僕の呪いの吸血姫

僕の呪いの吸血姫

人々を襲う吸血鬼が出現し始めた日本を舞台に、吸血鬼の美少女、バロックと出会った緒坂唯鈴の戦いや恋愛模様を描いたダークファンタジー。「月刊少年ガンガン」2021年8月号からから掲載の作品。

正式名称
僕の呪いの吸血姫
ふりがな
ぼくののろいのきゅうけつき
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
ガンガンコミックス(スクウェア・エニックス)
巻数
既刊6巻
関連商品
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あらすじ

吸血鬼殺しバロック

数年前から人間を襲う危険な「吸血鬼」が出現し始めた日本では、すでに1000人を超える人間が殺害され、各地で深刻な被害が続出していた。対吸血鬼保安隊の班長を務める緒坂唯鈴は、吸血鬼被害が悪化している現状を変えるべく、まじめに任務をこなす一方で、ある調査を水面下で進めていた。それは以前からまことしやかに囁(ささや)かれている、伝説の吸血鬼、バロックに関する調査だった。「吸血鬼殺し」の異名を持つバロックは、筆舌に尽くし難いほどに神々しい美貌を誇り、その姿を見た者を狂わせて自害させるという伝説があった。仲間が吸血鬼に殺される様を何度も見てきた唯鈴は、吸血鬼から仲間を守りたいという一心で、バロックの力を求めて彼女の存在を探っていた。やがて、情報部の遠目義からバロックの実在を確信させる情報を得て幽閉場所をつき止めた唯鈴は、厳重な警備を潜(くぐ)り抜けて秘密裏に監禁されていたバロックを解放し、吸血鬼に対抗する力を貸して欲しいと協力を求める。そんな唯鈴たちは、逃亡中に白衣の吸血鬼に襲われるが、バロックは得意とする呪術によって返り討ちにする。バロックを盗み出した唯鈴は気を失って目覚めたあと、防衛省の榊一と上層部から尋問を受けて処分される羽目になるが、唯鈴は死ぬ前にバロックの拘束をやめて吸血鬼殺殺しの切札として扱って欲しいと願い、交渉を試みる。自らの立場も命も投げ打つ唯鈴の説得を受け、バロックの能力に注目した一と上層部は、吸血鬼迎撃における性能テストとして施設に侵入して来た吸血鬼、ルビーの父の殲滅(せんめつ)を彼女に命じ、唯鈴には補佐役を命じる。唯鈴や一の協力を受けながら呪術によって血の魔法陣を作り出したバロックは、以前倒した白衣の吸血鬼の亡霊をあやつって、ルビーの父を倒すことに成功する。こうして、防衛省からその実力を認められたバロックと唯鈴は、日本に巣食う吸血鬼殲滅のために、共に戦うこととなる。吸血鬼退治の補佐役として、そしてバロックを制御するための「首輪」として任務をこなすことになった唯鈴は、彼に恋心を抱いた彼女と交流を繰り返しながら、互いに絆(きずな)を深めていく。そんな中、バロックを狙う吸血鬼姉妹のルビーツクヨミが、夜の街でバロックを捜しながら人間を襲っていた。一方、吸血鬼を大量に殺せる呪いが東京に存在すると聞いた唯鈴は、一に命じられてバロックと共に視察に向かうこととなる。

登場人物・キャラクター

緒坂 唯鈴 (おさか いすず)

「対吸血鬼保安隊」第7中隊第1班の班長を務める青年。黒髪短髪で天然な性格をしており、周囲からは無自覚な人たらしと評されることもある。士官学校を首席で卒業したエリートで同僚からの信頼も厚く、保安隊の中ではかなりの強さを誇る優秀な実力者だが、自分だけの力で吸血鬼を退治するほどの力はない。同僚や部下が吸血鬼との戦闘で命を散らしていくのを何度も見てきたため、仲間を守りたい一心で、吸血鬼に対抗できる力を持つバロックについて秘密裏に調査を進めている。やがて友人の遠目義から、国が非公式に拘束している吸血鬼の情報を得て、それがバロックだと確信し誘拐を計画。幽閉されているバロックと初めて会った時には、今まで吸血鬼から人々を守ってくれていたことに感謝しており、共闘や交流を繰り返すうちに彼女と心を通わせていく。また、吸血鬼を倒す力を持つバロックに、人間を守るために力を貸して欲しいと協力を求める。バロック誘拐の罪で防衛省に処分されそうになるも、彼女から恋心を抱かれているというのもあって榊一に期待されるようになり、共に日本の吸血鬼を殲滅するよう命じられる。同時に一から、バロックを管理・監視する「首輪」としての役割も押し付けられ、手始めに彼女とキスをするよう命じられる。しかしバロックを大切に思い、あくまで補佐役として接したいと考えているため、彼女に不埒(ふらち)な行為をするような命令は無視している。血を必要とするバロックに対しては迷いなく自分の血を分け与えており、不必要な犠牲を防ぐために自己犠牲もためらわない優し過ぎる性格を、彼女から心配されている。実は1年前までの記憶しかなく、路上に無傷で倒れていたところを救急隊に保護され、入院していた。目覚めた時点で中学生レベルの一般常識はあったものの、家族関係や交友関係を含め自分が何者なのかをいっさい知らぬまま、勉強や訓練を重ねて保安隊に入った過去を持つ。吸血鬼にとって美味である血を持ち、その味を知るバロックからは術師の家系ではないかと推測されている。また、吸血時に血のおいしさを瞬時に感じ取ったツクヨミからも気に入られている。

バロック

伝説の吸血鬼。「吸血鬼殺し」の異名を持つ。銀髪のショートヘアと赤目を持つ美少女の姿をしている。誰に対しても敬語で話す。神々しい美貌を誇り、あまりの美しさから見た者を狂わせ、自害させるという伝説がある。昔から人間には好意的に接し、人々を悪い吸血鬼から守っていたが、次第にその力を恐れるようになった人間たちに捕まり、20年以上も監禁や拷問を受けていた。現在は日本政府によって秘密裏に拘束されており、拘束服を着せられ縛られた状態で、特別施設に厳重に監禁されている。ひそかに調査し誘拐を企てていた緒坂唯鈴によって解放され、吸血鬼から人間を守るための協力を求められる。唯鈴との逃走中に、白衣の吸血鬼の襲撃を受けるが得意の呪術で撃退し、再度防衛省に拘束されるも、唯鈴の説得を受けた榊一に利用価値を期待され拘束を解かれる。施設を襲ったルビーの父を唯鈴と共に撃退することに成功して以来、唯鈴と共に日本の吸血鬼殲滅を命じられる。この際に唯鈴の補佐が必要であることと、その理由が彼に恋をしたためであることを明言している。唯鈴のことを不思議に思ったり心配したりすることもあるが、任務や日常を通して心を通わせていく。吸血鬼を殲滅するのはあくまで唯鈴の願いを聞き入れるためであり、自分を拘束していた政府関係者のことは基本的に信用しておらず、一とは対立することもある。また、唯鈴以外とは滅多に会話せずふだんは無表情であり、乙女のような反応を含めさまざまな感情や表情を見せるのも、唯鈴の前だけである。吸血鬼を殺せるさまざまな呪術を使いこなし、呪い憑きの吸血鬼にすら対抗できるほどの力を持つ。また二流程度の弱い呪術であれば、ダメージを大幅に軽減できる耐性も有している。しかし呪術を使うたびに消耗するため、精神の栄養である人間の血液を定期的に摂取しなければならず、同意を得たうえで唯鈴から血を分けてもらうこともある。20年以上監禁されていたため外の変化を知らず、当初はスマートフォンやタブレットの使い方すら知らなかった。

白衣の吸血鬼 (はくいのきゅうけつき)

学校に出現した吸血鬼。白衣をまとった男性の姿をしており、長髪で色黒の肌を持つ。子供を喰(くら)おうとしていたが、緒坂唯鈴に撃退されて逃走し、彼に恨みを持つようになる。のちに、バロックを連れて逃走中だった唯鈴を襲撃するも、バロックの呪術により心臓を破壊され死亡する。遺体は防衛省に回収されていたが、ルビーの父を倒す際にバロックに再利用され、彼女の呪術によってあやつられる亡霊の姿でルビーの父を攻撃した。

遠目 義 (とおめ ただし)

対吸血鬼保安隊の情報部部長を務める男性。眼鏡をかけている。緒坂唯鈴とは友人で、彼に情報を提供することが多い。バロックを秘密裏に調査している唯鈴に、彼女の存在や居場所に関する情報を知らせたが、自ら危険な場に向かおうとする彼を心配していた。のちに唯鈴のマンションを訪ねた際に、いつの間にか引っ越したことを知らされ、彼がバロック誘拐を実行したことに気づいた。

榊 一 (さかき はじめ)

日本の防衛副大臣を務める男性。短髪のオールバックで、右目下にホクロと額に傷痕がある。どんな時も無表情で、何が起こっても冷静に判断し、時には冷徹な対応を取る。バロック誘拐の罪で拘束した緒坂唯鈴を尋問後に処分しようとするが、バロックの能力について教えられ、彼らに興味を抱くと共に利用価値を見出す。バロックの性能テストも兼ねて、彼女には施設に侵入したルビーの父の殲滅を、唯鈴にはそのための補佐を命じた。この際に防衛大臣の安森が殺害されたため、防衛大臣に昇進する。これ以降は唯鈴とバロックをシェルターで同居させたうえで、手始めに日本に巣食う吸血鬼を殲滅するよう命じる。さらにはバロックから恋心を寄せられている唯鈴が、彼女を完全に制御・管理できる「首輪」になることを期待するようになった。唯鈴にはバロックと恋仲を深めることを求め、彼女とキスをするよう命じた。バロックにもさまざまな指令を下すが、あくまで唯鈴のために行動している彼女からは快く思われていない。

ルビーの父 (るびーのちち)

バロックを狙って防衛省の施設に侵入した吸血鬼。口ヒゲを生やしてロングコートを羽織った、中年の紳士のような姿をしている。愛娘のルビーとツクヨミを喜ばせるためにバロックをさらおうと目論んでいたが、榊一の命令を受けたバロックの呪術によって返り討ちにされ死亡する。

ルビー

呪い憑きの吸血鬼。ルビーの父の愛娘で、ツクヨミの姉。縦ロールのロングヘアで、大きなリボンを付けた少女の姿をしている。胸元には丸い紋章がある。愛らしい見た目ながら、人をたやすく喰らう残虐性を秘めている。バロックのことを「ウルトラレア美少女吸血鬼」と高く評価しており、彼女を自分の理想のクーデレ系妹にするべく、東京で人を襲いながら捜し続けていた。渋谷の街に視察に訪れたバロックに襲いかかり、彼女や緒坂唯鈴と激闘を繰り広げる。拳から炎を発する能力を有し、並みの吸血鬼よりも強力な戦闘力を持つ。妹のツクヨミのことを溺愛している。

ツクヨミ

ルビーの父の愛娘の吸血鬼で、ルビーの妹。前髪を切りそろえ、ウェーブのかかったロングヘアをツーサイドアップにまとめた少女の姿をしている。愛らしい見た目ながら、人をたやすく喰らう残虐性を秘めている。姉のルビーと共に、渋谷の街でバロックと緒坂唯鈴を襲う。唯鈴の交戦時に吸血して以来、彼の血の味を非常に気に入り、ペットにしようと目論むようになる。しかし、一向に懐いてくれない唯鈴にどんどん惹(ひ)かれてしまい、恋心を抱くようになる。

集団・組織

対吸血鬼保安隊 (たいきゅうけつきほあんたい)

人間を襲う吸血鬼に対応するために結成された特殊部隊。単に「保安隊」と呼ばれることが多い。緒坂唯鈴が所属している。吸血鬼が出現した場所に駆けつけ、人々を守りながら戦う任務を中心に担っている。一般人にとっても唯一吸血鬼に対抗する組織として広く知られており、頼りにされている。隊員が特殊な訓練で鍛えられ武装しているものの、必ず吸血鬼を倒せるわけではなく、唯鈴の同僚・部下からも多くの殉職者が出ている。

その他キーワード

呪術 (じゅじゅつ)

呪いによって対象にさまざまな事象を起こす不思議な術。人間の使い手は術師と呼ばれているが、バロックのように呪術を使いこなせる吸血鬼も存在する。バロック場合は、吸血鬼の命の源である魔力を侵食したり、心臓を破壊したりする呪術を主に使用する。呪術の仕掛けを対象に知られてしまうと効果が弱まってしまうため、隠したうえで慎重に仕込む必要がある。

吸血鬼 (きゅうけつき)

人間の血を吸い、時には喰い殺す驚異の存在。日本ではすでに1000人以上の被害者が出ており、数も徐々に増えているため深刻な被害が相次いでいる。政府からも危険な存在として殲滅対象となっているが、出現時には対吸血鬼保安隊が対応しているものの、簡単に倒すことができないため保安隊からも多くの犠牲が出ている。赤い目と牙が主な特徴だが、見た目がほとんどふつうの人間と変わらない者が多い。見た目よりも生命力が強く、人間を遥(はる)かに超える怪力や機動力を誇る。吸血鬼の生命源である魔力を持ち、それを唯一生成できる心臓を破壊されると死亡するが、心臓以外の箇所を激しく損傷しても死ぬことはない。元は呪術から生まれた存在であり、強力な呪術で心臓を奪えば死に追いやることもできる。人間の血を栄養源としており、消耗するたびに吸血しなければ、バロックのように人間に友好的な吸血鬼であっても、本能に支配されて周囲の人を襲ってしまう。

呪い憑き (のろいつき)

異能の力をあやつることのできる特別な吸血鬼。極まれに存在する。ただでさえ強力な吸血鬼よりもさらに超人的な肉体を持ち、ルビーのように拳から炎を出すといった魔法のような力を有する。異能の種類はさまざまで、空を飛ぶことができたり、自らの体を霧状にできる者もいる。バロックでも数体程度しか見たことがなく、呪い憑きに変化する原因もわかっていない。

術師 (じゅつし)

呪術を使う人間。術師としての力は遺伝するため、術師の家系出身者が多い。体の回復が常人よりも早く、本人よりもレベルの低い呪術であれば弱体化・無効化できる耐性を持つ。吸血鬼に対抗できるほどの力を持つ希少な人間である一方、吸血鬼たちからは術師の血は非常に美味であると噂(うわさ)されている。

書誌情報

僕の呪いの吸血姫 6巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックス〉

第2巻

(2022-06-10発行、 978-4757579606)

第3巻

(2022-11-11発行、 978-4757582491)

第4巻

(2023-06-12発行、 978-4757586093)

第5巻

(2023-11-10発行、 978-4757588981)

第6巻

(2024-06-12発行、 978-4757592414)

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