あらすじ
やってられないわ(第1巻)
太田夏子は、美しい部屋を自分の手で作りたいという思いで、大手建設会社のリフォーム課で働いていたが、上司の大木からの嫌がらせや、同僚との関係に辟易していた。そんな時、企業派遣生としてハーバード大学に留学していたパワフルな才女の野島ことりから起業しようと誘われる。逡巡する夏子だったが、徐々にことりの自由奔放さに魅了され、彼女の食器会社への深い愛着を知った事で、退社を決意する。
リトル・バード始動(第1巻)
派手な美女という理由で、野島ことりから起業に誘われていた鴨下ミキは、太田夏子に片思いする都市銀行勤務の永瀬振一郎との接点を持ちたいがため、リトル・バードへの参加を決める。しかし電話番しか任されない事に不満を持ったミキは、名誉挽回のため、北海エンタープライズ社長の三ツ木をことり達に紹介。三ツ木は、計画がとん挫した造成地のリゾート利用に頭を悩ませていたのだ。
北海道リゾート計画(第1巻~第2巻)
三ツ木のリゾート地にエステを導入したリゾートホテルを提案した太田夏子と野島ことりは、結婚式場を手がけたい北海エンタープライズの専務、三ツ木隆介を説得すべく北海道へ向かう。地元に根付いた事業を望む隆介と、都会のストレスを癒すリゾートの必要性を説く夏子は真向から対立するが、隆介は情熱家の夏子に次第に惹かれていく。一方、食器輸入業に取りかかったことりは、元官僚の徳永佳佑をリトル・バードの事務スタッフとして引き抜く。そんな中、夏子のライバル会社、ブライダル企画の出目の入れ知恵により、夏子のリゾートホテル案は却下される。隆介は、夏子に自分と結婚してリゾートホテルを経営する道があると示唆するのだった。
イタリア大作戦(第2巻)
ブティックのリフォーム依頼を受けた太田夏子は、野島ことりの了承を得るため、ことりが買い付けに行ったイタリアに向かう。二人は食器会社社長のシモーネ・ヨッシーニから日本での総代理店権を獲得する事に成功する。また、夏子は通訳の大塚薫が日本一のエステティシャンだったと知り、元サッカー選手の薫の夫と共に、リゾートホテルに引き抜くのだった。
内輪揉め、リトル・バード(第2巻)
野島ことりは、太田夏子が秋尾周一からブティックの内装を引き受けたのが気に入らない。ことりとの関係を修復しようとした夏子は、ことりがシモーネ・ヨッシーニから送られて来た粗悪な食器を大量に抱えている事を知り、その粗悪な食器をオブジェに転化。斬新な夏子の作品は、秋尾から好評を得る。一方、三ツ木隆介からリゾートホテル敷地内で温泉が湧いたとの報告を受け、エステへの広大な夢に気持ちが浮き立つ夏子だったが、隆介は胃癌だとの宣告を受けていた。その頃、ことりは埼玉の駅ビルにショップを開く事を決め、リトル・バードは一丸となって低予算での改装に取り組む。そんな中、ことりは社内で冷や飯を食わされていた永瀬振一郎を経理担当として引き抜くのだった。
桜の咲くまでに(第3巻)
ブライダル企画の出目の入れ知恵により、三ツ木はエステに大反対を表明し、感情的になった三ツ木隆介は太田夏子との結婚を父親に宣言する。ホスピスに移された隆介と桜の下で、婚約パーティの約束をした夏子だったが、ほどなく隆介は息を引き取る。リゾートホテルの計画は流れ、腑抜け状態だった夏子は永瀬振一郎の献身的な支えを受け、なし崩し的に彼と付き合うようになる。一方、ことりは一流デパート出店を狙い、自由ヶ丘への進出を念頭に、埼玉にリトル・バードショップの開店を決定。大塚薫はエステ業界への未練が捨てきれずにリトル・バードを辞め、鴨下ミキは夏子と振一郎の関係に感づき、社内はギクシャクする。そんな中、ことりに恩義のある夏子はリトル・バードが食器の世界で日本一になったら、エステ業界に進出すると、ことりに告げるのだった。
自由ヶ丘進出作戦(第3巻)
自由ヶ丘にリトル・バードのショップを開きたい野島ことりは、鴨下ミキに実業家の串木を手玉にとらそうとする。串木は自由ヶ丘にビルを所有していたのだ。しかしミキは、学生ボランティアの大野田に夢中で、聞く耳を持たない。そんな中、ことりが目をつけた自由ヶ丘物件を、一足早く契約した新進イラストレーターの淀川ヒビキは、ことりに女性としての魅力を強く感じる。ある日、盗作をでっちあげられたヒビキは窮地に陥り、ことりの尽力によりヒビキの無実が証明される。
丸越デパート攻略法(第3巻~第4巻)
リトル・バードの丸越デパートへの進出に待ったをかけたのは、花田ユキコが経営するイタリア食器会社のHANADAだった。しかし人気イラストレーターの淀川ヒビキの後押しもあり、リトル・バードが丸越デパートに出店する事が決定する。だがユキコは、スパイの棚上はるかをリトル・バードにアルバイトとして潜入させ、シモーネ・ヨッシーニから秘密裏に購入した食器で、リトル・バードの営業を妨害する。そんな中、野島ことりは次第に話術の巧みなユキコに感化され、そんなことりをヒビキは心配する。そしてユキコは撤退すると見せかけ、リトル・バードが企画していたリスト・ドゥ・マリアージュ(結婚するカップルが希望するリストを参考に、招待客が食器をプレゼントするシステム)を乗っ取る。ユキコの地元での悪評を知ったヒビキは、放って置いてもユキコは自滅すると言い切り、大量在庫を抱えたリトル・バードの面々は、地道に地方営業に出るのだった。その頃、はるかの裏切りによりHANADAに内部分裂が勃発する。
蘭入者(第4巻)
学生ボランティアの大野田のソマリア行きを知り、彼との結婚を夢見ていた鴨下ミキは意気消沈するが、ソマリア行きの旅費を貯めるべく銀座のクラブでアルバイトを始める。一方、野島ことりは妊娠を機に淀川ヒビキと入籍。太田夏子が永瀬振一郎とどっちつかずな関係を続ける中、夏子の昔の恋人、城島武樹が現れ、夏子を強引に旅行に誘う。
北海道への夢(第4巻~第5巻)
東国グループの総帥、東国惟忠が買い取った三ツ木の温泉ホテルが、女性支配人を公募すると知った野島ことりは、太田夏子の背中を押す。東国リゾートの副支配人に選ばれた夏子は、女性蔑視の意識が強く、女たらしな東国に反発を覚えながらも、彼に惹かれていく。東国は、親交のあった三ツ木隆介の婚約者が夏子だった事を知り、夏子への興味が愛情に変わっていく。だが、支配人に選ばれた布施ゆかりも東国への思慕を募らせ、愛人の江木純子も東国との愛憎劇を繰り広げる。そんな中、夏子は東国からホテルの支配人に命じられ、同時に求婚される。一方、リトル・バードが借金で経営危機に陥り、鴨下ミキは夏子に、東国と結婚して会社を救ってほしいと持ちかける。そんな中、東国からの求婚を承諾した夏子だったが、東国は妊娠したゆかりを愛人として側に置くつもりでいた。それを知った夏子は、東国リゾートのグランドオープンで行われる予定だった東国との婚約発表を、急遽ゆかりと東国の婚約パーティーに差し替える。そんな中、ミキはソマリアから帰国した大野田に別れを告げられ、自分を見守り続けていた徳永佳佑の一途さにようやく気づくのだった。
メディアミックス
TVドラマ
1998年4月から7月にかけて、本作『お仕事です!』のTVドラマ版がフジテレビ系列で放映された。全12話。プロデューサーは大賀文子、両沢和幸、演出は岩本仁志、木下高男が務めている。太田夏子役を鶴田真由、野島ことり役を松下由樹、鴨下ミキ役を雛形あきこがそれぞれ演じている。
登場人物・キャラクター
太田 夏子 (おおた なつこ)
建設会社、大鹿島建設リフォーム課に勤務する女性。父親と二人暮らし。美しい部屋を自分の手で生みだしたいと意気込んで入社したが、無能な上司をはじめ社内の人間関係に心が摩耗していく。そんな時、同じ会社の幹部候補生といわれている野島ことりに起業しようと誘われ、散々逡巡したのち、ことりとリトル・バードを設立。慎重な性格で、地に足がついた現実派タイプ。 ことりからは統率力・協調性のどれをとっても文句なしと高く評価されている。ことりとはぶつかる事も多いが、自分の可能性を気づかせてくれた事に多大な恩義を感じている。大学時代の恋人、城島武樹を忘れられず、5年経って仕事ができる魅力的な女になっていたら、嫁にもらってやると言われた事を未だに引きずっている。 北海道のリゾートホテルを企画した事で知り合った三ツ木隆介と良好な関係を築くようになる。エステを導入したリゾートホテルを共に経営する夢を抱き、婚約するものの、すぐに隆介は癌で他界。夢をあきらめる事こそなかったものの、しばらくはリトル・バードで食器の輸入販売の仕事に没頭する。その間、大学の後輩、永瀬振一郎と友達のような恋人のような関係を続けている。 そんな中、東国グループに買収された隆介との思い出が詰まったホテルが、支配人を公募している事を知る。そして、ことりに背中を押された事で、副支配人という地位を得る。東国グループの総帥、東国惟忠を当初は嫌な奴だと思っていたが、仕事への考え方が自分と共通する事から徐々に惹かれていき、支配人に昇進した際に求婚される。
野島 ことり (のじま ことり)
建設会社、大鹿島建設国際開発事業部に勤める女性。企業派遣生としてハーバード大学に留学し、MBAを取得して帰国したばかりの東京大学出身の才女。社の期待を一身に背負った女性初の幹部候補生。無能な上司にこき使われて一生終わるより、会社を起業しようと太田夏子に声を掛ける。天才を自称するバイタリティーあふれる人物だが、実は一族で会社を経営している富豪の令嬢でもある。 父親の経営する野島食器という食器会社が赤字続きのため閉鎖させられた苦い経験があり、食器会社を経営したいという強い信念を持つ。野島ことり自身が敵を作りやすい性格なので、誰からも好かれる温厚な片腕として、夏子をパートナーにしたいと考えていた。人情話が嫌いで、人に弱味を見せたくないタイプで、パワーはあるが、細部の詰めが甘いところがある。 また感情的で、気に入らない人間に対して攻撃的になる性質がある。なまけものとシイタケ、子供が嫌い。淀川ヒビキに女性としての魅力を称えられ、不器用で繊細なヒビキが放っておけなくなり、妊娠を機に夫婦別姓で入籍。実はバツイチで、杉本とのあいだに杉本ひなという娘がいる。
鴨下 ミキ (かもした みき)
建設会社、大鹿島建設の受付嬢。短期大学を卒業して入社した。ウェーブのかかったロングヘアの派手な美人で、社内では不倫専門と噂されている。ハンサムな恋人と付き合って半年後、家庭がある事に気づいたという過去がトラウマになっており、ハンサムな旦那様と結婚する事と、かわいいお店のオーナーになる事を夢見ている。惚れっぽい性格で、永瀬振一郎を好きになり、太田夏子の傍にいれば彼にコンタクトが取れるからと、野島ことりから誘われたリトル・バードに参加する事を決意。 ちなみに、ことりが鴨下ミキをスカウトしたのは、美人で巨乳の、髪がキレイな人材を探していたからである。当初は電話番しかやらせてもらえず、ことりと衝突していたが、リゾート開発用の土地を持つ三ツ木をリトル・バードに紹介した事で一気に株が上がる。 クラブの雇われママをしていた事があり、金持ち親父には顔が広い。リトル・バードの店舗が自由ヶ丘に進出する前後、学生ボランティアの大野田と恋愛関係になり、彼との結婚を本気で考えるようになる。大野田がソマリアに行ってからも、クラブホステスとして働き、彼に送金し続けた。 しかし、夏子が北海道のホテルの支配人となった頃に大野田から別の女性との結婚を告げられ、傷心の自分を慰めてくれた徳永佳佑の一途さに惹かれていく。
徳永 佳佑 (とくなが けいすけ)
東京大学時代、野島ことりと友人だった縁で、リトル・バードに入社した男性。事務を担当している。運輸省に5年間勤めていたエリートで、通称「徳ちゃん」。顔が大きく、垂れ目で唇が分厚く、イケメンとは言い難いルックス。ことりのよき理解者であり、優秀な官僚タイプだが、何年もかけて作った法案が素人大臣の気まぐれで廃案になる事に耐えられず、ことりの誘いに乗ったという経緯がある。 仕事では鴨下ミキと組む事が多く、偉い人間の意見えを聞くより、ミキを理解する事の方が国民を知る事になるという考えに至った。ミキを一途に愛しており、彼女を見守っていたが、ミキが大野田にふられた際に、大野田への怒りから勢いでミキに告白し、長年の片思いが実を結ぶ。 ちなみに東大時代は演劇部に所属しており、大道具専門であった事から内装作業も得意。イタリア語も堪能。
永瀬 振一郎 (ながせ しんいちろう)
大手都市銀行、富士丸銀行新宿支店に勤務する男性。大学時代は山岳同好会に所属し、太田夏子の後輩だった。ずっと夏子に片思いしており、会社が近い事もあり、しょっちゅう夏子の会社に顔を出している。夏子の恋人だった城島武樹には、何をやってもかなわないというコンプレックスを抱いている。銀行の待遇に疑問を抱いていた頃、野島ことりに、リトル・バードの経理係としてスカウトされた。 その後、鴨下ミキと一度男女の仲になるが、三ツ木隆介を失った夏子を放っておけず、彼女と友達以上恋人未満のような関係になる。夏子が東国惟忠の経営するホテルの副支配人となり、リトル・バードを一時的に抜ける頃、ことりにリトル・バードの店舗の全国展開を任される。 夏子以外の女性は考えられず、ずっと待っていると告げたものの、夏子が東国に心を奪われている様子に憤慨し、気持ちを吹っ切った。
淀川 ヒビキ
将来を嘱望される新進イラストレーター。切れ長の目をしたマッシュルームカットの男性。野島ことりが目をつけた自由ヶ丘の店舗を、一足早く契約した事からことりと知り合う。浮世離れした性格で、ことりに女性としての魅力を強く感じている。盗作事件を元アシスタントにでっちあげられた際には、ことりが事件解決に奔走した事から、リトル・バードにマネージメント業務を依頼し、自由ヶ丘の店舗を共有する事となった。 嗅覚が優れており、花田ユキコが危険人物であると見抜き、近づいてはいけないと、ことりに忠告する。不器用で繊細な性格から、ことりには世渡りが下手だと思われている。妊娠を機にことりと夫婦別姓で入籍する。ことりの機嫌が悪い時はシイタケ頭とののしられる事がある。
城島 武樹 (じょうしま たけき)
太田夏子が所属していた山岳同好会の先輩の男性。彼女が真底から惚れていた。大学4年の夏に世界一周のヒッチハイクの旅に出たきり、5年間行方知れずになっていた。3年前にはチベットから夏子あてに絵葉書を送っており、生存は確認されている。ソマリアで学生ボランティアの大野田と出会い、彼の恋人、鴨下ミキの写真に夏子の姿を見つけ、5年振りに日本に帰国。 野獣のような風貌に加え、上から目線の身勝手な性格で、今も昔も夏子には非情にわがままな態度を取る。二人で旅に出ようと夏子を誘うが、彼女の仕事に対する真摯さを目の当たりにして、姿を消してしまう。
三ツ木 隆介 (みつぎ りゅうすけ)
北海エンタープライズの専務を務める男性。三ツ木の息子。長身のイケメンで、一見クールに見えるが押しは強い。20万平方メートルの造成地を、地元の人達のために結婚式場にしたいという強い思いがある。揺るぎない信念を持つ女性が理想のパートナーと考えており、太田夏子と出会い、反発し合いながらも夏子の考えに感化されていく。 のちに自分と結婚してリゾートホテルを経営しようとプロポーズする。リゾートホテルの企画に本格的に着手しようとした矢先、胃癌で3年後の生存率が50パーセントと宣告される。それまでにリゾートホテルを軌道に乗せようと、夏子と共に奔走する。夏子と婚約するが、ほどなくして亡くなってしまう。尊敬する東国グループの総帥、東郷惟忠には、自分の婚約者として夏子の存在を明かしていた。
三ツ木 (みつぎ)
北海エンタープライズ代表取締役社長を務める男性。三ツ木隆介の父親。頭頂部が禿げて、メガネをかけている。非常に穏やかな性格だが、金銭面に関しては超シビア。代々林業を営んでおり、山林を伐採しゴルフ場開発に乗り出したが、計画がとん挫してしまう。20万平方メートルの造成地の利用法を相談するため、鴨下ミキの紹介で「リトル・バード」を訪れた。 のちにブライダル企画の出目の入れ知恵により、エステに嫌悪感をあらわにするようになる。隆介の死後、温泉ホテルを計画するが失敗して、ホテルは東国グループの総帥、東郷惟忠に買収される事となる。
出目 (でめ)
東京の企画会社「ブライダル企画」に勤める男性。大きめのメガネをかけた、出っ歯で姑息な性格の持ち主。当初から企画はウチに決まっていると、ライバル会社の太田夏子を騙そうとした。その後もエステを導入したリゾートホテルの計画に横やりを入れるようになる。実は夏子に恋しており、ダサくて不細工な自分はどうせ馬鹿にされているとの拗(ねじ)くれた考え方から、嫌がらせ行為をしていた事がのちに判明する。 夏子からヘアスタイルと服装を変えるようアドバイスされた事で、周囲から意外な高評価を獲得し、大いに気をよくして夏子達に協力的になる。
大塚 薫 (おおつか かおる)
日本の旅行代理店と契約を結び、イタリアで通訳の仕事に携わっている日本女性。5年前にイタリアに渡り、イタリア人のサッカー選手、ロベルトと結婚。ロベルトがケガで引退したため、今はフルタイムで働いている。気が強く、ブランド品に群がる日本人女性には容赦がない。実は「黄金の指」と評されるエステティシャンで、技術を磨くためにイタリアに修業に出たが、脂肪の塊のようなイタリアン・マダムには、修得したマッサージが通用しなかったという苦い経験を持つ。 太田夏子により、エステを導入するリゾートホテルに引き抜かれ、夫婦で日本に移住するが、リゾートホテルの計画がとん挫し、リトル・バードで働く事になる。夏子を慕っている事から、しばらくは我慢して働いていたが食器に興味がなく、野島ことりともソリが合わず辞めてしまう。
東国 惟忠 (とうごく これただ)
東国グループの総帥。メガネをかけたインテリ風の中年男性。バツ3の50歳。三ツ木の温泉ホテルを買収し、女性支配人を公募した。太田夏子に対しセクハラのような面接を行い、彼女から汚物を見るような目で見られた事から、夏子に興味を抱く。女性蔑視の意識が強く、女は男のセックス相手にすぎないと豪語し、愛人の江木純子をうまく利用している。 まったく色のついていない田舎娘の布施ゆかりを自分好みに育てるか、頭脳明晰でまじめな夏子をひざまずかせるかをゲーム感覚で楽しんでいた。しかし、かわいがっていた三ツ木隆介の婚約者が夏子だった事を知って、夏子一人に絞る。温泉ホテルの建設で壊された森をもう一度復元しようと尽力したり、意外に心優しい一面も持つ。
布施 ゆかり
東国グループの女性支配人の募集に応募した若い女性。眉毛が太く、田舎っぽい雰囲気を漂わせている。去年の新卒時に25社の面接に落ち、パン屋でアルバイトをしていた。世間の注目を集めるだけのために支配人に選ばれたため、仕事ぶりはパッとしない。ホワっとした見た目だが、いざという時にはっきりものを言うような気の強い一面がある。東国惟忠を深く愛するようになり、彼の子供を妊娠。 東国が太田夏子と結婚しても、愛人として甘んじる覚悟を持っている。
江木 純子 (えぎ じゅんこ)
東国グループの総帥、東国惟忠の愛人。女性支配人のポストを狙っている女性。ホテルの女性従業員の教育担当という立場で、ホテルに携わっている。体を張って仕事を取るのを常套手段としており、顔や全身に整形を施している。最終的には東国グループに匹敵する江木グループを作るのが夢で、ホテルの支配人もそのワンステップに過ぎないと考えている。 しかし、それも東国への愛の裏返しであり、彼の関心を引きたいがためである。たまにはまともな人間と話したいと、太田夏子にはたびたび自分の本音を告白している。当時は顔のアザにひどいコンプレックスを抱いていたため、整形して生まれ変わろうとして、名前を変えた過去がある。本名は「佐伯カヨ」。東国の会社でアルバイトしていた頃からずっと東国を愛していた。 市長を東国リゾートのオープニングセレモニーに出席させようとして彼と寝たため、それがスキャンダルとなり、ホテルをクビになってしまう。
杉本 (すぎもと)
メガネをかけた、まじめそうなサラリーマンの男性。野島ことりの元夫で、杉本ひなの父親。ことりとよりを戻したいと、リトル・バードの自由ヶ丘店に現れた。ロサンゼルス在住で父娘で暮らしていたが、娘の母親と暮らしたいという希望により、日本に帰国。結婚当時、育児に疲れ果てていたことりに、優しい言葉の一つもかけなかった事が離婚理由でもある。
杉本 ひな (すぎもと ひな)
杉本と野島ことりの娘。年齢は7歳。両親が離婚して父娘でロサンゼルスに在住していたが、母親と暮らしたいと父親に訴え、日本に帰国。父親からは、ママは頭がよくて、何でもできるスーパーマンみたいな女性だと聞いていた。リトル・バードの自由ヶ丘店に現れて、ことりと対面する。ことりが自分の母親であると察しているが、ことりの事情をそれとなく理解して、明るく健気に振る舞う。
シモーネ・ヨッシーニ (しもーねよっしーに)
北イタリアの伝統食器の会社、リッチェブータを経営するイタリア人男性。もともと伯爵の家系で、祖父は文学者、父親は画家、母親はオペラ歌手という芸術一家で育った。ディーノの弟。野島ことりがリッチェブータの食器に惚れこみ、総代理店契約を交わすが、契約条件に試用期間半年という条件をつけ、試し使いしようとする姑息な人物。 試用期間にわざと障害を与え、ことり達がどれほど骨があるか見極めようとしている。筋金入りの美意識を持ち、ブランド品に群がる日本人の貧相な文化を軽蔑している。自分と似た匂いのする花田ユキコを信用できそうだと見込み、試用期間中を利用して花田に大量の食器を流した。その後、ディーノが経営する会社から、という名目で花田に食器を卸す。 極度のマザコン。
ディーノ
シモーネ・ヨッシーニの兄。イタリア北部でレストランを経営しているイタリア人男性。頭頂部が禿げた、人のよさそうな老人で、訪れた太田夏子達にレストランの下働きと思われていた。もともと伯爵の家系で、祖父は文学者、父親は画家、母親はオペラ歌手という芸術一家で育つ。しかし自身は鬼っ子であり、家を飛び出して町のレストランの店主になった。 明るいミキを気に入り、店の食器に目をつけた野島ことりに弟を紹介。のちに弟が、自分の名前で勝手に、花田ユキコへ食器を卸しているのを国税局経由で知り、リトル・バードに謝罪に訪れた。
大野田 (おのだ)
埼玉国際大学に通う学生。ハンサムでさわやかな男性。老人ホームを慰労したり、恵まれない子供達のキャンプを企画したりと、ボランティアに命を賭けている。鴨下ミキとお互い一目惚れをして恋愛関係となるが、5年間ソマリアに行く、と最後まで言い出せなかった優柔不断なところがある。ソマリアでボランティア仲間と結婚を決めて帰国した。 ミキのホステス姿を見た際には、軽蔑的な表情を浮かべたりと、浅い人間性をにじませるが、ミキが送金したお金を返そうとする律儀さを持つ。
花田 ユキコ (はなだ ゆきこ)
イタリアのアッシジ付近のマジョリカ陶器を輸入販売するメーカー「HANADA」を経営する女性社長。丸越デパート進出をリトル・バードに阻まれ、報復するチャンスを狙っている。敵がいればいるほど燃えるタイプで、丸越デパートの向かいの全武デパートで大型店をオープンさせる。鳥取県出身で、貧しい家に生まれ育ち、その逆境をバネに食器の訪問販売で中国地方を制覇した。 中学時代から成績はよかったが、高校進学をあきらめ、自らセールスの道に飛び込んだという過去がある。地元では悪名高く、詐欺まがいの事をして土地を追われている。
棚上 はるか (たながみ はるか)
リトル・バードのアルバイトの面接に来た女性。面長のきつね顔で、野島ことりには第一印象で信用できないと思われていたが、人手不足のため採用された。その正体はHANADA創設以来、花田ユキコの片腕だった人物で、スパイとして送り込まれた。のちにHANADAに戻り、シモーネ・ヨッシーニが兄のディーノ名義で勝手に取引していた事件の責任を押し付けて、花田を会社から追い出した。 花田から汚いビジネスを学んだが、従業員のプライドを傷つける言葉はいっさい口にしなかったので、社員からは信頼されている。
大木
建設会社リフォーム課の課長を務めている男性。太田夏子の上司にあたる。夏子の入社以来ことごとく彼女と対立しており、困った事態に陥ると、いつも「ボク、知らない」と無視を決め込む無責任な人物。女性社員のあいだでの評判はすこぶる悪いが、その営業手腕はみんなが認めている。夏子に嫌がらせをする事も多いが、根っからの悪人ではない。
村田
建設会社リフォーム課の主任を務めている男性。ぽっちゃりした体型で、メガネをかけている。親父ギャグばかりしゃべり、競馬を趣味にしている。大木課長に嫌がらせをされ、余計な仕事を負わされた太田夏子の手伝いを買って出るなど、優しい一面を持つ。
秋尾 周一
都内でブティックを経営している粋な男性。三ツ木隆介の古くからの友人。鼻が大きく、濃い顔立ちをしている。隆介を通して、太田夏子に内装を依頼した。ブティック自体をアートな空間にしたいと、どこかレトロで、なおかつ近未来的な空間を希望した。特に斬新なオブジェを欲している。
串木 (くしぎ)
ゲームのソフト開発で一発当てた男性。成金親父のような容姿で、年齢は36歳。年商500億の実業家で、自由ヶ丘にもビルを持っている。鴨下ミキが短大時代に雇われママをしていたクラブのオーナーで、ミキにぞっこんだったが、事業がバブルで傾き、ミキを解雇したという過去がある。
場所
リトル・バード (りとるばーど)
野島ことりと太田夏子が起業した会社。ほどなく鴨下ミキが参加し、ほかに事務担当の徳永佳佑、経理担当の永瀬振一郎がいる。ことりの夢だった食器会社を経営するために、イベント企画で一発当てようと、当初はイベントプロデュース会社として起業した。エステを導入したリゾートホテル開発の企画を三ツ木隆介から任されるが、隆介の死により計画はとん挫。 ことりが手がける輸入食器販売はシモーネ・ヨッシーニから日本での総代理店権を獲得し、埼玉の駅ビルにショップを出店したあと、自由ヶ丘店の成功で銀座の丸越百貨店にも進出した。しかしHANADAの経営者、花田ユキコの介入で、一時は会社倒産の危機に陥るが、HANADAの内部分裂により復活。 夏子が東国惟忠のホテルの副支配人となった事で一時的に離脱し、ことりの出産休暇の際に振一郎がリトル・バードの全国展開を担う事になる。だが、夏子が東国リゾートの支配人になった頃、町田店が大失敗し、1億5000万円もの借金を負う事になる。メイン業務は食器輸入販売とリゾートホテル企画だったが、夏子がブティックのリフォーム業務を受けた事もあり、イラストレーターの淀川ヒビキのマネジメントも請け負っている。