最愛の夫と触れ合えないハル
商社勤めだったハルは、ある日、週刊誌のインタヴュー記事を見て王子和弘に一目惚れする。ハルはなんとしてでも和弘と接点を持ちたいと考え、商社を退職してライターに転身する。そして念願叶(かな)い、先輩ライターの付き添いで、和弘が所属するバンド「サフラジェットシティ」の取材に訪れたハルは、和弘と個人的なつながりを持ち、6年後にプロポーズを受ける。ずっとあこがれ続けてきた和弘との結婚にハルは至高の喜びを覚えるが、その喜びも束(つか)の間、彼から「結婚してもフィジカルの触れ合いはいっさいなし」と宣言されてしまう。
若手俳優と不倫に興じる冬実
冬実は誰からも理想の家庭を羨ましく思われていたが、かつて舞台でメイクを担当していた若手俳優の風早翔太と不倫の関係にある。仕事はもちろん家事や育児も両立させている冬実は、家族とも良好な関係を築いていた。しかし、子宮筋腫を診断された際に、夫から「子供は一人でちょうどいい」と他人事のような態度を取られたことで、夫婦関係に亀裂が生じる。そんな中、冬実は13歳年下の翔太と舞台の仕事を通じて知り合い、共通の趣味である漫画やテレビゲームの話題で意気投合し、やがて深い関係になってしまう。それからは「恋を制している」と称するなど、ある種のトランス状態に入っており、不倫をやめられずにいる。
「プロのセックス」にはまる秋菜
26歳の秋菜は、帰国子女で外資系企業に勤務するキャリアウーマン。昔から仕事に限らず何事も効率的でないと納得できず、セックスに対してもその持論を展開する。そんな中、秋菜はハルが取材したYouTuberのユマが、女性用風俗を利用していることを知り、「プロのセックス」に興味を抱く。そして、海外出張で成田のホテルに宿泊した際に、女性用風俗デリバリーサービス「恵比寿ボーイズ倶楽部」を利用し、従業員のナオキと肉体関係を持つ。ナオキとのセックスによって、これまで感じたことのない快感を得た秋菜は、たちまちその快楽に溺れてしまう。
登場人物・キャラクター
相澤 ハル (あいざわ はる)
フリーライターの独身女性。「聖」のペンネームで活動している。年齢は35歳。冬実や秋菜とは女性誌のファンデのモニターとして知り合い、現在は互いに倒錯した恋愛にかかわる者同士として友情を育んでいる。生真面目な性格で思い込みが激しく、ある日、週刊誌で偶然目にしたミュージシャンの和弘に一目惚(ぼ)れし、和弘に近づくために勤務していた商社を辞め、退職金を注ぎ込んでライター養成講座に通って念願のライターになった。ライターとしての実力は確かで、持ち前の明るさから取材相手から気に入られることが多いが、バズる記事を求められて四苦八苦の日々を送っている。のちに、和弘と結婚して「王子ハル」となったが、知り合いからは変わらず「相澤ハル」と呼ばれている。
松岡 冬実 (まつおか ふゆみ)
フリーのヘアメイクアーティストの既婚女性。年齢は36歳。おっとりした性格だが包容力があり、相手の気持ちを察することが得意で面倒見もいいため、ハルから慕われている。結婚後も仕事を続けているが、家事や育児を疎(おろそ)かにすることなく、自分自身に「その日の食事は完璧に」「大きな噓をつかない」「仕事と子供を言い訳に使わない」といった制約を課している。娘の千束との関係は良好だが、夫とは子宮筋腫に関する相談をして、心ない返事をされたことで関係が悪化している。そんな鬱屈した日々を過ごしていたある日、舞台のヘアメイクで知り合った翔太と個人的なかかわりを深め、やがて親密な関係になっていく。
秋菜 (あきな)
外資系の企業に勤務する独身女性。年齢は26歳。ショートヘアで眼鏡をかけている。ハルや冬実とは10歳以上の年齢差があるものの、姉妹のように仲がいい。見た目はクールビューティで、思ったことをすぐに口にするため、ハルからは親しみと畏怖の念を抱かれている。非効率的なことを嫌悪しており、「安価なコスメでもデパートで売られているようなハイブランドのコスメ同様の効果があるなら、わざわざデパートに行く必要はない」と公言している。セックスに関しても独自の考えを持つ肉食系で、不特定多数の男性と関係を持つことに抵抗がないが、恋愛の過程にはまったく興味がない。
書誌情報
聖ラブサバイバーズ 4巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2020-11-13発行、 978-4065214565)
第2巻
(2021-05-13発行、 978-4065233627)
第3巻
(2022-06-13発行、 978-4065281994)
第4巻
(2023-05-12発行、 978-4065317099)