナンバスティオン」に連れて行き、彼らの構造力の訓練の監督も行っている。
ムダジ
あまり売れていない少年漫画家の男性。マグメルに取材に向かったあと音信不通となった担当編集者の救助を、ヨウに依頼する。前担当編集者もマグメルで行方不明となり、死亡している。
神名阿 アミル (しんめいあ あみる)
神明阿一族を取りまとめる黒髪の青年。周囲の者からは「若様」と呼ばれている。一見ふつうの人間だが、一族の中でも特に高い戦闘力を秘めており、危険を察知したクー・ヤガ・クランが戦うのをためらったほど。マグメル深部侵攻計画の総指揮を務め、ルシスを通して強力な構造者を勧誘している。優れた構造者であるヨウにも目をつけており、一族の仲間に引き入れようとしている。
原皇ブレス (げんこうぶれす)
エリンの22種族達をまとめるフォウル国の女王。本名は「ティトール」で、薄い髪色の長髪と釣り目の女性の姿をしている。聖心を狙っているため、神明阿一族や聖国真類とは対立している。仮面状の幻想構造を他人の頭部に宿らせ、「端末」としてあやつる特殊な構造力を持つ。拾因とは知り合いで、端末を通して遭遇したヨウが後継者である事を知り、興味を持つ。
集団・組織
極星社 (きょくせいしゃ)
エミリア・チェスターが所属している大企業。ハニホトーがCEOを務める。兵器開発などを中心に世界各地に支部を設けている。マグメルでの活動も盛んに行っており、裏では神明阿一族ともつながっている。
神明阿一族 (しんめいあいちぞく)
人界の中でも強大な力を持ち、昔から世界を裏で支配・統治している謎の一族。一部の上層の者以外には秘匿されているため、一般人には存在すら知られていない。極星社など一部の大企業などとも裏でつながっており、連合国の決定なども裏で操作するほどの力を持つ。戦争や紛争といった形で人界にさまざまな競走を促し、適者生存の弱肉強食社会を築き上げた。マグメルが現れてからは資源収集だけでなく、深部への侵攻や聖心を狙うようになり、黒獄小隊を中心に強力な探検部隊も抱えている。また、神明阿一族に所属する者は構造力の才能にも恵まれており、エリンと互角かそれ以上に渡り合えるほどの実力を持つ者が多い。反面、ふつうの人間とは精神や価値観が異なっており、ドライで冷酷な者が多い。人間にはあまり知られていないが、聖国真類をはじめとするエリン達のあいだでは有名で、聖心を狙う一族として警戒されている。
黒獄小隊 (こくごくしょうたい)
神明阿一族が抱えるマグメル資源収集探検部隊の内、一族の切り札となる最強部隊。それぞれの隊員は他部隊からもかけ離れた高い実力を持ち、フォウル国による妨害工作も退けるほどの戦闘力を誇る。神明阿一族が狙う聖心の観測を構造力によって可能にし、さらに侵入の方法も発見した。
場所
マグメル
35年前に大洋の中央に突如出現した謎の大陸。別名「聖州」。未知の環境・生物・植物・貴重な鉱物資源などが広がっており、探検家はもちろん世界中の組織や企業などからも興味を持たれている。無限の可能性を秘めている事から、年間300万人もの人々が探検や研究に出向いているが、未知の危険も多く潜んでいる事から、年間95万人は行方不明となっている。人類によっていくつかの区画に分けられており、45区に分けられた外側の「外縁部」の一部には要塞都市も築かれているが、大半の場所は通常の人間では出入りできない区画になっている。「拒絶する力」の小さい外縁部の建物は、腐食を防ぐためにマグメル産の物質によってコーディングされている。これらの外縁部に対して、大陸の大部分を占める深部にあたる「内区」と呼ばれる部分は「拒絶する力」が濃く、開発が進んでいない謎の多い領域となっている。特に最深部にあたる聖心は、外部からの侵入を強く拒んでおり、立ち入る事すら難しい。
拾人館 (どりふと)
ヨウが依頼人からマグメルに関する救助依頼を受けるための館。拾人者の詰所。公的機関からの救助とは異なる、唯一の完全民間救助会社であると同時に、非常に高い救助成功率を誇っている。館は改造した廃ビルの地下にあり、事務所や倉庫だけでなく、ヨウとゼロの居住空間も兼ねている。近隣の廃ビルの地下室とつながっており、地下2階にはヨウの構造力に必要な武器などが収納された、広い倉庫を兼ねた訓練室がある。
ダーナの繭 (だーなのまゆ)
クスク諸島の極星社周辺に発生した謎の空間。本来はマグメル深部のみでまれに自然発生する空間で、長くても数か月で消滅する性質がある。内部はマグメル深部に似ているが、マグメルからも独立した環境になっている事も多い。また、濃密な構造力が循環しており、その影響で構造力の素質がある人間やエリンを能力に目覚めさせる事も多く、一徒をはじめとした探検家を新たな構造者に目覚めさせるきっかけとなった。
聖心 (せいしん)
マグメルの深部のさらに最深部に位置している魔境。神明阿一族をはじめとする複数の勢力が狙っている。マグメルの最重要な聖地として聖国真類によって守られており、ほかのエリンや人間の立ち入りは拒まれている。マグメルに宿る精神体であり造物主でもある存在が信仰されており、聖心はその休息地とされる。「拒絶する力」を中心に外界の存在を阻むさまざまな力が働いており、光が通じず観測すらできない。また、近くには夢限境界と呼ばれる時間の狂った領域も存在している。一部に唯一の弱点となる「虚絶消点」と呼ばれる箇所があり、聖心に侵入できる重要な鍵となる。
フォウル国 (ふぉうるこく)
エリンの内、22の種族が集まった謎の連合体。マグメルに大きな影響を与えている。原皇ブレスによってまとめられている。同じエリンの中でも聖国真類からは敵視されており、聖心を狙う神明阿一族とも拮抗し、戦争状態にある。
その他キーワード
構造力 (らくと)
物体を構築・創造できる異能力。マグメルから授けられたとされる。構造力を持った者は「構造者(ラクター)」、構造力によって作られた物体は「構造」と呼ばれる。現実構造と幻想構造に大きく分けられる。原則として、通常の構造者では生物を構造する事はできない。あまりに超常的で未知の能力であり、人間の中に使いこなせる者は少なく、その詳細は謎に包まれている。先天的に構造力を生まれ持った者もいれば、ダーナの繭などの影響で後天的に目覚める者もいるが、いずれも訓練を重ねなければ正しく使いこなすのは困難。エリンの中には、高い構造力を持っている者が多い。
現実構造 (りあるらくと)
現実にある物体をもとに、あらゆる物体を作り出せる構造力。現実構造を持つ者は「現実構造者(リアルラクター)」と呼ばれ、構造者の大半を占める。さまざまな物体を構造できるが、元となる物体や対象の物体への深い理解が必要で、体力も消耗する。また、構造の完成度を高めるには訓練や労力を重ねたり、現実構造者自身と相性のいい物体を探す事も重要となっている。
幻想構造 (いまじんらくと)
現実に存在しない機能や能力を持った特殊な物体を作り出す構造力。幻想構造を持つ者は「幻想構造者(イマジンラクター)」と呼ばれるが、全体の3分の1程度で、現実構造に比べ珍しい構造力とされる。作られる物体の性質や操作可能距離などは、能力によって異なるが、ゼロのように数100キロメートル離れていても遠隔操作できる幻想構造者もいる。
葬送鋼刃 (ぶらっくらっく)
ヨウが愛用している刀型の現実構造。名工による名刀が原型で、完成度も高い。ヨウが手に入れたミスリルリキッドによって、さらに強化された。
三歩後ろの子供達 (ふぁみりあなんばーず)
ゼロが作り出した高度な探査機型の幻想構造。拾人館からマグメルに送り出して遠隔操作が可能。上部にプロペラがあり、自由に飛行できる。また、他人の構造力を解析して能力を把握する力も持つ。それぞれが異なる能力を持った6機が作られており、「1号」「2号」などのナンバーが振られ、状況に応じて使い分けられている。大半はプロペラの付いた自動探査機だが、切り札でもある「6号」は人型ロボの姿をしている。
喰い現貯める者 (くらうど・ぼるぐ)
クー・ヤガ・クランが作り出した人型の幻想構造。装甲をまとい、鬼のような仮面をつけた、人形のような姿をしている。他者の現実構造を奪い取って蓄え、自由に出現させる事ができるが、高度な構造ほど使いこなすには時間がかかる。本体であるクーと離れた位置からでも感覚の共有や操作を受ける事ができ、クーに代わって戦闘する事もできる。
因果限界 (いんがげんかい)
空間移動用の幻想構造。巨大な「因」の文字が書かれた門として作り出される。転送能力を持つ希少な幻想構造だが、大陸間でも瞬間移動ができるなど、性能や完成度が非常に高い。
エポナの涙 (えぽなのなみだ)
身体強化ができる「強身薬」と呼ばれる薬のもとになる希少な植物。マグメルの外縁部に自生している。生物の死体の近くで成長するなど、特異な性質を持つ。エポナの涙によって作り出された強身薬は、身体の損傷や病気の治療のほか、身体能力の大幅な強化といった強力な作用を持つ。
ミスリルリキッド
ヨウが以前より探していた、マグメル産の希少物質。あらゆる金属の特性を損なう事なく、その性能を純粋に強化させる希少な性質を持ち、武器などの強化に役立つ。非常に高額で取引されており、その一部はオーフィス・ビックトーの形見としてトト・ビックトーが所有している。
拾人者 (あんぐらー)
マグメルに乗り込んだ探検家やその関係者が遭難や行方不明となった時に、捜索・救助する職業。公営企業や政府組織からも救助が派遣されているが、マグメルの過酷な環境から成功率は非常に低く、0.2%以下とされている。これらに対しヨウが営む拾人館は世界で唯一の民間拾人者詰所となっており、救助成功率の高さから探検家達のあいだで話題になっている。
エリン
マグメルに住む原住者の総称。人間に近い容姿と高い知能を持つ知的生命体。マグメルに生きる生物の中でも特別な存在で、公的には存在を隠蔽されている。30種類以上の種族が確認されているが、高い構造力や戦闘能力を持つ種族が多い。また、聖国真類のように人間に容易に擬態できる種族も多い。
双生タイタン (そうせいたいたん)
エリンの中でも高い戦闘能力を持つ戦闘種族。人間に近い見た目だが、ふつうの人間より二回りほど大きな体格を持つ。伸縮自在な筋肉は人間を超越した怪力を発揮し、防御力にも優れている。一見暴力的な種族だが、武力や武人としての心得を大切にする性質がある。
聖国真類 (せいこくしんるい)
エリンの中でもマグメルの頂点に立つとされる高等種族。高い身体能力だけでなく天性の構造力を持っている。主にマグメルの深部で暮らしながら、聖地としている聖心を外部勢力や他種族から守り続けている。見た目はほかのエリンと比べて人間に近い者が多く、頭部の1本角と十字型の瞳孔といった特徴以外は、ふつうの人間とほとんど見分けがつかない。また、それらの特徴も身体操作によって容易に隠す事ができる。
拒絶する力 (きょぜつするちから)
マグメル全体に働いている、外界の物質を分解・腐食させる特殊な斥力。マグメル外縁部では弱まるが深部に行くほど強く働き、特に無機物は急速に腐食させる。このため、ふつうの物質でできた航空機などではマグメルに侵入できなくなっており、マグメル内の建造物や移動用の航空機などは、マグメル産の物質でコーディングする事で腐食を防いでいる。基本的には有機物、生物、構造力で作られた物体には作用しないが、聖心では濃く働いているため、あらゆる物質と光すらも分解されてしまう。
竜息穿甲弾 (りゅうそくさいこうだん)
人界の科学技術とマグメルの資源で作り出された国家戦略級兵器。核兵器以上の貫通力を持つが、爆発力は低いため周囲への被害は比較的小規模に抑えられる。