見える子ちゃん

見える子ちゃん

女子高校生のみこはある日突然、異形の存在である「ヤバイの」が見えるようになってしまう。しかし、そのことを「ヤバイの」に知られたら危険だと考えたみこは、「ヤバイの」を「いないもの」として徹底的に無視することを選ぶ。何を見ても絶対に驚いてはいけないみこの姿を描いた新感覚ホラーコメディ。元は作者が2018年9月6日にTwitterに投稿したものだが、商業化に伴って全ページが描き直されている。KADOKAWA「ComicWalker」で2018年11月2日より配信の作品。「全国書店員が選んだおすすめコミック2020」第9位、第4回「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」第7位に選出。2021年10月テレビアニメ化。

正式名称
見える子ちゃん
ふりがな
みえるこちゃん
作者
ジャンル
ホラー
 
不条理・シュール
レーベル
MFC(KADOKAWA)
巻数
既刊11巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

見える?

女子高校生の四谷みこはある日、得体の知れない化け物、「ヤバイの」の姿が見えるようになる。しかし、見えていることが「ヤバイの」にバレると大変な事態になると直感したみこは、彼らの存在を徹底的に無視し、見えないふりを貫く。だが、親友の百合川ハナが、幽霊を引き寄せる体質ということもあり、みこは日々神経をすり減らされていた。そんな中、みこは「ヤバイの」対策のために除霊グッズを求め、ハナと共にタケダミツエの店を訪れる。しかし道中、「ヤバイの」に目をつけられたみこは、ミツエの店でも必死に「ヤバイの」が見えないふりをする。ミツエはそんなみこを不憫(ふびん)に思い、彼女に特注の数珠を渡すが、「ヤバイの」と反発して数珠はあっさり壊れてしまう。その様子を見ていたミツエは自信を失い、霊感商法からの引退を決意。一方のみこは、ぐったりと疲れた様子で帰路に就くのだった。

さんかい

相も変わらず四谷みこは、「ヤバイの」に頭を悩ませる日々を送っていた。そんなある日、みこは百合川ハナと遊びに出かけるが、そこでハナに今までに見たことがないほど大きな「ヤバイの」が憑いていると気づく。気が動転したみこが思わず神社に駆け込み、藁にもすがる思いでお参りをすると、神さまらしき存在が現れて「ヤバイの」を打ち倒すのだった。そして神さまはみこに「さんかい」と謎の言葉を残し、去っていく。神社の出来事がなんだったかがわからずじまいで、そのまま日常に戻ったみこであったが、そこに二暮堂ユリアが現れ、みこの霊感を指摘する。ユリアの言葉が「ヤバイの」を刺激しそうになったため、みこは彼女の言葉を否定するが、それがかえってユリアを挑発してしまい、結果的にみこはハナやユリアと共に心霊スポットを訪れることとなってしまう。そこは「ヤバイの」が大量に跋扈(ばっこ)していたため、みこは頑なに見えないふりを貫くが、みこが見えることに気づいた「ヤバイの」が現れてしまう。

見るな

四谷みこは心霊スポット巡りで「ヤバイの」に気づかれ、襲われる。絶体絶命の危機に陥るが、そこに山の神社で出会った神さまの遣いが現れ、みこたちを助けるのだった。そしていつもの日常に戻るものの、そこでまたしてもみこは自分が見えることに気づく「ヤバイの」と遭遇。再び神さまの遣いに助けてもらったが、遣いが指で二回目を表したのを見て、「さんかい」が「三回助けてくれる」ことだと理解する。みこは三回目を使ったら何が起きるのか不安に思いつつ日常を送っていたが、そんな時、担任教師が産休に入ったことで代わりの先生が来るという知らせを受け取る。しかしそこに現れたのは、かつて猫の里親探しの際に目撃した青年・遠野善で、みこは彼に不吉なものを感じる。彼が教師となって以降、百合川ハナが体調を崩すようになり、みこは善に取り憑いた「ヤバイの」が悪影響を与えていると考える。みこは彼に取り憑く「ヤバイの」から「見るな」と警告されるが、ハナを助けるために言動が怪しい彼を尾行する。善が数多くの猫の「ヤバイの」を引き連れていることから、みこは善が動物虐待をしていると疑い、彼が捨て猫に何かをしようとする現場を押さえるが、猫がそのまま逃亡。猫は勢いのまま道路に飛び出したため、車に轢かれそうになるが、そこで猫を助けたのは善だった。実は善は大の猫好きで、最近多発する動物虐待事件の犯人を捜すためにパトロールをしており、誤解からみことお互いに犯人だと疑い合っていたのだ。そしてみこは善の真実を聞いたことで、「さんかい」の三回目を使い、彼を束縛する「ヤバイの」を祓うのだった。

理解者

四谷みこは「さんかい」を使い切ったため、神さまにお礼参りすることを決め、一人で山の神社を目指す。しかし、一度行った道は閉ざされており、ナビどおりに行くと、そこは深い森の中。「ヤバイの」に囲まれた状況でみこは孤立してしまう。一方、百合川ハナは以前、神社に行った際に写真を撮ってSNSにアップロードしていた。その写真を見た謎の男・ロムはひそかに暗躍しており、彼は元師匠であるタケダミツエに写真を送りつけていた。ミツエはその写真を見て、かつての因縁を思い出し、一度だけ街で出会ったみこたちが巻き込まれているのを察する。「ヤバイの」にせまられていたみこだが、そこにミツエが駆け付け、彼女を無事に街に送り届けるのだった。ミツエが自分のがんばりを認めてくれたことで、みこは初めて自分の事情をわかってくれる理解者を得る。みこは無事に帰り着くことができたが、ロムは何かの目的で神社を目指しており、ひそかにみことハナ、二暮堂ユリアへと近づいていく。

決意

タケダミツエ四谷みこと同じく霊が見えるだけに、みこが孤独の中でけなげに戦い続けていることに心動かされ、彼女を守ると誓う。ロムがなんらかの目的で彼女たちを利用していることを察し、ミツエはロムと対峙する。しかしミツエは、ロムの真意をつかむことは叶わず、それぞれ別の行動を開始する。ロムは百合川ハナの近辺に頻繁に姿を現し、怪しい行動を取っていたが、ある日、ハナが少年の落とし物を拾うために川に潜り込む現場に遭遇する。ハナが奮闘する場面でただいるだけと思われたロムだったが、ロムは少年に取り憑く霊を見て少年が自殺する気だったことに気づき、霊の言葉を伝えて少年の自殺を思い留まらせる。事態は円満に解決したと思われたが、ハナは川に落ちたため、ひどく体調を崩してしまう。みこと二暮堂ユリアは彼女の看病に訪れるものの、みこはそこでハナに「ヤバイの」が取り憑いているのに気づく。みこはユリアの力を借りてなんとか「ヤバイの」を倒そうとするが、そこに神さまが現れて「ヤバイの」を打ち倒すのだった。みこは「さんかい」が終わった神さまはハナを狙っていると察し、このままでは彼女の身が危ういと考える。そしてミツエに相談しに行くが、ミツエは留守で、代わりにロムと遭遇。彼から神社の危険性を聞いたみこは、ロムと共に山の神社を目指す。

「なにもしない」

タケダミツエは仲のよかった人の霊から、四谷みこロムに連れていかれた話を聞き、大急ぎで彼らと合流する。ミツエはみこを帰還させようとするものの、みこは友人を守るため、現状に向き合うことを決意する。そしてみこはロムたちから、あの山の神社が「願いを叶えてくれる」が、「見返り」として「何か」を要求される場所だと知る。神社は結界で囲まれ、ふつうの方法では入れないが、ロムは結界を破るために百合川ハナの近くをうろつき、彼女の力を込めた石を用意していた。ロムによって結界を破られ、一行は神社に足を踏み入れる。そして、そこでみこに求められた役割は「なにもしない」ことだった。ロムとミツエが神さまの力を削ぐための時間を稼ぐべく、みこは「囮」として神社に入り、何を見ても無視して、絶対に反応しないことを指示される。みこは神さまを今までの「ヤバイの」と同じく徹底的にシカトするが、業を煮やした神さまはその真の姿を解放する。異形の姿となった神さまに魅入られ、彼が手渡す鈴を手にしようとするみこだったが、そこにロムが現れ、鈴を手にするのだった。そしてロムは真意を語り、自分がみこの「見返り」となることを告げる。実はロムも山の神社にお願いした過去があり、かつて岡トワ子が自分の見返りとなったことに強い後悔を抱いていた。そのやり直しをしたロムはそのまま神さまに取り込まれそうになるが、ミツエはそんなロムをかばって神さまと対峙する。神さまは遣いを呼び、ミツエを襲わせるものの、そこで神さまの遣いが突如、神さまに反逆。そしてミツエはその遣いの姿に、かつての自分の師匠・トワ子の姿をかいま見るのだった。

テレビアニメ

2021年10月3日から、本作『見える子ちゃん』のテレビアニメ版『見える子ちゃん』がTOKYO MX、BS日テレ、AT-X、インターネット配信ほかで放送された。制作はPassioneが担当している。キャストは、四谷みこを雨宮天、百合川ハナを本渡楓、二暮堂ユリアを佐倉綾音、遠野善を中村悠一が演じている。

登場人物・キャラクター

四谷 みこ (よつや みこ)

ふつうの女子高校生で、黒髪ロングヘアにしている。ある日突然、この世のものではない「ヤバイの」が見えるようになる。それに戸惑いつつも、「ヤバイの」が見えることが、「ヤバイの」にバレると危険にさらされると直感的に察し、「ヤバイの」に反応せず徹底的にシカトする道を選んでいる。表面上は無反応だが、内心ではすごく怖がっている。盛り塩や数珠など除霊グッズをいろいろ試しているがまったく効果はない。一度、強いお守りを求めてタケダミツエの店に行き、彼女から一番強いお守りをもらったが、それもすぐに壊れてしまう。ただしその際もらったお守りは、近くにいた「ヤバイの」を遠ざける効果はあった。効果的な対処法も見つけられず、友達にも言えずに孤独に過ごしていたが、のちにお守りの件で知り合ったミツエに事情を察せられ、彼女が唯一の理解者となる。幽霊や「ヤバイの」を見る力はミツエすら超えているが、ミツエや二暮堂ユリアのように人のオーラを見ることはできない。家族や友達思いの非常にやさしい性格で、親友の百合川ハナが「ヤバイの」に取り憑かれた際には、近くの神社に駆け込み、彼女を必死に助けようとしている。その時、駆け込んだ山の神社で藁にもすがる気持ちでお願いしたところ、そして神さまと出会い、ハナの「ヤバイの」を祓ってもらう。神さまから「さんかい」という謎の言葉をもらい、のちに「三回だけ守ってもらえる」と考える。そんな中で遠野善と出会い、当初は不信感を抱いていたが、境遇を知って誤解を解き、元凶となっていた「ヤバイの」を祓うため、三回目を使って善を助けた。三回目のお願いを使って以降、神さまが見返りを求めていると考え、油揚げをお供えしようとするものの神さまの遣いの不興を買って失敗。さらに神さまがハナの近くに現れたことで、彼女の身が危ないと考える。神社と因縁のあるミツエからは近づくなと警告されたが、ロムの言葉に乗せられて、神社に行くことを決める。

百合川 ハナ (ゆりかわ はな)

四谷みこの親友の女子高校生。明るめの茶髪をショートカットにした天真爛漫な少女で、いつも明るく元気を振りまいている。スタイル抜群で、かなりの巨乳。また食いしん坊で、いつも大量の食べ物を食べているため、みこからは栄養がすべて胸に行っていると思われている。タケダミツエが思わず目を見張るほど、体中から莫大な生命オーラを出している。食べるとオーラを回復する特殊な体質で、弱い霊であればそのオーラに触れるだけで弱っていくが、強い力を持つ「ヤバイの」はオーラ目当てに近づいてくる。幽霊を引き寄せる体質ながら幽霊は見えず、オカルト系の話題は苦手。お人よしな性格で、困っている人を見捨てられない。犬に逃げられた子供のために廃墟に犬を探しに行ったり、落とし物をした少年のために川に飛び込んだりと、体を張って人助けをしている。しかし、そのたびに「ヤバイの」を引き連れて戻っており、みこからはその行動を心配されている。巨大な「ヤバイの」を引き連れた際には、みこに連れられる形で山の神社に行き、神さまに「ヤバイの」を祓ってもらう。ハナ自身は「ヤバイの」にまったく気づいておらず、神社で写真を撮り、SNSにアップしたのちにその写真がロムの目に留まることとなる。神社で写真を撮って以降、写真を撮るのにハマっているが、ハナの撮る写真には高確率で「ヤバイの」が写っているため、みこはそのうちハナのアルバムが「「ヤバイの」大図鑑」になるのではないかと危惧している。また、みこからは自分が「見える」ようになったから「ヤバイの」に悪影響を受けるようになったと思われているため、みこが「ヤバイの」から守ろうとしていることをハナは知らされていない。そのため、のちにみこはハナが神さまに狙われているのを知った際、ロムからハナの力を借りた方がうまくいくと言われたが、頑なにハナを巻き込ませないようにしている。

二暮堂 ユリア (にぐれどう ゆりあ)

ツインテールの髪型をした女子高校生。非常に小柄な体型で、小学生によくまちがわれる。物心がついた頃から霊感に目覚め、幽霊を見て育った。しかし周囲からは信じてもらえずに孤立しがち。そのため、自分の持つ力を心のよりどころにし、その力を磨こうとしている。タケダミツエが霊感を持っていることに気づき、彼女に弟子入りしようとするが、彼女からは適当にあしらわれていた。その後、ミツエが引退したのを知り、そのきっかけとなったみこに近づく。みこが自分と同じように霊感があると思って近づくものの、二暮堂ユリアにはヤバイのが見えないために話がかみ合わず、知らず知らずのうちに彼女によく助けられている。またみこの行動を見て、彼女がすご腕の霊能力者とカンちがいしてコンプレックスを感じ始めているが、一方で友情も感じており、複雑な心境となっている。

恭介 (きょうすけ)

みこの弟。かなりシスコン気味で、みこが霊感に目覚めてから挙動不審になっているのを「彼氏ができたせい」とカンちがいしている。姉弟仲が非常によく、時々いっしょに買い物に行ったりしている。

遠野 善 (とおの ぜん)

穏やかなで人のよさそうな顔立ちをした青年。四谷みこと百合川ハナがSNSで猫の里親探しをした際、猫の里親に立候補する。しかし、みこは遠野善がおびただしい数の「ヤバイの」を引き連れているのを見たため、善に不吉なものを感じ、猫を渡さなかった。善に憑いている「ヤバイの」は猫の姿をした者が多い。実は教師で、のちにみこたちのクラスの担任が産休したため、入れ替わる形でみこたちのクラスに赴任する。教師として現れたあと、あらためてみこが観察すると、引き連れている「ヤバイの」は数が増え、大きな女性の「ヤバイの」も引き連れていた。不吉な雰囲気でみこからは怪しまれていたが、実は大の猫好き。幼い頃、母親から虐待まがいの束縛を受けており、友達付き合いも制限されて孤独になりがちだったため、捨て猫の面倒を見るのが唯一の心のよりどころだった。しかし母親に猫を奪われたため、その経験がトラウマとなり、罪悪感から猫に対して人一倍愛情を注ぐようになる。善に取り憑いている女性の「ヤバイの」は、善の母親その人で、死してなお善に取り憑き、その力で善を束縛している。母親の「ヤバイの」は周囲から生命力を奪い、善から人や猫を遠ざけている。善は捨て猫を拾って保護しているが、母親の「ヤバイの」のせいで弱ってすぐ死んでしまう状況に陥っていた。善が引き連れる猫の「ヤバイの」が増えているのはこのせいで、猫の霊たちは彼を守ろうとするものの、母親の「ヤバイの」の影響で「ヤバイの」に成り果てているのが真相だった。みこから疑われていたが、善も怪しい言動をするみこを最近多発する動物の虐待事件の犯人ではないかと疑っており、カンちがいからお互い一触即発の状況となる。しかし、とっさに逃げた猫を車からかばって轢かれたのをきっかけに誤解が解け、和解。みこが「さんかい」の三回目を引き換えに母親の「ヤバイの」を祓ったため、彼に取り憑いていた猫の霊たちも安心して成仏していった。その後はみこに説得され、彼女が拾った猫を引き取り、育て始めている。善自身に悪気はないが猫への愛情が変質しているため、人より猫を優先する変わり者。特に人の名前を覚えるのが苦手で、よく間違える。

豪塚 (ごうづか)

強面スキンヘッドの男性で、体中の至る所に傷と入れ墨がある。寡黙な性格なこともあり、人見知りしないハナも最初は怖がっていた。実は猫好きで、ハナとみこが野良猫の里親を募集したのを知り、里親に立候補する。みこは優しそうな女性と二匹の猫が守護霊として彼を守っていたことで豪塚を信頼し、猫を託した。もらった猫に「にゃんすけ」と名前を付け、かわいがっている。ハナともSNSでたまに連絡を取り合い、猫の近況を伝えている。

タケダ ミツエ

「下町のゴッドマザー」と呼ばれる霊能力者の老婆。怪しい占い師然としており、霊能力はあるが年老いて衰えている人物で、サクラを雇って怪しい霊感商法を行っていた。守銭奴でもあり、お守りを求めて店に来た四谷みこたちを、子供は金にならないと敬遠していたが、明らかに「ヤバイの」が見えて苦労しているみこを不憫(ふびん)に思い、彼女に自分が全盛期の時に作った数珠を渡した。しかし、みこの傍にいた「ヤバイの」の影響ですぐさま数珠は壊れてしまったため、自信喪失して引退する。もともと老齢で自分の実力に限界を感じていたため、引退後は息子のもとに身を寄せ、畑仕事をしていた。しかしロムから、みこと百合川ハナが山の神社に行った写真が送られ、それを見て以降、二人の身を案じて引退を撤回し、霊能力者「下町のゴッドマザー」として復帰する。ロムはかつての弟子で、彼の二つ名「神童」の名付け親。師匠が弟子の二つ名を付ける習わしで、タケダミツエの「ゴッドマザー」も師匠の岡トワ子が付けたもの。ロムとの苦い経験から二度と弟子は取らないつもりで、弟子入り志願してきた二暮堂ユリアをあしらっていた。山の神社で迷っていたみこの前に姿を現し、彼女を助けた。その後、ロムと再会し、彼が何かを企んでいるのを怪しんで対立する。

神さま (かみさま)

山の神社にいる謎の存在。巨大な獣のような姿で、ほとんどが聞き取ることもできない謎の言語だが話すこともできる。偶然、神社にやって来た四谷みこの願いに応え、姿を現し、百合川ハナに取り憑いていた「ヤバイの」を捕食し、みこに「さんかい」という謎の言葉を伝えて姿を消した。神さまは遣いとして着物を着た童女を二人控えさせており、遣いはその後もたびたびみこの前に姿を現し、彼女を「ヤバイの」から守っている。そのためみこは神社に現れたこの存在を、神社の「神さま的な存在」と思っている。みこは、遣いが現れるたびに指を折る仕草をしたため、「さんかい」が「三回守る」の意だと察する。そして遠野善の「ヤバイの」を祓って以降は、願いを叶えた「見返り」を求めるような言動を取るようになる。タケダミツエによれば願いを叶えてくれるが、その代償として「見返り」を求められる危険な存在で、「何を」求められるかは人によって違うが、過去に何人もの霊能力者が行方不明になったとのこと。ハナを助けた回数も足すと三回以上守っているが、これはロムによればみこがお願いした際に「ハナを助けて欲しい」と「ついでに自分も助けて欲しい」と曖昧な二つのお願いをしたため、神さまも解釈に困ったからではないかと予測している。神社の結界の外では実体を保てないため、遣いしか姿を現さなかったが、ハナが「ヤバイの」に取り憑かれた際には一時的に姿を現し、ハナを見返りとして求めるような仕草をしている。体全体が口で、捕食する際には体が割れて対象を飲み込むが、みこが再び神社を訪れた際には体が割れて内側をさらすことで真の姿を現す。本来の姿は人の顔と何本もの腕を持つ異形の姿で、体中に鈴が付いている。この鈴を取った者を取り込むことができるらしく、みこに自分の鈴を渡そうとするが、ロムに邪魔されて失敗。ロムをかばったミツエに襲い掛かるが、そこでかつて取り込み、自らの遣いに成り果てた岡トワ子に反逆される。トワ子のメッセージを受け取り、みこが社の中にあったご神体を破壊したため、それに巻き込まれるように消滅する。

みこの父 (みこのちち)

みこの父親で、故人。1年前、みこのプリンをまちがえて食べてしまったことで大ゲンカし、仲直りしないまま死別した。眼鏡を掛けた平凡だが優しそうな風貌で、みこをいつも見守っている。みこの父のそばにはヤバイのがいるため、みこには見えていないふりをされているが、プリンを仏壇に供えてもらっている。

ロム

「神童」と呼ばれる霊能力者の男性。黒のシルクハットをかぶり、全身黒ずくめの格好をした不気味な人物で、ボサボサの髪の毛をしている。怪しい笑みを浮かべ、飄々(ひょうひょう)とした言動をしているため、非常にうさんくさい。オンラインサロン「神童ロムの館」を運営し、「エニグマイリュージョン」と称して手品を披露したり、ただの石にしか見えない「チカラの石」を売りつけようとしたりと、絵に描いたような怪しい言動を取っている。だがタケダミツエの弟子で、正真正銘本物の霊能力者。四谷みこも二暮堂ユリアもロムの持つ石が、ヤバイのに効果を及ぼすのを目撃している。怪しい商法を展開しつつ、「本物の霊能力者」を探している。百合川ハナがSNSに上げた山の神社の写真を発見し、それをミツエに送りつけたり、みことハナに近づいたりと暗躍をしている。なんらかの目的で山の神社に行くのが目的で、そのためにみこにハナが危険に陥っていると忠告し、彼女とハナを巻き込もうとしている。このためみこを守ろうとするミツエとは意見が対立する。幼い頃から霊感が強かったが、子供の頃は精神が不安定な状態だった。岡トワ子に拾われ、ミツエに弟子入りすることで、ロム自身の才能が人と霊の助けになることを知り、トワ子とミツエに大きなあこがれを抱くようになる。しかし山の神社に近づいた際、山から助けを呼ぶ声が聞こえ、ミツエの忠告に逆らって助けに向かってしまう。その際に神さまに願ってしまったため、「見返り」となるが、トワ子が身代わりとなったことで事なきを得る。その出来事が大きなトラウマとなっており、みこたちを利用することで今度は自分が「見返り」の身代わりとなろうとしている。

岡 トワ子 (おか とわこ)

霊能力者の初老の女性。黒髪をボブカットにしており、白いローブを身にまとっている。テレビ出演もする有名霊能力者で、「悪鬼成敗」の決めゼリフとポーズで有名だった。テレビでの言動は自分でも茶番と理解しているが、この活動は本業の役に立っており、本業では人と霊を助けたり、霊感が強すぎてふつうの人に馴染(なじ)めない子供を助けたりしている。ミツエもロムも岡トワ子が助けた子供たちで、ミツエは弟子にして、「ゴッドマザー」の二つ名を名づけた。仕事が多忙になったため、ロムをミツエに預けたが、ロムからは尊敬され、ロムはトワ子の決めポーズをひそかにマネしたりしていた。ロムが山の神社に足を踏み入れたのを知った際には、彼を心配して見返りの身代わりとなる。その後は、神さまの遣いに成り果てていたが、四谷みこが再び山の神社を訪れ、神さまがミツエに襲い掛かった際に、自我を取り戻し、神さまに反逆する。神さまには敵わなかったが、最後の力を振り絞って神社の社を指さし、みこたちに逆転の一手を伝えた。

場所

山の神社 (やまのじんじゃ)

山の上にある神社。正式名称は不明。四谷みこはスマホのナビを使っていったが、タケダミツエによれば「この世に存在しない場所」で、ふつうの方法で行くことはできない。みこの場合は百合川ハナが無意識のうちにそのオーラを使って神社に張り巡らせた結界を破ったため、偶然たどり着けた。有名な力のたまり場らしく、山の周辺にはおびただしい数のヤバイのが跋扈(ばっこ)している。山の神社には神さまがおり、その筋では「なんでも願いを叶えてくれる」場所として有名だが、同時に何人もの霊能力者が行方不明になった危険な地として知られている。神社の社には謎の頭蓋骨がご神体として祀(まつ)られており、手にしたみこが驚いて落として壊したところ、神さまは消滅し、神社も跡形もなく消え去った。

その他キーワード

ヤバイの

みこが突如見えるようになった霊的な存在。悪霊のようだが正体は不明で、「小さいおじさん」のような都市伝説的存在も含まれる。人間や動物のような姿をしているが、近くのヤバイのを捕食、融合を繰り返し、原型が残らないほど巨大な化け物へと変化しているケースもある。不吉なオーラを漂わせており、生きている人間に近づき、その人間の生命力を食らう。生命力を食われた人間は消耗し、体が重くなったり空腹になったりと悪影響を覚える。未練や恨みを残して死んだ者がヤバイのになっているケースが多く、逆に心安らかに死んだ者は生前の親しい者を見守っている。霊感があれば、都市伝説的存在くらいなら見える場合もあるが、大きな力を持つヤバイのが見える人間は少ない。そのせいか、ヤバイのは自分の存在に気づく人間に執着する傾向がある。

書誌情報

見える子ちゃん 11巻 KADOKAWA〈MFC〉

第1巻

(2019-04-22発行、 978-4040656588)

第2巻

(2019-10-21発行、 978-4040640921)

第3巻

(2020-03-21発行、 978-4040644981)

第4巻

(2020-09-23発行、 978-4040648989)

第5巻

(2021-03-22発行、 978-4046802576)

第6巻

(2021-10-22発行、 978-4046807151)

第7巻

(2022-03-22発行、 978-4046812193)

第8巻

(2022-10-21発行、 978-4046817723)

第9巻

(2023-05-23発行、 978-4046822406)

第10巻

(2024-02-22発行、 978-4046828798)

第11巻

(2024-10-23発行、 978-4046839930)

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