概要・あらすじ
主人公の秋山醤は、「中華の覇王」の異名を持つ秋山階一郎の孫であり、天才的な腕を持つ中華料理人。日本屈指の中華料理人として名高い五番町睦十を倒すべく、睦十がオーナーを務める五番町飯店で働き始めた醤の前に、睦十の孫五番町霧子や、醤の腕前を聞きつけて現れた中華料理人たちが立ちはだかる。
「料理は勝負!」が信条の醤は、ライバルたちとの戦いに身を投じていくのだった。
登場人物・キャラクター
秋山 醤 (あきやま じゃん)
16歳にして天才的な中華料理の腕を持つ料理人。自分の腕前に絶対的な自信を持っており、プライドが高く傲岸不遜な性格。「料理は勝負!」が信条で、勝負に勝つためには手段を選ばない。特殊な調理法を使って審査員の感覚を狂わせたり、対戦相手の調理ミスを誘うのは常套手段。また、非常に口が悪く、対戦相手や審査員をからかったり罵倒したりすることも多い。 そのため、審査員たちの心証は常に最低である。天才中華料理人である祖父秋山階一郎によって幼い頃から過剰な英才教育を施され、「秋山の魔法」と称される中華料理の技法を身に付ける。背中にはその時に付けられた多数の傷があり、他人に背中を見られることを嫌う。階一郎の遺言にしたがって五番町睦十を料理勝負で倒すために五番町飯店で見習い料理人として働き始める。
五番町 霧子 (ごばんちょう きりこ)
16歳の中華料理人。五番町睦十の孫娘であり、将来五番町飯店を継ぐため、睦十や叔父の五番町弥一の元で料理修行を行っている。料理の腕は一流だが、店の仕事をすべて覚えるため、見習いとして働いている。「料理は心」が信条で、食べる人のことを第一に考えた料理を心がける。料理に対して並ならぬ情熱を持ち、日々努力を怠らないが、熱中しすぎて周囲が見えなくなってしまうことも多い。 勝ち気で男勝りな性格で、料理を勝負と捉える秋山醤とはたびたび衝突する。
小此木 タカオ (おこのぎ たかお)
五番町飯店で働く16歳の見習い料理人。同じく見習いの秋山醤や五番町霧子とは同い年だが、料理の腕は二人にまるで及ばず、五番町飯店の先輩料理人たちからもよく怒られている。裏表がなく人のよい性格で、料理に失敗した醤を慰めたことをきっかけに、醤が気を許す数少ない友人となる。 料理の技術はほとんど素人並みだが、奇抜な発想で周囲を驚かせるような料理を作ることも。また、醤に教えてもらうことによって、徐々に実力を身につけ始める。
五番町 睦十 (ごばんちょう むつじゅう)
五番町霧子の祖父。「中華大帝」の異名を持ち、秋山階一郎とともに日本中華料理界のトップに君臨していた中華料理人である。年老いて現役を退き、五番町飯店のオーナーとして経営に専念しているが、いまだに料理の腕は衰えていない。75歳という高齢でありながら、長年鍋を振るうことで鍛えられた筋肉質の肉体を持つ。 階一郎とは古くからの親友であり、終生のライバル。
秋山 階一郎 (あきやま かいいちろう)
秋山醤の祖父。幼くして両親と死別した醤を育てる。「中華の覇王」の異名を持つ、五番町睦十と並ぶ日本でトップクラスの中華料理人。自分の持つ技術を醤に叩きこんでいた。しかし、その体は病に侵されており、味覚に障害が現れたことをきっかけに焼身自殺を遂げる。その際、醤に五番町睦十を倒すようにと遺言を残す。
大谷 日堂 (おおたに にちどう)
「神の舌」と呼ばれるほど優れた味覚を持つ料理評論家。人格は最低で、自分の気に入らない料理人が作った料理は、どんなに優れた料理であろうと粗を探して罵倒する。しかし、多くのテレビ番組に出演し、毒舌評論家として人気が高い。五番町飯店で恥をかかされたことをきっかけに醤に恨みを持つ。 自分の主催する料理勝負番組や中華料理大会で、たびたび審査員としても登場し、醤の料理を否定することに心血を注ぐ。
五番町 弥一 (ごばんちょう やいち)
五番町霧子の叔父で、五番町飯店の総料理長。年齢は45歳。30歳になる前から五番町飯店を切り盛りしてきた経験を持ち、料理の腕前は超一流。秋山醤の性格はともかく、料理の腕は認めている。確かな知識を持ち、料理勝負の際には解説役となる事が多い。
李 考英 (りー こうえい)
五番町飯店の司厨長を務める人物。年齢は34歳。香港から招かれた料理人で、優れた腕を持ち、五番町霧子を始めとした五番町飯店の料理人たちからの評価も高い。秋山醤の行き過ぎた行動をいさめるなど、人格面でも優れている。
望月 貢 (もちづき みつぐ)
五番町飯店の鍋を担当している22歳の料理人。意地の悪い性格で、小此木タカオに対する後輩いじめを繰り返している。料理の腕は未熟で、後輩にもかかわらず優れた腕を持つ秋山醤のことを目の敵にしているが、醤からはまるで相手にされていない。
尾藤 リュウジ (びとう りゅうじ)
特定の店には勤めず、各地の中華料理屋に赴いては店員に掛け勝負を挑み、その稼ぎで生活している。大谷日堂とは知人同士で、秋山醤を倒すべく、大谷によって五番町飯店に送り込まれる。料理には独自に開発した特性のXO醤を使用する。
蟇目 檀 (ひきめ だん)
五番町飯店の料理人。かつては人当たりのよい好青年で、五番町飯店の店員たちから慕われていたが、中国での2年半に渡る料理修行を経て、野心に満ちた傲慢な性格に変貌。自分の料理を馬鹿にした秋山醤の腕を折るなどの暴行を平気で働くような人物として登場する。その後、五番町飯店に戻ることはなく、大谷日堂の経営するレストラン蜃気楼に総料理長として移籍しようとする。 醤のことを気に入り、自分の部下として蜃気楼にヘッドハンティングすることを目論む。「料理は才能」が信条。
五行 道士 (ごぎょう どうし)
香港で小さな中華料理店を営む料理人。体にいい料理を出すことで評判だったが、正体は「裏食医」と呼ばれる料理を介して人体を操る術を身につけた人物。実力を持て余していたところを大谷日堂に誘われ、秋山醤に敗れた蟇目檀の代わりとして、レストラン蜃気楼の総料理長となる。人前では柔和で紳士的な態度だが、凶暴な性格を隠している危険人物で、他人に対する冷酷さは醤を上回る。 醤と五番町飯店の権威を失墜させるため、大谷の主催したテレビ番組上で醤と対決する。「料理は成仏」が信条。
セレーヌ 楊 (せれーぬ やん)
神戸の中華料理店シードラゴンの料理人。17歳の少女で、香港人の父とフランス人の母を持つ。フランス料理の技法を取り入れた中華料理「ヌーベル・シノワ」を得意とし、卓越した盛り付けのセンスを持つ。伝統や形式にとらわれず、最新の技術やセンスを盛り込む「料理はコテコテ」が信条。大谷日堂の主催した第一回全日本中華料理人選手権大会の決勝で、秋山醤、五番町霧子と接戦を繰り広げる。 その後、中華の伝統を学ぶために五番町飯店で修行を始める。
湯水 スグル (ゆみず すぐる)
湯水財閥の若き当主。勉強でもスポーツでも特に努力することなくトップクラスになり、天才を自称する少年。中学校を卒業後、高校に進学することなく大検を取得し、大学進学までの暇つぶしとしてプロの料理人たちと料理勝負を行っている。料理においても負け知らずで、99人の料理人たちを倒し、100人目のターゲットとして秋山醤に目をつけ、料理勝負を挑む。 素人ながら料理の腕前はプロ並で、資金力に物を言わせて最高級の材料を用いた料理を作り上げる。
刈衣 花梨 (かりい かりん)
湯水家の執事を務める女性で、湯水スグルが料理勝負を行う際のブレーンも担当している。サポート役としての能力を秋山醤に見ぬかれ、料理勝負を申し込まれる。体力や技術力ではプロの料理人たちに及ばないが、科学を初めとする様々な知識に富む。最新機器や生化学の知識を活用し、科学者の視点から作られた料理で醤たちを驚かせる。 「料理は科学」が信条。
沢田 圭 (さわだ けい)
六本木の中華料理店崑崙の若き料理人。炎や熱を操る料理を得意とする。料理中のパフォーマンスを重視しており、女の子のファンが多い。大谷日堂の主催する全日本中華料理人選手権大会では、第一回・第二回ともに出場する。
筍智 秀 (じゅんとも ひで)
横浜の中華料理店東洋楼の跡継ぎ。16歳にして400年の歴史を誇る東洋楼の伝統を背負い、その技術力に自信を抱いている。大谷日堂の主催する全日本中華料理人選手権大会では、第一回・第二回ともに出場する。
百蘭王
アジアの料理界を牛耳る陸一族の当主。百蘭王とは当主に与えられる称号であり、本名は不明。かつて秋山階一郎と五番町睦十の、2人を一度に相手にしての餃子の早握り対決で引き分けるという圧倒的な技術を持つ。次期百蘭王を決定するため、大谷日堂の主催する第二回全日本中華料理人選手権大会に、陸一族の若手料理人たちを送り込む。
黄 蘭青 (こう らんせい)
百蘭王の実の孫。他人の作ろうとしている料理を一瞬で把握することができる、卓越した洞察力を持つ。そこから瞬時に対策を立て、より優れた料理を作り上げる「料理は半歩先」が信条。五味と美しさ、香りに加え、「食感」を重視した料理を得意とする。常に笑顔を絶やさないため一見すると好青年だが、人を食ったような性格の人物。 幼少期から料理の修行を積んでおり、秋山醤と同じように、体中に修行による傷跡を残している。次期百蘭王となるべく、第二回全日本中華料理人選手権大会に送り込まれるが、当人に百蘭王を継ぐ気はなく、黄蘭青の名をアジアにとどまらず世界中に広めるという野望を持つ。
陸 顔王 (りく がんおう)
陸一族の若手料理人で香港出身。黄蘭青が次期百蘭王として指名されたことに不満を抱き、実力を見せつけて自分が百蘭王となるために第二回全日本中華料理人選手権大会に出場する。癖の強い食材を活かした料理を得意とする。
陸 麗華 (りく れいか)
陸一族の若手料理人。台湾出身で、登場した陸一族の中では唯一の女性。陸顔王と同じく、次期百蘭王の座につくため第二階全日本中華料理人選手権大会に出場する。「料理は傾向と対策」が信条で、対戦相手を観察し、勝つための料理を作り出す。
陸 燕雀 (りく えんじゃく)
陸一族の若手料理人で、上海出身。陸顔王と同じく、次期百蘭王の座につくため第二階全日本中華料理人選手権大会に出場する。餃子の早握りを得意とし、かつて百蘭王が秋山階一郎・五番町睦十たちに行った独特の技法を、さらに改良したものを習得している。
ジュリアーノ本郷 (じゅりあーのほんごう)
オカマ口調で話す、フレンチの料理人。第二回全日本中華料理人選手権大会の宣伝テレビ番組に出演する。第一回大会での決勝進出者の秋山醤、五番町霧子、セレーヌ楊たちと、鴨肉をテーマにした料理で対決する。
サザビー本郷 (さざびーほんごう)
第二回全日本中華料理人選手権大会に出場した料理人。ジュリアーノ本郷の双子の弟で、兄ジュリアーノと同じくオカマ口調で話す。「料理はユニバーサル」を信条として、世界中の食材や西洋料理の技法を盛り込んだ料理を作り出す。
崔 信典 (さい のぶのり)
全日本中華料理連盟会長。大谷日堂の主催する全日本中華料理人選手権大会において第一回・第二回ともに審査員を務める。長い経験から、大谷に並んで審査能力が高い。第二回大会においては料理を技術面で審査する特別審査員を務める。
ケペル・ハインツ・ルンメルゲ
ドイツ人の医学博士。大谷日堂の主催する第二回全日本中華料理人選手権大会の特別審査員で、栄養学的な観点から料理を審査する。秋山醤への恨みから、点数をつけることに葛藤する大谷に対して「神の舌は裏切るな」と忠告する。
麝香院 紫苑 (じゃこういん しおん)
アロマ・アーティストの女性。大谷日堂の主催する第二回全日本中華料理人選手権大会の特別審査員で、香りの観点から料理を審査する。人一倍嗅覚が鋭敏で、香りを嗅ぐ時以外は普段はマスクをつけて過ごしている。
ミケロッティ本郷 (みけろってぃほんごう)
トータルビューティーコーディネーターでジュリアーノ本郷とサザビー本郷の兄。弟たちと同じく、オカマ口調で話す。大谷日堂の主催する第二回全日本中華料理人選手権大会の特別審査員で、美しさの観点から料理を審査する。美しさを追求するあまり、中華料理の道に進んだ弟サザビーのことをよく思っていない。
桃 明輝 (とう みんき)
秋山階一郎の妻で、秋山醤の祖母に当たる人物。元は馬賊の出身で、中国に料理修行に来た階一郎と知り合う。現在は中国で中華料理店を経営している。
場所
五番町飯店 (ごばんちょうはんてん)
銀座に存在する中華料理店。「中華大帝」との異名を持つ五番町睦十によって創設され、日本でもトップクラスの評価を受けている。五番町飯店で勤務することに憧れる料理人も多いとされる。
クレジット
- 監修
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おやまけいこ
続編
鉄鍋のジャン!R頂上作戦 (てつなべのじゃん あーるちょうじょうさくせん)
西条真二の代表作『鉄鍋のジャン!』の三年後を描いた続編にあたる。勝つためには手段を選ばない極悪非道な料理人秋山醤の活躍を描く。料理描写の監修はフード・コーディネーターのおやまけいこ。 関連ページ:鉄鍋のジャン!R頂上作戦
鉄鍋のジャン!!2nd (てつなべのじゃん せかんど)
西条真二による漫画作品『鉄鍋のジャン!』及び『鉄鍋のジャン!R 頂上作戦』の続編。天才的な腕前を持つが、勝負に勝つためなら手段を選ばない極悪非道な料理人・秋山醤の活躍を描いた作品。ジャンの息子で、同じ... 関連ページ:鉄鍋のジャン!!2nd
書誌情報
鉄鍋のジャン! 4巻 KADOKAWA
第1巻
(2017-05-26発行、 978-4040692067)
第2巻
(2017-06-09発行、 978-4040692074)
第3巻
(2017-06-23発行、 978-4040692555)
第4巻
(2017-07-07発行、 978-4040692562)