『進撃の巨人』の過去を描いたスピンオフ
原作となる『進撃の巨人』は、講談社「別冊少年マガジン」で2009年10月号から2021年5月号まで連載された諌山創の超人気作品。アニメやゲーム、実写映画などメディアミックス化され、第35回講談社漫画賞少年部門をはじめ数多くの漫画賞を受賞し、社会現象と言えるほどの高い人気を博した。本作『進撃の巨人 Before the fall』は、原作の55年前から始まる前日譚にあたる作品で、当時のパラディ島に住む人々の生活や、その頃から存在する巨人の脅威、そして知恵と勇気を出し合って巨人に抗(あらが)おうとする調査兵団の活躍が描かれる。
「巨人の子」として蔑まれるキュクロの苦悩
主人公のキュクロは巨人に捕食され、吐き出された妊婦から調査兵団の団長に取り上げられたという壮絶な過去を持つ。その出自から「巨人の子」と蔑まれ、自由すら奪われていたが、シャルル・イノセンシオとの出会いを経て、知識と自由を手に入れる。そして自らが人間であることを自覚すると共に、巨人から大切な人を守りたいと考えるようになる。やがて、キュクロは調査兵団の団長であるカルロ・ピケールや技術者のアンヘル・アールトネンから、その強い意志を認められたことで立体起動装置のテスターの一人に抜擢(ばってき)され、調査兵団にとって不可欠な存在となっていく。
対巨人用兵器「立体機動装置」の誕生
本作は、巨人の殺害方法や立体起動装置の開発にまつわるエピソードが描かれている。本編より55年前の世界では、巨人を仕留める方法が確立されておらず、調査兵団が巨人と遭遇した場合は兵力を損耗しないように撤退したり、大砲や炸裂弾を用いて追い払う以外に為(な)す術がなかった。だが、調査兵団のソルム・ヒューメの決死の攻撃で1体の巨人を倒したことで、うなじが弱点である可能性が浮上。さらに、ソルムの友人である武器職人のアンヘル・アールトネンが開発した黑金竹で作られたワイヤーと剣、そして同時期に開発された氷爆石を用いたガス発生装置を合体させ、現在の立体起動装置の原型が開発される。のちに完成した立体起動装置を身につけたキュクロによって巨人が討伐され、その有用性が認められることとなる。
登場人物・キャラクター
キュクロ
無垢の巨人から排出された吐瀉(としゃ)物の中から生まれたことから、「巨人の子」という蔑称で呼ばれる青年。「キュクロ」という名前も巨人になぞらえて付けられたもの。並外れた聴覚の持ち主で、周囲に巨人が現れるとすぐに察知することができる。生まれてすぐに見世物小屋に囚われ、のちにイノセンシオ家に買い取られてからも、地下に幽閉されて道具扱いされるなど、およそ人間らしさとは無縁の生活を強いられてきた。劣悪な境遇に置かれていたため、生きることや自由を得ることに対する渇望が人一倍強く、窮地に陥っても最後まであきらめずに最善の方法を模索しようとする。ある時、イノセンシオ家の令嬢であるシャルル・イノセンシオと出会い、彼女から言語や歴史を教わる。その後、巨人を信奉する組織の暴動に乗じてシャルルと共に地下を脱出し、自分が人間であることを証明するため調査兵団に潜入する。
シャルル・イノセンシオ
ウォール・シーナ内に居を構えていた豪商「イノセンシオ家」の長女。外の世界にあこがれを抱き、父親のダリオ・イノセンシオや兄のシャビィ・イノセンシオと共に三つの壁の中で最も外側にあるウォール・マリアに登ったこともある。だが、そこで本物の巨人を目の当たりにしたことで、巨人に対する恐怖感を覚える。その影響から、一度は「巨人の子」と呼ばれるキュクロを殺害しようとするが、会話を交わしたことで彼が人間であることを悟る。さらに、政略結婚に利用されることを知り、家を飛び出してキュクロと共に生活する道を選ぶ。のちに工場都市の職人であるゼノフォン・ハルキモに弟子入りし、立体機動装置の開発に携わる。
クレジット
ベース
進撃の巨人 (しんげきのきょじん)
作者、諫山創の初連載作品であり代表作。舞台は人を食らう巨人に追われ、人類は壁のなかで暮らすことを余儀なくされてしまった世界。巨人に母を殺された少年エレン・イェーガーが復讐を誓い、巨人を倒すための調査兵... 関連ページ:進撃の巨人
書誌情報
進撃の巨人 Before the fall 17巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2013-12-09発行、 978-4063764390)
第2巻
(2014-04-09発行、 978-4063764604)
第3巻
(2014-08-08発行、 978-4063764864)
第4巻
(2014-12-09発行、 978-4063765151)
第5巻
(2015-04-09発行、 978-4063765373)
第6巻
(2015-08-07発行、 978-4063765649)
第7巻
(2015-12-09発行、 978-4063765908)
第8巻
(2016-04-08発行、 978-4063906196)
第9巻
(2016-08-09発行、 978-4063906417)
第10巻
(2016-12-09発行、 978-4063906677)
第11巻
(2017-04-07発行、 978-4063906967)
第12巻
(2017-08-09発行、 978-4063907254)
第13巻
(2017-12-08発行、 978-4065105047)
第14巻
(2018-04-09発行、 978-4065112182)
第15巻
(2018-08-09発行、 978-4065122884)
第16巻
(2018-12-07発行、 978-4065138120)
第17巻
(2019-04-09発行、 978-4065152041)