概要・あらすじ
交通事故で両親を亡くした関織子は、祖母・ミネ子が営む「春の屋旅館」に引き取られることになった。突然の不幸に最初は落ち込んでいた織子だったが、次第に「春の屋旅館」の仕事に興味を抱き、若女将を目指して働くことを決意して立ち直る。そんな若女将見習いの織子は、訳ありの客やライバル旅館とのトラブルに見舞われるが、「春の屋旅館」に住む幽霊の立売誠の手助け、そして織子自身の明るさと行動力で、見事解決していく。
登場人物・キャラクター
関 織子 (せき おりこ)
小学6年生の少女。年齢は12歳。誕生日は5月31日。血液型はO型。周囲からは「おっこ」と呼ばれている。12歳の誕生日当日に、両親が突然の交通事故によって他界し、祖母であるミネ子が営む「春の屋旅館」に引き取られた。最初は戸惑っていたものの、次第に自分の境遇を受け入れ、「春の屋旅館」の若女将を目指して働くことを決意した。 霊感があり、「春の屋旅館」に住む幽霊の立売誠など、他の人には見えない存在とコミュニケーションが取れる。自分を見守って手を貸してくれる誠に対しては、幽霊だと理解しながらも、好意を抱きはじめている。明るく前向きで噓のつけない性格をしており、元気で声が大きい。男女を問わず好かれるタイプで、自然と周りに人が集まる魅力の持ち主。 学校の得意科目は体育。母親の形見である紅水晶のペンダントが宝物。
立売 誠 (たてうり まこと)
「春の屋旅館」に住む少年の幽霊。関織子しかその姿を見ることはできない。12歳の頃、屋根から転落して亡くなった時の姿のままだが、実年齢は70歳を超えている。幽霊ではあるものの明るく、優しい素直な性格。生前は友達から「ウリ坊」とあだ名で呼ばれており、幽霊として織子の前に現われた際にも、自分の名前は「ウリ坊」だと紹介している。 そのため、織子からも「ウリ坊」と呼ばれている。若き日のミネ子に想いを寄せており、一時は両想いであったが、ミネ子の引っ越しと自身の転落死が重なったため、進展はないまま終わってしまった。思いを告げられなかったこともあり、死後はミネ子が営む「春の屋旅館」に住み着くようになった。かつて幼い頃に「春の屋旅館」を訪れた織子のことも把握しており、織子の成長を見守ってきた。 両親を亡くして、「春の屋旅館」にやって来た織子に、立売誠自らが声をかけて知り合う。以降は織子が困った時には手助けし、落ち込んだ時には励ますなど、織子にとってかけがえのない存在となる。人間と幽霊という異なる存在ではあるものの、次第に織子に惹かれていく。
秋野 真月 (あきの まつき)
小学6年生の少女。年齢は12歳。常にステージ衣装のような服を着ており、関織子にも初対面でド派手と警戒されている。学校ではその服装から「ピンふり」と呼ばれているが、織子には普通に名前で呼ばれている。あまり感情を表に出さないクールな性格。「秋好旅館」の一人娘で、跡を継ぐ予定であり、まだ12歳でありながら経営やサービスの勉強に励んでいる。 宿泊する外国人観光客のために英語も堪能。同じく温泉旅館で働く織子に対してライバル心を抱いているものの、嫌っているわけではない。
秋野 美陽 (あきの みよ)
少女の幽霊。年齢は7歳。「春の屋旅館」で隠れていたずらをしていたところ、霊感のある関織子に見つかった。実は秋野真月の姉だが、真月の生まれる前に亡くなったため、真月は姉の存在を知らない。本来であれば自分の家である「秋好旅館」に住み着くべきだが、旅館の規模が大きく、いたずらをしても気付いてもらえないことを寂しく思い、「春の屋旅館」に住み着いていた。 織子に存在を知られてからは、一緒に行動をすることが多くなる。なお、同じ幽霊である立売誠も、秋野美陽の存在には気付いていなかった。
鈴鬼 (すずき)
「春の屋旅館」の物置にあるタンスの奥深くに眠っていた鈴に取り憑いている子鬼。魔物の類いではあるものの、非常にかわいらしい容姿をしており、派手で明るい雰囲気を持つ。藍龍に退治されそうになったところを、関織子に救われた。それは、「春の屋旅館」に旅行評論家の藤堂や、有名子役の馬渕なるから、影響力のある有名人を呼び寄せていたため、客寄せをしていたと見なされたから。 以降、織子たちとともに旅館の中を自由に動きまわっている。
立売 健吾 (たてうり けんご)
小学6年生の少年。年齢は12歳。東京で生活をしていたが、雑誌で見た「春の屋旅館」で働く関織子の写真を見て不思議と心惹かれ、「春の屋旅館」のある温泉街へとやって来た。織子をはじめとした学校の友人たちからは「ウリケン」と呼ばれている。東京の実家は喫茶店で、父親と母親が2人で営んでいる。基本的に口が悪く、好意を抱いている織子にも素直になれないが、根は優しく頼りがいのある性格。 実は立売誠の弟の孫。見た目は良く似ているが、優しく素直な性格の誠とは正反対である。のちに、学校が休みの日には「春の屋旅館」を手伝うようになる。
澄川 清志郎 (すみかわ きよしろう)
小学6年生の少年。年齢は12歳。転校して来た関織子と同じ小学校のクラスメイト。美少年で文武両道、さらに気が利く優しい性格と、非の打ちどころのない人物。実家が温泉街にある「梅の香神社」で鳥居があるため、学校の友人たちからは「鳥居くん」と呼ばれている。織子に好意を抱いている。
池月 よりこ (いけづき よりこ)
小学6年生の少女。年齢は12歳。転校して来た関織子と同じ小学校のクラスメイト。池月よりこの方から気さくに声をかけ、仲良くなった。実家は温泉街で和菓子屋を営んでおり、兄の池月よしおはそこで職人として働いている。
池月 よしお (いけづき よしお)
池月よりこの実兄。実家が営む温泉街の和菓子屋で、和菓子職人として働いている。レストランで働いていた過去があり、和菓子だけでなく料理全般にも詳しい。「春の屋旅館」で食についての悩みを抱えるたびに、関織子からの相談を受けている。
あかね
「春の屋旅館」に父親とともに宿泊をしている12歳の男子。関織子も、初対面時に思わずかっこいい、と見とれてしまうほどの美少年。学校に通えないほど身体が弱いうえ、半月前に母親を亡くしたショックもあり、「春の屋旅館」で静養をしている。だが、自分の境遇に対して「かわいそう」と同情されることを嫌う。
メアリ
アメリカからの留学生。金髪のロングヘアで、関織子が初対面時に「お人形さんみたい」とつぶやいてしまったほどの美少女。長倉はるとの家にホームステイしており、はるとともに「秋好旅館」に宿泊している。日本の生活になかなか慣れず、アメリカに帰りたいとホームシックにかかっている。
長倉 はると (ながくら はると)
日本にやって来たメアリのホームステイ先の少年。家族やメアリとともに「秋好旅館」に宿泊している。1年前には、長倉はると自身がアメリカへホームステイしていた。その経験から、元気のないメアリがホームシックになっているのではないかと心配し、元気づけようとしている。
藤堂 (とうどう)
有名な旅行評論家の男性。テレビ番組にも多数出演している。メディアでは「藤堂先生」の名で絶大な信頼を集めており、彼が褒めれば、その宿には予約が殺到するほどの影響力を持つほどの人物。「春の屋旅館」に宿泊するために訪れる。サングラスをかけた強面で見た目は怖いが、ノリの良い性格で、笑うと優しい顔になる。
中島 まや (なかじま まや)
母親と一緒に「春の屋旅館」にやって来た少女。美人でスリムで愛想の良い母親とは対照的に、愛想が悪く体型も太め。太りやすい体質を気にして食事を拒絶し、部屋係になった関織子が声をかけても無視をする。
三木 (みき)
「春の屋旅館」に1人で宿泊しに来た青年。王子様タイプの美青年で、女性に優しい気配り上手。「春の屋旅館」の関織子やエツ子のみならず、ミネ子までもがほれぼれしており、愛情を込めて3人から「三木さま」と呼ばれている。秋野真月が車にひかれそうになったところを助けたので、真月から恋心を寄せられている。 実は世界のホテル業界でNo.3に入る「ホテルミキグループ」の御曹司。
稲田 えりか (いなだ えりか)
祖父とともに「春の屋旅館」に宿泊するためにやって来た少女。とにかく怖がりであり、「春の屋旅館」に宿泊することも、「建物が古くて薄暗いから嫌」と最初は拒否していた。大勢で入浴することを嫌い、だからといって1人では怖くて入れないと、温泉にも入らずにいる。
馬渕 なるか (まぶち なるか)
「春の屋旅館」に1人で宿泊するためにやって来た少女。実は有名子役で、大人びて見えるが、年齢はまだ12歳。仕事に嫌気がさして家出してきたものの、未成年であるため本来は1人では宿泊できない。そのため迎えが来ることになったが、それまでは「春の屋旅館」に滞在し、関織子に対してわがままを言って困らせる。
ミネ子 (みねこ)
「春の屋旅館」を切り盛りする女性。関織子の祖母。高齢ながらも現役で、元気に温泉旅館の仕事をこなしている。織子の両親が事故死したことにより、織子を自分の温泉旅館で引き取ることになった。細やかな気配りのできる人物で、自分にも他人にも厳しい。実は12歳の時に立売誠とは友達だった。しかし、誠が死んだことは知らなかった。
秋野 源蔵 (あきの げんぞう)
「秋好旅館」の創始者である男性。秋野真月の祖父にあたる。実はかつて、ミネ子と一緒に旅館を作ろうと約束していた過去がある。またミネ子に想いを寄せており、実際にプロポーズもしたものの、ミネ子は関織子の祖父に惚れていたため、振られている。かつて、ミネ子に紅水晶のネックレスをプレゼントしている。
エツ子 (えつこ)
「春の屋旅館」で働いている中年の女性。ベテランの仲居であり、若女将になりたいと言う関織子に、旅館の仕事を教えている。感動しやすく涙もろい性格。両親を亡くし、慣れない土地で寂しい思いをしているであろう織子を、非常に可愛がっている。
康 (やす)
「春の屋旅館」で働いている料理人の男性。基本的に頑固な考えの持ち主で、昔気質な性格。一方で情に厚く、両親を亡くしながらも若女将を目指して懸命に働く関織子を温かく見守っている。自分の知識だけでは客に対応できないと思った時には、池月よしおの知識を借りることもある。織子には、康の作る料理は地域の温泉旅館の中でも一番おいしいと、その腕を高く評価されている。
藍龍 (あいりゅう)
「春の屋旅館」にやって来た霊媒師の男性。無精ひげにボサボサ頭という出で立ちで、中年に見える。実はまだ18歳で、身なりを整えれば美青年。「春の屋旅館」には悪霊が取り憑いていると言い、立売誠と秋野美陽を成仏させようと、お祓いを試みる。そんな藍龍に対し、関織子は誠たちを救うため奔走することになる。
場所
春の屋旅館 (はるのやりょかん)
ミネ子が営む温泉旅館。関織子の住居兼職場でもある。従業員に仲居のエツ子と料理人の康がいる。規模は小さいながらも、地域では老舗の温泉旅館であり、最寄りのバス停の名前は「春の屋前」となっている。
秋好旅館 (しゅうこうりょかん)
関織子らが住む温泉街で、一番大きな温泉旅館。佇まいは旅館というよりもホテルに近い。秋野真月の実家であり、一人娘の真月が継ぐ予定。「春の屋旅館」の建物を別館とすべく狙っており、実際にミネ子に売ってくれないかと打診をしたものの断られている。
クレジット
- 原作
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令丈 ヒロ子