銀のクルースニク

銀のクルースニク

吸血鬼を専門的に狩る賞金稼ぎ、クルースニクに弟子入りした見習い修道士キリアン・ナルシェビッチが歩む大いなる旅の物語。岩佐あきらこが描く超ハイテンションヒゲオヤジ萌え吸血鬼ギャグファンタジー。「月刊Gファンタジー」2007年7月号から2009年11月号まで連載された作品。

正式名称
銀のクルースニク
ふりがな
ぎんのくるーすにく
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

常に灰色の雲が覆い、雪深い極寒の大地にあるスニェグラード帝国。そんな北の大地でスヴァール正教救世主派の教会の助修士だったキリアン・ナルシェビッチ(キリー)は、クルースニクと呼ばれる吸血鬼狩りを生業としている賞金稼ぎに憧れていた。そして、偶然出会ったクルースニクのレオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジに弟子入りし、一人前のクルースニクになるべく旅立つ。

旅の途中で仲間も増え、しばらくはドタバタな旅を続けていた一行だったが、キリーたちはいつの間にか、スニェグラード帝国を我が物にしようとする「第六天国(シストーイ・ラーイ)」の陰謀に巻き込まれていく。

登場人物・キャラクター

キリアン・ナルシェビッチ (きりあんなるしぇびっち)

スヴァール正教救世主派の教会の助修士にしてクルースニク見習いの少年。年齢は14歳で身長は160センチ。10年前の聖者キリアンの日に、スヴァール正教救世主派の教会に拾われ、協会の神父であるイワン・ナルシェビッチの養子となった。それ以前の記憶がなく自分の名前もわからなかったため、同じくイワンの養子で3歳年上の兄、ユーリィ・ナルシェビッチに「キリアン」と名付けられた。 4歳の頃から協会で育てられたためかなりの世間知らずで、単純バカで騙されやすい。白魔法の使い手で、魔法剣「プラウダ」を使用するとその威力が倍増する。

レオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジ (れおんはるとあんてぃおふかろるふぉんせんとじぇるじ)

キリアン・ナルシェビッチ(キリー)の師匠であるクルースニク。見た目は30代後半くらいのヒゲを生やした男性。身長は175センチ。普段は穏やかで心優しい乙女のような性格で、ミレナ・ワシレフスカヤからは「ヒゲ乙女」と称されている。一族の9割がクルースニクであるスヴォートニクの民。スヴォートニクの民は成人すると髪の一部にパリマーと呼ばれる硬い部分ができるが、普段のレオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジ(レオン)にパリマーはない。 通常は気弱だが、戦闘中は「なまら」と叫ぶことにより自己暗示をかけてちょい悪オヤジに変身し、戦闘力がアップする。この状態では普段の彼と区別するためミドルネームのアンティオフから「アンティ」の名で呼ばれている。 アンティに変身すると、口が悪くなり、髪にはパリマーが出現し目が金色になる。治癒力が異様に高く小さな傷ならその場で治るほどだが、キリーとミレナは、レオンの「なまら健康だから」という説明で納得している。

ミレナ・ワシレフスカヤ (みれなわしれふすかや)

レオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジ(レオン)に同行している回収人の少女。年齢は18歳で、身長は153センチ。スニェグラード帝国の首都ベールィ随一の資産家の令嬢にして、「スヴァール正教騎士団」史上最年少の上級中尉。冷静沈着で戦闘能力も高く、元々は騎士団のエリート空兵隊の所属だった。 現在は回収人に転向し、レオンの専属回収人として働いている。極度のオヤジ好きで妄想が激しく、男は30代半ばからが食べ頃だという強いポリシーを持っている。本命はレオンだが、他のオヤジを眺めるのも好きで、本部へ報告に行った時は、中将や局長を美味しそうと思いながら眺めていた。胸がAカップなのが密かな悩み。使用している武器はエストックのメーシャツと、魔導銃のダジボーグ。 ダジボーグは、銃として吸血鬼に攻撃を加えられるだけでなく、倒した吸血鬼の魂を回収することもできる。

アレクセイ・ロマノフ・フォン・セント=ジェルジ (あれくせいろまのふふぉんせんとじぇるじ)

レオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジ(レオン)と同郷のスヴォートニク出身で、一族の現族長。容姿はレオンと良く似ているものの、背が低く子供のように見える。ねずみのように小さな身体で素早く動くので、他のクルースニクからはねずみという意味の「ムィーシ」という名で呼ばれている。クルースニクの協会に加盟していないが、協会が発表している賞金獲得番付に照らし合わせれば5位内には入れるほどの実力者。 レオンを案じて、故郷へ帰れと忠告するなど最初は反目しあっていたが、次第に打ち解けキリアン・ナルシェビッチたちの旅に同行する。

ラースロー・ニコラエ・バルチェスク (らーすろーにこらえばるちぇすく)

ナルシストで女好きの吟遊詩人。楽器の演奏と歌声は抜群にいいのだが、歌詞が残念極まりない。ファンが多いので、路上ライブで稼ぐこともあるが、それで得られる金銭の殆どは小銭である。森で猟師の仕掛けた罠に引っかかっていたところをレオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジたちに助けられ、なし崩し的に彼らの旅に加わった。 逃げ足だけは速いものの戦闘には不向きで、自身が足手まといであることは自覚しており、キリアン・ナルシェビッチ(キリー)たちが運動会に参加すると決めた時には、仲間のために全力で何もしないと誓った。「第六天国(シストーイ・ラーイ)」と呼ばれる組織に所属し、組織の命令でキリーを監視している。

アナスタシア・カンテミール (あなすたしあかんてみーる)

レオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジ(レオン)の従姉妹で、彼の初恋の女性。レオンやアレクセイ・ロマノフ・フォン・セント=ジェルジと同じくスヴォートニク出身。正直かつ、女性ながらに男らしい性格で、地元では「熊殺しのアナ」と呼ばれるほどの怪力の持ち主。ラースロー・ニコラエ・バルチェスクとは同じ「第六天国(シストーイ・ラーイ)」と呼ばれる組織の一員で面識があるが、レオンたちの前では初対面であるふりをしていた。

ユーリィ・ナルシェビッチ (ゆーりぃなるしぇびっち)

キリアン・ナルシェビッチ(キリー)の義兄で、救世主教会の修道士をしている17歳の少年。赤ん坊の頃に家族を亡くし、帝都ベールィの東部地区にあった救世主教会で神父の養子として育てられた。周りが大人の修道士ばかりだったこともあり、弟を欲しがっていたユーリィ・ナルシェビッチは、10年前に教会前で拾われ神父の養子となったキリアンを神様が授けて下さった弟だと信じ、実の弟のように可愛がった。 キリーが旅に出ると言った時は反対し、一時はケンカにもなったが、キリーの夢を認めて和解し、旅立つ彼を優しく見送った。

イワン・ナルシェビッチ (いわんなるしぇびっち)

救世主教会の神父で、キリアン・ナルシェビッチ(キリー)とユーリィ・ナルシェビッチの養父。帝都きっての清流派で他宗派の聖職者たちにも尊敬されている。キリーの意志を尊重し、旅に出ることを許す。キリーが旅に出る際は教会の宝剣である魔法剣「プラウダ」をキリーに持たせてくれた。キリーが旅に出た後、皇帝に請われてイリア殿下に神学を教えている。

ヨシュア・クーリック (よしゅあくーりっく)

ラースロー・ニコラエ・バルチェスクと「第六天国(シストーイ・ラーイ)」との連絡役をしている吸血鬼の青年。年齢は20歳。黒鳥系吸血鬼だが背中の羽根は白い。病弱で時折熱を出している。ラースローと仲が良い。スニェグラード帝国にいる際は人前で羽根を出さず、人間のふりをしている。

ジャスティン・グリーンウェル (じゃすてぃんぐりーんうぇる)

「クルースニク狩り」と呼ばれる、クルースニクばかりを襲う高等吸血鬼。25歳のキメラ型吸血鬼で、好きな食べ物はB型RH+の血液、趣味は撲殺と公言している。クルースニクばかり狙う理由を「11次元からの指令」と言い放つ電波系の青年だが、その能力は高く、レオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジたちをぎりぎりまで追い詰めた。 キリアン・ナルシェビッチのことを知っており、去り際に「お前の本当の親のことを知りたきゃ俺を追え」と言い残した。

ベリエッタ

ジャスティン・グリーンウェル(ジェイ)の相棒。普段はうさぎのぬいぐるみの姿をしているが、時にはバイクに変形し、ジェイを乗せる。比較的常識人で、ジェイが暴走した時にはハリセンで殴り倒して彼を正気に戻した。腹から撲殺アイテムの冷凍マグロを取り出して殴りかかるなど凶暴な一面もある。

エフゲニー・ラスプーチン (えふげにーらすぷーちん)

「第六天国(シストーイ・ラーイ)」と呼ばれる組織の司祭。別名「黒い神」。吸血鬼による吸血鬼のための理想国家「白水境(ベロヴォージュ)」の建設を目論んでいる。その理想国家を造るため、スニェグラード帝国を狙っている。

蔡元仙 (つぁいゆんしん)

「第六天国(シストーイ・ラーイ)」と呼ばれる組織の最高幹部。28歳の水龍系吸血鬼の青年。移動魔法が使える。普段は目を隠しているが、私服の際は包帯で目の周辺を覆っているものの片目だけは出している。自分の弱さ故に愛する女性を守れず、この世のすべてを憎み破滅を願った。

鷹宮 那熾 (たかみや なおき)

「第六天国(シストーイ・ラーイ)」と呼ばれる組織の幹部。24歳の大鷹系吸血鬼の青年。かなりのブラコンで弟の沙月丸を溺愛している。スニェグラード帝国の帝都ベールィで運動会が行われている時、皇族居住区に単身乗り込んで襲撃した。剣士バカで、命がけの勝負ができるとなると任務を忘れかける。沙月丸以外の弟キャラにも萌えるため、目の前にイリアとキリアン・ナルシェビッチが現れた際は、萌え過ぎて大量の鼻血を出していた。

沙月丸 (さつきまる)

鷹宮那熾の持つ妖刀。那熾の弟で、刀の姿でありながら話すことができる。小悪魔気質で、兄にきつく当たったかと思うと、一転甘えながら「兄上大好き」と言うなど、完全に兄を手玉に取っている。兄が自分以外の弟キャラにうつつを抜かすと激怒する。

クラウディオ・ロッシ (くらうでぃおろっし)

「第六天国(シストーイ・ラーイ)」と呼ばれる組織の幹部で、39歳の錬金術師の青年。第六天国の幹部はその殆どが吸血鬼だが、クラウディオは人間である。組織内では魔法研究を中心に行っている。ある凶悪生物の観察と管理を行っており、その仕事を気に入っている。

ドミトリー・マルシャーク (どみとりーまるしゃーく)

皇帝軍精鋭部隊「リアパールト隊」の隊長で階級は三等陸佐。皇帝が最も信頼している人物で、皇帝や皇族の護衛も務めている。身長198センチで血液型はO型、8月28日生まれのおとめ座、38歳。妻と2人の幼い娘がおり、両親と共に同居している。実家では犬を2匹飼っており、名前は「エリカちゃん」と「コロたん」。好きな食べ物は焼きビーフンと苺、好きな運動はスクワットと腹筋。 軍に入った皇子の世話を任される程の人物で、軍でも三本の指に入る有名人。シドニウス・セロフ・アセンとは親友同士でプライベートでは彼を「シド」と呼び捨てにしている。強敵が現れると死傷者を出さぬよう自ら矢面に立って戦うような人物で、部下からも信頼されている。

レオニード・ボリス・アセン (れおにーどぼりすあせん)

スニェグラード帝国の帝位継承第二位の皇子。皇帝軍精鋭部隊「リアパールト隊」の副隊長を務めるほどの実力の持ち主。鷹宮那熾が襲撃してきた際、ドミトリー・マルシャークが来るまでの間、彼の代わりに指揮をとって戦った。皇子だが気さくな性格で、部下に対してもタメ口で良いと告げている。

イリア

スニェグラード帝国の皇子でレオニード・ボリス・アセンの弟。イワン・ナルシェビッチ神父からキリアン・ナルシェビッチ(キリー)のことを聞いている。帝都ベールィから出たことがなく、クルースニクとして旅を続けているキリーから旅の話を聞きたいと思っている。ドミトリー・マルシャークが鷹宮那熾にトドメを刺されそうになった時は、身を挺してドミトリーを庇った。

シドニウス・セロフ・アセン (しどにうすせろふあせん)

スニェグラード帝国の皇帝で、アリエフとレオニード・ボリス・アセン、イリアの父親。公の場では威厳のある皇帝陛下として振る舞っているが、マントの下にジャージを着て政務を執るなどお茶目な一面もある。着ているジャージは20年前の士官学校時代のもので、その当時から体型が変わっていない。プライベートでは気さくな人物で、間違ったノリツッコミをしては周囲を困惑させることもある。 ちなみに即位する際にノリツッコミをやめると誓ったが、まったく改善されていない。

アリエフ

スニェグラード帝国の第一皇子で、皇帝の後継者。レオニード・ボリス・アセンとイリアの兄。世界の真実を知っている数少ない人物でもある。鷹宮那熾が再び帝都ベールィを襲撃した際、帝都の抜け穴付近を守っていた兵たちに指示を出し、自身は那熾の襲撃を知らせにシドニウス・セロフ・アセンのもとへ向かった。

ハルディエル・スボォートニク・フォン・セント=ジェルジ (はるでぃえるすぼぉーとにくふぉんせんとじぇるじ)

レオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジやアレクセイ・ロマノフ・フォン・セント=ジェルジの先祖で、スヴォートニク一族の始祖にあたる人物。三千年前、スヴォートニク一族の基礎を築いた。キメラ型吸血鬼の中でも特にさまざまな種族の血が混ざっているフラガラッハ種と人間のハーフ。体の一部が竜のウロコのように硬く武器化し、傷を負ってもすぐに治る。

集団・組織

救世主教会 (すぱすきょうかい)

キリアン・ナルシェビッチ(キリー)が信仰しているスヴァール正教の教会。スヴァール正教は、スニェグラード帝国の国教でもある。キリーが育った協会は帝都ベールィ東部地区の教会である。救世主教会はスヴァール正教が支援しているので、クルースニクの立ち寄り所として使用されることもある。

協会 (おぷしちな)

クルースニクの互助組織。元々は酒場などでクルースニク同士が情報交換していたのを組織化したもの。現在では吸血鬼の魂の回収や賞金の査定、情報提供などクルースニクの仕事に関わるすべての業務を行っている。協会に加盟すると名簿に登録され、治療や宿泊などの支援を受けられる。協会の運営には国教であるスヴァール正教が支援していて、賞金の一部を教団が出している。

場所

スニェグラード帝国 (すにぇぐらーどていこく)

夏でも雪が残っている極寒の大地。常に雲に覆われており、太陽光は弱く、空の色は常に白か灰色で青空になることはない。周囲を魔法障壁で囲まれており、その先は死者の世界だとされている。スニェグラード帝国の住人は魔法障壁の外へ出ることはない。

その他キーワード

魔法剣「プラウダ」 (まほうけん「ぷらうだ」)

キリアン・ナルシェビッチ(キリー)のいた救世主教会で聖堂に納められていた宝剣。教会の宝であり、本来は持ち出し禁止だったが、キリーが旅に出る際、イワン・ナルシェビッチ神父の許可を得て借り受けた。魔法剣のため、この剣を魔法の媒介にすると普段よりも魔法の威力が大きくなる。

ジャンプソード「アスキ=カタスキ」

レオンハルト・アンティオフ・カロル・フォン・セント=ジェルジの武器。鞭のように自在に振るうことができるが、鞭ではなく剣。持ち手以外の部分はすべて刀身であり、自在に曲がる鋼の威力は千本の大剣にも匹敵する。この世界に一つしかない武器である。戦闘時以外、刀身はコンパクトに収納されている。

吸血鬼 (ぷるーてにく)

血を吸う怪物。魔獣系や水龍系、黒鳥系などさまざまな種類の吸血鬼がおり、種別ごとに外見や能力が異なる。下等吸血鬼はかけられている賞金が安い。高等吸血鬼は高額な賞金がかけられているが、彼らは人間に変身できるので、普通の人と区別するのが難しく、見つけ出すのに時間がかかる。

クルースニク

吸血鬼を専門に狩る賞金稼ぎ。協会に加盟している者は登録クルースニク、加盟していない者は独立系クルースニクと呼ばれる。簡単に自称することができる職業のため、クルースニクが何人存在するのか、正確な数はわかっていない。

回収人 (さびらーち)

クルースニクの戦いを支援し、彼らが倒した吸血鬼の魂を回収している。回収人の数は少なく、すべての回収人は「正教騎士団」に所属している。協会に所属しているクルースニクについては月に一度賞金獲得番付が発表され、上位30名までが専属の回収人を派遣してもらえる。

世界の死す所 (いすあ)

スニェグラード帝国を囲むこの世界の一番端。世界の死す所の手前には魔法障壁が光を放っており、水平線のあたりがオーロラのように光っているように見える。スニェグラード帝国では世界の死す所の向こうは死者の世界だと信じられている。

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